若隆景渥
若隆景 渥(わかたかかげ あつし、1994年12月6日 - )は、福島県福島市出身で荒汐部屋所属の現役大相撲力士。本名は大波 渥(おおなみ あつし)。身長181cm、体重116kg、血液型はO型[1]。最高位は西十両7枚目(2018年9月場所)。得意手は右四つ、寄り。
来歴
祖父は時津風部屋に所属した元小結・若葉山で、父は立田川部屋に所属した元幕下・若信夫という力士一家に3人兄弟の末弟として生まれた。自身と同じ荒汐部屋に所属する若隆元と若元春は実兄である。福島市立吉井田小学校1年生から福島県の県北相撲協会で相撲を始めた[2]。小学生時代は、柔道や陸上競技にも打ち込んでいた[2]。福島市立信夫中学校を卒業するまでは全国大会に出ても1回戦敗退することが多く、全国で実績を残すことは無かった[3]。2010年には2人の兄も進んだ学法福島高校に進学した。2011年3月11日の東日本大震災では、高校の土俵が壊れたため、1ヶ月間、長兄の渡が所属している荒汐部屋で避難生活を送った[4]。高校時代は3年次に全日本ジュニア体重別相撲選手権大会100kg未満級優勝、世界ジュニア相撲選手権大会団体優勝・軽量級2位などの実績を残した[3]。
高校卒業のタイミングで大相撲入りした2人の兄とは違い、自身は大学進学を選んだ。東洋大学法学部企業法学科に進むと、4年次には相撲部副主将となり、2週間前に右足首の靭帯を断裂して手術を受けたばかりの状態で出場した[3]全国学生相撲選手権大会は団体で優勝、個人で準優勝の成績を残し[5]、大相撲の三段目最下位格付出資格を獲得した。元々はプロに行ける体ではないと考えていたこともあり、プロ入りか実業団入りかで悩んでいたが、三段目付出資格を獲得したことで大相撲入りを決意した[6]。学生時代の戦績は2014年、東日本学生相撲個人体重別選手権大会115kg未満級第3位。2015年、東日本学生相撲個人体重別選手権大会115kg未満級 優勝。2016年、全日本大学選抜相撲宇和島大会団体優勝。全国大学選抜相撲宇佐大会団体優勝。全日本大学選抜相撲十和田大会個人第3位。全国学生相撲選手権大会団体優勝、個人準優勝である。
卒業後の進路は大相撲入りを選び、2人の兄が所属する荒汐部屋に入門した。2017年3月場所で初土俵を踏み、四股名は若隆景となった。これは戦国武将の小早川隆景に肖った四股名である。隆景は毛利元就の三男であるが、隆景同様に三子教訓状で知られる、元就の長男の毛利隆元は長兄の若隆元の四股名の由来となり、同じく二男の吉川元春は次兄の若元春の四股名の由来となっており、師匠荒汐が決めた3兄弟セットの四股名となった。なお、3人の四股名に共通して入った「若」の字は、祖父の若葉山と父の若信夫から来ている。[7]三段目付出となった初土俵の場所は4連勝で勝ち越したが、5番目で同じく4連勝とした東洋大学相撲部時代の同期であり主将を務めていた村田と対戦しプロ初黒星となった[8]。この場所は最終的に5勝2敗で終えた。初めて番付表に名前が載り、西三段目63枚目となった5月場所は、村田との優勝決定戦を制して、7戦全勝で三段目優勝を飾った[9]。翌7月場所で幕下に昇進した後は2場所連続で勝ち越して、同年11月場所で東幕下12枚目まで上がったが、この場所は2連勝の後で4連敗して入門後初めての負け越しとなった。千秋楽は勝って、最終成績は3勝4敗だった。この場所は変化やいなしに頼っていたため、荒汐からは「今のままでは、上には通用しない」と叱咤された[10]。翌2018年1月場所は東幕下17枚目に下がって迎えて、7戦全勝で幕下優勝とした[11]。この場所は前場所の反省を生かして立合いでしっかり踏み込み、相手をしたから起こす相撲を心がけ、優勝インタビューでもそれについて触れていた。また「矢後や水戸龍などの同学年の力士に負けないように頑張りたい」と飛躍を誓った[10]。この場所に際して、3代目若乃花の動画を見て立合いの研究をしたという[12]。幕下15枚目以内ではないため通常ならば十両昇進は不可能な成績だが、同場所では十両からの陥落者が多く見込まれたこともあり、一部報道では3月場所での十両昇進も取り沙汰された[13]。しかし場所後の番付編成会議の結果昇進はならなかった[14]。翌3月場所は西幕下筆頭に番付を上げて、4勝3敗と勝ち越し。場所後の番付編成会議で、5月場所での新十両昇進が決定した[15]。新十両の場所は、千秋楽に関取として初めての勝ち越しを決めて、8勝7敗だった。
エピソード
- 荒汐部屋ホームページでは、三兄弟での鼎談で団体優勝を果たした全国学生相撲選手権大会について、大会が終わってからは疲れが出たので数日はひたすら休んだという。
- 東洋大相撲部は勉強もきちんと行わせる方針であり、テスト期間は部で試験対策の勉強会を開くなど、学業ともしっかり両立したつもりである旨を本人は振り返っている[16]。
- 少なくとも入門当初の時点では、兄達を四股名に「さん」付けで呼んでおり、番付や長幼の序は守っている[16]。
- 2017年7月場所の報告で、初恋の時期を聞かれると「小3」と答えた[17]。
- 2018年3月場所後の番付編成会議で、翌5月場所での新十両昇進が決定し、3兄弟の中で一番最初に関取になることが決まった。師匠の荒汐は3兄弟に対し、一番最初に関取に上がった力士に他の2人を付け人として付けることを伝えて発破をかけていたが、この時点では若隆元(2018年3月場所の番付は西幕下22枚目)と若元春(同、東幕下12枚目)も幕下上位にあり、番付が接近しているため時間的余裕がないとして、見送られることになった[15]。
主な成績
2018年9月場所終了現在
- 通算成績:61勝33敗(10場所)
- 十両成績:25勝20敗(3場所)
- 各段優勝
- 幕下優勝:1回(2018年1月場所)
- 三段目優勝:1回(2017年5月場所)
一月場所 初場所(東京) |
三月場所 春場所(大阪) |
五月場所 夏場所(東京) |
七月場所 名古屋場所(愛知) |
九月場所 秋場所(東京) |
十一月場所 九州場所(福岡) |
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2017年 (平成29年) |
x | 三段目付出100枚目 5–2 |
西三段目63枚目 優勝 7–0 |
西幕下38枚目 6–1 |
東幕下16枚目 4–3 |
東幕下12枚目 3–4 |
2018年 (平成30年) |
東幕下17枚目 優勝 7–0 |
西幕下筆頭 4–3 |
西十両14枚目 8–7 |
東十両12枚目 9–6 |
西十両7枚目 8–7 |
x |
各欄の数字は、「勝ち-負け-休場」を示す。 優勝 引退 休場 十両 幕下 三賞:敢=敢闘賞、殊=殊勲賞、技=技能賞 その他:★=金星 番付階級:幕内 - 十両 - 幕下 - 三段目 - 序二段 - 序ノ口 幕内序列:横綱 - 大関 - 関脇 - 小結 - 前頭(「#数字」は各位内の序列) |
改名歴
- 若隆景 渥(わかたかかげ あつし)2017年3月場所 -
脚注
- ↑ ベースボール・マガジン社刊 『相撲』 2017年5月号(夏場所展望号)別冊付録 平成29年度版 最新部屋別 全相撲人写真名鑑 7頁
- ↑ 2.0 2.1 ベースボール・マガジン社刊 『相撲』 2017年4月号(春場所総決算号) 100頁
- ↑ 3.0 3.1 3.2 ベースボール・マガジン社刊 『相撲』 2017年11月号(九州場所展望号) 71頁
- ↑ “「夢は関取」大波3兄弟 三男・渥も荒汐部屋で来月初土俵 祖父・父も、力士一家3代”. 毎日新聞. (2017年2月21日) . 2018閲覧.
- ↑ “東洋大が3年ぶり優勝 全国学生相撲選手権”. 産経スポーツ. (2016年11月6日) . 2018閲覧.
- ↑ 若隆景 夢は「関取3兄弟」 時事ドットコムニュース 特集 大相撲 新星探査
- ↑ 【鼎談】大波三兄弟,三人三役そろい踏みを目指して[後編] 荒汐部屋公式サイト
- ↑ ベースボール・マガジン社刊 『相撲』 2017年4月号(春場所総決算号) 91頁
- ↑ “若隆景(福島出身)三段目優勝 小兵力士の活躍刺激に 大相撲夏場所”. 福島民報. (2017年5月29日) . 2018閲覧.
- ↑ 10.0 10.1 『大相撲中継』2018年2月17日号 p.75
- ↑ “若隆景が幕下V 7戦全勝「同級生に負けないよう」”. 日刊スポーツ. (2018年1月26日) . 2018閲覧.
- ↑ 『相撲』2018年3月号 p.50-51
- ↑ “幕下陥落候補7人で、若隆景が異例の異例の昇進も?”. 日刊スポーツ. (2018年1月29日) . 2018閲覧.
- ↑ “【大相撲】新十両に炎鵬、貴公俊 春場所番付編成会議 - 産経ニュース”. 産経新聞. (2018年1月31日) . 2018閲覧.
- ↑ 15.0 15.1 “若隆景「こんなに早く。うれしい」7場所新十両昇進”. 日刊スポーツ. (2018年3月28日) . 2018閲覧.
- ↑ 16.0 16.1 【鼎談】大波三兄弟,三人三役そろい踏みを目指して arashio.net (2018年3月14日閲覧)
- ↑ 平成29年七月場所を振り返って arashio.net (2018年3月14日閲覧)
関連項目
外部リンク
- 若隆景 渥 - 日本相撲協会
大相撲関取一覧 - 平成30年七月場所 | ||||||
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東 | 番付 | 西 | ||||
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三役 | ||||||
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大関 |
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逸ノ城 | 関脇 | 御嶽海 | ||||
玉鷲 | 小結 | 松鳳山 | ||||
平幕 | ||||||
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幕内前頭 |
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十両 | ||||||
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十枚目 |
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関取経験がある幕下以下の現役力士 | ||||||
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