関西三空港
関西三空港(かんさいさんくうこう)とは、日本の京阪神にある三つの主要な空港の総称である。
- 大阪国際空港(別名:伊丹空港、大阪空港) - RJOO(ICAOコード)、ITM(IATA空港コード)
- 関西国際空港(別名:関西空港、関空) - RJBB、KIX
- 神戸空港(別名:マリンエア) - RJBE、UKB
この呼称は、国土交通省を始めとする公的機関などでも用いられている[1]。都市コードは三空港共通でOSAである[注釈 1]。
Contents
概要
関西三空港は京阪神の空港群であり、同地域の航空旅客の多くによって利用されている。運賃計算上、三空港は同一の空港として扱われる(マルチエアポート)[2]。関西三空港間を相互に結ぶ航空便はヘリコプターなどを含めても全く運航されていない。なお、航空会社の公式ウェブサイトの発着地で、JALグループでは「大阪(伊丹・関西)」、ANAグループでは「大阪すべて」を選択すると、三空港の時刻をまとめて検索することができる。2010年6月1日まではJALグループも神戸空港に就航していた。
航空路線の大半は、大阪国際空港と関西国際空港に就航しており、大阪国際空港が「国内線の基幹空港」、関西国際空港が「国際線の基幹空港」として機能している。神戸空港の便数は、両国際空港と比較すると少ないが、主要路線の国内線が就航している。なお、国際線は関西国際空港にのみ就航している[注釈 2]。
大阪国際空港 | 関西国際空港 | 神戸空港 | |
---|---|---|---|
滑走路 | 1828 m × 45 m(14L/32R) 3000 m × 60 m(14R/32L) |
3500 m × 60 m(06R/24L) 4000 m × 60 m(06L/24R) |
2500 m × 60 m(09/27) |
旅客ターミナル(ゲート数[注釈 3]) | 北 (12)、南 (9) | 第1 (41)、第2 (20[注釈 4]) | (5) |
運用時間[注釈 5] | 14時間 (7:00 ~ 21:00) [3] | 24時間 | 15時間 (7:00 ~ 22:00)[4] |
年間発着容量 - A[5] | 13.5万回 (1日370便(定期便)の便数制限[3]に拠る値) |
23万回 (残事業完了時の空港能力値[注釈 6][注釈 7][6]。 運用制限等は課せられていない) |
2.2万回 (1日60便(定期便)の便数制限[4]に拠る値) |
年間発着回数 (実績) - B | 13.9万回[7] | 16.9万回[7] | 2.7万回[8] |
B/A[9] | 103.0% | 73.5% | 122.7% |
年間国内旅客数 | 1463万人[7] | 678万人[7] | 253万人[10] |
年間国際旅客数 | 0 | 1727万人[7] | 0 |
年間貨物取扱量 | 13.1万トン[7] | 70.0万トン[7] | 0 |
主要都市からの直線距離 | 大阪 12.3 km 神戸 25.0 km 京都 38.7 km 奈良 35.4 km 和歌山 67.2 km |
大阪 50 km[11] 神戸 28.8 km 京都 80.1 km 奈良 58.5 km 和歌山 23.7 km |
大阪 26.0 km 神戸 6.8 km 京都 64.6 km 奈良 53.0 km 和歌山 45.5 km |
空港とのアクセスに要する時間が 1時間以内である地域とその居住人口[12][注釈 8] |
京阪神都市圏周辺など 約1,500万人[13] |
大阪府南部・和歌山県北部 約400万人[13] |
阪神地域周辺[14]・ 播磨地域東部・淡路島北部など 約1,000万人[13] |
- より詳細な情報は各空港の項目を参照のこと
歴史
- 参照: 関西三空港の経緯と現状
路線
主要路線統計
2012年度
(単位:万人) | 大阪国際空港 | 関西国際空港 | 神戸空港 |
---|---|---|---|
新千歳空港 | 22.7/22.2 | 77.7/78.7 | 20.3/22.1 |
仙台空港 | 49.4/49.8 | -- | -- |
東京国際空港 | 252.2/246.2 | 51.5/53.5 | 40.2/39.2 |
福岡空港 | 30.6/30.8 | 24.0/23.9 | -- |
鹿児島空港 | 33.3/33.3 | 12.0/12.1 | 6.5/6.8 |
那覇空港 | 30.3/29.4 | 57.0/57.5 | 22.3/23.0 |
各数値のうち、/線の左側は大阪・関西・神戸発の旅客数、/線の右側は大阪・関西・神戸着の旅客数[15]。
就航路線
2018年8月現在
大阪国際空港 | 関西国際空港 | 神戸空港 | |
---|---|---|---|
女満別空港 | △ | △ | × |
旭川空港 | △ | 廃止 | 廃止 |
釧路空港 | △ | ○ | × |
新千歳空港 | ○ | ○ | ○ |
函館空港 | ○ | 廃止 | × |
青森空港 | ○ | 廃止 | × |
三沢空港 | ○ | 廃止 | × |
秋田空港 | ○ | 廃止 | × |
花巻空港 | ○ | 廃止 | × |
仙台空港 | ○ | ○ | ○ |
山形空港 | ○ | 廃止 | × |
福島空港 | ○ | 廃止 | × |
茨城空港 | × | × | ○ |
東京国際空港 | ○ | ○ | ○ |
成田国際空港 | ○ | ○ | 廃止 |
新潟空港 | ○ | ○ | 廃止 |
松本空港 | △ | 廃止 | × |
但馬空港 | ○ | × | × |
出雲空港 | ○ | × | × |
隠岐空港 | ○ | × | × |
石見空港 | △ | × | × |
松山空港 | ○ | ○ | × |
高知空港 | ○ | 廃止 | × |
福岡空港 | ○ | ○ | 廃止 |
長崎空港 | ○ | ○ | ○ |
大分空港 | ○ | 廃止 | × |
熊本空港 | ○ | 廃止 | 廃止 |
宮崎空港 | ○ | ○ | × |
鹿児島空港 | ○ | ○ | ○ |
種子島空港 | △ | × | × |
屋久島空港 | ○ | × | × |
奄美空港 | ○ | ○ | × |
那覇空港 | ○ | ○ | ○ |
宮古空港 | 移転 | ○ | × |
新石垣空港 | 移転 | ○ | 廃止 |
(国際線) | 移転 | ○ | × |
- ○: 毎日運航
- △: 臨時増便運航(大阪国際空港)、季節運航(関西国際空港)
- ×: 現在就航しておらず、かつても就航したことがない。
- 運航会社などのより詳細な情報は各空港の項目を参照のこと
アクセス
ここでは三空港間の乗り継ぎ・移動手段についていくつか例を述べる。各地からの三空港個別へのアクセスについては、それぞれの空港の項目を参照のこと。
大阪国際空港 - 関西国際空港
大阪国際空港と関西国際空港を直結する連絡バス(リムジンバス)が運航されている。ほかに鉄道や、鉄道とリムジンバスを複合した経路の利用で、運賃と所要時間の調整が行える。 2015年3月31日までの間、大阪国際空港と関西国際空港の間を飛行機の乗り継ぎのために移動する場合は、連絡バスの運賃が無料になる[16]。
往路
- 連絡バス 1700円 70分
- 大阪モノレール・阪急宝塚本線急行・JR関空快速 1580円 95分
復路
- 連絡バス 1700円 75分
- JR関空快速・阪急宝塚本線急行・大阪モノレール 1580円 110分
大阪国際空港 - 神戸空港
大阪国際空港と神戸空港を直結する公共交通機関は運行されていない。鉄道の利用、あるいは鉄道とバス(三ノ宮駅前乗換)の併用が可能である。
往路
- 大阪モノレール・阪急宝塚本線急行・阪急神戸本線特急・神戸新交通ポートアイランド線快速 880円 75分
復路
- 神戸新交通ポートアイランド線快速・阪急神戸本線特急・阪急宝塚本線急行・大阪モノレール 880円 80分
関西国際空港 - 神戸空港
関西国際空港と神戸空港を直結する高速船「神戸-関空ベイ・シャトル」が運航されている。ほかには鉄道の利用、鉄道とバス(三ノ宮駅前乗換)の併用が利用可能である。 両空港のターミナルから高速船の乗り場までは、無料の連絡バスで移動できる。
往路
- 連絡バス・神戸-関空ベイ・シャトル 1800円 41分
- 連絡バス(三ノ宮駅前行)・神戸新交通ポートアイランド線快速 2120円 90分
復路
- 神戸-関空ベイ・シャトル・連絡バス 1800円 41分
- 神戸新交通ポートアイランド線快速・連絡バス(三ノ宮駅前より) 2120円 100分
周辺空域
関西三空港は狭い地域に近接して建設されている(神戸空港を中心とした半径25 kmの範囲に三空港は存在する)。周辺空域には、関西ターミナルコントロールエリア (TCA) と関西進入管制区が設定されている。関西進入管制区内には、大阪国際空港、関西国際空港、神戸空港、八尾空港などが設置され、大阪航空局関西空港事務所管轄、関西ターミナル管制所によって、一元管制されている。
主に計器飛行方式 (IFR) で各空港に着陸するルートである標準計器到着方式 (STAR)、出発経路である標準計器出発方式 (SID) および転移経路は、各空港間の干渉を極力避けるため、以下のように設定されている。
大阪国際空港
陸上空港であるので、主に陸上を通過する。関西国際空港開港後は、大阪湾の上空を低高度で飛行することはできなくなった。西からの到着便は紀伊水道を経由し、和歌山市付近から大阪湾上空を避けるように生駒山近辺まで誘導され、そこから大阪国際空港に向けて計器進入を行う。東からの到着便はほぼ真っ直ぐに同空港に着陸することができる。
出発便は大阪国際空港周辺の陸上で高度を上げたのち、目的地へ向かう。西への出発便は、関西国際空港便・神戸空港便で混雑する明石海峡上空を避けて飛行する。南への出発便は明石海峡上空を飛行するため、特に高度を上げなくてはならない(およそ6,000 ft(約1830m)以上)。
関西国際空港
関西国際空港に離着陸する航空機は、大阪国際空港の騒音問題の轍を踏まぬよう、地上への騒音被害を抑えるために極力海上(紀伊水道・大阪湾・瀬戸内海)を飛行するルートを飛行する。
南側から滑走路06R・06Lに着陸する到着便は、淡路島上空を避けて紀伊水道へ誘導され、紀淡海峡を通って計器進入を行う。北側から滑走路24L・24Rに着陸する到着便は、淡路島の上空または紀淡海峡や明石海峡を経て神戸市の摩耶埠頭沖に向かい、そこから大阪湾岸に沿うように南下して計器進入を行う。
また、神戸空港開港後は、摩耶埠頭近辺の空域が神戸空港離着陸機に割り当てられ、結果、関西国際空港の空域を制限するかたちになっており、関西国際空港・神戸空港双方の便に負担を強いている。滑走路北側から着陸する場合は、この空域を特に低空で飛行するので、「低さの下限」が厳しく設定されている(MAYAHを4,000 ft(約1220m)以上で通過)。
大阪国際空港と比べ着陸に時間を要する状況を打破するために、国土交通省によって陸上ルートが、大阪国際空港が運用終了し空域が空く夜21時以降にかぎって認められた[注釈 9]。東京国際空港から関西国際空港に向かう便は、これまでの紀伊水道を通過するルートではなく、東から飛来して関西国際空港上空を西向きに突っ切ることで最短ルートで大阪湾に出て、小回りして降下し着陸する。従来の標準計器到着方式を辿る方法と比較して、空港の南側からの着陸で5分、北側からの着陸で10分の時間短縮が見込まれるという。
北や東へ向かう出発便は陸上を通る必要があるため、大阪湾内を一周するように旋回し、十分に高度を上げてから目的地へ向かう。陸上への騒音を低減するため、海岸線に達するまでにおよそ8,000 ft(約2440m)以上に高度を上げることが求められている。 西や南へ向かう出発便は、それぞれ明石海峡または紀伊水道の上空を経由し、極力陸上を避けて飛行する。
神戸空港
摩耶埠頭近辺の空域が神戸空港離着陸機に割り当てられている。主に関西国際空港の経路によって大きく制限を受けており、目的地に関係なく出発機・到着機ともに必ず明石海峡上空を通らねばならない。 また、関西国際空港で北側からの着陸が行われているときは、神戸空港周辺でおよそ1,500 ft(約460m)以下の低空飛行[注釈 10]を持続しなければならない。
関西のその他の空港
関西三空港以外にも関西には他に小さな空港がいくつかある。
- 八尾空港 - 定期便なし。大阪国際空港と関西国際空港では小型機の乗り入れが制限されているため、近畿におけるゼネラル・アビエーションの中心となっている。RJOY
- 南紀白浜空港 - 日本航空(ジェイエアによる運航)がE170にて東京国際空港に定期便が就航。RJBD、SHM
- 但馬飛行場(愛称:コウノトリ但馬空港) - 日本エアコミューターがサーブ340Bにて大阪国際空港に定期便が就航。RJBT、TJH
- 徳島飛行場(愛称:徳島阿波おどり空港) - 自衛隊との共同使用。東京国際空港と福岡空港に定期便が就航。RJOS、TKS
また、滋賀県にびわこ空港、兵庫県南西部に播磨空港[17]を建設する計画が存在した。
注釈
- ↑ ただし、大阪国際空港の敷地の一部、神戸空港の敷地の全部は兵庫県に属している。
- ↑ 大阪国際空港という名称であるが、要人の利用や整備飛来などの例外を除き、大阪国際空港への国際線の運航はない。
- ↑ ここでは旅客ターミナル外の駐機場は含めていない。
- ↑ これらはすべてPBBの無い屋外駐機場であるが、旅客ゲート周囲に配置された当該ターミナルに強く帰属されるゲートであるため、ここに計上した。
- ↑ 時刻はいずれも日本標準時
- ↑ 定期便以外も含めた空港全体の運用能力についての値である。
- ↑ 年間発着可能回数として230,000回、また、単位時間当たりの発着回数上限として1日あたり1,062回・1時間あたり45回(例外あり)という数値が設定されている関西国際空港の概要関西エアポート株式会社。
- ↑ 参考:近畿地方2府4県の総人口は
約2,100万人 - ↑ 2007年9月27日より
- ↑ 気圧・空気抵抗が高い低空を飛行する状態は燃費の面でも不利となる。
脚注
- ↑ 国土交通省の施政資料・各種会議の議事録などで用いられている。
- ↑ 航空会社や割引形態ごとの運賃の差は存在する。
- ↑ 3.0 3.1 大阪国際空港の運用時間・便数の規制は周辺環境保全のため。“伊丹空港の運用規制について”. 兵庫県 (2016年1月16日). . 2017閲覧.
- ↑ 4.0 4.1 神戸空港の運用制限については、見直しに向けた運営事業者動きがある。
“インバウンド増加で状況一変 神戸空港の制限緩和 運営の関西エア提案へ”. 産経新聞. (2017年4月2日) . 2017閲覧.
“神戸空港“制限緩和”へ動き”. 毎日放送. (2017年4月4日) . 2017閲覧. - ↑ これらの値の実質的空港容量・能力としての比較例・引用例として次の研究・検討例がある。
“関西3空港の今後の動向 ~3空港問題の解決と一体運営の可能性を探る~ (図表5等参照)”. みずほ総合研究所 (2015年8月3日). . 2017閲覧.
“関西圏空港研究会 報告書”. 一般財団法人 関西空港調査会、株式会社 三菱総合研究所 (2015年9月). . 2017閲覧.
橋下徹大阪府知事(当時) (2009年12月14日). “国土交通省成長戦略会議 第5回 国土交通省成長戦略会議について 資料5「関空ハブ化で日本の成長戦略をリード」19頁”. 国土交通省. . 2017閲覧. - ↑ 「関西国際空港2期事業再評価について」関西国際空港株式会社、2010年
「事業評価カルテ (再評価)」国土交通省、2010年[1]
“関西国際空港について”. 国土交通省. . 2017閲覧. - ↑ 7.0 7.1 7.2 7.3 7.4 7.5 7.6 関西国際空港・大阪国際空港2017年(平成 29 年)2月利用状況(速報値)関西エアポート株式会社
- ↑ 平成27年空港管理状況調書国土交通省
- ↑ これらの値の比較計算・引用例。“関西3空港の今後の動向 ~3空港問題の解決と一体運営の可能性を探る~ (図表5等参照)”. みずほ総合研究所 (2015年8月3日). . 2017閲覧.
- ↑ 神戸空港利用状況神戸市
- ↑ “関西国際空港|アクセス情報”. 新関西国際空港. . 2011-10-2閲覧.
- ↑ 「新空港レビュー」関西空港調査会、2003年5月
- ↑ 13.0 13.1 13.2 “伊丹空港の事業価値向上に関する研究会 伊丹空港の事業価値向上のための新たな空港ビジネスモデルの提言”. 一般財団法人関西空港調査会. . 2013-10-7閲覧.
- ↑ ここでの「阪神地域」には大阪市と神戸市を含む。
- ↑ 第9表 国内定期航空空港間旅客流動表(年度)国土交通省 航空輸送統計年報
- ↑ 大阪空港=関西空港線 リムジンバス 無料乗継キャンペーン関西国際空港
- ↑ 播磨空港 - 姫路市広報ひめじ1987年12月