翔猿正也
翔猿 正也(とびざる まさや、1992年4月24日 - )は、東京都江戸川区出身で、追手風部屋所属の現役大相撲力士。本名は岩﨑 正也(いわさき まさや)。身長174cm、体重120kg、血液型はA型[1]。最高位は東十両10枚目(2018年9月場所)。木瀬部屋所属の英乃海は実兄[2]。
来歴
幕内・英乃海(本名:岩﨑 拓也)の実の弟であり、相撲を始めたのも、江戸川区立上一色小学校1年生だった頃に兄が通っていた地元の相撲道場(小松竜道場)へついて行ったことがきっかけであった。兄が小松竜道場から葛飾白鳥相撲教室へ移籍した際には、自身も同行して一緒に移籍した[3]。この頃は相撲以外にもサッカーや水泳、野球に親しみ、将来はプロ野球選手になることを志していた[4]。しかし、葛飾区立大道中学校へ進学すると相撲と野球の両立ができなくなったため、野球を諦めて相撲一筋となった[3]。中学校3年次に出場した全国中学校相撲選手権大会で団体優勝したことにより団体戦の楽しさに目覚め、高校は埼玉栄高校へ進学した[3]。高校の同期には北勝富士がいる。2年次には全国高等学校総合体育大会相撲競技大会の団体優勝に貢献するなどの活躍を見せたが、3年次の同大会では団体優勝をできなかった。高校生時代には将来の進路として保育士を志したこともあったが[3]、相撲の道を選んで日本大学経済学部経済学科に進学し相撲部に入った。大学の同期には大奄美(本名:坂元 元規)がおり、1年次に出場した東日本学生相撲新人選手権大会では、坂元と決勝戦で対決して敗れて準優勝となった。同じ年の東日本学生相撲個人体重別選手権大会100キロ未満級で初タイトルを獲得し、2年次には全日本相撲選手権大会で16強入りなど、実績を積み上げた[4]。3年生でレギュラーの座を掴むと東日本学生相撲選手権大会で団体優勝するなど、団体戦のタイトルも獲得したが、右足首を骨折して1年間相撲が取れなくなる[3]。4年次には相撲部の副将[5]となって団体戦レギュラーの座にも復帰したが、満足できる実績は残せなかったことで、大相撲入りを決意した[3]。
大相撲入りにあたっては、既に兄の英乃海は木瀬部屋に入門して十両まで上がっていたが、「兄と同じだと甘えが出る」[6]と敢えて兄とは別の部屋を選び[3]、大学相撲部の2年先輩である遠藤が所属する追手風部屋(幕内・大翔山)へ入門し[4]、2015年1月場所で初土俵を踏んだ[7]。この場所の前相撲は、同期生で立命館大学出身の大元と十両経験者の飛翔富士に敗れて3勝2敗だった[4]。同年3月場所で序ノ口に上がると、4場所連続の6勝1敗で11月場所には早くも幕下へ昇進した。幕下昇進後も負け越し知らずで番付を上げて、2016年11月場所では関取目前の東幕下3枚目まで上がったが、2勝1敗から4連敗を喫して自身初の負け越しに終わった。2017年4月12日の春巡業横須賀場所では安美錦に稽古づけられる場面が伝えられた[8]。同年5月場所では西幕下2枚目で6勝1敗の好成績を残し、7番相撲で敗れたため幕下優勝は逃したが、場所後の番付編成会議で7月場所での新十両昇進が決定し、昇進に合わせて「翔猿」へと改名する予定であることが発表された。これにより、兄の英乃海とともに史上18組目の兄弟関取となる[9]。十両昇進以降名乗る「翔猿」の四股名の由来は自身が申年生まれで、自らの動きを「猿みたい」とみていることから[10]。十両昇進時に、軽量でも一度当たった上で、スピードを生かした引きや、いなしで相手を崩す相撲を目指していることが伝えられた[10]。翔猿は「他の力士がまねできない速い相撲を取りたい」と意気込んだ[10]。日大の先輩である石浦との小兵対決を夢見ていることも同時に明かしている[11]。しかし、新十両の場所は西十両14枚目で6勝9敗と負け越してしまい、壁に跳ね返された。なお、この場所初日の十両土俵入りでは所作を終え土俵を回り、土俵下に下りる場所を間違えてしまった[12]。9月場所は幕下に逆戻りであったが、8月6日の夏巡業長岡場所では朝稽古から豊山や朝乃山、旭大星、東龍と熱心に稽古を続けていた。小兵で持ち味の動きの良さを活かし、長身の東龍の下にもぐるなどいろいろな形を試していた[13]。9月場所は東幕下2枚目で5勝2敗の好成績を残した。普段であれば場所後の関取復帰は確実に近い成績だったが、この場所は十両から幕下に落ちる星の力士が2人しかいなかったこと、東幕下筆頭で4勝3敗の貴源治と東幕下3枚目で6勝1敗の舛の勝が地位と星取の関係上優先して昇進となったことから、場所後の昇進を阻まれる不運に見舞われた。続く11月場所は西幕下筆頭の地位で迎えた。3勝3敗で迎えた7番相撲で、この場所二度目となる十両の土俵に上がり、矢後を相手に立ち会いで蹴手繰りを仕掛けたものの不発に終わって敗れ、3勝4敗として再十両とはならなかった。
2018年は西幕下3枚目で迎えた。この場所は4勝3敗の成績だったが、十両からの陥落者が多かったため、場所後の番付編成会議で3月場所での十両復帰が決まった[14]。再十両からは2場所続けて7勝8敗と負け越したが、番付運に恵まれてこの間僅かに半枚しか番付が落ちなかった。7月場所では9勝6敗と、4場所目にして十両で初めての勝ち越しを経験した。
取り口
- 突き押し力士であるが、大抵は動いて相手を翻弄してから土俵を丸く使った末に引き技で仕留める。動くと強い一方でまともに正面に引くとそのまま土俵を割ってしまう。十両の土俵では体格差を突かれて負けることが目立ち、2017年7月場所初日の阿炎戦で突き出しにより勢い良く土俵下に落ちた際には「(負けて)飛びましたね、土俵下に」と笑いながら自虐的なジョークを言った[12]。2017年7月場所中日の明生戦で黒星を喫した際には「今日は駄目な引きでした。正面に引いてしまった」と自らの相撲を反省している[15]。
エピソード
- 埼玉栄高校相撲部には、丈夫な体に育つようにという意図からか「1年生はラーメンを食べてはいけない」という決まりがあり、翔猿も1年生の時はそれに従っていた[16]。
- 埼玉栄高校相撲部出身の力士は十両に昇進すると学校から化粧廻しを贈られるが、逆に米500㎏を相撲部に贈呈する「しきたり」もある。翔猿も恩師の山田道紀監督から「(2017年の)夏過ぎでいいからな」と頼まれた[16][17]。
主な成績
2018年9月場所終了現在
通算成績
- 通算成績:116勝78敗(23場所)
- 十両成績:36勝39敗(5場所)
場所別成績
一月場所 初場所(東京) |
三月場所 春場所(大阪) |
五月場所 夏場所(東京) |
七月場所 名古屋場所(愛知) |
九月場所 秋場所(東京) |
十一月場所 九州場所(福岡) |
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2015年 (平成27年) |
(前相撲) | 西序ノ口17枚目 6–1 |
西序二段30枚目 6–1 |
西三段目66枚目 6–1 |
西三段目11枚目 6–1 |
西幕下37枚目 5–2 |
2016年 (平成28年) |
東幕下24枚目 4–3 |
西幕下19枚目 4–3 |
西幕下13枚目 4–3 |
西幕下10枚目 4–3 |
西幕下7枚目 5–2 |
東幕下3枚目 2–5 |
2017年 (平成29年) |
東幕下10枚目 6–1 |
東幕下3枚目 4–3 |
西幕下2枚目 6–1 |
西十両14枚目 6–9 |
東幕下2枚目 5–2 |
西幕下筆頭 3–4 |
2018年 (平成30年) |
西幕下3枚目 4–3 |
東十両13枚目 7–8 |
西十両13枚目 7–8 |
西十両13枚目 9–6 |
東十両10枚目 7–8 |
x |
各欄の数字は、「勝ち-負け-休場」を示す。 優勝 引退 休場 十両 幕下 三賞:敢=敢闘賞、殊=殊勲賞、技=技能賞 その他:★=金星 番付階級:幕内 - 十両 - 幕下 - 三段目 - 序二段 - 序ノ口 幕内序列:横綱 - 大関 - 関脇 - 小結 - 前頭(「#数字」は各位内の序列) |
改名歴
- 岩﨑 正也(いわさき まさや)2015年1月場所 - 2017年5月場所
- 翔猿 正也(とびざる まさや)2017年7月場所 -
脚注
- ↑ ベースボール・マガジン社刊 『相撲』 2016年5月号(夏場所展望号)別冊付録 平成28年度版最新部屋別 全相撲人写真名鑑 11頁
- ↑ ベースボール・マガジン社刊 『相撲』 2016年8月号(名古屋場所総決算号) 91頁
- ↑ 3.0 3.1 3.2 3.3 3.4 3.5 3.6 ベースボール・マガジン社刊 『相撲』 2016年9月号(秋場所展望号) 98頁
- ↑ 4.0 4.1 4.2 4.3 ベースボール・マガジン社刊 『相撲』 2015年2月号(初場所総決算号) 115頁
- ↑ ベースボール・マガジン社刊 『相撲』 2015年7月号(名古屋場所展望号) 81頁
- ↑ 『大相撲ジャーナル』2017年8月号 p60
- ↑ “新弟子に埼玉栄の名和ら合格 初場所検査で11人”. デイリースポーツonline. (2015年1月11日) . 2017閲覧.
- ↑ 『大相撲中継』2017年5月27日号39頁
- ↑ “岩崎改め翔猿、新十両に昇進 名古屋場所番付編成会議”. 日本経済新聞. (2017年5月31日) . 2017閲覧.
- ↑ 10.0 10.1 10.2 「まねできない速い相撲を」小兵の翔猿、十両昇進 毎日新聞2017年6月9日 11時58分(最終更新 6月9日 12時12分)
- ↑ 『大相撲ジャーナル』2017年8月号p102-103
- ↑ 12.0 12.1 新十両翔猿、黒星発進「飛びましたね、土俵下に」 日刊スポーツ 2017年7月9日16時30分
- ↑ 『大相撲中継』2017年9月16日号 p11
- ↑ “貴乃花部屋から初の双子関取誕生、貴公俊が新十両”. 日刊スポーツ. (2018年1月31日) . 2018閲覧.
- ↑ 翔猿5敗「駄目」まともに引き土俵下まで吹っ飛ぶ 日刊スポーツ 2017年7月16日16時23分
- ↑ 16.0 16.1 まだ足りない?埼玉栄高相撲部出身の力士 米500キロの恩返し Sponichi Annex 2017年6月22日 16:30
- ↑ 『大相撲中継』2017年8月12日号 p108
関連項目
外部リンク
- 翔猿 正也 - 日本相撲協会
大相撲関取一覧 - 平成30年七月場所 | ||||||
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横綱 |
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三役 | ||||||
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大関 |
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逸ノ城 | 関脇 | 御嶽海 | ||||
玉鷲 | 小結 | 松鳳山 | ||||
平幕 | ||||||
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幕内前頭 |
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十両 | ||||||
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十枚目 |
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関取経験がある幕下以下の現役力士 | ||||||
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