スワンナプーム国際空港
スワンナプーム国際空港(スワンナプームこくさいくうこう、テンプレート:Lang-th、英語: Suvarnabhumi International Airport)は、タイのバンコク中心部から32km東方のサムットプラーカーン県バーンプリー郡にある、2006年9月28日に全面開港した国際空港である。新バンコク国際空港(英語: New Bangkok International Airport, NBIA)とも呼ばれている。スワンナプームとは、サンスクリット語で「黄金の土地」を意味する[1][2]。
Contents
背景
第二次世界大戦前後の民間航空の発達期を通じて、バンコクは地理的に他の東南アジア各国に乗り入れやすい上、ヨーロッパとオーストラリアを結ぶ「カンガルールート」の中継地点にあり、さらにタイが植民地下に置かれたこともない上、第二次世界大戦前後も大規模な内戦や内乱がなく政治的に安定していたため、ドンムアン空港がシンガポールのシンガポール・チャンギ国際空港や香港の啓徳空港と並び、東南アジアのハブ空港として発達した。
しかし1960年代以降の航空機の大型化や、タイ国内並びに東南アジア圏内における航空需要の増加に伴い、ドンムアン空港が手狭になったため新空港の建設計画が立案された。
1973年(タイ仏暦2516年)、タノーム政権時に用地買収が完了した。しかし同年に発生した10月14日政変によりタノーム首相が辞任し、計画が凍結された。その後何度かこの計画が現れては消えたが、1996年(タイ仏暦2539年)に再び計画が現実味を増しバンコク新空港株式会社が設置され、計画が日の目を見ることになり基礎建築が開始された。
しかし、翌年アジア通貨危機に見まわれまたもやお蔵入りになりそうになった。しかしその後、建設費用取得のための円の借款交渉で多少の問題が起きたものの、空港会社設立から6年後にようやくターミナルの建設が開始された。
開港
本来は2005年9月に開港予定であったが、空港の計画変更、システムチェックなどにより工期が延びた。2006年7月29日に、国内航空会社による航空機を使ったテストが実施され、9月15日より一部の航空会社が就航した。9月19日に軍事クーデターが起きたが、予定通りに9月28日午前3時、スワンナプーム空港が正規開港した。
正規開業後、最初に到着した旅客便は、ウクライナのキエフからのアエロスヴィート航空であった。また、最初の出発便もキエフ行きの便であった。
開港直後の問題点
空港ターミナルビルはドイツ人建築家のヘルムート・ヤーンが設計した斬新なデザインである。新規オープンの大規模空港に多く見られるように、開業直後にはさまざまなトラブルが発生したが、現在は解決している。
- 機内預け荷物がターンテーブルに出てくるのに時間がかかる(最大6時間待ち)。
- 乗り継ぎ客の荷物の積み替えが間に合わず、ロストバゲージになる。
- チェックインに時間がかかる(コンピュータシステムのダウン)。
その後も、下記のようなトラブルが続いていたが、大分改善が進められている。
- 案内掲示板が目立ちにくく、トイレ、椅子、非常口が少ない。
- 待ち合わせの場所がない(3階に待ち合わせ場所がある)。
- 出入国審査、セキュリティチェックに時間がかかる(ゲート数及び人数、経験不足)。
- 到着口周辺が狭いため、スムーズな通行が困難。
- 入口から搭乗ゲートまでの距離が遠く、動く歩道が設置されている部分を除けば、一部に徒歩での移動を強いられる。
- 空港連絡鉄道や都市高速道路がなく、渋滞に巻き込まれると時間が読めず、搭乗手続きに間に合わなかった。
滑走路、ターミナルビルの損傷
またスワンナプーム空港では、開港直後から滑走・誘導路上に亀裂・損傷が多数発見されていた。開港半月後の2006年10月半ばには、東側滑走路 (01R/19L) 端部に亀裂が発生した。その後も亀裂発見の報告は増え続け、確認されているものだけでも100箇所以上に上っている。また、ターミナルビルにおいても、ボーディングブリッジが破損するなどの被害が見られた。
このままでは航空機の離着陸に危険を及ぼす恐れもあるため、新空港を管理・運営するタイ空港公社 (AOT) では、滑走路を数時間閉鎖して補修に当たっている。この影響を受け、一部フライトが上空での待機や代替空港への着陸を余儀なくされるなど、空港機能に一部支障が出た。
破損の原因としては、新空港が不等沈下が起こりやすい沼沢地を埋め立てて建設されたことや、整地の際に粗悪な砂を利用した施工不良の可能性が指摘されている。なお、西側滑走路は別の業者が受注したためか、ひび割れは起こっていない[3]。
ドンムアン空港の利用再開
上記のように同空港は初期の施工面で欠陥があることや、都内までの距離がドンムアン空港に比べ遠いこともあり、国内の一部の航空会社からバンコク都内に近いドンムアン空港を再使用するよう求められていた。タイの航空当局ではこれらの要請を受け、国内線に限りドンムアン空港に再移転することを認めた。2007年3月25日より、タイ国際航空(一部路線は残留・2009年3月に全路線がスワンナプームへ再び戻る)と、格安航空会社のノックエアとワン・トゥー・ゴー航空が移転した。2012年10月1日より、タイ・エアアジア、エアアジア、インドネシア・エアアジアが移転した。
反政府勢力による空港封鎖
2008年11月、ソムチャーイ・ウォンサワット政権に反対する民主市民連合(PAD)による反政府運動によって、スワンナプーム国際空港が封鎖され、その影響で世界各国の航空会社による国際線航空機が発着出来ない状況となった。そのため、タイ国軍基地を兼用しているウタパオ国際空港を代替の国際空港として使用したが、ソムチャーイ政権の崩壊で反政府団体が撤収し、9日後に再開した。
この空港をハブ空港としているタイ国際航空は、民主市民連合が9日間にわたってバンコクの2つの空港を占拠し続けたことで、欠航や予約のキャンセルなどで約520億円の損害があったとし、民主市民連合に損害賠償を請求した。
機能
空港は2本の滑走路を持ち、最大で1時間に76便の飛行機を離陸させることが可能で、年間に最大で4,500万人の輸送が可能である。計画では4本の滑走路を建設することになっており、そうなれば理論上、年間1億人の輸送が可能となる。
このうち3本目の滑走路を、既存空港の西側へ建設することが2013年9月19日に決まり[4]、2年以内での完成を目標としている。3本目の滑走路の長さは、4,000メートルで整備される。
格安航空会社専用の空港ターミナルビルが建設される計画があるが、乗入れている格安航空会社は「ドンムアン空港の使用」を当局に要請しており、利用が認められることとなった。
敷地面積は、成田国際空港の約3倍で、世界最大級の国際空港である。
2018年6月、第2ターミナルの建設計画が決まり、内閣の承認が得られれば2019年に着工、2021年に開業する見込みである[5]。
旅客ターミナル
ドイツ人建築家のヘルムート・ヤーンが設計した。
- 7階:展望ロビー(閉鎖中)
- 6階:レストラン
- 5階:セキュリティ・チェック、航空会社オフィス
- 4階:チェックイン・カウンター、出国審査、出発ロビー、コンビニ、売店
- 3階:航空会社ラウンジ、待ち合わせ場所、飲食店、喫茶店などの店舗
- 2階:入国審査、バゲージクレーム、税関、到着ロビー
- 1階:バス・タクシー乗り場、フードコート
- 地下:エアポート・レール・リンク 鉄道駅
コンコース
- コンコースA・B (タイ国内線)
- コンコースC・D (タイ国際航空、スターアライアンス加盟各社)
- コンコースE・F・G (スターアライアンス加盟各社以外の航空会社、タイ国際航空)
その他
- トランジット・ホテル(コンコースG)
- 銀行、両替所
- 免税店
- レストラン
- VAT還付手続き事務(国際線出発ロビーの制限区域内)
就航航空会社と就航都市
国際線
国内線
航空会社 | 就航地 |
---|---|
タイ国際航空 | |
タイ・スマイル |
東北部: コーンケン空港(コーンケン県)、ウボンラーチャターニー空港(ウボンラーチャターニー県)、ウドーンターニー国際空港(ウドーンターニー県) 南部: ハートヤイ国際空港(ソンクラー県)、スラートターニー空港(スラートターニー県) |
バンコク・エアウェイズ |
北部: チェンマイ国際空港(チエンマイ県)、チェンライ国際空港(チエンラーイ県)、ラムパーン空港(ラムパーン県)、スコータイ空港(スコータイ県) 東北部: ウドーンターニー国際空港(ウドーンターニー県) 中部: トラート空港(トラート県)、ウタパオ国際空港(ラヨーン県、パッタヤー近郊) 南部: クラビー空港(クラビー県)、サムイ空港(スラートターニー県、サムイ島)、プーケット国際空港(プーケット県) |
タイ・ベトジェットエア | プーケット国際空港(プーケット県)、チェンマイ国際空港(チエンマイ県) |
貨物便
就航都市一覧(国際線)
- 東アジア
- 北京/首都・成都・重慶・長沙・上海/浦東・広州・廈門・昆明・海口・南京・合肥・寧波・無錫・南寧・汕頭・太原・南昌・蘭州・桂林・武漢・貴陽・温州・石家荘・北海・揚州・ハルビン・銀川・洛陽・深圳・西安
- 香港
- マカオの旗マカオ
- 台北/桃園・高雄
- 東京/成田・東京/羽田・大阪/関西・名古屋/中部・福岡・札幌/新千歳・沖縄/那覇
- ソウル/仁川・釜山
- 平壌
- ウランバートル
- 東南アジア
- ハノイ・ホーチミン・ダナン
- プノンペン・シェムリアップ
- ビエンチャン・ルアンパバーン・パークセー・サワンナケート
- ヤンゴン・マンダレー・ネピドー
- クアラルンプール・ペナン・ジョホールバル
- シンガポール
- [[ファイル:テンプレート:Country flag alias PHL|border|25x20px|テンプレート:Country alias PHLの旗]]マニラ・クラーク
- ジャカルタ・デンパサール
- バンダルスリブガワン
- 南アジア
- ダッカ・チッタゴン
- カトマンズ
- デリー・ハイデラバード・コルカタ・バンガロール・ムンバイ・チェンナイ・ワーラーナシー・グワーハーティー・ガヤ・バグドグラ・アフマダーバード・ラクナウ
- カラチ・ラホール・イスラマバード
- [[ファイル:テンプレート:Country flag alias LKA|border|25x20px|テンプレート:Country alias LKAの旗]]コロンボ
- マレ
- [[ファイル:テンプレート:Country flag alias BTN|border|25x20px|テンプレート:Country alias BTNの旗]]パロ
- 中央アジア
- タシュケント
- アルマトイ
- [[ファイル:テンプレート:Country flag alias トルクメニスタン|border|25x20px|テンプレート:Country alias トルクメニスタンの旗]]アシガバート
- 西アジア・中東
- ドバイ・アブダビ
- ドーハ
- クウェート
- [[ファイル:テンプレート:Country flag alias バーレーン|border|25x20px|テンプレート:Country alias バーレーンの旗]]バーレーン
- マスカット
- アンマン
- テヘラン・マシュハド
- テルアビブ
- イスタンブール
- アフリカ
- 太平洋・オセアニア
- ヨーロッパ
- ロンドン/ヒースロー
- パリ/シャルル・ド・ゴール
- ストックホルム
- オスロ
- フランクフルト・ミュンヘン・ベルリン・デュッセルドルフ
- アムステルダム
- ヘルシンキ
- アテネ
- ウィーン
- ローマ・ミラノ
- チューリッヒ
- キエフ/ボルィースピリ
- モスクワ/シェレメーチエヴォ・モスクワ/ドモジェドヴォ・サンクトペテルブルク・エカテリンブルク・イルクーツク・ノヴォシビルスク・ハバロフスク・ウラジオストク
交通アクセス
鉄道
- 空港とバンコク都内を結ぶ空港連絡鉄道。2010年8月23日に正式開業し、6時から24時台のみ運行。
タクシー
- ターミナル2階より乗車。
- 到着階にある専用申込カウンターで申し込む。英語の他に簡単な日本語が通じる場合もある。専用申込カウンターから車寄せまでポーターが無料で荷物を運んでくれる。
- 都内まで900 - 1,900B、パッタヤーまで2,600Bの定額料金(都内ゾーンや車種により異なる。高速道路料金込み)。
- 料金は申し込みカウンターで事前に支払う。クレジットカード払い可能。
- 車種はメルセデス・ベンツEクラスやボルボS80などの高級車、もしくはティアナやカムリなどの中型セダン、7人乗りのワゴンがある。
- タイ空港公社(AOT)が運営している。
- パブリック・タクシー(登録タクシー)
- 到着の1つ下の階であるターミナル1階より24時間乗車可能。
- タクシー乗場には、乗車可能なタクシーが駐車されているレーン番号を発券する端末が複数設置されており、端末から出てきたレシートに書かれたレーンに停車しているタクシーに乗車するシステムになっている。タクシー運転手に行き先(ホテル名)を英語で告げれば、問題なく行先に連れて行ってもらえる。
- 都内まで約250B(メーター料金に50Bの空港乗り入れ追加料金、及びバンコク都内までの高速道路料金が25 - 65B別途必要)。
- メーターを使用しないドライバーもいる(法令によって認められている)ので、乗車前にメーター使用を促す「メーター・プリーズ」と言うか、メーターを使用しないというドライバーに対しては事前に料金の交渉が必要。
- 空港から乗車できる登録タクシーは、運転手が英会話やマナー講習を受けた上で、製造後5年以内のエアコン付き新車(トヨタ・カローラや日産・サニーなどの小型セダン)であるなどの条件を満たすことで、空港運営会社からライセンスが与えられたもののみとなっている。なお、登録タクシー以外のメーター・タクシーは空港から客を乗せることが禁止されている。
バス
- ドンムアン空港発の航空券を所有している者に限り無料
- 公共バス(バンコク近郊方面)
- S1 : 空港ターミナル - カオサン通り、サナームルアン(王宮前広場)[15]
- 550 : 空港バスターミナル - ハッピーランド
- 553 : 空港バスターミナル - サムットプラーカーン
- 554 : 空港バスターミナル - ドンムアン空港経由 - ランシット
- 555 : 空港バスターミナル - ドンムアン空港経由 - ランシット(高速道路経由)
- 558 : 空港バスターミナル - セントラルデパート・ラーマ2世通り店
- 運賃 : 約24 - 35B(区間制のため、利用する距離によって異なることがある)。
- 運行時間 : 4:00 - 23:00
- 空港バスターミナルより発着。無料シャトルバス[16]で所要5分
- バンコク大量輸送公社(BMTA)が運営。路線の運休、経路変更が予告無く頻繁に行われるため注意が必要。
- 乗合ミニバン(ロットゥー)
- 荷物の少ない空港勤務者向けであり、大きな荷物を持ち込むと断られるか、2倍の料金を請求される。
- 公共バス(タイ国内)
- このほか、タイ国内各地へのバスがある。
2011年5月までは「エアポート・エクスプレス」という空港連絡バスが運行されていた。
その他
- 高速道路
- バンコク・チョンブリー高速道路、バンナー・トラート高速道路
その他
- 空港施設使用料は国際線700バーツ、国内線100バーツ。航空券発券時に支払うことになる。
- 空港管制塔の高さは世界一 (132.2メートル)
事故
- 2013年9月8日午後11時頃、広州発バンコク行き タイ国際航空 679便(エアバスA330-300型機)が、当空港の着陸に失敗し滑走路から草地に外れた。搭乗していた乗員・乗客302名のうち、14名が負傷した[17]。事故原因は、着陸装置が故障したと見られる。
脚注
- ↑ “成田を凌いだタイの空港”. 日経ビジネス (2008年8月8日). . 2018閲覧.
- ↑ MdN編集部 『一度見たら忘れない奇跡の建物 異彩を放つ世界の名建築100』 エムディエヌコーポレーション、2017年。ISBN 978-4-8443-6644-7。
- ↑ スワンナプーム空港、滑走路のひび割れ100カ所 タイ情報サイト
- ↑ スワンナプーム第3滑走路、2年で整備へ タイ 2013年9月19日 NNA.ASIA
- ↑ ข่าวการประชุมคณะกรรมการ ทอท.ครั้งที่ 7 / 2561 - AOT 2018年6月20日
- ↑ タイ国際航空、テヘランとモスクワ就航 日本経済新聞 2016年6月17日付
- ↑ タイ国際航空、11月にバンコク/ウィーン線を開設へ 777で週4便 Flyteam 2017年7月28日付
- ↑ タイ・スマイル、バンコク/鄭州線に就航 A320で週4便 FlyTeam 2017年2月6日付
- ↑ タイ・スマイル、10月にバンコク/高雄線を開設へ デイリー運航 FlyTeam 2017年8月15日付
- ↑ タイ国際航空、バンコク発着の重慶、ペナン線をタイ・スマイルに移管 FlyTeam 2016年7月6日付
- ↑ タイ・スマイル、バンコク/ラクナウ線に就航 A320で週4便 FlyTeam 2017年7月28日付
- ↑ バンコクエアウェイズ、バンコク/ダナン線に就航 A319で週4便 FlyTeam 2016年5月26日付
- ↑ ウクライナ国際航空、12月からキエフ・ボルィースピリ/バンコク線に就航 FlyTeam 2013年9月15日付
- ↑ Transfer Bus Between Suvarnabhumi - Don Muaeng - Suvarnabhumi Airport
- ↑ スワンナプームと都心結ぶシャトルバス運行 - NNA ASIA 2017/06/01
- ↑ Shuttle Bus within Suvarnabhumi Airport - Suvarnabhumi Airport
- ↑ バンコク空港でタイ航空機が着陸失敗、14人軽傷 2013年09月09日 14:54
関連項目
外部リンク
- Suvarnabhumi Airport (タイ語/英語/中国語/日本語)
- タイ国際航空 - スワンナプーム国際空港
- BangkokNavi.com スワンナプーム空港