モスクワ
Moskva
ロシアの首都。モスクワ州の中心都市。州政府ではなく,連邦政府の直轄に置かれている。英語ではモスコー Moscow。ヨーロッパロシア中部にあり,オカ川支流モスクワ川に臨む。年代記の 1147年項に初めて記され,13世紀後半にモスクワ公国の,14世紀半ばにモスクワ大公国の首都となった。タタール人の占領,略奪がたびたびあったが,モスクワ大公国の発展とともに漸次ロシアの政治,経済,文化の中心となり,15世紀末に石造のクレムリン (城砦) がつくられた。1712年ピョートル1世がサンクトペテルブルグに遷都したが,モスクワのロシアにおける経済,文化の中心地としての役割は変わらなかった。1812年のナポレオン1世の占領と大火により大損害を受けたものの復旧が早く,19世紀には近代工業が発展し始め,サンクトペテルブルグに次ぐロシア第2の工業中心地であった。
ロシア革命後,1918年3月首都が再びモスクワに移されると,ソビエト連邦の中心として急速な発展を遂げ,人口でも当時のペトログラード(サンクトペテルブルグ)を抜いてソ連第1の都市となった。1935年より都市改造計画が始まり,また第2次世界大戦後の市域の大拡張に伴う新しい高層建造物の増加によって近代的な大都市に変貌した。環状高速自動車道により市域外の森林公園と区分され,市域の無秩序な拡大を防いでいる。工業は機械,化学,食品,印刷,繊維などが発達しているが,新技術の開発部門,技能労働者を使用する部門の比重が高い。また近年,工業労働者に比べ,研究・教育部門やサービス部門の労働人口の増加率が高まっている。各種行政機構や,ロシア科学アカデミーをはじめとする各種アカデミー,研究所,モスクワ大学 (1755) ,チャイコフスキー音楽院,ロシア国立図書館,歴史博物館,トレチヤコフ国立美術館,プーシキン国立美術館,ボリショイ劇場,モスクワ芸術座など教育・文化施設が集中し,これら施設で働く人が多い。
クレムリン宮殿,ロシア正教の総本山ウスペンスキー大聖堂,ワシーリー・ブラジェンヌイ大聖堂など歴史的建造物も多い。モスクワには 11本の幹線鉄道が集まるとともに,四つの空港,三つの河港があり,国内各地,世界各国と連絡している。また市内交通は地下鉄,バス,トロリーバス,市電が中心である。なかでも地下鉄の発達はめざましく,環状,放射状に市域を走り,他の交通機関に比べて乗客数が多い。面積 1035km2。人口 1151万4330(2010)