道路構造令

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道路構造令(どうろこうぞうれい、昭和45年10月29日政令第320号)は、道路法第30条第1項および第2項の規定に基づき、道路を新設し、または改築する場合における道路の構造の一般的技術的基準を定めた政令である。

戦後の1958年(昭和33年)に初めて実施された道路構造令改正(旧・道路構造令、昭和33年政令第244号)は、これまで国道や県道のように道路の行政的格付けごとに区分を定めたものを改め、交通工学的に決めた区分に基本となる設計速度を定め、道路の単位区間を区切って適用区分を定めた[1]。また1970年(昭和45年)の道路構造令改正(現・道路構造令)では、都市間高速道路および都市高速道路を含む道路法上の道路すべてを包括するように構造基準の規定を改正した[1]

規定事項

道路の区分

道路の区分は、道路の種類、計画交通量(交通容量)、地域や地形の状況から決められるものである。これにより、道路の基本構造、つまり設計速度や線形、設計基準交通容量[2]や車線数、車道部や路肩などの幅員構成が決定されてくる。第3条により、第1種から第4種までに区分される。

区別 地方部 都市部
高速自動車国道自動車専用道路 第1種 第2種
その他 第3種 第4種
  • 具体的には、第2種は都市高速道路(首都高速阪神高速など)や都市部の高速自動車国道、第1種はそれ以外の高速道路、第4種は主に都市計画道路(街路)、第3種はそれ以外の一般的な道路。

第1種

第3条第2項により、第1種は第1級から第4級までに区分される。

種類 地形 計画交通量
30,000台/日以上 20,000台/日
〜30,000台/日
10,000台/日
〜20,000台/日
10,000台/日未満
高速自動車国道 平地部 第1級 第2級 第3級
山地部 第2級 第3級 第4級
高速自動車国道以外 平地部 第2級 第3級
山地部 第3級 第4級

第2種

第3条第2項により、第2種は第1級から第2級までに区分される。

種類 地区
大都市の都心部以外 大都市の都心部
高速自動車国道 第1級
高速自動車国道以外 第1級 第2級

第3種

第3条第2項により、第3種は第1級から第5級までに区分される。

種類 地形 計画交通量
20,000台/日以上 4,000台/日
〜20,000台/日
1,500台/日
〜4,000台/日
500台/日
〜1,500台/日
500台/日未満
一般国道 平地部 第1級 第2級 第3級
山地部 第2級 第3級 第4級
都道府県道 平地部 第2級 第3級
山地部 第3級 第4級
市町村道 平地部 第2級 第3級 第4級 第5級
山地部 第3級 第4級 第5級

第4種

第3条第2項により、第4種は第1級から第4級までに区分される。

種類 計画交通量
10,000台/日以上 4,000台/日
〜10,000台/日
500台/日
〜4,000台/日
500台/日未満
一般国道 第1級 第2級
都道府県道 第1級 第2級 第3級
市町村道 第1級 第2級 第3級 第4級

横断面の構成

道路の横断面の構成要素である、車道中央帯路肩停車帯自転車道自転車歩行者道歩道植樹帯・副道・軌道敷を、道路の区分により標準的な幅員を定める。設計する道路の交通機能や空間機能に応じて、横断面の構成要素の組み合わせと総幅員の両方の観点から幅員を決定する。第5条から第12条にかけて。

設計速度

設計速度とは、自動車が安全かつ快適に走行できる最高限度の速度を指し、実際の道路の制限速度のことではない[3]。道路構造令における道路の種類や等級区分に従って設計速度が決められており、高速道路や一般道路の別、各等級ごとに細かく規定されている[3]。道路設計の基礎とする自動車の速度である設計速度は、第13条により、道路の区分に応じて下表の設計速度の欄の上欄に掲げる値(太字)とする。ただし、地形の状況等、特別の理由によりやむを得ない場合においては、高速自動車国道である第1種第4級の道路を除き、同表の設計速度の欄の下欄に掲げる値(細字)とすることができる。

区分 設計速度
高速道路 第1種(地方部) 第1級 120 km/h 100 km/h
第2級 100 km/h 80 km/h
第3級 80 km/h 60 km/h
第4級 60 km/h 50 km/h
第2種(都市部) 第1級 80 km/h 60 km/h
第2級 60 km/h 50 km/h、40 km/h
一般道路 第3種(地方部) 第1級 80 km/h 60 km/h
第2級 60 km/h 50 km/h、40 km/h
第3級 60 km/h、50 km/h、40 km/h 30 km/h
第4級 50 km/h、40 km/h、30 km/h 20 km/h
第5級 40 km/h、30 km/h、20 km/h
第4種(都市部) 第1級 60 km/h 50 km/h、40 km/h
第2級 60 km/h、50 km/h、40 km/h 30 km/h
第3級 50 km/h、40 km/h、30 km/h 20 km/h
  • 例として、新東名高速道路御殿場JCT - 浜松いなさJCT)は第1種第1級に区分されており、法的な設計速度は120 km/hとされるが、実際にはこの表にはない設計速度140 km/hを担保した設計となっている。ただし、法定最高速度は2017年より110 km/hとなっている新静岡IC森掛川ICを除き、一般的な高速自動車国道と同等の100 km/hとされる。
  • 副道の設計速度は40 km/h、30 km/h、または20 km/hとされる。

線形

線形は、地形や地域との調和、連続性や平面・縦断線形との調和、視覚的検討、交通の安全性と円滑性・快適性、建設費・維持管理などの経済性、施工上の条件、地質・地形などの制約条件などを第14条から第25条にかけて総合的に勘案し決定する。 線形は平面的に見た平面線形と、縦断的に見た縦断線形(いわゆる勾配)の組み合わせにより決まる。平面線形は直線・円・緩和曲線、縦断線形は直線・縦断曲線により構成される。道路を設計する際に決められた設計速度と大きく関係しており、設計速度の高い道路ほどカーブの半径Rを大きくし、坂も緩やかなものにしなければならない[3]

その他

平面交差や立体交差、待避所、自動車駐車場、トンネル・高架の道路などが定められている。

施策指標

道路改良率

道路構造令の規定に適合するように改築された道路を改良済道路と称し、その総延長の全道路延長に対する比率を道路改良率という[4][5]

平成24年4月1日時点の全国一般国道における道路改良率は、92.1%である[5]

道路整備率

改良区間のうち混雑度(=交通量÷道路交通容量)1.0未満であるものの割合を道路整備率という[5]

平成24年4月1日時点の全国一般国道における道路整備率は、66.0%である[5]

脚注

  1. 1.0 1.1 武部健一 2015, pp. 204-206.
  2. 道路条件及び交通条件が基本的な条件を満たしている場合に、単位断面を1時間に通過しうる最大の乗用車台数。(道路の交通容量における新しい設計法に関する検討”. 国土交通省国土記述政策総合研究所. . 2014閲覧.
  3. 3.0 3.1 3.2 浅井建爾 2001, p. 63.
  4. 道路交通センサス”. 国土交通省. . 2014閲覧.
  5. 5.0 5.1 5.2 5.3 道路統計年報”. 国土交通省. . 2014閲覧.

参考文献

  • 浅井建爾 『道と路がわかる辞典』 日本実業出版社、2001-11-10、初版。ISBN 4-534-03315-X。
  • 武部健一 『道路の日本史』 中央公論新社〈中公新書〉、2015-05-25。ISBN 978-4-12-102321-6。

関連文献・資料

  • 日本道路協会『道路構造令の解説と運用』丸善出版、2015年6月30日、改訂版。ISBN 978-4-88950-130-8。

関連項目

外部リンク