インターチェンジ
インターチェンジ(英: interchange)とは、複数の道路が交差する、又は近接する箇所において、その道路の相互を連結するランプを設けて、これらの道路を立体的に接続する構造の施設である。本線道路へ接続される流入口の道路(ランプ)は一方通行で、そこで車は十分加速して本線の交通の流れにスムーズに合流できるような構造となっている[1]。
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日本のインターチェンジ
日本でのインターチェンジは、その多くが道路法(昭和二十七年六月十日法律第百八十号)第四十八条の三に定義された「自動車専用道路の部分を道路、軌道、一般自動車道又は交通の用に供する通路その他の施設と交差させようとする場合の当該交差の方式」に規定された立体交差となる施設であり、インターチェンジの所属する道路の道路管理者(国土交通省、道路管理会社、都道府県等)が管理し名称等を決定している。
- 「インターチェンジの構造」は、複数の道路との間をランプを介して接続し、交差は立体交差となっている構造である。
- 道路構造令における第1種の高速自動車国道、及び自動車専用道路の場合は、第3種や第4種とランプで接続しているインターチェンジの構造のとき、インターチェンジとしている。
- 道路構造令における第2種の都市高速道路等は、インターチェンジの構造であってもランプが1本や2本など少ないこともあり特にインターチェンジの名称は付けていないことがほとんどである(例:福岡高速環状線天神北出入口(天神北ランプ)等)。
- 道路構造令における第1種の高速自動車国道、及び自動車専用道路や第2種の都市高速道路等のそれぞれをランプで接続している構造は、インターチェンジの構造であるが特にジャンクションとしている。
- 道路の本線車道は、インターチェンジに含まれない。又、複数の道路の本線車道の相互が直接接続する場合は、インターチェンジでは無い。
- 一般道路などでは、インターチェンジの構造であっても、名称にインターチェンジを用いないこともある。
道路構造令では、第1種と第2種の道路は他の道路との接続はランプで接続しなければならない。但し、本線車道の相互での平面接続は可能である(交差は不可)が、実際としては交通障害にならないような連続する構造が専らである。(高速道路での左右ルートへの分流・合流する箇所など)
道路立体交差の内、「ランプが複数ある構造の施設」が「インターチェンジ構造の施設」であり、そのインターチェンジ構造の施設の一部を○○インターチェンジと名称がつけられている。ジャンクションとは、インターチェンジ構造の施設であり構造上では何らインターチェンジと変わりはない。
名称
名称は、立地する都市名や自治体名などの地名をつけるのが一般的[2][3]。しかし、同じ都市にインターチェンジが複数ある場合などは「京都南」「京都東」のように地名のあとに方角などをつけて区別する。これは日本の鉄道駅の名称のつけ方(「西青山駅」「東青山駅」)とは逆になっている[2]。
また、2つの自治体にまたがるなどして設置されたインターチェンジは、名称確定時に両自治体間で衝突が発生することがある[4]。そのような場合、二つの自治体名を連ねて名称とすることが多い[2](三条燕ICなど)。
さらに、インターチェンジ名の重複が起こらないよう後から作られたインターチェンジ名称を設定している。北陸道の朝日ICと伊勢湾岸道のみえ朝日ICのケースなどがある[5]。ただし、「高速道路ファン手帳」の著者 佐滝による調査によれば、奈良県大和郡山市の西名阪道郡山ICと福島県郡山市の東北道郡山ICは重複している[5][※ 1]。
計画段階においては、主に立地する自治体名や接続する道路名などが仮称として用いられ、開通間近になると確定される(JCTなども同じ)。その他、自治体名の変更[※ 2]や施設自体の変更[※ 3]により変更される場合がある。また、開通後の名称変更は原則的に行われないが、中には例外もある[※ 4]。
インターチェンジ番号
日本の高速道路においては、基本的に起点(東名高速道路、中央自動車道、東北自動車道などの縦貫道では最も東京に近いIC、支線では縦貫道から分岐するジャンクションが起点とされ(支線の場合はジャンクションの隣のICから)、1番が振られることが多い)から終点に向かって番号が振られていく[8]が、開通当初より設置する計画があるが供用が遅れる場合にその施設を一時的に欠番とする(例えば東名高速道路の場合、起点の東京ICの次は東名川崎ICであるが、その間に東京外かく環状道路とのJCTの設置が予定されているため、番号は1番から3番に飛ぶ)[8]、幹線の道路から分岐するためあえて終点から番号を振る(北陸自動車道・長崎自動車道など)、全線開通すると環状道路となるため通しの番号が振りにくく、ジャンクションを過ぎることでインターチェンジ番号を繰り上げる(首都圏中央連絡自動車道および東京外環自動車道)などの例外も存在する。
道央自動車道では都心の札幌を中心として南北に延びる形になっているために他の路線とは付け方が大きく異なり、札幌JCT(開通当初は札樽自動車道と接続されていなかったことから設置がなく後に設置されたために番号は1番ではなく1-1となっている)の隣のICから南北方向にそれぞれ振られている。
欠番がない既存のインターチェンジの途中区間にインターチェンジが追加された場合、その都度番号を振り直すのは大変であるため、ハイフンを用いて枝番としている[8](ただし、旭川紋別自動車道愛山上川IC(2-1)、関越自動車道赤城IC(12-1)・塩沢石打IC(16-1)などのように追加ICでは無いにも関わらず例外で枝番が振られた例がある)[※ 5]。更に追加された場合は枝番が大きくなるが、小さい数字の側に追加された場合、番号が振り直される(例:常磐自動車道流山ICは当初「1-1」だったが、IC番号「1」の三郷インターチェンジとの間に三郷料金所スマートICが設置されたことにより「1-2」に振り直された)。また、枝番においても追加設置計画がある場合、あえて欠番にしておくこともある(例:IC番号「5-1」の中国自動車道神戸JCTが開通する前より神戸三田ICの番号は5-2だった)。
将来的に本線が延伸された際に備えて、接続する支線に枝番を振る例もある(長崎多良見ICから分岐する長崎バイパスなど。後に長崎自動車道本線が開通した)。既存のインターチェンジがダイヤモンド型であり、その間にジャンクションなどの他の施設が追加された場合に、枝番を振る例もある(札幌JCTのほか、清洲JCT、東海JCTなど)。
他の道路と接続がない場合、接続されるまでインターチェンジ番号が振られないこともある。また、後から既開通区間の番号が新規開通区間に合わせて振り直されることもある(宇佐別府道路など)。
尚1972年頃までは明確な番号割り当てルールがなく、各路線ごとに番号割り当てルールが決められていた。
また、ここで言うインターチェンジ番号は料金所番号とは異なる。
ドイツ(アウトバーン)、フランス、イギリス、韓国でもほぼ同じように付番されるが、フランスではジャンクションには番号が振られない。また、日本とイギリスでは一般道からのインターチェンジ入口にも番号が振られた案内標識が存在するが、ドイツ、フランス、韓国の入口案内の標識には番号が入っていない。イタリア(アウトストラーダ)にはインターチェンジ番号自体がなく、地名のみで案内している。
利便増進施設の占用
1998年9月の道路法改正により、高速自動車国道又は自動車専用道路の連結路附属地(インターチェンジの敷地)に、食事施設、購買施設その他これらに類する施設(これらは「利便増進施設」と総称される)の事業者を公募して、占用料を徴収した上で占用を許可できるようになった。同年12月、沼田ICと袋井ICにおけるコンビニエンスストアの開業を皮切りに、各地で事業化された。
有料道路におけるインターチェンジの付帯設備
有料道路のインターチェンジには料金所や検札所が設けられることが多い。料金所の種類としては、有人によるもの(係員が発券、料金の徴収などを行うもの)、ETC設備によるもの、なんらかの機器により自動で発券・料金徴収を行うものがある。また、高速バスのためのバス停やサービスエリア (SA) やパーキングエリア (PA) と併設されることもある。
積載物重量制限を超過した大型車両などを高速道路へ乗入れさせないため、インターチェンジの料金所の手前には軸重量計が設置されており、重量制限オーバーの過積載車両を1台ずつチェックしている[9]。検問に引っかかった過積載車両は、一旦料金所のゲートを通したあとで隅に寄せ、そこで設置された重量計で再チェックを受けて超過車両は一般道へ再び帰す仕組みである[9]。ただし、制限を超える積載物を運搬したい場合は、道路管理者の特別な許可を得ていていれば、通行時間や運航速度の制限を受けることになるが高速道路に乗り入れて通行することができる[9]。
出入り口を増やす社会実験として、2005年よりSAやPAなどにETC専用の出入り口「スマートインターチェンジ」が設けられており、2009年1月現在31箇所が実験期間終了後に恒久化されている。
分類
インターチェンジ形状には、全ての車線で平面交差を許容しない「完全立体交差型」と、1箇所以上の平面交差を容認する「不完全立体交差型」に区分できる[10]。前者の代表格がトランペット型やY型で、高速道路相互または高速道路と一般道路との接続に多く用いられる。後者の代表格がダイヤモンド型や平面Y型で、高速道路と交通量の多くない一般道路、あるいは一般道路同士の接続に多く用いられる。前者は後者に比べて安全性が高いが、用地面積や構造物を多く必要とするため、コストは高くつく[10]。日本では、設置スペースが比較的小さく済むトランペット型やY型が多い[1]。
アメリカのインターチェンジ番号
アメリカの高速道路(ハイウェイ)の場合は日本とは付け方が異なり、番号は基本的に州ごとに起点からのマイルポストに対応させて付けられている。都心などでインターチェンジの数が多くなる場合、数字の後にアルファベットが付けられる(例:1A,1B…)。アメリカは日本より圧倒的に面積が大きく、道路の路線延長も長いため、このような附番であると途中に追加されても基本的に振り直しの必要がない、目的地までの距離がある程度わかるなどのメリットが生じる。
同一ICに複数の出口がある場合も追加の場合と同様に、番号の後にアルファベット大文字が付く。
なお、IC入口の案内標識には路線番号が付けられているがIC番号は付けられていない。
インターチェンジ周辺に立地する施設
基本的には一般道路の幹線道路に準じる。ガソリンスタンド、駐車場を備えた飲食店(ファミリーレストラン、ドライブインなど)など乗用車の利用者向け店舗が多い。また娯楽施設としてボウリング場、パチンコ店なども見られる。自動車販売店や、インターチェンジの物流機能を期待して工場・倉庫・トラックターミナルなども多い。
この他に特徴的なものとして、ラブホテルまたはモーテルがしばしば見られ、多数立地することも多い。特に周辺部が文教地区や住宅地である場合、風紀や教育環境を乱すとしてトラブルも起きる。自動車の増加による騒音・大気汚染などの他にこのことがインターチェンジ建設への反対要因となることもある。
観光地周辺のインターチェンジではみやげ物の店舗も多い。
その他、近年ではショッピングセンター・スーパーマーケットなど、ロードサイド店舗の集積による大規模開発もしばしば見られる。特に無料道路においては、サービスエリアやパーキングエリアの代替として道の駅・コンビニ・飲食店などをインターチェンジ周辺に設ける個所もある。
暫定的なインターチェンジ
一般的にインターチェンジは恒久運用を前提として設置されるが、短期間(数か月~数年)の供用を目的とした「仮出入口」として設置される場合がある。
主に未開通区間や長期通行止め区間が存在する際、末端インターと市街地もしくは最速ルートとなる一般道が離れている場合等に利便性改善のために設けられる。また、国際科学技術博覧会(科学万博)の開催に伴い一時的に開設された例(常磐自動車道谷田部仮出口)もある。一定の期限(開通や通行止め解除)が来ると閉鎖される場合が多いが、仮出入口から正規インターチェンジに昇格する場合もある。
脚注
注釈
- ↑ JRの駅はどちらも「郡山駅」。市名を冠する高校はどちらも「県立郡山高校」である[5]
- ↑ 北関東自動車道岩瀬IC→桜川筑西ICなど。
- ↑ 首都圏中央連絡自動車道:桶川JCT→桶川北本ICなど[6]
- ↑ 東名高速道路 横浜青葉ICの新規開設に伴い、既設の横浜ICが横浜町田ICへ変更[7]など。
- ↑ 逆に上野原IC(9)や小牧東IC(32)など追加インターのなかでハイフンを用いない例もある
- ↑ 供用後にサガンクロス橋を追加した亜種となっている。
- ↑ 東京湾アクアライン連絡道の袖ヶ浦インターチェンジではない。なお、ランプ上に京葉臨海鉄道臨海本線の踏切が存在する。
- ↑ トランペット型構造を持ち合わせた、変則タイプのタービン型ジャンクション。
出典
- ↑ 1.0 1.1 1.2 1.3 浅井建爾 2001, pp. 66-67.
- ↑ 2.0 2.1 2.2 佐滝剛弘 2016, pp. 86-88.
- ↑ 武部健一 2015, pp. 196-197.
- ↑ 佐滝剛弘 2016, pp. 88,89.
- ↑ 5.0 5.1 5.2 佐滝剛弘 2016, pp. 90,91.
- ↑ “平成21年度開通予定の圏央道のインターチェンジ名称が決定しました。- 「桶川北本インターチェンジ」に決定 -”. 国土交通省関東地方整備局 (2009年7月13日). . 2017閲覧.
- ↑ 佐滝剛弘 2016, p. 91.
- ↑ 8.0 8.1 8.2 佐滝剛弘 2016, pp. 95-98.
- ↑ 9.0 9.1 9.2 浅井建爾 2001, p. 73.
- ↑ 10.0 10.1 第5章 立体交差 (PDF) - 「道路構造令の解説と運用」平成15年度 地区講習会資料(日本道路協会)
- ↑ 社団法人日本道路協会,「道路構造令の解説と運用」, 平成16年2月, p522
- ↑ 12.0 12.1 12.2 社団法人日本道路協会,「道路構造令の解説と運用」, 平成16年2月, p523
- ↑ 13.0 13.1 13.2 社団法人日本道路協会,「道路構造令の解説と運用」, 平成16年2月, p519
- ↑ 椎田道路 大規模改築事業の概要 別紙 (PDF) , p2, 2015年6月19日閲覧
- ↑ 社団法人日本道路協会,「道路構造令の解説と運用」, 平成16年2月, p514
- ↑ 社団法人日本道路協会,「道路構造令の解説と運用」, 平成16年2月, p515
- ↑ 社団法人日本道路協会,「道路構造令の解説と運用」, 平成16年2月, p524
参考文献
- 社団法人日本道路協会 『道路構造令の解説と運用』 丸善、2004年2月。ISBN 978-4-88950-122-3。
- 浅井建爾 『道と路がわかる辞典』 日本実業出版社、2001-11-10、初版。ISBN 4-534-03315-X。
- 武部健一 『道路の日本史』 中央公論新社〈中公新書〉、2015-05-25。ISBN 978-4-12-102321-6。
- 佐滝剛弘 『高速道路ファン手帳』 中公新書ラクレ、2016-08-10。ISBN 978-4-12-150559-0。
関連項目
- 日本のインターチェンジ一覧
- ジャンクション
- ランプ
- 開発インターチェンジ
- 地域活性化インターチェンジ
- 地域振興インターチェンジ
- ハーフインターチェンジ
- スマートインターチェンジ
- 本線料金所
- ラウンドアバウト
- サービスエリア
- 立体交差