ベトナム航空
ベトナム航空(ベトナムこうくう、英: Vietnam Airlines, ベトナム語: Hãng hàng không Quốc gia Việt Nam / 行航空國家越南)は、ベトナムの国営の航空会社であり、ベトナムのナショナル・フラッグ・キャリアである。2016年には日本の大手航空会社の全日本空輸(ANA)から出資を受けた。イギリス・スカイトラックスによる航空会社の格付けで、「ザ・ワールド・フォウ・スター・エアラインズ(The World's 4-Star Airlines)」の認定を得ている。ベトナムのエアラインとしては史上初の獲得。
タグラインは「Reach further」。
概要
1956年に、ベトナムの旧宗主国フランスから、ハノイ・ザラム空港の返還時に創設されたベトナム航空局を母体として、1989年4月設立された。
現在はベトナム国内18都市及び世界28都市に就航しており、インドシナ半島の路線が充実している。尾翼にあしらわれた金色の蓮の花(ゴールデンロータス)は、ベトナムの人々にとって、知恵と優雅さの象徴している。2010年6月10日に、航空連合のスカイチームに加盟。
航空券の座席予約システム(CRS)はSABREを利用している[1]。
2014年11月14日に民営化、株式公開に伴い、日本の全日本空輸(ANA)に株式の一部を売却するという報道がなされた[2]。その後2016年1月12日、ANAグループとベトナム航空の間で、業務・資本提携に関する基本合意書が締結したことが両社より発表された。これに伴い、ANAはベトナム航空株式の約8.8%を2兆4,310億ドン(約130億円)で取得し、ベトナム政府やベトナム国会などの承認が得られれば、同社に対して取締役を派遣し、さらに広範な業務提携を検討することとなる。コードシェア便やANAマイレージクラブの相互提携は2016年10月30日搭乗分から開始された。
なお、全日本空輸との提携に伴い、日本航空(JAL)とのコードシェア便の運航やJALマイレージバンクの提携終了するかについて、ファン・ゴック・ミン(范玉明)社長は「ANAとの提携は包括的なものであり、10月を以ってJALとの提携は解消する」と公表した[3][4]。2016年7月1日に、同年10月29日搭乗分をもってJALとのコードシェア便が終了することがJALから公表された[5]。
保有機材
機種 | 運用機数 | 発注機数 | 定員 (ビジネス/エコノミー) |
使用路線 | 補足 |
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エアバスA321-200 | 55 | - | 203(C8/Y195) 184(C16/Y168) 178(C16/Y162) |
国内線および近中距離国際線 | - |
エアバスA330-200 | 9 | - | 266(C24/Y242) 280(C24/Y256) 269(C18/Y251) |
国際線全般 中国 / 香港 / 日本 / マレーシア シンガポール / タイ |
数機整備待機(ストア)状態 |
エアバスA350XWB-900 | 4 | 10 | 305(C29W45Y231) | 主要国際線 | 2015年受領開始 |
ボーイング777-200ER | 6 | - | 309(C27W54Y228) | 国際線 欧州、豪州 |
入れ替え順次退役中 |
ボーイング787-9 | 9 | 10 | 311(C28Y283) 274(C28W35Y211) |
国際線 | 2015年受領開始 |
ATR 72-200 | 12 | - | 68(Y68) | 国内線のみ | - |
合計機数 | 90 | 24 |
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なお、ベトナム航空がボーイング777-200ERを自社発注した際、ボーイング社から、新たに航空機の顧客番号(カスタマーコード)として6Kが与えられ、オリジナルのカスタマーコードがついており、例えば航空機の形式名は777-26KER となる。
就航都市
ベトナム航空 就航都市(2017年1月現在) | ||||
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国 | 都市 | 空港 | 備考 | |
東南アジア | ||||
ベトナム | ホーチミンシティ | タンソンニャット国際空港 | メインハブ空港 | |
ハノイ | ノイバイ国際空港 | ハブ空港 | ||
ダナン | ダナン国際空港 | |||
フエ | フバイ国際空港 | [7] | ||
ニャチャン | カムラン国際空港 | |||
クイニョン | フーカット空港 | |||
カンボジア | プノンペン | プノンペン国際空港 | ||
シェムリアップ | シェムリアップ国際空港 | |||
インドネシア | ジャカルタ | スカルノ・ハッタ国際空港 | ||
ラオス | ヴィエンチャン | ワットタイ国際空港 | ||
ルアンパバーン | ルアンパバーン国際空港 | |||
マレーシア | クアラルンプール | クアラルンプール国際空港 | ||
ミャンマー | ヤンゴン | ヤンゴン国際空港 | ||
シンガポール | シンガポール | チャンギ国際空港 | ||
タイ | バンコク | スワンナプーム国際空港 | ||
東アジア | ||||
中国 | 北京 | 北京首都国際空港 | ||
上海 | 上海浦東国際空港 | |||
広州 | 広州白雲国際空港 | |||
昆明 | 昆明長水国際空港 | |||
成都 | 成都双流国際空港 | [8] | ||
香港 | 香港 | 香港国際空港 | ||
日本 | 東京 | 東京国際空港(羽田空港) | [9] | |
成田国際空港 | 第1ターミナル北ウイング発着 | |||
大阪 | 関西国際空港 | |||
名古屋 | 中部国際空港 | |||
福岡 | 福岡空港 | |||
韓国 | ソウル | 仁川国際空港 | ||
釜山 | 金海国際空港 | |||
大邱 | 大邱国際空港 | 季節運航便 | ||
清州 | 清州国際空港 | |||
中華民国 | 台北 | 台湾桃園国際空港 | ||
高雄 | 高雄国際空港 | |||
ヨーロッパ | ||||
フランス | パリ | シャルル・ド・ゴール国際空港 | ||
イギリス | ロンドン | ロンドン・ヒースロー空港 | ||
ドイツ | フランクフルト | フランクフルト空港 | ||
ロシア | モスクワ | ドモジェドヴォ空港 | ||
オセアニア | ||||
オーストラリア | シドニー | シドニー国際空港 | ||
メルボルン | メルボルン空港 | |||
休・廃止路線 | ||||
アラブ首長国連邦 | ドバイ | ドバイ国際空港 | ||
アメリカ合衆国 | ロサンゼルス | ロサンゼルス国際空港 | ||
イギリス | ロンドン | ロンドン・ガトウィック空港 | 2015年3月31日から寄港地をヒースローに変更[10] | |
ドイツ | ベルリン | ベルリン・テーゲル空港 |
サービス
座席サービスは、ビジネスクラスとエコノミークラスの2クラス制。最新型のビジネスクラスシートは、プライバシーを確保したシェル型で、シートはほぼフラットにリクライニング可能。機内食も各クラスを問わず提供されており、ベトナム - 長距離国際線ではフォーやブンボーフエなどのベトナム料理を、ベトナム - 大韓民国・日本発着路線では、該当国に応じた伝統的料理を、ベトナム - 中華人民共和国・台湾を含む近距離国際線では、軽食が出される。
女性客室乗務員が着用する制服は、各個人の体型に合わせて、20箇所以上を採寸して作成されるアオザイであり、完全なオーダーメイドである。そのエキゾチックな雰囲気でも人気が高い。男性客室乗務員も搭乗しており、男性の制服は、白のワイシャツに赤いネクタイ・黒のズボンである。
ハノイやダラットなどの都市では、市内の自社オフィス前と空港ターミナルとの間でリムジンバスを運行している。
不祥事
- 2006年、機内において乗客が心肺停止状態となった際に、客室乗務員が救命活動を行った他の乗客に手を貸さず、野次馬からも守らず放置した[11][12]。航行中の航空機内で発生した急病人に航空会社側が意図的に何もしなかったのはオリンピック航空が1998年に、喘息発作を起こした乗客を放置し死亡させたケース[13]につづいて2例目であると報告されている[11]。この結果、心肺停止患者は回復したが、救命活動を行った女性に外傷後ストレス障害が発症した[11]。
- ベトナム航空の33歳の男性副操縦士が、自らが乗務する航空機で、ベトナム人窃盗団が日本国内で盗んだ品物をベトナムへ持ち出そうとしたとして、盗品等関与罪で、2008年(平成20年)12月17日、山口県警下松警察署に逮捕された[14]。被告人は刑事裁判で「会社での給料が極めて低く、副業で盗品を運搬するのが常識だった」と主張したが、有罪判決が確定している[15]。
- ベトナム航空の25歳のベトナム国籍女性客室乗務員が、ユニクロのウルトラライトダウンや、資生堂の高級化粧品などを、ベトナム社会主義共和国に持ち出す「運び屋」として、関西国際空港へ持ち出したとして、万引きのベトナム人実行者男女5人(窃盗罪で逮捕、起訴)と、30歳のベトナム人仲介役女性と共に[16]、警視庁組織犯罪対策第一課が、2014年(平成26年)3月26日に盗品等関与罪で逮捕し、同時に東京都千代田区霞が関のベトナム航空日本支社を家宅捜索した[17]。在日ベトナム人窃盗団を仲介役を通じて、ベトナム航空の副操縦士や客室乗務員など計27人が、組織的に関与していると見られ、警視庁の捜査員の取り調べに対して「多くの乗務員が小遣い稼ぎで運び役をしていた。同僚に故買屋の女を紹介してもらった」と述べている一方で、同時に「盗品とは知らなかった」と、逮捕容疑については否認している[18]。その後、東京地方検察庁立川支部は、2014年(平成26年)4月23日、盗品等運搬容疑で逮捕された客室乗務員について、不起訴処分(嫌疑不十分)とした。同支部は「盗品の認識があったことを認めるのが困難と判断した」としている[19]。
- 客室乗務員の女性容疑者は「自分の月給は7万~10万円だが、一回のフライトで2万5000~3万円の副収入になる」と述べている。ベトナム航空本社の担当者は、東京新聞の記者からの取材に対して「個人の行為で、印象を貶められたのは残念だ。2008年の盗品関与事件後、客室乗務員や機長には、副業で盗品を運ばないように署名させている」と説明し、今回の事件後は、ベトナム航空は商品を運搬出来無い様にするため、客室乗務員らの荷物をハンドバッグと小さめの衣類用バッグに限るように決めた[20]、としていたが、現在はスーツケースで25キログラム分のCREW BAGGAGEを許可している。
- 現在もベトナム航空は、乗務員に対して手荷物以外に、スーツケースで25キログラム分のCREW BAGGAGEを許可している。2013年(平成25年)に、万引き容疑で摘発された外国人の4割は、ベトナム人だった。警視庁幹部は「ベトナム航空ルートを断たなければ、ベトナム人による万引きは根絶出来無い」としている[21]。
トピックス
IATA航空会社コードのVNとは、かつての南ベトナム(ベトナム共和国)に存在した航空会社のエア・ベトナムが使用していたコードである。
ちなみにエア・ベトナムは運航停止状態(1975年のベトナム戦争サイゴン陥落ごろ)になるまで東京・大阪に乗り入れていた[22]。
また3レターのHVNとは、かつて「ハンコン・ベトナム航空」と呼ばれていたため。
近年は機材も刷新され日本出発便はほぼ定時運行されているが、以前は共産圏航空機も多く整備状況も良くなかったためベトナム国内線では遅延するのが常態化していたため、ベトナム人からは「ベトナム航空は別名『シンロイ航空』という蔑称が付いている」と坂場三男・元在ベトナム日本国特命全権大使が述べている(『シンロイ』(Xin lỗi)とは、ベトナム語で「お詫びします」「申し訳ありません」の意味)[23]。
関連項目
- ベトナムエアサービス - ベトナム南部で運行する子会社
- 水戸ホーリーホック - 2016年5月よりユニホームのスポンサー。
脚注
- ↑ “Vietnam Airlines chooses Sabre Airline Solutions’ reservations system”. . 2015閲覧.
- ↑ ベトナム航空、ANAへの株式売却を示唆=現地紙 ロイター 2014年9月16日
- ↑ ベトナム航空と業務・資本提携に関する基本合意書を締結~ANAグループはベトナム航空への戦略的投資をおこないます~ ANAホールディングス 2016年1月12日
- ↑ ANA、ベトナム航空に8.8%出資 コードシェアやマイル提携も Aviation Wire 2016年5月28日
- ↑ ベトナム航空とのコードシェアの終了について
- ↑ Vietnam Airlines Current Fleet Details
- ↑ ベトナム航空、9月20日からフエ空港発着便の運航を再開 Fly Team 2013年7月29日付
- ↑ ベトナム航空、ホーチミン/成都線に新規就航 A321で週3便 FlyTeam 2017年1月30日付
- ↑ エア・カナダ、2014年7月に羽田/トロント線を就航 FlyTeam 2013年12月7日付
- ↑ ベトナム航空、ロンドンの乗入空港をガトウィックからヒースローに変更 FlyTeam 2015年1月13日付
- ↑ 11.0 11.1 11.2 大塚祐司「航空機内での心肺蘇生の実施により心的外傷を負った1例」、『宇宙航空環境医学』第44巻第3号、日本宇宙航空環境医学会、2007年9月1日、 71-82頁、 ISSN 0387-0723、 NAID 10024163146。
- ↑ “機内での人命救助(心肺蘇生法の普及)に関する論議”. メーリングリストeml-nc (2006年9月). . 2016閲覧.
- ↑ Fred Charatan (2004-03-06). “Supreme Court holds airline liable for doctor's death”. BMJ (U.K.: BMJ Publishing Group Ltd) 328 (7439): 544. doi:10.1136/bmj.328.7439.544-h. ISSN 0959-8138. PMID 15001500.
- ↑ AirFrance Press Release 2009年4月16日
- ↑ “ベトナム盗品密輸、背景に日本ブランド人気と航空会社待遇不満 過去に副機長関与も”. MSN産経ニュース (産経新聞社). (2014年2月27日) . 2014閲覧.
- ↑ “ベトナム航空CAに逮捕状 日本での盗品受け取り密輸疑い 万引団と仲介の女逮捕 警視庁”. MSN産経ニュース (産経新聞社). (2014年2月27日) . 2014閲覧.
- ↑ 林奈緒美 (2014年3月26日). “ベトナム窃盗団:空港への運び役CA、万引き役ら逮捕”. 毎日新聞 (毎日新聞社) . 2014閲覧.
- ↑ 佐々木学 (2014年3月28日). “乗務員30人が密輸出関与か ベトナム航空、横行の実態”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社) . 2013閲覧.
- ↑ “ベトナム航空CA、嫌疑不十分で不起訴”. 産経新聞 (産経新聞社). (2014年4月23日) . 2014閲覧.
- ↑ 北川成史、福田真悟 (2014年4月12日). “ベトナム航空 逮捕のCA「衣料品など7回運搬」”. 東京新聞 (中日新聞社) . 2014閲覧.
- ↑ “持ち込み32キロ 甘い規定ベトナム航空CA密輸「副機長に誘われた」”. 産経新聞 (産経新聞社). (2014年4月23日) . 2014閲覧.
- ↑ 消えたエアライン 賀集章:著、山海堂:2003年刊
- ↑ 坂場三男 (2010年6月16日), “大使のよもやま話” (プレスリリース), 在ベトナム日本国大使館, オリジナルの2010年6月20日時点によるアーカイブ。 . 2013閲覧.
外部リンク
- Vietnam Airlines 公式サイト(ベトナム語)(英語)(日本語)