県境
県境(けんきょう、けんざかい)とは、県と県の境界である。日本においては県のみならず、都道府県相互の境界(都道府県境)全てを指すこともある。また海外の行政区画で、「県」と日本語訳される、日本の都道府県と類似する地域同士の境界についても「県境」と訳される。
都県の極一部が隣県に囲まれていたり、河川の流路変更で対岸に取り残されたりして、陸上で接続していない飛び地もある。
Contents
県境がある場所
県境は山地・峠の尾根、河川、湖、海峡といった令制国以来の自然地形で隔てられている場合が多い。なかには市街地や集落、田畑の中に県境が引かれていて、標識がなければ都府県境と分からない地域もあり、2つの県にまたがる施設も存在する。狭い水路で県境が分けられていたり、瀬戸内海の井島・大槌島のように小さな島が県境で二分されていたりする場合もある。
近年では、こうした不思議・不自然に思える県境を紹介した本が出版されたり、後述の埼玉・群馬・栃木三県境のように観光客誘致に活用されたりしている。福井県あわら市と石川県加賀市は2015年、吉崎集落にある県境にまたがって「越前加賀県境の館」を整備した。能越自動車道で2015年完成した「能越県境パーキングエリア」(石川県・富山県)、京都府木津川市と奈良県奈良市にまたがる「イオンモール高の原」を含むこうした施設は、床の色分けなどで県境を表示し、記念撮影する来場者に配慮している[1]。
三県境
3つの都道府県境が一点に集まる箇所を三県境または三国境(みくにざかい、さんこくきょう)と呼ぶ。山の頂上や河川の中央になっていることが多い。山の頂上の場合、山の名前が『三国山』となっていることが多い。全国で48か所存在する(三重県と奈良県間の和歌山県の飛び地含む)。
- 東武日光線柳生駅の東北東約400mにあり、国内に存在する三国境の中で唯一の平地にあることから一種の観光名所と化している。かつては渡良瀬川の水中に存在すると定義されていた。しかし明治~大正期に渡良瀬遊水地を設置した影響で一帯が沼地へと変わり、その後圃場整備で埋め立てられて水田となった。それぞれの県境は三本の畦で区分されているが、三県境そのものを示す杭が埋没しており、正確な位置は長らく不明となっていた。2016年1月から、三県境に接する2市1町により県境を策定する測量が実施され、この際、地中に埋もれていた三県境を示す杭も再発見された。同年3月までに県境確定作業を終了し、地権者立会のもと三県境を示す新たな杭が打たれ、同月31日、加須市役所において栃木市・板倉町・加須市の3首長が境界を定めた文書への調印式を行った[2]。4月1日より発効。
三県境の一覧
境界未定地域
2010年10月1日現在、各都道府県間における境界が定まっていない地域は14箇所である(隣接している地域もあるので、数え方が異なる場合がある。ここでは国土地理院の表記に従う)。総面積は、1万3399.10平方キロメートルである。この節の数値の単位は、特記がない限り、全て平方キロメートルで示す。各地名の後の()内の数値は、平成20年版全国市町村要覧(総務省発行)に記載されている、その境界未定地域のうち各自治体の便宜上の概算数値である[6]。
- 宮城県刈田郡蔵王町 (152.85) ・柴田郡川崎町 (270.80) と山形県山形市 (381.34) ・上山市 (240.95) の1045.94(蔵王県境裁判も参照)
- 山形県鶴岡市 (1311.51) ・西置賜郡小国町 (737.55) と新潟県村上市 (1174.24) ・岩船郡関川村 (299.61) の3522.91
- 埼玉県三郷市 (30.16) と東京都葛飾区 (34.84) の65.00
- 小合溜井付近にあたる。
- 千葉県市川市 (57.40) ・浦安市 (17.29) と東京都江戸川区 (49.86) の124.55
- 新潟県糸魚川市 (746.24) と長野県北安曇郡小谷村 (267.91) の1014.15
- 富山県富山市 (1241.85) ・黒部市 (426.34) ・中新川郡立山町 (307.31) ・下新川郡朝日町 (226.32) と長野県北安曇郡白馬村 (189.37) の2391.19
- 山梨県富士吉田市 (121.83) ・南都留郡山中湖村 (52.81) と静岡県駿東郡小山町 (136.13) の310.77
- 富士山付近に当たる。
- 山梨県南都留郡鳴沢村 (89.56) と静岡県富士宮市 (314.81) の404.37
- 岐阜県不破郡関ケ原町 (49.29) ・揖斐郡揖斐川町 (803.68) と滋賀県米原市 (250.46) の1103.43
- 愛知県弥富市 (48.92) と三重県桑名郡木曽岬町 (15.72) の64.64
- 岡山県玉野市 (103.63) と香川県香川郡直島町 (14.23) の117.86
- 福岡県田川郡添田町 (132.10) と大分県中津市 (491.09) の623.19
- 熊本県阿蘇郡小国町 (136.96) と大分県竹田市 (477.59) ・玖珠郡九重町 (271.41) の885.96
- 宮崎県小林市 (474.23) ・えびの市 (283.00) ・東諸県郡綾町 (95.21) と鹿児島県姶良郡湧水町 (144.33) の996.77
解消された境界未定地域
- 青森県十和田市 (688.60) と秋田県鹿角郡小坂町 (178.00) の866.60と、十和田湖の湖面の61.02 - 「県の境界にわたる市町の境界の確定(平成20年総務省告示第721号)」が2008年12月25日に公示され、境界が画定した(カッコ内は、平成19年度版全国市町村要覧に記載されている便宜上の概算数値)。
- 十和田湖は陸奥国北郡(東岸)と鹿角郡(西岸)に跨っているが、境界は不明確だった。江戸時代には両郡とも盛岡藩領(北郡の一部は七戸藩領)であったため大きな問題にならなかったが、戊辰戦争の結果この付近の領地は盛岡藩から没収され、九戸県、八戸県、三戸県を経て、明治2年11月28日(1869年12月30日)に北郡(七戸藩領を除く)が斗南藩に、鹿角郡が江刺県に属することになった。最終的に境界未定のまま、前者が青森県、後者が秋田県になった。後に南岸は、中山半島の西にある神田川が境界と暫定的に定められた。しかし北岸に関しては両県の主張が異なり、長年対立していた。面積により金額が決まる地方交付税交付金が、境界が確定することにより増額するため、財政難にある関係自治体が早期解決をめざし調整がされてきた。なお、増額された地方交付税交付金は、少なくとも10年間は十和田湖の環境対策や景観保護対策に使われる予定である[11]。
- 熊本県球磨郡水上村 (192.11) と宮崎県東臼杵郡椎葉村 (536.20) の728.31 - 2010年9月30日の官報で「県の境界にわたる市町の境界の確定(平成22年総務省告示第356号)」が公示され、境界が画定した(カッコ内は、平成19年度版全国市町村要覧に記載されている便宜上の概算数値)。
脚注
- ↑ 【生活調べたい】県境めぐり 新たな観光に/自治体PR 生活文化の境界も『読売新聞』朝刊2016年3月22日くらし面
- ↑ 埼玉、栃木、群馬の3県境が確定で調印式2016年3月31日 NHK
- ↑ 3.0 3.1 県境マニアへ観光振興 唯一の特殊地理売り込み 和歌山県など 産経WEST、2013年1月8日(2016年4月6日閲覧)。
- ↑ ようこそ!「さん・けん・きょう」へ 和歌山県東牟婁振興局、2013年3月6日(2016年4月6日閲覧)。
- ↑ なんにもないなんにもない…飯田線・秘境駅の旅いかが 朝日新聞社 2017年6月28日閲覧
- ↑ 都県にまたがる未定境界地域の内訳(国土地理院サイト内)
- ↑ @nifty:デイリーポータルZ:番外地・境界未定地・飛び地2006
- ↑ 「Internet Archive」の「今週の東都よみうり」
- ↑ [1]
- ↑ その他資料(富士山高所科学研究会サイト内)
- ↑ “十和田湖周辺の青森県・秋田県境界が画定しました”. 国土地理院. 2013年3月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2015閲覧.
- ↑ 熊本・宮崎の一部、やっと県境決まる 廃藩置県後未画定朝日新聞、2010年10月2日閲覧
- ↑ 宮崎・熊本の県境確定 廃藩置県以来の課題解決共同通信、2010年10月2日閲覧