伊藤忠商事
伊藤忠商事株式会社(いとうちゅうしょうじ、ITOCHU Corporation)は、みずほグループ(旧第一勧銀グループ)の大手総合商社。日本屈指の巨大総合商社であると共にアジア有数のコングロマリット(異業種複合企業体)でもある。
会社概要
戦前は伊藤忠財閥の中核企業であった。伊藤忠財閥は、多数の紡織会社を傘下に持つ繊維財閥であったため、繊維部門の売り上げは群を抜いており、かつては世界最大の繊維商社であった。傘下に有力企業を多数抱えており、現在は祖業である繊維の他に、食料や生活資材、情報通信、保険、金融といった非資源分野全般を強みとしている。米国法人は商社中で最大手であり、中国市場では日本企業最大のネットワークを有する。東証第一部上場。
銀行との融資・資本関係としては太平洋戦争以前から旧住友銀行と親密であったが、戦後住友系列より徐々に離脱し、旧第一銀行に接近。第一勧銀グループからの流れを受けて、現在はみずほグループに属している。
単体従業員数が大手総合商社(伊藤忠商事、三菱商事、三井物産、住友商事、丸紅)で最少ながら、2015年(平成27年)度(2016年3月期決算)には最終利益で三菱商事を抜いて総合商社業界でトップになったが、三菱商事と三井物産が創業以来初の最終赤字となったことも大きく、社長の岡藤正広は「不戦勝で土俵にあがったようなもの」と述べている[1]。
2016年7月、米の空売りファンドのグラウカス・リサーチ・グループから不正会計の指摘を受けたため、自社から反論のリリースを出した[2]。
また、2018年4月、岡藤が会長兼最高経営責任者(CEO)に就任。大手商社で会長がCEOを務める体制は異例であり、岡藤の注力した中国最大の国有複合企業「中国中信集団」(CITIC)との提携が、効果の面で課題が残っているためで、当面は「二頭体制」としている[3]
近年、社員の健康増進を図る健康経営を推進している[4]。朝型勤務の奨励[5]、がんの早期発見・がん先端医療の無償化等の社員のがん治療との両立支援[6][7]などが報じられている。
歴史
1858年、初代伊藤忠兵衛が麻布(あさぬの)の「持下り」行商を開始したことをもって創業としている。同業の丸紅とは同じ起源となっている。その後、いったん丸紅と分割されたものの、戦時中に再度合併(大建産業)、戦後の財閥解体措置により再度両社は分割され、1949年に現在と直接つながる伊藤忠商事株式会社が設立された。
沿革
- 1858年(安政年間)5月 - 伊藤忠兵衛によって麻布類の卸売業として滋賀県で創業する。
- 1872年(明治時代)1月 - 当時の大阪東大組(のちの大阪市東区。現在の同市中央区)本町2丁目に紅忠(べんちゅう)を創立する。事実上の滋賀県から大阪府への本社移転となる。
- 1884年(明治17年) - 紅忠を紅伊藤本店とする。
- 1893年 - 伊藤糸店を開く。
- 1914年(大正3年)12月 - 伊藤忠合名会社に改組する。
- 1918年12月 - 伊藤忠合名会社を株式会社伊藤忠商店(丸紅の前身)と伊藤忠商事株式会社に分割する。
- 1941年(昭和16年)9月 - 丸紅商店、伊藤忠商事、岸本商店の3社が合併して、三興株式会社となる。
- 1944年9月 - 三興、大同貿易、呉羽紡績の3社が合併して、大建産業株式会社となる。
- 1949年12月1日 - 大建産業が過度経済力集中排除法の適用を受けた。
- 1961年12月 - 森岡興業株式会社を合併する。
- 1964年4月 - 青木商事株式会社を合併する。
- 1977年10月 - 安宅産業株式会社を合併、従来の繊維中心から安宅より引き継いだ鉄鋼部門を併呑することにより、名実共に総合商社への飛躍の端緒となる(安宅産業破綻の項も参照)。
- 2005年(平成17年) - オランダとオーストリアに本社を有するスポーツブランド・HEADの日本市場におけるアパレル及びアクセサリー関連商品のライセンス展開を開始[8]。
- 2008年2月 - 伊藤忠エネクス、大阪ガス、ジャパンエナジー、日商LPガスとの5社でLPG事業再編統合本格的検討開始。
- 2011年5月6日 - 中期経営計画 「Brand-new Deal 2012」を開始。
- 2011年8月15日 - 大阪本社をJR大阪駅ノースゲートビルディングへ移転[9]。
- 2011年6月16日 - 米国Drummond社コロンビア炭鉱へ出資。
- 2012年12月25日 - 世界最大の青果物メジャー・米国Dole社のアジア・青果物事業およびグローバル・加工食品事業の買収。
- 2014年5月29日 - エドウイングループへ出資。
- 2014年7月24日 - タイ最大財閥Charoen Pokphand(チャロン・ポカパン)グループと戦略的業務提携。
- 2015年1月20日 - チャロン・ポカパングループと共に中国最大の国有企業グループである中国中信集団の中核企業、中信集団との戦略的業務・資本提携。
- 2017年10月20日 - セルビア初の大型PPP(官民連携)廃棄物処理発電事業をベオグラード市政府と契約調印。
ビジネス戦略
- 収益に占める資源以外(非資源)の割合は2013年83%(米国会計基準)、2014年108%(国際会計基準)と非常に大きく、なかでもその半分以上を占める生活消費関連分野は業界最大の収益規模を誇り、2014年には2254億円に達した[10]。
- 主な生活消費関連ブランドは以下の通り。
- ドール・フード・カンパニー
- クレヴィア
- エキサイト
- ファミリーマート...1998年、経営が厳しい時期ではあったものの約1,350億円をかけ、商社としてはじめてコンビニエンスストアの経営を行う。
- プリマハム
- エビアン
- ユーグレナ&ヨーグルト
- サンダルフォー
- サムソナイト
- エドウイン
- アディダス
- レスポートサック
- コンバース
- ポールスミス
- アウトドアプロダクツ
- ジョルジオ・アルマーニ
- ミラ・ショーン
- ランバン
- イヴ・サンローラン...1970年代、時代に先駆けてブランドの紳士服地を輸入したことからはじまったブランドビジネスは、「ブランド」という付加価値をつけて製造販売を行うライセンスビジネスを経て、2000年代には、ブランドへの直接投資へと進化。
- アンテプリマ
歴代社長
- 初代 伊藤忠兵衛(初代)
- 二代 伊藤忠兵衛(二代目)
- 三代 伊藤竹之助
- 四代 小菅宇一郎(1949年 - 1960年)
- 五代 越後正一(1960年 - 1974年)
- 六代 戸崎誠喜(1974年 - 1983年)
- 七代 米倉功(1983年 - 1990年)
- 八代 室伏稔(1990年 - 1998年)
- 九代 丹羽宇一郎(1998年 - 2004年)
- 十代 小林栄三(2004年 - 2010年)
- 十一代 岡藤正広(2010年 - 2018年)
- 十二代 鈴木善久(2018年4月 - )
連結子会社
- アイ・ティー・エス・ファーム株式会社(東京都江東区)
- I&Tリスクソリューションズ株式会社(東京都港区)
- 株式会社アイメックス(東京都港区)
- アシュリオン・ジャパン株式会社(東京都港区)
- エイツーヘルスケア株式会社(東京都文京区)
- 伊豆大仁開発株式会社(静岡県伊豆の国市)
- イトーピアエステリオ株式会社(大阪市中央区)
- イトーピアゴルフ滋賀株式会社(滋賀県甲賀市)
- イトーピアビジネスネット株式会社(大阪市中央区)
- イトーピアホーム株式会社(東京都千代田区)
- 伊藤忠アーバンコミュニティ株式会社(東京都中央区)
- 伊藤忠アビエーション株式会社(東京都港区)
- 伊藤忠インタラクティブ株式会社(東京都港区)
- 伊藤忠ウインドウズ株式会社(東京都港区)
- 伊藤忠エネクス株式会社(東京都目黒区:東京証券取引所市場第一部)
- 伊藤忠エネルギー販売株式会社(東京都港区)
- 伊藤忠エレクトロニクス株式会社(東京都港区)
- 伊藤忠オートモービル株式会社(東京都港区)
- 伊藤忠オリコ保険サービス株式会社(東京都港区)
- 伊藤忠紙パルプ株式会社(東京都中央区)
- 伊藤忠キャピタル証券株式会社(東京都千代田区)
- 伊藤忠ケーブルシステム株式会社(東京都品川区)
- 伊藤忠ケミカルフロンティア株式会社(東京都港区)
- 伊藤忠建機株式会社(東京都中央区)
- 伊藤忠建材株式会社(東京都中央区)
- 伊藤忠神戸北町株式会社(大阪市中央区)
- 伊藤忠産機株式会社(東京都千代田区)
- 伊藤忠食品株式会社(大阪市中央区:東京証券取引所市場第一部)
- 伊藤忠飼料株式会社(東京都江東区)
- 伊藤忠製糖株式会社(愛知県碧南市)
- 伊藤忠石油開発株式会社(東京都港区)
- 伊藤忠セラテック株式会社(愛知県瀬戸市)
- 伊藤忠システック株式会社(大阪市中央区)
- 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(東京都千代田区:東京証券取引所市場第一部)
- 伊藤忠テクノロジーベンチャーズ株式会社(東京都港区)
- 伊藤忠都市開発株式会社(東京都港区)
- 伊藤忠ハウジング株式会社(東京都港区)
- 伊藤忠ビルディング株式会社(東京都中央区)
- 伊藤忠ファイナンス株式会社(東京都港区)
- 伊藤忠ファッションシステム株式会社(東京都渋谷区)
- 伊藤忠プラスチックス株式会社(東京都渋谷区)
- 伊藤忠プランテック株式会社(東京都港区)
- 伊藤忠フレッシュ株式会社(東京都港区)
- 伊藤忠ペトロリアム株式会社(東京都港区)
- 伊藤忠ホームファッション株式会社(東京都中央区)
- 伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社(東京都中央区)
- 伊藤忠マシンテクノス株式会社(東京都中央区)
- 伊藤忠メイビス株式会社(東京都新宿区)
- 伊藤忠メタルズ株式会社(東京都港区)
- 伊藤忠モードパル株式会社(東京都千代田区)
- 伊藤忠林業株式会社(東京都港区)
- 伊藤忠ロジスティクス株式会社(東京都港区)
- 内田食品産業株式会社(福岡県太宰府市)
- 株式会社オン・デマンド・ティービー(東京都渋谷区)
- 株式会社ケーアイ・フレッシュアクセス(東京都練馬区、株式保有率:住友商事50.00%・伊藤忠商事33.50%)
- ケミカルロジテック株式会社(東京都港区)
- コネクシオ株式会社(東京都新宿区:東京証券取引所市場第一部)
- サントピアマリーナ株式会社(兵庫県洲本市)
- シーアイ・ガーメント・サービス株式会社(東京都千代田区)
- シーアイ・ショッピング・サービス株式会社(東京都港区)
- シーアイ繊維サービス株式会社(大阪市中央区)
- シーアイファブリック株式会社(大阪市中央区)
- 株式会社株式会社ジュピターテレコム(東京都千代田区)
- 志布志サイロ株式会社(鹿児島県志布志市)
- ターナージャパン株式会社(東京都中央区)
- 株式会社ジャムコ(東京都三鷹市:東京証券取引所市場第二部)
- 株式会社ジョイックスコーポレーション(大阪市中央区)
- 株式会社新晃(千葉県船橋市)
- 株式会社スーパーレックス(神奈川県相模原市)
- スキャバル ジャパン株式会社(大阪市中央区)
- 株式会社センチュリー21・ジャパン(東京都港区:ジャスダック市場)
- 大山ゴルフ株式会社(鳥取県西伯郡伯耆町)
- ダイライト株式会社(東京都中央区)
- タキロンシーアイ株式会社(大阪市中央区:東京証券取引所市場第一部)
- 但馬フーズ株式会社(兵庫県豊岡市)
- 株式会社地球の歩き方T&E(東京都新宿区)
- 中央設備エンジニアリング株式会社(名古屋市西区)
- 株式会社トミーヒルフィガージャパン(東京都渋谷区)
- 株式会社ドルチェ(東京都文京区)
- 内外航空サービス株式会社(東京都港区)
- 西室見開発株式会社(福岡市西区)
- 株式会社日本アクセス(東京都品川区)
- 日本エアロスペース株式会社(東京都港区)
- 株式会社日本エコシステム(東京都新宿区)
- 日本シー・ビー・ケミカル株式会社(東京都千代田区)
- 日本テレマティーク株式会社(東京都渋谷区)
- 日本ニュートリション株式会社(東京都港区、茨城県神栖市、鹿児島県志布志市)
- ハンティングワールド ジャパン株式会社(東京都港区)
- 株式会社ピーピージー・シーアイ(東京都港区)
- ファミリーコーポレーション株式会社(東京都文京区)
- 株式会社ファミリーマート(東京都豊島区:東京証券取引所市場第一部)
- VCJコーポレーション株式会社(東京都中央区)
- 株式会社ベルシステム24ホールディングス(東京都中央区:東京証券取引所市場第一部)
- ポケットカード株式会社(東京都港区)
- 株式会社マガシーク(東京都千代田区)
- 株式会社松阪ファーム(三重県多気郡多気町)
- 株式会社ヤナセ(東京都港区)
- 株式会社ユニコ(東京都中央区)
- ユニバーサルフード株式会社(東京都港区)
- 株式会社リオンドール(大阪市西区)
- リチャード・ジノリ ジャパン株式会社(東京都港区)
- 株式会社ロイネ(大阪府箕面市)
出資会社
- 綾羽株式会社(大阪市中央区)
- イー・ギャランティ株式会社(東京都渋谷区:東京証券取引所市場第一部)
- いすゞ自動車販売株式会社(東京都品川区)
- エキサイト株式会社(東京都渋谷区:ジャスダック市場)
- 株式会社オリエントコーポレーション(東京都千代田区:東京証券取引所市場第一部)
- キャプラン株式会社(東京都港区)
- 久米島製糖株式会社(沖縄県那覇市)
- サンコール株式会社(京都市右京区:大阪証券取引所市場第一部)
- ジャパンフーズ株式会社(千葉県長生郡長柄町:東京証券取引所市場第一部)
- 株式会社スター・チャンネル(東京都千代田区)
- 株式会社スペースシャワーネットワーク(東京都港区:ジャスダック市場)
- 東京センチュリーリース株式会社(東京都千代田区:東京証券取引所市場第一部)
- 大建工業株式会社(富山県南砺市:東京証券取引所市場第一部)
- 株式会社デサント(大阪市天王寺区:東京証券取引所市場第一部)
- 不二製油グループ本社株式会社(大阪府泉佐野市:東京証券取引所市場第一部)
- プリマハム株式会社(東京都品川区:東京証券取引所市場第一部)
- ほけんの窓口グループ株式会社(東京都渋谷区)
- 株式会社マイスターエンジニアリング(千葉市美浜区:東京証券取引所市場第二部)
主なテレビ出演
毎週土曜日の夜9:54〜10:00、TBSで「きょうの、あきない」を放送している[11]。
出典
- ↑ 産経新聞朝刊2016年5月11日「3月期決算 伊藤忠 初の首位 大手商社7社に明暗 三菱商事・三井物産 初の最終赤字」
- ↑ http://mw.nikkei.com/sp/#!/article/DGXLASFL27HAQ_X20C16A7000000/
- ↑ 産経新聞朝刊2018年1月19日「伊藤忠社長に鈴木氏 二頭体制 岡藤氏が会長CEO」
- ↑ 伊藤忠が乗り出す「全員健康経営」とは何か 東洋経済オンライン 2016年6月15日
- ↑ 早朝勤務なぜ広がる 残業減のほか思わぬ経済効果も 日本経済新聞 2015年3月25日
- ↑ 伊藤忠、がんセンターと提携 社員の治療を支援へ 朝日新聞 2017年8月24日
- ↑ がん患者の治療と仕事の両立への優良な取組を行う企業表彰 東京都福祉保健局 2018年2月26日
- ↑ 『ヘッド(HEAD)』ブランド 新庄剛志氏とのイメージキャラクター契約についてニュースリリース | 伊藤忠商事株式会社、2018年7月10日閲覧。
- ↑ 大阪本社移転に関するお知らせ (PDF)
- ↑ 伊藤忠商事 公式ページ 非資源から分かる伊藤忠
- ↑ きょうの、あきない | TBSテレビ
参考文献
- 早川隆 『日本の上流社会と閨閥(伊藤忠家 近江行商人から巨大商社へ)』 角川書店 1983年 107-110頁
関連項目
- ダグラス・グラマン事件
- 伊藤忠記念財団
- 伊藤忠オート
- 吉野家#BSEによる米国産牛肉輸入停止の影響(伊藤忠商事が輸入にかかわった牛肉に危険部位が入っていたことが問題になった。)
- 瀬島龍三
- モリゾーとキッコロ(伊藤忠商事が愛知万博のマスコットのライセンス等を担当した[1]。)
- OC.RFC - 伊藤忠商事とオリコを母体とするラグビー部。現在関東社会人リーグ1部に所属。
- 長浜博行...伊藤忠商事出身で元環境大臣。現在は国民民主党所属の参議院議員。
- 羽田雄一郎...伊藤忠記念財団出身で元国土交通大臣。現在は国民民主党所属の参議院議員。
脚注