テクニカルランディング
テクニカルランディング(英語: Technical Landing)とは、飛行機が給油のみの目的で空港に着陸すること。従って乗客の乗降や貨物の積み下ろしは原則行なわない。ただし、多くの場合乗務員の交代は行われる。
Contents
概要
1920年代-1960年代
1920年代に民間航空が勃興してから、1960年代にボーイング707-320Bやダグラス DC-8-50シリーズなどの、大西洋無着陸横断などの長距離飛行が可能なジェット旅客機が登場するまでの間、大西洋および太平洋横断路線や、アジア-ヨーロッパ路線などの主要航空路においても多く行われていた。
なお、航空機の性能が飛躍的に向上する第二次世界大戦前のアジア-ヨーロッパ路線やオーストラリア-ヨーロッパ路線などにおいては、当時の航空機の航続距離が短く10か所以上のテクニカルランディングが必要な上、運航速度が遅く到着までに数日を要すことから、テクニカルランディングが行われる地において宿泊が伴うことも多かった。
1960年代以降
1960年代中盤に入り、ダグラスDC-8-62などにより、無着陸での太平洋横断飛行やユーラシア大陸横断飛行が可能になってからも、政治的問題などにより、テクニカルランディングを余儀なくされる例は多く、1980年代に入り航空機の航続距離の問題がほぼ解消した後も、「国防上の理由」から、ソビエト連邦上空の領空が開放されていなかったため、依然として北回りヨーロッパ線が存在した。
1989年の冷戦終結後、1991年にソビエト連邦が崩壊し、ロシア連邦が領空通行料を得る目的で、ロシア空域が完全開放されるまでの間は、日本などの北東アジアとヨーロッパ諸国間の路線においても多く行われていた。
また、自国政府によるアパルトヘイト政策に反対する近隣諸国上空を飛行できなかった南アフリカ航空のヨーロッパ路線や北アメリカ路線、冷戦下で敵対するアメリカ上空を飛行できなかったキューバのクバーナ航空のヨーロッパ路線でも行われていた。
現在
現在においても、飛行時間が12時間を超える超長距離路線や離着陸重量のかさむ貨物便、航続距離の短い小型機のフェリーフライトを中心に行われている。また、超長距離路線でなくとも、ジェット気流や季節風の影響などを受けて行われることや、使用する航空機の航続性能不足のため行われることもある。
テクニカルランディングを実施している都市、航空会社、路線
現在
- 日本やアジア諸国と北アメリカ大陸を結ぶ太平洋路線の貨物便のほぼすべて
- タイ国際航空
- バンコク→ロサンゼルス→ソウル→バンコク
- 通常はA340-500型機によるノンストップフライトだが、機材がA340-600型機に変更になった場合でかつロサンゼルス発のみソウルに寄港。
過去
過去の代表的な寄港地を以下に記す。
- アラスカ州のアンカレッジ(日本とアメリカ本土を結ぶ北回り太平洋横断路線;日本や大韓民国、中華民国からヨーロッパを結ぶ北回りヨーロッパ路線)
- フェアバンクス(日本とアメリカ本土を結ぶ北回り太平洋横断路線)
- ウェーク島やアメリカ領サモアのパゴパゴなど(日本やオーストラリアとアメリカ本土やカナダを結ぶ南回り太平洋横断路線)
- アイルランドのシャノンやカナダのガンダーやグースベイなど(北アメリカとヨーロッパ大陸を結ぶ北回り大西洋横断路線)
- カーボベルデのサル島やポルトガルのマデイラ島など(南アメリカとヨーロッパ、北アメリカとアフリカ大陸を結ぶ南回り大西洋横断路線)
- ノルウェーのボードー(日本や大韓民国、中華民国からヨーロッパを結ぶ北回りヨーロッパ路線)
各空港と空港会社別のルートの詳細は以下の通りであった。
- テッド・スティーブンス・アンカレッジ国際空港
- 日本航空
- ノースウェスト航空
- 東京国際空港~~アンカレッジ~ニューヨーク
- エールフランス
- 東京国際空港~アンカレッジ~パリ
- キャセイパシフィック航空
- 香港~アンカレッジ~トロント
- 時期によっては香港発のみ直行で運航していたが、ボーイング777-300ER投入により往復とも完全に直行便に切り替えた。
- 香港~アンカレッジ~トロント
- 大韓航空
- アシアナ航空
- ソウル→ニューヨーク→アンカレッジ→ソウル
- ヨーロッパ系航空会社(ブリティッシュ・エアウェイズを除く)
- 東京国際空港(後に新東京国際空港)~アンカレッジ~ヨーロッパ各地
- ブリティッシュ・エアウェイズはアンカレッジをテクニカルストップの扱いとしていなかったため、東京~アンカレッジ、アンカレッジ~ロンドンのみの利用もできた。
- 東京国際空港(後に新東京国際空港)~アンカレッジ~ヨーロッパ各地
- デルタ航空
- ロサンゼルス~アンカレッジ~香港
- 機材はロッキード L-1011 トライスターを使用していたが、マクドネル・ダグラス MD-11に変更後は直行化された。
- ロサンゼルス~アンカレッジ~香港
- 中国国際航空
- エバー航空
- 台北→シアトル→アンカレッジ→台北
- フィリピン航空
- インディラ・ガンディー国際空港(ニューデリー)
- 中国民航・中国国際航空
- 上海~成田~サンフランシスコ
- 後に、上海~成田・成田~サンフランシスコ間のみの利用も可能となりテクニカルランディングから除外。
- フィリピン航空
- マニラ→成田→サンフランシスコ→シカゴ→サンフランシスコ→ホノルル→マニラ
- マニラ→成田→ロサンゼルス→シカゴ→ロサンゼルス→ホノルル→マニラ
- この他、マニラ→成田→サンフランシスコ→ホノルル→マニラの便があったが、この便に限り、マニラ→成田、成田→サンフランシスコのみの利用もできた。
- カリッタ・エア
- 香港→中部→アンカレッジ
- 横田飛行場
- パンアメリカン航空
- 羽田→横田~ウェーク島~ホノルル~サンフランシスコ
- 1959年にボーイング707が太平洋路線に就航した当時、羽田空港は滑走路の距離が2,550mと短かったため、1961年に3,000mに延伸されるまでの暫定措置として羽田を最小限の燃料で出発、滑走路の長い横田基地で給油していた。
- アメリカン航空
- サンノゼ - オークランド - 成田
- 本来はMD-11(後にB777-200)によるノンストップフライトだったが、1991年の開設当時はMD-11の納入が遅れていたため、暫定的にDC-10で就航していた。またサンノゼ空港の滑走路が2,712mと現在より短かったため、成田行きでは条件によってサンノゼを最小限の燃料で出発、滑走路の長いオークランドで満タンにするといった措置をとることがあった。2006年廃止。
参考文献
- シカゴ条約(国際民間航空条約) 第96条より