ボルボ・カーズ
ボルボ・カー・コーポレーション(Volvo Car Corporation )、通称ボルボ・カーズ(Volvo Cars)は、中国の浙江吉利控股集団傘下のスウェーデンの自動車会社。2010年8月まではフォード・モーター内のプレミアム・オートモーティブ・グループに属していた。ボルボ・カーズの前身は、ボルボグループ(いわゆるトラック部門や船舶エンジン部門で構成されるコングロマリット)の乗用車部門である。1998年にこの乗用車部門が64億ドルでフォードに買収されたことから、フォード傘下の自動車会社としてボルボ・カーズが誕生した。ボルボとフォードの間には資本関係は無いが、ボルボの商標はボルボとフォードが共同所有する企業、ボルボ・トレードマーク・ホールディングABに帰属しており、同社の許諾によりフォードがボルボの名称を乗用車に冠していた。2010年にボルボ・カーズはフォードから浙江吉利控股集団(中国企業で元々は冷蔵庫製造会社)に18億ドルで売却された。
Contents
概要
ボルボの誕生
1924年、アッサール・ガブリエルソン、グスタフ・ラーソンによってスウェーデンでの自動車製造の計画が始まる。
SKF社の後援で、1926年に自動車メーカーのボルボが誕生し、ボルボブランドの乗用車製造が開始される。
1927年4月14日、ヨーテボリのヒジンゲン にある工場から「ヤコブ」と呼ばれるVolvoÖV4が最初に製造されたボルボ車である。
安全性の追求
「ボルボ設計の基本は常に安全でなければならない」という理念の基、安全装備の開発、事故調査の実施と設計へのフィードバックを行う企業方針と、北欧メーカーであるためヘラジカとの衝突を開発段階から考慮していることから、「世界一安全なファミリーカー」と評価されていた。
また、各種安全装備に関して特許の公開を行い、自動車の安全性に貢献した。
フォード資本への移転と商標の使用
1999年にボルボの乗用車部門がフォードに譲渡され、ボルボ・カーズとしてフォード社のプレミアム・オートモーティブ・グループの1部門となった。フォードグループ共通のプラットフォームやエンジンを採用しつつ、ボルボのアイデンティティである「安全設計」を守り続けてきた。
同社が生産販売する乗用車は、商標管理会社であるボルボ・トレードマーク・ホールディング社の利用許諾を得てブランドを使用している。
吉利汽車資本への移転
2010年8月、フォードは、中国の吉利汽車の親会社の浙江吉利控股集団に、ボルボ・カーズのすべての株主の権利を売却した。
そしてフォードグループからの離脱を機に、完全自社開発で次世代のエンジン・シャーシを新開発し、順次採用している。
- VEA(Volvo Engine Architecture):新パワートレーン「Drive-E」シリーズとして展開する。「基本設計は2リッター以下・4気筒以下であること」「可能な限りガソリンとディーゼルで構造を共有すること」「将来的にハイブリッドやEVなどの電動化に対応すること」の3点を柱に設計されている。
- SPA(Scalable Product Architecture)・CMA(Compact Modular Architecture):電動化や自動運転化にも対応する、「相似形」「モジュール設計」によるコモンアーキテクチャー。SPAはEセグメント以上に、CMAは吉利車を含めたDセグメント以下の車種に使用する。
沿革
- 1924年 - アッサール・ガブリエルソン、グスタフ・ラーソンらにより自動車製造が模索され設計が始まる。
- 1926年 - プロトタイプ1号が完成する。同年、当時のスウェーデン最大企業だったベアリングメーカーSKF社の後援により、休眠中のSKF社子会社であるボルボ社の名称を使用し、自動車製造会社としてのボルボ社が創立する。
- 1927年 - 乗用車製造、1928年にトラック製造を開始する。
- 1930年代 - 元GMの技術者を招聘するなど、スウェーデンの比較的広大な国土に合わせた「小さなアメリカ車」的な設計がなされた。
- 1944年 - 発表した小型車「PV444」が世界的な成功を収め、信頼性/耐久性で高い評価を獲得した。徐々にモデルは大型化して行くが、「世界一安全なファミリーカー」と評価された。
- 1970年代 - 労働条件改善のためにベルトコンベアー生産方式を廃止し、各工程で工員数人から成る作業チームを主体とした生産方式を採用した。これは労働者に歓迎され、生産技術者らの注目を集める一方で、労働コスト高騰によって国際競争力を失い、結果として高級車の生産に移行していかざるを得なくなった。
- 1975年 - オランダのDAFトラック社の乗用車事業を吸収した。
- 1980年代以降 - 国際競争力を強めるため、「200」シリーズの改良と共に、「700」「900」シリーズを発表する。
- 1992年 - FWD5気筒の礎となる「850」シリーズを発表する。
- 1994年 - 同じスウェーデン企業のオートリブと世界初のサイドエアバッグを共同開発[1]。。
- 1999年 - 世界的な自動車会社再編の中で乗用車事業がフォードに売却され、フォード傘下企業の「ボルボ・カーズ」(Volvo Cars)となる。
- 2001年 - ルノー・ビークル・インダストリー(ルノーの商用車事業子会社)を買収すると共に、「ルノー」の出資を受け入れ同社が筆頭株主となる。
- 2002年 - ルノー・ビークル・インダストリーを「ルノートラック」に改称し、傘下事業に加える。
- 2006年 - 日産ディーゼル工業の株式を取得し業務提携を発表。翌2007年2月20日に株式公開買い付けを行い、10月1日に完全子会社化した。
- 2008年 - インドのアイシャー・モーターズと折半出資で合弁会社VEコマーシャル・ビークルズを設立。
- 2012年12月13日 - ルノーが保有するボルボ株を全て売却。売却額は14億7600万ユーロ[2]。
- 2014年11月26日 - 上智大学との産学教育連携を発表[3]。
- 2017年12月27日 - ボルボ・カーズを2010年8月に子会社に収めた「浙江吉利控股集団」がボルボグループ(ABボルボ)の筆頭株主となることでスウェーデンの投資会社と合意したと発表[4]。
製造拠点
現在存在する拠点
- スウェーデン
- ベルギー
過去に存在した拠点
- スウェーデン
- マレーシア
- タイ
日本法人の活動
日本におけるボルボ乗用車の輸入の歴史は1960年に梁瀬商事株式会社(現・株式会社ヤナセ)の傍系法人である「北欧自動車株式会社」が日本総代理店となったときに遡る。1974年に北欧自動車はボルボと帝人株式会社との合弁会社である「帝人ボルボ株式会社」に総代理店を譲り、1986年に帝人ボルボの営業譲渡を受けた「ボルボ・ジャパン株式会社」がボルボ100%出資の日本法人となった(1991年に「ボルボ・カーズ・ジャパン」に社名変更)。
1999年に乗用車部門のフォード・モーターへの売却に伴って、傘下の買収ブランドの統合販売組織であるプレミアム・オートモーティブ(PAG)グループの日本法人「ピー・エー・ジー・インポート株式会社」(PAG Import)が行っていたが、ジャガー、ランドローバー、アストンマーティンの各部門の売却のためボルボ乗用車のみのインポーターとなり、日本法人「ボルボ・カーズ・ジャパン株式会社」に、そして2013年4月1日に「ボルボ・カー・ジャパン株式会社」に社名変更して今日に至る。
ボルボ・ジャパンの創立以来代表取締役社長は外国人だったが、2014年に初の日本人社長として、トヨタ自動車・ファーストリテイリング・日産自動車出身の「木村隆之」が就任した。木村の就任後は、ディーラー網の強化や販売戦略の見直しにより、ブランド価値の再構築を進めている。
ボルボの各国インポーターとしては珍しく、東京都と神奈川県に直営ディーラーを運営する。以前は埼玉県・愛知県・大阪府・兵庫県にも直営店が有ったが、地元資本のディーラーに譲渡し直営は縮小した。全国のディーラー数も、2000年頃の拠点数145店から約100店にまで減っている。その一方、2013年6月から認定中古車制度を全世界統一プログラムである「VOLVO SELEKT(ボルボ・セレクト)」に一新し、専用店舗も展開している。2016年には町田市の直営ディーラー「ボルボ・カーズ東名横浜」内に、1990年以前のクラシックモデルの整備・レストア拠点「クラシックガレージ」を開設した。
2003年より全世界統一のショールームコンセプト「VNF(Volvo Next Face)」を導入し全国展開してきたが、2013年から次世代コンセプト「VRE(Volvo Retail Experience)」を制定し、同年9月日本導入第1号店をオープン。順次リニューアル中である。
車種一覧
初期のボルボ
- ボルボÖV4/PV4(1927年 - 1929年)
- ボルボ初の量産車である2ドアオープンボディーで5人乗りのÖV4、4ドアクローズドボディーで5人乗りのPV4、ピックアップで2人乗りのÖV4TV、の3種のボディーバリエーションがある。またシャーシーのみでの販売もされ任意のボディー架装も可能であった。ÖV4/PV4共に28馬力を発揮する1940ccの4ストロークサイドバルブ4気筒ガソリンエンジンを搭載し、前進3速、後進1速のトランスミッションを持つ。最高速度は90km/h。
- ÖV4はしばしばヤコブと呼称されるが、本来は1926年に製造された10台のプロトタイプのうち黒塗装の個体のニックネームがヤコブである。
- ボルボ600シリーズ(1929年 - 1937年)
- 6気筒エンジンを搭載するシリーズ。車種名称の数字は、気筒数/乗車定員/開発番号で表されている。シリーズは大別して、5人乗り4ドアセダン、タクシー仕様の7人乗り4ドアセダン、でありそれぞれシャーシーのみでの販売もされた。
- 5人乗り4ドアセダンはPV651/PV652/PV653/PV654/PV658/PV659およびシャーシー販売のPV650/PV655/PV656、7人乗りタクシー用4ドアセダンはTR671 / TR672/ TR673/ TR674/ PV676/ PV678/ PV679/ TR701/ TR703/ TR704およびシャーシー販売のTR670/ PV675/ PV677/ TR702である。
- ボルボPV36 Carioca(1935年 - 1938年)
- ボルボで初めてボディ形状に流線型を取り入れると共に、リアシートを拡大するなど快適性の向上を目指した。PV656のシャシーに2ドアクローズドボディーを持つ高級車であり500台の限定生産車であった。
- ボルボPV50(1936年 - 1945年)
- PV36の流線型デザインを取り入れた6気筒エンジン搭載の4ドアセダン。PV51およびデラックス版のPV52、改良型のPV53/PV54とそのデラックス版PV55/PV56、と車種展開された。PV51/PV57はシャーシーのみでの販売もされたため、2ドアカブリオレ、ピックアップ、などの架装がおこなわれた。
- ボルボPV800シリーズ(1938年 - 1958年)
- 4ドアクローズドボディーに6気筒エンジンを搭載する8人乗りタクシー仕様車。タクシー仕様600シリーズの後継車種である他シャーシーのみでの販売もされ、また戦火の拡大から軍用車両もシリーズとして派生した。
- ボルボPV60(1946年 - 1950年)
- 6気筒エンジン搭載の4ドアセダンであり、PV50の後継車種。第二次世界大戦中に計画が中断され、1945年から生産された。
第二次世界大戦後の車種
- ボルボPV444/544(1947年 - 1965年)
- 第二次世界大戦の終結後を見据えて開発された小型の2ドアセダンであり、4気筒ガソリンエンジンを搭載する。PV444が1947年 - 1958年、改良型のPV544が1958年 - 1965年に生産された。PV444の新車発表は第二次世界大戦末期の1945年2月に行われたが生産体制が整わず、1946年末に生産が開始された。両モデルを合わせて44万台が生産された。
- ボルボP1800(1961年 - 1973年)
- イタリアのカロッツェリアであるカロッツェリア・ギア社のデザインによる流麗なボディを持つ2+2クーペ。1971年からはシリーズに3ドアのスポーツワゴンであるP1800 ESが追加された。
- ボルボ120(アマゾン)(1956年 - 1970年)
- PV444をベースに発展させ、ボディを一新している。1959年式以降からは、同年にボルボ社が特許を取得した三点式シートベルトを世界に先駆けて全車に標準装備した。のちに、後部座席にも三点式シートベルトを採用。ダッシュボードをパッドで覆ったり、運転席のヘッドレストも標準装備として、現在標準的な乗員保護装置の先駆けとなった。約70万台が生産された。なお、アマゾンの名称は商標の関係でスウェーデンのみであり、他国では120が正式名称となる。
- ボルボ142/144/145・ボルボ・164(1966年 - 1974年)
- ボルボ120をベースにボディを一新した。安全性のために設計されたモノコックボディの車体前後にクラッシャブルゾーンを設け、事故時に折りたたまれるように潰れることで、乗員保護が図られている。車内装備にも、サンバイザーや天井に柔軟な素材を採用するなど、乗員保護のための工夫が行われている。また、ブレーキにフェイル・セイフ・システムを採用し、安全性を高めている。
- ボルボ・240・ボルボ・260(1974年 - 1993年)
- 堅牢なロングセラー車。140/160シリーズのボディをもとに、前後にジュラルミン製の大型バンパーを追加した。PV444からほとんど変化することの無かったフロントサスペンションがダブルウィッシュボーンからマクファーソンストラットへと変更され、より幅広いV6エンジンの搭載を可能とした。最終的にはV8エンジンまで搭載することが予定されたが、これは実現しなかった。ツーリングカーレース(グループA)での240ターボの活躍から「Flying Brick(空飛ぶレンガ)」と称された。無骨な直線基調のデザインは、文字通り「レンガのようなデザイン」であり、ボルボは四角いというイメージを植え付けたモデルである。2.0リットルから2.3リットルのエンジンを搭載した240シリーズ(ステーションワゴンが有名)とPRV(プジョー、ルノー、ボルボ共同開発)のV6エンジンを搭載する260シリーズ(ベルトーネデザインのクーペ262Cやリムジンも存在した)から成る。当初は末尾の0の数字をセダンは4、エステートは5としドアの枚数とする呼び方をした。
- ボルボ300シリーズ(1976-1991年)
- ボルボ66(DAF社の乗用車部門買収前はDAF・66)の後継モデルで、初期には当時DAF→ボルボのみが実用車に採用していたベルト式CVT「バリオマチック」のみを変速機として搭載していた。
- オランダの旧DAF工場で生産された後輪駆動小型車で、3ドアハッチバックの343と5ドアハッチバックの345、4ドアセダンの360(1983-1991年)からなる。1988年頃の英国では、よく見られた、ごく一般的な車種の一つで、フランスではファミリーカーと分類される。
- 日本には360GLEの右・左ハンドル(5MT)仕様車が正規輸入された。冷房も効く、日本仕様車である。
- ボルボ400シリーズ(1986-1996年)
- 300系の後継車。FF方式を採用する小型車。4ドアセダンの460と5ドアハッチバックの440、そしてリトラクタブルヘッドライトが印象的な3ドアハッチバックの480の三種類。
- 日本では1989年モデルのターボ車のみ300台が正規輸入された。そのうち、左ハンドルマニュアル車が295台に対して、右ハンドルAT車はわずか5台だった。
- ボルボ700シリーズ(1982 - 1992年)
- ボディは4ドアセダンとエステートと呼ばれるステーションワゴン。サスペンションはフロントストラット、リアはボルボがコンスタントトラックと呼ぶ5リンクリジット。760の末期モデルはセダンのみマルチリンクとなった。4気筒の740、6気筒の760の2レンジ。このうち日本に導入されたのは740GLT(2LSOHCターボ)、740GL(2.3L SOHC)740GLE(740GLの豪華装備モデル)、740GLE 16VALVE(2.3L DOHC)、740ターボ(2.3L SOHCターボ)。740ターボには特別仕様車としてエンジンパワーを向上させたターボプラスが存在。760GLE(2.8L SOHC)、760ターボ(2.3L SOHC直列4気筒ターボ)、760GLEターボディーゼル(2.4L 直列6気筒ターボディーゼル)。760GLEのエンジンはプジョー、ルノー、ボルボ、3社の共同開発によるV6、ターボディーゼルのエンジンはフォルクスワーゲン社製である。ターボディーゼルは初期にごく少数が輸入されたに過ぎない。また、85年から91年にかけて、イタリア・ベルトーネ社のデザイン・架装による耽美な2ドアクーペ、780が存在した。780のデビューは、1985年のジュネーヴ・ショーであった(ボルボによれば開発は発表の7年前である)[6]。780は760をベースとしており、PRV製V6/2.8Lエンジンが搭載されていた。製作テーマは「限られた台数を継続的に生産し、ボルボ・ラインアップの頂点に立つスタイリングとインテリアの質とデザインを持った、エグゼクティブ・サルーン」であった[7]。しかし、イタリアで組み立てが行なわれていたせいもあり、価格が非常に高く、販売台数は少なかった。
- ボルボ940(1990 - 1998年)
- 900シリーズは、上記の700シリーズの改良版である。主に、側面衝突に対応するSIPSやエアバッグの導入など安全面の改良であり、エンジンやサスペンションの構成はほぼ変わらない。ボディー形状は、セダンのCピラー以降が変更されているが、エステートは700シリーズ後期モデルとほぼ見分けが付かない。日本に導入されたのは、940GL(2.3L SOHC)、940ポラール(2.3L SOHC、96年式よりロープレッシャーターボ)、940GLターボ(2.3L SOHCターボ)、940GLE(2.3L SOHCターボ)、940GLE 16VALVE(2.3L DOHC)、940ターボ(2.3L SOHCターボ)、940Classic(2.3L SOHCターボ)など多岐に渡る他、940ターボSEを始めとする特別仕様車が存在する。直列4気筒SOHC2.3LのB230エンジンにはNAとターボが存在し、ターボは135PSのロープレッシャー型、165PSまたは190PSのハイプレッシャー型の仕様があった。「ターボ+」により出力強化された190PS版は、SEなど特別仕様車の他、製造年によってターボに標準搭載された。
- ボルボ960(1990 - 1997年)
- 960、960EX、960EXロイヤル、960 24VALVE、960ロイヤル、960 3.0-24V、960 2.5-24V、960リムジン、が展開された。当初PRV製V6の2.8Lユニットが搭載されていたが、92年モデル以降は、新開発されたボルボオリジナル直列6気筒DOHCの3.0Lモジュラーユニットに変更された。95年モデルとしてビッグマイナーチェンジが行われ、フェイスリフト、2.5Lモデルの追加を受けた他、サスペンションの大幅変更が行われた。リアサスペンションの変更ではセダン/エステート共に、横置きリーフスプリングの材質にCFRPを使うマルチリンクというコンパクトさを追求した独創的な型式に改められた。これに伴い、荷室空間確保のためコイルリジットであったエステートも独立懸架の足回りを得た。
- ボルボS90/V90(1997 - 1998年)
- 960シリーズの名称変更モデル。後期960とともに、現在、FRレイアウトと4輪独立懸架の足回りを踏襲した唯一のボルボ車であり、FRボルボの集大成とも言える。日本市場では、97年モデルとして2.5、3.0、3.0E、それにロングホイールベースのS90 Royalが存在した。98年モデルは、最終限定車としてClassic(3.0L)のみとなり、S90限定100台、V90限定500台が販売された。
- ボルボ・850(1992 - 1997年)
- 中型車としてはボルボ初のFF車。ストレート5を横置きに搭載する珍しいレイアウトを取る。当初は4ドアセダンのみで後にエステートと呼ばれるワゴンが追加。サスペンションはフロントストラット、リアはボルボがデルタリンクと呼ぶトレーリングリングトーションバー。これまでのボルボとは一転、スポーティーな性格で英国のBTCCなどに出場し当初はワゴンボディで出走し注目を集めた。日本に導入されたのは850GL(当初は850GLE Sタイプのちに850 S2.5その後は850 2.5) 850GLE(のちにドロップ) 850GLT(のちに850 2.5-20V) 850 2.5T(2.5Lライトプレッシャーターボ) 850 T-5(2.3Lハイプレッシャーターボ)他に限定車として850T-5R、850R、さらにT-5スペシャルエステート、GLファミリーエステート等がある。エステートに限り2.5Tをベースとして4WDモデルが追加されている。(日本には未導入)また、環境先進車として初めてCNG(天然ガス)・バイオガス等のメタンガスとガソリンの両方が使用可能なバイフューエルもラインナップされた。
- ボルボS/V70(1997年 - 2000年)
- 850のビッグマイナーチェンジモデル。シャーシー構成、エンジンなどは850を継承。ボディデザインは角が落ちS/V90、S/V40シリーズとのイメージの共通化を図る。AWDも日本国内で正式に発売され、高出力の限定車はS70RAWD V70RAWD。
- ボルボS/V40(1996年 - 2004年)
- 小型FF車であるボルボ400シリーズの後継車。オランダ政府、三菱自動車、ボルボの共同出資によるネッドカーで生産され、同時期に生産された「三菱・カリスマ」とプラットフォームを共有する。1999年にオランダ政府、2001年にボルボが資本撤退し、ネッドカーが三菱自動車の子会社となった後も、生産契約により2004年まで生産された。
1998年以降の車種
- C70カブリオレ/クーペ(1998年 - 2014年)
- 初代70シリーズをベースとしたクーペ&カブリオレ。日本ではクーペが先に輸入され、2001年にクーペの代わりにカブリオレが輸入された。
- 2代目はS40ベースのクーペカブリオレ。日本では2007年に発売された。欧州仕様はガソリンだけでなく、ディーゼルターボの設定もある。
- S80(1999年 - 2016年)
- ボルボの最上級4ドアセダン。直5、直6エンジンを横置きするFF駆動方式。
- ガソリン・ターボ(ロー/ハイプレッシャー)直5ディーゼル・デイーゼルターボ、バイフューエル(LPG/ガソリン<05年まで>・CNG/ガソリン)の多彩なエンジン構成を持つも、日本での販売はガソリンエンジンのみである。
- 電子制御スロットルの故障多発により、北米では訴訟により保証期間の延長が行われた。日本ではリコール届出がなされておらず、有償修理となる。
- 2007年にフルモデルチェンジされて2代目に移行し、V8モデルも登場した。
- V70(2000年 - 2016年)
- 1999年にフルモデルチェンジを行い、日本では2000年から2007年まで販売された2代目。丸味を帯びたスタイルとなり、外寸も大型化された。2004年秋に登場した2005年モデルではフェイスリフトが行われた。
- 2006年モデルでは限定車扱いであったRAWDがカタログモデルとなっていた。
- 欧州では、ガソリン2000ターボ(日本では市販されず)・2400・2400ロープレッシャーターボ・2400ハイプレッシャーターボに加え、2400ターボディーゼル・ディーゼル(日本発売なし)、CNGバイフューエル、LPGバイフューエル(日本発売なし・テストカーは日本でも走行)がラインナップされていた。
- 2007年秋から、フルモデルチェンジを受けて3代目となる2008年モデルが市販開始された。
- XC70(2002年 - 2016年)
- V70をベースとしたクロスオーバーSUVとして登場。初期はV70ファミリーの一グレードとして V70 XCを名乗っていた。オリジナルのV70より最低地上高を上げ215mmとなっており(全高は1560mm)、廃道や林道・オフロード・積雪路面で威力を発揮する。トレッドも45mm拡大されている。AWDシステムは、ハルデックス社の前後輪駆動配分を採用したスタンバイ式を採用している。
- スタンバイ式の特性上、ぬかるんだ坂道などでは前輪しか回らないという悪路での走行実験動画や走行安定性試験などの報告も挙がっていたが、現在はプレチャージ機構により改善された。
- 2007年秋、V70と同時にフルモデルチェンジを受けて2代目が発売された。
- S60(2001年 - )
- S80/V70と共通のプラットフォームを持つ中型の4ドアセダン。自然吸気とターボ過給の直5エンジンを横置きする。駆動方式はFF/AWDとも5ATを基本とするが、R AWDについては6ATである。エンジンラインナップはV70と同じである。
- XC90(2003年 - 2015年)
- 北米市場でのSUV好調を受け、三列シートを持つSUVとして設計されたモデル。日本には導入されていないがFF仕様もある。V8、直6、直5エンジンを横置きする。なおV8エンジンはヤマハ発動機が設計生産をおこなっている。
- 2015年、第二世代に移行した。
- S40/V40(初代)-V50(2004年 - 2012年)
- ネッドカー(設立当時はボルボ、三菱自動車、オランダ政府の合弁企業)で生産されていたボルボS/V40の後継車である。小型車ラインナップの生産拠点であったネッドカーが、資本の譲渡や撤退により三菱自動車の完全子会社となり、フォード・モーター資本下での後継車の去就が注目されていた。
- ベルギーで生産され、横置き4気筒をメインに、中型車と共通の直5エンジンもラインナップする。
- プラットフォーム、フロントサスペンション、ブレーキシステム・部品などを、マツダ3(アクセラ)やフォード・フォーカスと共用する。またフォード・フォーカスにはボルボ特有の直5エンジン搭載車種も存在し、この3車種はフォード・C1プラットフォームを介した姉妹車種である。
- 日本では輸入車としては初めて超-低排出ガス車の認定を受ける。
- 本国仕様ではFFV(フレキシブル・フューエル・ビーグル)というエタノールとガソリンの混合比が自由な4気筒エンジン搭載車も発売されたが、日本への導入予定は公表されていない。
- C30(2006年 - 2013年)
- S40/V50と共通のプラットフォームを持つ3ドアハッチバック。グラスハッチを持ったスタイリングは往年のボルボ・P1800ESを思わせる。
- 2006年10月、パリサロンでワールドプレミアが行なわれる。
- 日本国内では、2007年モデルとして発売された。
- XC60(2008年 - 2017年)
- 3代目V70をベースとしながらも、クーペとハッチバックを融合させたようなエクステリアを与えたクロスオーバーSUV。低速用追突回避・低減オートブレーキ・システムであるシティ・セーフティを世界で初めて標準装備とした。シティ・セーフティの日本市場導入にあたり、国土交通省の技術指針策定のために1年半の歳月を要した。
- 日本国内では、2009年8月に直6・3.0LターボのAWDモデルのみが2010年モデルとして発売されたが、2.0LターボのFFモデルが2010年8月に追加された。
2010年以降の車種
- V60(2010年 - 2018年)
- S60/XC60と共通のプラットフォームを持つ中型のステーションワゴン。前出2車同様、流麗なエクステリアが特徴である。
- ターボ過給の直6エンジンならびにターボ過給の直4直噴を横置きする。駆動方式はFFとAWD。ラインナップはS60と同じである。
- V40(2代目、2012年 - )
- C30と共通のプラットフォームを持つ5ドアハッチバック。S40とV50の統合・後継モデルである。
- 2012年、パリサロンでワールドプレミアが行なわれ、その後欧州市場で市販を開始。
- 日本国内では、2013年2月に発売開始された。
- V40 Cross Country(2012年 - )
- 2012年9月、パリサロンで発表された。
- V40の派生車種で、専用のアンダーガード、ルーフレール等を装備したアーバン・クロスカントリー。
- V40と比べ、全高は+30mmの1470mm、最低地上高は+10mmの145mm、SUV性能を備えている。
- 日本国内では、2013年5月7日に発売開始された。
- V60 Cross Country(2015年 - )
- V60をベースに専用のエクステリアデザインと専用のサスペンションが採用されたクロスオーバーモデルである。
- V60と比べて全高は+60mmの1540mm、最低地上高は+65mmの200mm、ラフロードでの走行性能を高めている。
- 2015年10月6日に日本でも発表、発売が開始された。
- XC90(2代目、2015年 - )
- 新世代のSPA(Scalable Product Architecture)プラットフォームを導入したフラッグシップSUVである。
- 世界初のランオフロード・プロテクション(道路逸脱事故時保護システム)、インターセクション・サポート(右折時対向車検知機能)など、16種類以上の先進安全技術を標準装備。
- 欧州の自動車安全評価機関『ユーロNCAP』のセーフティアシストの分野で史上初の満点を獲得し、総合評価でも5つ星の最高評価を得ている。
- 国内外で100を超える賞を受賞しており、日本でも『RJC カー オブ ザ イヤー・インポート』、『グッドデザイン・ベスト100』に選ばれている。
- 2016年1月27日に日本でも発売され、初めてプラグインハイブリットモデルを導入した。
- V90(2016年- )
- V70の後継車種として登場。
- 日本においては、2017年2月23日に発表された。
- XC70はフルモデルチェンジを機に「V90 CROSS COUNTRY」へと変更され、V90に編入。ベース車種への編入は初代V70XC以来である。
- XC60(2代目、2017年 - )
- 2017年3月、サロン・アンテルナショナル・ド・ロト(通称:ジュネーヴ・モーターショー)で発表された。
- 新世代のSPA(Scalable Product Architecture)プラットフォームを導入したミドルサイズSUVである。
- 16種類以上の先進安全技術を全モデルに標準装備、レベル2(部分自動運転)の自動運転車技術を実現した。
- 世界初のインターセクション・サポート(右折時対向車検知機能)、大型動物検知機能(夜間含む)、ランオフロード・ミティゲーション(道路逸脱回避支援システム)、ランオフロード・プロテクション (道路逸脱事故時保護機能)を標準装備する。
- 2017年10月16日に日本でも発表、発売が開始された。
- 2017年12月11日、第38回『日本カー・オブ・ザ・イヤー2017-2018』にボルボXC60が受賞した。
- XC40(2017年 - )
- 2016年にConcept 40.1と呼ばれるコンセプトカーで発表、2017年9月21日、XC40はイタリア・ミラノのファッションウィーク特設会場で発表された。
- 新世代のCMA(Compact Modular Architecture)プラットフォームを最初に導入したコンパクトサイズSUVである。
- 日本においては、2018年1月26日に発表され、発売は2018年3月。
- V60(2代目、2018年 - )
- 2018年2月21日、フルモデルチェンジで2代目が発表されたステーションワゴン。
- 新世代のSPA(Scalable Product Architecture)プラットフォームを導入したミドルサイズのプレミアム・エステートである。
- 日本での発表、発売は未定。
関連項目
- トールハンマー - 2010年代から導入しているT字型のLEDヘッドライト
- ボルボ・カー・ジャパン
- ポールスター
- 浙江吉利控股集団 - 親会社
- 李書福 - 親会社の董事長
- 吉利汽車 - 親会社のグループ会社
- サーブ・オートモービル
脚注
- ↑ “製品情報(What We Do):サイドエアバッグ” (日本語). オートリブ. . 2018閲覧.
- ↑ “Renault has sold its remaining stake in VOLVO AB” (プレスリリース), ルノープレスリリース, (2012年12月13日) . 2013閲覧.
- ↑ UDトラックスの親会社ボルボと上智大学、グローバル人材育成で包括的な産学教育連携
- ↑ “吉利、商用車ボルボの筆頭株主に 4000億円超出資か” (2017年12月28日). . 2017閲覧.
- ↑ 5.0 5.1 5.2 5.3 5.4 5.5 http://www.volvocars.com/intl/corporation/FactsandFigures/Pages/default.aspx
- ↑ (2013) 80年代輸入車のすべて - 魅惑の先鋭 輸入車の大攻勢時代. 三栄書房, 35,95. ISBN 9784779617232.
- ↑ (2013) 80年代輸入車のすべて - 魅惑の先鋭 輸入車の大攻勢時代. 三栄書房, 94. ISBN 9784779617232.