キウイフルーツ
項目 | 分量 (g) |
---|---|
脂肪 | 0.52 |
飽和脂肪酸 | 0.029 |
16:0(パルミチン酸) | 0.017 |
18:0(ステアリン酸) | 0.012 |
一価不飽和脂肪酸 | 0.047 |
18:1(オレイン酸) | 0.047 |
多価不飽和脂肪酸 | 0.287 |
18:2(リノール酸) | 0.246 |
18:3(α-リノレン酸) | 0.042 |
キウイフルーツ(英: kiwifruit)は、マタタビ科マタタビ属の雌雄異株の落葉蔓性植物の果実である。また、マタタビ属のActinidia deliciosaを指して特にキウイフルーツとも呼ぶ。
1906年にニュージーランドが新しい果樹のキウイフルーツとして、中国原産のActinidia deliciosaやActinidia chinensisの品種改良に成功、1934年頃から商業栽培を開始し[2][3]、世界各国で食べられるようになった果物である。
「キウイフルーツ」という名称は、ニュージーランドからアメリカ合衆国へ輸出されるようになった際、ニュージーランドのシンボルである鳥の「キーウィ (kiwi)」に因んで1959年に命名された(果実と鳥の見た目の類似性から命名された訳ではない)[4]。カタカナでは「キーウィーフルーツ」「キーウィフルーツ」「キウィフルーツ」などの表記も使用される。
日本における花期は5月頃。耐寒性があり冬期の最低気温−10℃程度の地域でも栽培が可能である。産地は温帯から亜熱帯で、熱帯果実ではない。
最も一般的なヘイワード種(Actinidia deliciosa)の果実は、鶏卵程度の大きさをもつ楕円体で、皮が茶色く毛状の繊維に覆われている。この植物および果実自体もキウイ(またはキーウィー、キーウィ、キウィ)と略して呼ばれる場合がある。マタタビに近縁であることから、幼木や若葉はネコ害を受けることもある。
その他のマタタビ属の近縁種も「キウイ」という名称を利用して流通している。例: オニマタタビ(A. chinensis、ゴールドキウイ、ゴールデンキウイ)、サルナシ(A. arguta、ベビーキウイ、ミニキウイ)、シマサルナシ(A. rufa、ミニキウイ)など。
Contents
分類
種としてのキウイフルーツは、以前はActinidia chinensisという単一の種の下にいくつかの変種があるとされていたが、1980年代にActinidia deliciosa、Actinidia setosa、Actinidia chinensisの別々の種に分類された[5]。A. deliciosaとA. chinensisの主な差異は植生の形態、花および果実の形態、染色体の数である[5]。
A. deliciosaの果実は表面が粗毛に覆われており、緑色果肉品種である。最も一般的に市販されているヘイワード種はA. deliciosa種である。一方、A. chinensisの果実表面は軟かい疎毛で覆われ(果肉は黄色いことが多いが、黄緑色や赤色が混じるものもある)、2000年より販売の始まったゴールド・キウイ(ゼスプリ ゴールド、ホート16A種)はA. chinensis種である。
栽培品種
キウイフルーツ果実の食品学的な特徴としては、ビタミンC(アスコルビン酸)含量が多いことや、果実としては珍しくクロロフィルを含むことなどが挙げられる。これらの果実成分の含量は、キウイフルーツの品種によって大きく異なっている。
- グリーンキウイ(ヘイワード種)
- 普通のキウイフルーツ(ヘイワード種)の果肉は緑色を呈し、白色の果心の周囲に胡麻粒ほどの黒い種子が放射状に並んでいる。味は甘味と爽やかな酸味がある。糖質としては、還元糖であるグルコースとフルクトースが多く、糖全体の75~85%を占め、残りの15 - 25%がスクロースである。有機酸としては、クエン酸とキナ酸が多く、それぞれ果実質量の1%前後含む。次いで多いのがリンゴ酸で、0.2 - 0.3%程度含んでいる。特に未熟果では酸味が強い。また蛋白質分解酵素であるアクチニジンを含むため、食肉軟化剤としての応用や、舌苔除去タブレット(ブレオ)等への利用が行われている。果実の生食により、消化促進効果も期待されている。
- ゴールドキウイ(ホート16A種)
- ニュージーランド産を中心に、ゴールド・キウイという、果肉が黄色いものも出回っている。普通の(果肉が緑色の)キウイよりも酸味が弱く、甘みが強い。
- グリーンキウイ(ニューエメラルド種)
- ニューエメラルドという品種は両性種であるが、それ以外の多くの品種は雌雄異株である。2009年にA. chinensis (2n=58) の遺伝子地図の作成を通して、A. chinensisがXY型の性染色体を持つ性決定様式であることが示された[6]。
- レインボーレッドキウイ
- 果肉は黄色・緑色があり、中心部が白く種子の部分が赤い。果皮は無毛。糖度が高く、酸味は抑えられている。主な産地は、福岡県・静岡県・愛媛県。
栽培
日本での商業栽培は温州ミカンなど柑橘類の余剰対策の転作作物として始まった[2]。
専門知識がなくても比較的簡単に栽培ができ、一般向けにホームセンターなどの園芸コーナーで容易に苗が入手できる。雄雌を1株ずつ植え、藤棚を使いツルを上手くはわせて栽培すれば、10~11月頃には果実が収穫できる。よく成長した株の場合、一株から約1000個もの収穫を得ることもしばしばであるが、大量の結実は糖度が下がり酸が増加することで食味を低下させてしまう。表年・裏年もあるので、人工授粉と実の大きさがピンポン球大の頃に、摘果を行うことが望ましい。収穫後は30 - 60日程度の追熟をさせると食べられる。
利用
- 生食 - 熟した果実の皮を剥くか、半分に切りスプーンなどで中を抉り、食用にする。サラダ、デザートなどへの利用もされる。
- ゼリー - キウイフルーツにはタンパク質分解酵素「アクチニジン」が含んであり、ゼラチン使用の場合は生のままの使用は、固まらず不向きである。アクチニジンは熱・酸・アルカリに弱く、ジャムやシロップ煮など加熱処理したものには、分解する働きは無い。また、アクチニジンの含有量が少ない品種もあり、それらは生のまま使用可能である。また、寒天でも代用できる。
- ジャム - 砂糖を加えて煮て作る。もっと煮詰めて羊羹のような菓子にする例もある。
- 乾燥品 - スライスして凍結乾燥させた食品もある。
- 酒 - 醸造原料として利用しワインなどが作られている。
常温よりも冷蔵庫、氷水で冷やして食べると、より美味しくなる。
産地
主な産地として以下がある。
イタリア
年産50万トン弱で世界最大の産地。
中華人民共和国
年産30数万トンで世界第二位の産地。
- 陝西省周至県 - 陝西省の生産量は20万トン以上で、中国一多く、南部の秦嶺山脈に産地が多い。西安に近い周至県では「中華獼猴桃」の名で、他の産地と比べてかなり大振りのものも作られ、名産品となっている。
- 河南省南陽市西峡県 - 原産地に近く、30数種と多様な栽培種があるといわれる。
- 湖南省
- 四川省
ニュージーランド
年産30万トン程度で世界第三位。
日本
2015年の全国収穫量は2万7800トン[7]。農林水産省の調査品目(果樹)の一つであり、日本では1970年代、ミカン産地の過剰生産に対する価格大暴落を受けて、愛媛県を発端として、ミカン農家や関連農協により、転作作物として全国に広まった経緯がある。そのため、生産上位県はミカン産地を兼ねていることが多く、また地形、気候条件などによりミカンよりキウイフルーツの方が栽培に適していた産地(ミカンと比較すると耐陰性、耐寒性が高く、耐乾性、耐塩性に劣る)では、安価な極早生種栽培より安定した収入が得られたため、主産地として発展していった。また、産地によっては蒟蒻芋(群馬県)、クワ(栃木県)、ブドウ(山梨県)栽培からの転作例もある。尤も、このキウイフルーツ栽培も、1990年代にオレンジ自由化に伴って、転作が急激に進行したために生産過剰気味になって価格が暴落し、耕作放棄や作物転換が増加した。後に産地が連携して安定供給を図ったことで、2000年以降は価格も生産量も安定し、現在に至っている。国内生産の主な品種はヘイワードで、その他、各県がオリジナル品種を開発している。また、ニュージーランドのゼスプリによる「ゴールデンキウイ」などのライセンス品種を、愛媛県と佐賀県で栽培しており、宮崎県都農町にも大規模な農園を開発中である。尚、主力輸入先のニュージーランドが南半球に位置するために収穫時期が国内産と重ならないことで、海外輸入品と競合することが少なく、生産を相互補完している。
日本国内の主な産地。
- 栃木県 - 小山では桑畑からの転作で、キウイ栽培が始められた。[8]
- 群馬県 - 甘楽町が一大産地。[9]
- 神奈川県 - 国内4 - 5位。足柄平野一帯に産地が分布し、山北町からミカン栽培の転作作物として始められた。[10]あしがらキウイとしてブランド化を進めているほか、「香緑」も産出する。
- 山梨県 - レインボーレッドなどを特産。産地はブドウ栽培からの転作となっている。
- 静岡県 - 国内4-5位。種の周りが赤い「レインボーレッド」は富士川の農家、小林利夫によって育成された品種。[11]
- 和歌山県…国内3位。ミカン栽培からの転作により、旧那賀町、旧粉河町を中心に栽培が勧められ広まった。特にキウイ栽培に適した紀ノ川南岸の龍門山脈北嶺などに大規模な産地が展開する。[12]「熟姫」などの県独自ブランドがある。
- 徳島県 - 徳島県の場合は、1981年の寒害によってミカン産地が壊滅的被害を受けた後に、代替作物として始められたものである。
- 香川県…「香緑」「さぬきゴールド」など品種開発を盛んに推し進める、キウイバードコーポレーションによる優良品種生産で注目を集めている。[13]
- 愛媛県 - 栽培面積、生産、出荷量、販売額とも国内1位で、1970年代からミカン栽培からの転作によって産地が発展した。その経験を活かし、産地間で連携し、安定供給を図っている。ゼスプリによる契約産地の一つにもなっている。[14]
- 福岡県 - 国内2位。八女市立花町がその殆どを占める。八女市は自治体単位で生産量日本一であり、「甘熟娘」「キラキラ・キウイ」「甘うぃ」などのブランド品を開発しているほか、キウイワインなどの加工品生産も盛ん。[15]
- 佐賀県 - 唐津市(浜玉町)からミカンによる転作で広まる。ゼスプリによる契約産地の一つにもなっている。[16]
- 大分県 - ミカンに代わる転作作物として国東半島を中心に栽培が広まった。[17]
順位 | 都道府県 | 全国シェア | 収穫量 (t) |
---|---|---|---|
1 | 愛媛県 | 25% | 6820 |
2 | 福岡県 | 16% | 4350 |
3 | 和歌山県 | 13% | 3740 |
4 | 神奈川県 | 7% | 1970 |
5 | 静岡県 | 5% | 1400 |
表記・呼称
キウイフルーツ(キーウィーフルーツ、英語: kiwifruit)の名はニュージーランドで生まれたものである。
英語での表記・呼称
ニュージーランドで栽培が開始された当初、この果物は原産地の名をとってチャイニーズグースベリー(Chinese gooseberry)と呼ばれた。販売促進を狙い、現地の輸出商社によってキーウィフルーツ(kiwifruit)の愛称を与えられたのは、1959年のことであったとされる。古い名称は、ニュージーランド産とオーストラリア産のものを区別したいときにわずかに使用されることがある。
北アメリカでは単にkiwiと呼ぶことが多い。ニュージーランドではkiwiはあくまでも鳥の名およびニュージーランド人、または「ニュージーランドの」という形容詞のことであり、kiwifruitをkiwiと呼ぶことはしないため、注意が必要である。
日本語での表記・呼称
「キウイフルーツ」「キーウィーフルーツ」「キーウィフルーツ」「キウィフルーツ」などと表記され、それらを略した「キウイ」などという表現も使用される。
食物アレルギーの原因となることがあるので、この果物を使用した加工食品では、それを表記することを厚生労働省の通知により「特定原材料に準ずるもの」として推奨されている。その厚生労働省の通知では、「キウイフルーツ」と表記されている。
中国語での表記・呼称
原産地の中国では、古くから自生のシナサルナシ(支那猿梨)を指す語としては「獼猴桃」(びこうとう。拼音: ミーホウタオ)が一般的であり、李時珍の『本草綱目』に収載されるなど、生薬の名としても使われた。現在でも中国本土では、栽培品のキウイフルーツもこの語で指すのが一般的である。「獼猴」はアカゲザルを意味し、サルが好んで食べる果実という命名である。
一方、香港や台湾で栽培品のキウイフルーツを指す語は、kiwifruit の音訳である「奇異果」(広東語: ケイイークオ、台湾語: キーイーコー。中国語: チーイーグオ 拼音: )が一般的であり、台湾では「幾維果」(拼音: ジーウエイグオ)の名もある。ほかに「陽桃」(羊桃、楊桃とも。拼音: ヤンタオ。スターフルーツまたはヤマモモを指すこともある語)、「毛梨」(拼音: マオリー)、「藤梨」(拼音: トンリー)の語がある。
参考画像
- Actinidia chinensis A.jpg
雄花(左)と雌花(右)
- Kiwi Female flower02.jpg
雌花
- Kiwi Male flower.jpg
キウイフルーツの雌花
- Kiwi.JPG
果実の断面(緑色品種)
- New Zealand Golden Kiwifruit-darkblue.jpg
毛の殆ど無い黄色品種
- Sa kiwi skin.jpg
果皮の拡大
- Kiwis on branch.jpg
枝
- Weiki01.jpg
近縁種のサルナシの果実
脚注
- ↑ http://ndb.nal.usda.gov/
- ↑ 2.0 2.1 荒瀬輝夫、内田泰三 (2009). “長野県中南部に自生するサルナシ(Actinidia arguta (Sieb.et Zucc.) Planch. Ex Miq.) の果実形態と収量の系統間差異”. 信州大学農学部AFC報告 7: 11-19 .
- ↑ 『世界大百科事典 第2版(サルナシ)』 2006年 平凡社
- ↑ A. R. Ferguson (2004). “1904—the year that kiwifruit (Actinidia deliciosa) came to New Zealand”. New Zealand Journal of Crop and Horticultural Science 32 (1): 3-27. doi:10.1080/01140671.2004.9514276.
- ↑ 5.0 5.1 Liang Chou-Fen & A. R. Ferguson (1986). “The botanical nomenclature of the kiwifruit and related taxa”. New Zealand Journal of Botany 24 (1): 183-184. doi:10.1080/0028825X.1986.10409728.
- ↑ Fraser LG, Tsang GK, Datson PM, De Silva HN, Harvey CF, Gill GP, Crowhurst RN, McNeilage MA (2009). “A gene-rich linkage map in the dioecious species Actinidia chinensis (kiwifruit) reveals putative X/Y sex-determining chromosomes” (pdf). BMC Genomics 10: 102 (15pages). doi:10.1186/1471-2164-10-102. PMID 19284545 . 2009閲覧..
- ↑ 農林水産省 平成27年産キウイフルーツの結果樹面積、収穫量及び出荷量
- ↑ 田舎のITコンサル社長ブログ みんなのラジオ 公開放送
- ↑ ぐんまアグリネット ぐんまの農畜産物 ぐんま旬の味覚 キウイフルーツ
- ↑ JAかながわ西湘 農産物一覧 キウイフルーツ
- ↑ 農業ビジネス キウイ生産者グループ(静岡県)「レインボーレッド」産地化目指す
- ↑ 和歌山県 那賀振興局 農林水産振興部 農業水産振興課 キウイフルーツ
- ↑ さぬき讃フルーツ さぬきキウイっこ
- ↑ えひめの食財ファイル 果実 キウイフルーツ
- ↑ JA全農ふくれん 福岡ブランド果物 福岡キウイ
- ↑ JAさが 佐賀の農畜産物 キウイフルーツ
- ↑ Theおおいた キウイフルーツ
関連項目
- キーウィ (鳥)
- 9月1日 - 日本では9と1の語呂合わせから、ゼスプリインターナショナルジャパン株式会社によってこの日は「キウイの日」とされている[1]。
- マタタビ - キウイフルーツはマタタビの仲間のため、(果実ではなく)枝・根がネコ科の動物に恍惚感を与えることができる。
外部リンク
- ゼスプリ・インターナショナル公式サイト
- キウイペディア ゼスプリ・インターナショナル公式
- キウイフルーツ研究室 - キウイフルーツの品種や果実成分などの説明
- キウイフルーツ溶液受粉マニュアル 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (PDF)