児童自立支援施設
児童自立支援施設(じどうじりつしえんしせつ)とは、犯罪などの不良行為をしたり、するおそれがある児童や、家庭環境等から生活指導を要する児童を入所または通所させ、必要な指導を行って自立を支援する児童福祉施設である。退所後の児童に対しても必要な相談や援助を行う。根拠法は児童福祉法44条である。
かつて感化法の下においては「感化院」(かんかいん)、少年教護法の下で「少年教護院」(しょうねんきょうごいん)、現行の児童福祉法の下で「教護院」(きょうごいん)という名称であったが、1998年4月に上記名称となる。
入所経路の多くは児童相談所の措置によるものであるが(児童福祉法27条1項3号)、家庭裁判所での審判の結果、保護処分として児童自立支援施設に送致される場合もある(少年法24条1項2号)。
Contents
所在
児童福祉法及び児童福祉法施行令により、国と都道府県、政令指定都市はそれぞれ児童自立支援施設を設置することになっている。施設の詳細は「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」(厚生労働省令)によって定められている。1997年の児童福祉法の改正により、施設外の学校からの教師を予備、学校と同じ教育が導入されるようになった。[1]
全国に58カ所あり、国立2施設、私立2施設、残りが都道府県立もしくは政令指定都市の市立である。
政令指定都市で児童自立支援施設を設置しているのは神奈川県横浜市、愛知県名古屋市、大阪府大阪市、兵庫県神戸市の4自治体のみ。他は他施設に委託している。都道府県立では北海道が2施設、東京都が2施設、大阪府が2施設。他は1施設ずつ設置している。現在、大阪府堺市が設置に向けて準備を進めている。
国立・私立は男女別であるが、他の施設はほとんどが男女一緒である(神奈川県と北海道は男女別)。ただし、施設内の男女の居室はどの施設においても分けられている。
日本初の感化院は、池上雪枝(画家村上華岳の祖母)が1883年(明治16年)に大阪の自宅に設立した「池上感化院」といわれている[2]。
- 国立(厚生労働省所管)
- 都道府県立
- 北海道立向陽学院(北海道北広島市)
- 北海道立大沼学園(北海道亀田郡七飯町)
- 青森県立子ども自立センターみらい(青森県青森市)
- 岩手県立杜陵学園(岩手県盛岡市)
- 宮城県さわらび学園(宮城県仙台市太白区)
- 秋田県千秋学園(秋田県秋田市)
- 山形県立朝日学園(山形県西村山郡大江町)
- 福島県福島学園(福島県須賀川市)
- 茨城県立茨城学園(茨城県那珂市)
- 栃木県那須学園(栃木県矢板市)
- 群馬県立ぐんま学園(群馬県前橋市)
- 埼玉県立埼玉学園(埼玉県上尾市)
- 千葉県生実学校(千葉県千葉市中央区)
- 東京都立誠明学園(東京都青梅市)
- 東京都立萩山実務学校(東京都東村山市)
- 神奈川県立おおいそ学園(神奈川県中郡大磯町)
- 新潟県新潟学園(新潟県新潟市西区)
- 富山県立富山学園(富山県富山市)
- 石川県立児童生活指導センター(石川県河北郡内灘町)
- 福井県和敬学園(福井県福井市)
- 山梨県立甲陽学園(山梨県甲府市)
- 長野県波田学院(長野県松本市)
- 岐阜県立わかあゆ学園(岐阜県揖斐郡大野町)
- 静岡県立三方原学園(静岡県浜松市東区)
- 愛知県愛知学園(愛知県春日井市)
- 三重県立国児学園(三重県津市)
- 滋賀県立淡海学園(滋賀県甲賀市)
- 京都府立淇陽学校(京都府南丹市)
- 大阪府立修徳学院(大阪府柏原市)
- 大阪府立ライフサポートセンター(大阪府堺市南区)
- 兵庫県立明石学園(兵庫県明石市)
- 奈良県立精華学院(奈良県奈良市)
- 和歌山県立仙渓学園(和歌山県紀の川市)
- 鳥取県立喜多原学園(鳥取県米子市)
- 島根県立わかたけ学園(島根県松江市)
- 岡山県立成徳学校(岡山県岡山市中区)
- 広島県立広島学園(広島県東広島市)
- 山口県立育成学校(山口県山口市)
- 徳島県立徳島学院(徳島県鳴門市)
- 香川県立斯道学園(香川県高松市)
- 愛媛県立えひめ学園(愛媛県新居浜市)
- 高知県立希望が丘学園(高知県南国市)
- 福岡県立福岡学園(福岡県筑紫郡那珂川町)
- 佐賀県立虹の松原学園(佐賀県唐津市)
- 長崎県立開成学園(長崎県長崎市)
- 熊本県立清水が丘学園(熊本県熊本市北区)
- 大分県立二豊学園(大分県大分市)
- 宮崎県立みやざき学園(宮崎県都城市)
- 鹿児島県立若駒学園(鹿児島県霧島市)
- 沖縄県立若夏学院(沖縄県那覇市)
- 市立
- 私立
歴史と沿革[3]
児童自立支援施設は、明治中期に民間篤志家が始めた感化事業に端を発した施設である。明治33年に制定された感化法のもとで「感化院」、昭和8年の少年教護法では「少年教護院」、昭和22年に制定された現行の児童福祉法で「教護院」という名称であったが、平成10年4月の同法の一部改正により現在の名称になった。
1883(明16)年 池上雪枝が大阪市北区の自宅に感化院を開く。
1885年 予備感化院(翌年東京感化院)創設。
1886年 千葉感化院創設。
1888年 岡山感化院創設。
1889年 京都感化保護院創設。
1897年 三重感化院創設
1899年 広島感化院等創設。
1899(明32)年 留岡幸助が東京府巣鴨に家庭学校を創設。
1900(明33)年 感化法公布
1907(明40)年 改正刑法公布刑事責任年齢を14歳に引き上げる。懲治場留置廃止→未成年者に対する懲治・感化処分は「感化院」で。
1908(明41)年 感化法一部改正。対象年齢:8歳以上16歳未満→8歳以上18歳未満、以降、感化院は全国的に広がる。
1914(大3)年 留岡幸助が遠軽に北海道家庭学校を開校
1919(大8)年 国立武蔵野学院、開院
1922(大11)年 大正少年法、矯正院法公布
1933(昭8)年 少年教護法公布 「感化院」から「少年教護院」へ改称
1947(昭22)年 児童福祉法公布。「少年教護院」から「教護院」へ改称。
1948(昭23)年 少年法、少年院法公布
1949(昭24)年5月 少年院法一部改正
1949(昭24)年6月 少年法及び児童福祉法一部改正。初等少年院の対象年齢「おおむね14歳以上」から「おおむね」を削除。触法少年は児童相談所先議。強制的措置の導入。(「児童福祉法と少年法の関係について」(昭和24年6月15日 厚生省発児第72号 各都道府県知事宛 厚生事務次官通知))
1997(平9)年6月 児童福祉法の一部改正 「教護院」から「児童自立支援施設」に改称。施設長に就学義務。
2004(平16)年11月 児童福祉法・最低基準の一部改正。アフターケアの義務化。施設内虐待の禁止、自立支援計画策定義務化など
2006(平18)年2月 「児童自立支援施設のあり方に関する研究会」報告書
2006(平18)年11月 改正少年法施行
2009(平21)年4月 改正児童福祉法施行(被措置児童等虐待防止など)
脚注
- ↑ Takada, Shunsuke (2018). “The relationship between education and child welfare in Japanese children’s self-reliance support facilities”. Contemporary Japan 30(1): 60-77. doi:10.1080/18692729.2018.1423727.
- ↑ 池上雪枝 とは - コトバンク
- ↑ 全国自動自立支援施設協議会サイト
関連項目
外部リンク
- 全国児童自立支援施設協議会
- 社会的養護 - 厚生労働省