シャトルバス
シャトルバスとは、イベントや空港・観光地など特定の目的地を利用する客を効率的に輸送するため短い間隔で運行するバスのことである。この運行形態についてはシャトル運行と呼ぶこともある。英語では単にシャトル (Shuttle) という。運行系統の愛称として「シャトルバス」を用いる場合(後述事例を参照のこと)もある。
概説
織機の杼(英:shuttle シャトル)のように、短い周期で往復する様子からこの名前がついている。あるいは、ピストンになぞらえて、「ピストンバス」、ピストン運行と称することもあるが、現在の日本語ではあまり使用されなくなった。また実際には、往復輸送ではなく一方向運転や循環運転の場合もある。
大量の集客が見込まれるイベント開催時または来客が集中する定例行事の時期に会場と交通結節点を結ぶ臨時型と、集客力のある観光地や施設等を結ぶ常設型がある。鉄道のようなインフラを設けることなく効率的に大量輸送が実現でき、同時に通常の路線バスなど日常的な交通機関にまで混雑が波及することを回避できる。
イベント臨時型では、その場で実際の来客状況を判断して調整することが多い。一例として利用が多い時には運行間隔を短くして参加客を捌いたり、終了時刻が遅れた場合にはそれに合わせて運行したり、また利用が少ない場合は運行削減や中止するなどである。空港常設型では、発着時刻の変更の変更が多く欠航もあり得る航空便に合わせて運行できる。
鉄道が災害、事故、工事等で不通の場合、その運休区間を代行輸送するバス(バス代行)もシャトルバスの形態の一つと見なすことが出来る。
臨時型
大量の集客が見込まれるイベント開催時または来客が集中する定例行事の時期(寺社への初詣、彼岸時期の霊園への墓参りなど)に、会場とターミナル(駅、バスターミナルなど)あるいは駐車場等を結ぶ路線。通常運行される路線の大幅増発として、あるいは通常は運行されない区間への臨時路線として運行される。イベント輸送では、より大きな輸送力を提供するため、イベント会場への送り込みには、イベント会場ゆきのみ実車(営業運転)、ターミナル駅などへは回送とし、イベント終了後は、逆の運行として輸送力を確保している。シャトルバス化(頻回、短距離間往復)することで、結果的に(準)大量輸送が可能となる。
バス事業者が主体的(自主的)に運行する場合、路線バスの臨時増発、臨時路線バスとして届け出たうえでの運行が多い。イベントや鉄道代替輸送など、利用者が直接運賃を支払わない場合(イベント主催者が支払う場合を含む)は貸切バス(特定輸送を含む)として運行することが多い。なお、イベントなどの主催者自身が、送迎の対価を受領しないで送迎を行う場合は、自家用バスによる送迎も可能である。
ターミナルを発着する路線は、短時間輸送を行うために会場から最も近い拠点を発着地とする場合が通例であるが、乗り換えの利便性に考慮してやや離れたターミナルからの輸送が行われるケースもある。大都市圏から中長距離を輸送するバス(幕張メッセと東京駅を結ぶ臨時バスなど)もあるが、所要時間や運行本数の観点から言えば本来の「シャトル」の意味合いからは若干離れると考えられる(むしろツアーバスの形態に近いと考えられる)。
会場と駐車場を結ぶ路線は、会場周辺に大規模な駐車場が確保できず会場から離れた場所に臨時駐車場を設けた場合、あるいは会場周辺の道路が狭隘な場合などに運行される。会場周辺に自家用車が乗り入れることにより生じる渋滞を緩和させる効果が期待されており、イベントに伴い発生する渋滞が周辺住民に迷惑となることから、イベント実施者に行政や住民などからこれらの対策を要求されることも多い。 シャトルバスのうち、イベント会場と駐車場や駅ターミナル等を結ぶ路線の大半は途中停留所を設けないノンストップ運行であるが、利便性を考慮して途中に停留所を設けている場合もある。ただこの場合、イベントの規模によっては始発停留所からすでに満員になっている場合があり途中停留所では乗車できないことがある。
特殊な事例としては、1996年から1998年までの3年間、神奈川県茅ヶ崎市の茅ヶ崎駅北口広場工事のため、同広場発着の全バス路線が市役所駐車場に設置された臨時ターミナル発着となり、駅北口から臨時ターミナルまで路線バス利用者を運ぶ無料シャトルバスが運行されていた例がある。
個別の事例は割愛する。
路線型
常時交通流動が見込まれる特定区間(たとえば大規模団地やテーマパークと最寄り駅の間、あるいは多少離れた2ターミナル間など)において、「シャトルバス」と称して常時運行されることもある。輸送力の面で言えば例えば路面電車やLRTの方が有効であるケースもあるが、インフラ整備が間に合わない場合に高頻度運行のバスで代替されるものであるといえる。
「シャトル」を名乗る主な路線(あるいはそれに準ずる路線)として以下のような事例がある。
- 筑波山シャトルバス(筑波山 - つくば駅・つくばセンター間、関東鉄道)
- 東京ベイシャトル(東京臨海副都心 - 東京テレポート駅、日の丸自動車興業)
- 丸の内シャトル(大手町・丸の内 - 有楽町駅、日の丸自動車興業)
- メトロリンク日本橋(日本橋・八重洲 - 東京駅、日の丸自動車興業)
- 以上の3路線は沿線企業等からの協賛金で運行される「無料巡回バス」である。
- 都庁循環(東京都庁舎 - 新宿駅、都営バス・京王バス東) - 「循環」を名乗るが、循環区間は都庁舎周辺のみで実質的にはシャトルバス形態
- 逗子マリーナシャトルバス(逗子マリーナ - 鎌倉駅、京浜急行バス)
- 淀競馬場線(京都競馬場 - 山崎駅・西山天王山駅) - 京都競馬場が会場となる毎週末のみ運行
- 堺シャトルバス(堺駅 - 堺東駅間、南海バス)
- 鳳シャトル(西区役所前 - 堺東駅間、南海バス) - 2017年8月26日に愛称を廃止し「堺東・鳳線」に戻った
- 和歌山シャトル(和歌山駅 - 和歌山市駅間、和歌山バス)
- 海峡シャトル線(高速舞子 - 道の駅あわじ・岩屋ポート・淡路夢舞台間、淡路交通・神戸山陽バス・神姫バス・本四海峡バス) - 2009年4月1日より運行休止中
このほか、空港において旅客ターミナルが離れた位置に複数設置されている場合(東京国際空港・成田国際空港・福岡空港など)はこれらのターミナルを循環するシャトルバスを運行することがある。この場合、通常のバス路線同様有料の場合と、空港管理会社が契約主となり運賃無料の貸切扱いで運行される場合がある。
また、マイカーの乗り入れが規制されている地域(乗鞍、上高地等)において、あるいはマイカー規制していない地域でも観光地近くの駐車場が不足している場合に、最寄りの駐車場と観光地を連絡するものも存在する。
なお、リムジンバスは空港と市街地を結ぶ「シャトルバス」の一種と言えるが、空港の離着陸本数が少ない場合は航空便に接続した運行のみが行われる場合もあるため、シャトルバスの形態とならないケースも多い。一般客が乗車可能な通学バスも駅と学校を結ぶ「シャトルバス」の一種と言える。
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乗鞍高原シャトルバス(松本電鉄バス)
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新宿西口循環(京王バス東)
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羽田空港連絡バス(羽田京急バス)
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逗子マリーナシャトルバス(京浜急行バス)