メロン
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概要
北アフリカや中近東地方の原産地と推定されたが、最近の遺伝子研究によれば、インドが原産地と裏付けられた[1]。紀元前2000年頃に栽培が始まった。通常Cucumis melo L.の西方に伝わった品種群をメロンと呼び、東方に伝わった品種群を瓜(ウリ)と呼ぶ。日本のマクワウリなどもそのひとつである。漢字では甜瓜(てんか)と呼ぶが、これはメロンを指すと同時にマクワウリをも含む表記である。
紀元前5世紀頃にエジプトで作られた苦味の少ないメロンが地中海を超えてヨーロッパに渡った。当時のメロンはキュウリよりは甘いという程度であり、サラダや酢漬けにされた。その後、甘いメロンが作られるまで数世紀に及ぶ改良の努力が行われた。ルネサンスの頃に南フランスでカンタルー種のような甘い品種が作られるようになり、メロンは野菜の仲間ではなくなっていった[2]。
日本では中世の考古遺跡から炭化種子が検出されており、古い時代に渡来して雑草化したものは「雑草メロン」(Cucumis melo L. var. agrestis Naud.)と呼ばれ、西日本の島嶼部などに自生している。
同属の有用植物としてキュウリ(胡瓜、C. sativus L.)がある。
メロンは園芸分野では果菜(実を食用とする野菜)とされる[3]が、青果市場での取り扱い[3]や、栄養学上の分類[4]では果物あるいは果実と分類される。
特徴
実
果実は多くの場合に球形であるが、ラグビーボール形やこん棒形、さらには蛇の様に細長いものまで変化に富む。表面は白色、緑色、黄色などで、複数の色が混ざる事もあり、イボや深い溝を生ずることも多い。網目が生じるもの(アミメロン・網系)と生じないもの(アミナシメロン・網無し系)とがある。多くは中心部が綿状で多数の種子を含む。
メロンの産地として夕張などの冷涼な地域が有名なのは、日本で流通している高級メロンの元になった品種がヨーロッパで作出されたため、熱帯性の種の多いウリ科植物には珍しく、夏の高温多湿に耐えられないからである。
日本で流通しているアミメロンは、品質を高めるために1本の蔓から通常1個しか収穫しない。主なネットメロン品種は受粉してから食べ頃までの日数が特定されている。ネットとは、かさぶたのようなものであり、果実の成長期に果肉と表皮の伸長率のずれによって生じるひび割れを塞ぐ分泌物から形成されるもの。 実を1個残す過程で未熟な状態で収穫される実は「摘果メロン」と呼ばれ、メロン漬けの材料となる[5]。
果実は熟すと甘くなるが、酸味が含まれる場合もある。極粉質の果実をつける品種(ババゴロシとも呼ばれる)や、乾燥地帯の品種には極めて保存性のよい(1年程度もつ)品種もある。この場合は果物というより、水筒の代わりとしての利用である。
果肉
果肉色は、主に赤肉種・青肉種・白肉種に分類される。
- 赤肉種:赤色系(橙色)
- 夕張メロン・クインシーメロンなど。
- 青肉種:緑色系(黄緑色)
- アンデスメロン・プリンスメロン・タカミメロン・アールスメロンなど。
- 白肉種:白色系(乳白色)
- ホームランメロン・ハネデューメロンなど。
品種
- カンタルペンシス群 (Cantalupensis group)
- チト群 (Chito group)
- コノモン群 (Conomon group)
- シロウリ、アカゲウリ(モーウイ)など。野菜として利用される。
- ドゥダイム群 (Dudaim group)
- フレクスオスス群 (Flexuosus group)
- 果実は蛇のように長くなる。食味はキュウリに似る。南アジアから北アフリカにかけて栽培されている。
- イノドルス(フユメロン)群 (Inodorus group)
- マクワ群 (Makuwa Group)
- マクワウリなど。
- レティクラトゥス群 (Reticulatus Group)
- 果皮に網目を生じる。最もよく栽培され、麝香のような香りを持つ品種群(マスクメロン)。アンデスメロン、アールスメロンなど。網目のあるカンタロープはレティクラトゥス群に属す。
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マスクメロン
マスクメロンとは、品種名ではなく麝香(Musk)の香りがするメロンの総称のことである。
生産
メロンの収穫量と作付
- ハミウリ・カンタロープメロン・ハネデューメロン・スペインメロン
- 中国(ウイグル自治区)・イギリス・スペイン・フランス
- イラン・アメリカ・メキシコ・ニュージーランド
など
収穫量順位 | 国 | 収穫量(t) | 作付面積(ha) |
---|---|---|---|
1 | 中華人民共和国 | 17,500,000 | 600,000 |
2 | トルコ | 1,708,415 | 102,000 |
3 | イラン | 1,450,000 | 82,000 |
4 | エジプト | 1,007,845 | 40,218 |
5 | インド | 1,000,000 | 44,500 |
6 | アメリカ合衆国 | 925,060 | 31,730 |
7 | スペイン | 870,900 | 27,500 |
8 | モロッコ | 717,602 | 20,982 |
9 | ブラジル | 575,386 | 22,789 |
10 | メキシコ | 574,976 | 20,172 |
― | 世界計 | 31,925,787 | 1,339,006 |
日本の収穫量は21位で190,000t、作付面積は25位で8,550haである[6]。
日本
主要産地と品種
主要産地とその品種を記載する。
- 北海道
- 夕張市 - 夕張メロン(赤肉種)・夕張IKメロン(赤肉種)
- むかわ町穂別 - 穂別メロン(赤肉種)・I.Kメロン(赤肉種)
- 安平町 - アサヒメロン(赤肉種)
- 三笠市 - 三笠メロン(赤肉・青肉種)
- 富良野市近郊 - ふらのメロン(赤肉種)
- 共和町雷電 - らいでんメロン(赤肉種)
- 北竜町 - 北竜メロン(赤肉・青肉種)
- 雨竜町 - 暑寒メロン(青肉種)
- 浦臼町 - 浦臼メルティーメロン(北海道において最初に栽培されたといってもいい歴史あるメロン産地 - JAピンネによる)
- 月形町 - 月形キングメルティー(青肉種)
- 石狩市 - 厚田メロン(赤肉種)
- 札幌市手稲区山口 - サッポロメロン(赤肉種)
- 訓子府町 - 訓子府メロン(赤肉・青肉種)
- 北見市 - 北見メロン(赤肉種)
- ニセコ町,蘭越町 - ようていメロン(赤肉種(ルピアレッド・羊蹄レッド・レッド113))・青肉種(ニセコグリーン))
- 青森県
- 秋田県
- 山形県
- 茨城県 - アンデスメロン(青肉種)・オトメメロン(青肉種)・クインシーメロン(赤肉種)・プリンスメロン(青肉種)
- 鉾田市 - メロンの出荷量が日本一。
- 坂東市- 妃(アールスフェボリット赤肉種)茨城県立坂東総合高等学校が、毎年栽培(知る人ぞ知るメロン)。
- 千葉県 - 千葉アクアメロン
- 静岡県 - 温室メロンの生産量が日本一。静岡クラウンメロン(青肉種)
- 愛知県
- 渥美半島 - 渥美メロン・イエローキングメロン(ノーネットメロン)
- カクメロ - 県内の高等学校が開発した角形メロン。一般販売もされる。
- 三重県
- 滋賀県
- 鳥取県
- 島根県
- 福岡県
- 長崎県
- 熊本県
収穫量上位10都道府県
収穫量順位 | 都道府県 | 収穫量(t) | 作付面積(ha) |
---|---|---|---|
1 | 茨城県 | 38,900 | 1,390 |
2 | 北海道 | 28,100 | 1,240 |
3 | 熊本県 | 24,800 | 1,050 |
4 | 山形県 | 12,500 | 603 |
5 | 青森県 | 10,900 | 585 |
6 | 静岡県 | 9,260 | 325 |
7 | 愛知県 | 8,690 | 410 |
8 | 千葉県 | 8,060 | 358 |
9 | 高知県 | 3,240 | 130 |
10 | 秋田県 | 3,130 | 198 |
― | 全国計 | 168,700 | 7,560 |
輸入・輸出
- 日本向けメロンの主な輸出国
- アメリカ・メキシコ - ハネデューメロン
- 日本産メロンの主な輸入国
- オマーン・中国-香港- マスクメロン(アールスメロン)
利用
果物および野菜として生食されることが多いが、アカゲウリなどは煮物にすることもある。マスクメロンは日本では贈答品として用いられることも多いが、国によっては庶民的な果物である。加工品用・飼料用での利用もある。
加工品
食品
- メロン(シャーベット・アイスクリーム・ソフトクリーム)
- メロンゼリー
- 生ハムメロン - メロンとプロシュットを組み合わせた、イタリア料理の代表的な前菜の1つ。スペイン料理ではハモン・セラーノと合わせる。
- ドライメロン - メロンの菓子。砂糖で漬け、乾燥させたもの。
- メロン漬け - 漬物。未熟で甘みがない果実を皮ごと塩漬けしたもの。マクワウリやシロウリも漬物にされる。
- メロンパン - メロンのような形状の菓子パン。これもメロンが使用されていない場合が多いが、メロンクリームをくるんだ商品も存在する。
飲料
- メロン・リキュール - メロンを原材料としたリキュール。日本産で世界初のメロン・リキュールであるMidoriが有名。
- メロンシロップ - かき氷用の緑色に着色されたシュガーシロップ。メロンは使用されていない場合が多い。
- メロンソーダ - 緑色に着色された炭酸水。シロップ同様、メロンは使用されていない場合が多い。
- メロンミルク - メロンと牛乳を用いた乳飲料。苦味を抑えるためメロンは加熱したものを用いる。
成分・効能
メロン(実)の主成分はショ糖、ブドウ糖、果糖などの糖類とカリウム。 果肉には、食物繊維のペクチンが多い。赤肉メロンの場合カロテンが多い。 また、スイカと同様に水分が多いウリ科の植物であり、体内の塩分(ナトリウム)を排泄させるカリウムが多く含まれ、腎臓病や高血圧の予防・体内温度を下げる成分も含まれており、夏バテによる食欲不振の予防も、効果的である。また、解毒作用もあり、リューマチや神経痛の痛みやしびれの予防にも効果的である。
ククミシンというタンパク質分解酵素を多く含むため、多量に食べると口腔内がピリピリと痛みを生じ、まれに出血する場合もある。収穫後、熟成するにつれ、分解酵素が増加する。熟成期を極度に過ぎたものには、甘さよりも苦味が生じる。
脚注
- ↑ キュウリやメロン、インドが原産地₋ニュース【ビジネスプレミアム】 2013年3月15日₋[1]
- ↑ マグロンヌ・トゥーサン=サマ 『世界食物百科』玉村豊男 翻訳監修、原書房、1998年、ISBN 4087603172、pp.684-687
- ↑ 3.0 3.1 農林水産省のQ&Aページ
- ↑ 五訂増補日本食品標準成分表 果実類
- ↑ 小豆島産の摘果メロンの粕漬‐香川県小豆農業改良普及センター
- ↑ 6.0 6.1 “FAOSTAT>DOWNLOAD DATA” (英語). FAOSTAT. FAO. . 2014閲覧.
- ↑ “作物統計調査>作況調査(野菜) >確報>平成25年産野菜生産出荷統計”. e-Stat. 総務省統計局. . 2015閲覧.
関連項目
外部リンク