ナイター
ナイター (nighter)
ナイターに対して、昼間に開催される試合はデーゲームと呼ばれる。一般には18時(午後6時)以後の開始の試合を指す。また本来であればデーゲームとして扱われる試合開始が15-16時(午後3-4時)以後に行われる場合は「薄暮試合」(準ナイターあるいはトワイライトゲーム)とも呼ばれる。
概要
「ナイター」は和製英語であり[1]、一般的には英語で夜間試合を意味する ナイトゲーム (night game) が使われることが多く、NHK(日本放送協会)はナイターではなくナイトゲームを採用しているが、野球解説者である伊東一雄は異論[2]を唱えている。
英語では night game と呼ぶことは確かであるが、nighter も稀にではあるが(野球に限らず)「夜間興行」という意味で確かに存在する。アメリカンフットボールなどでも「ナイター」を使うことから、和製英語ではないという説もある。
これらのことについて、日本生まれの和製英語が偶然英語でまれに使われている語と一致したのか、あるいは英語の稀語が日本で定着したのか(言語の伝来においてこのようなことは珍しくない)、はたまた和製英語が逆輸出された結果なのか、定説はない。
- 2014年6月18日付日刊スポーツ(大阪版)2面「そこが聞キティ」によると、1949年6月10日付のAP通信によるメジャーリーグ原稿の英文の中に「nighters」という記述が見られ、日本の新聞はそれを参考にした模様。
ナイターは野外で行われる試合に限り使われ、バスケットボール、ボクシングなどの室内競技においてはほとんど使われない(ただし1950年代に球場自体がボクシング会場として利用され、実施された例は多数ある)。近年野球などにおいてドーム球場が完成したことで、ドーム球場での試合は室内での試合とはなっているが、野球などの夜間試合は伝統的にナイターと呼ばれる。また、日本の放送局が行うプロ野球中継のナイトゲームの放送を「○○ナイター」と表記するのもよくある。
また、通常室内で興行を打つ大相撲においても、20時打出を「ナイター」と呼ぶこともある。本場所では1955年(昭和30年)の九月場所で17時半中入20時打出で試験的に行ったこともあり、サラリーマンからは好評だったものの、力士のコンディションの問題、新聞社からのクレームにより,、1場所限りで終わった[3]。ただし、本場所以外では極稀にナイター巡業が行われることもある。
1879年のウィーンで、白熱電球を用いたフィギュアスケートのナイトゲームの競技会が実施された[4]。
スキー場においては、夜間に照明下でゲレンデを営業することをナイターと呼ぶ。大抵のスキー場では一般の営業時間とナイター営業時間は分かれており、リフト券も一般営業時間のものをそのまま利用することはできず、「ナイター券」と呼ばれる専用の券を別に求めなくてはならない場合が多い。
ナイターの照明を「カクテル光線」と称するものもあるが、これは自然光に近づけるため、異なる色温度の光源を複数混在させて照射することをカクテル(混酒)に例えているものである。
日本のプロ野球における各球団のナイターの試合開始時間
日本において初のプロ野球ナイター開催は、1948年8月17日に横浜ゲーリッグ球場(現在の横浜スタジアムとほぼ同じ位置)で行われた読売ジャイアンツ対中日ドラゴンズの試合。当時ゲーリッグ球場はアメリカ軍接収下にあったため照明設備があり、20時08分から開催された(プロ野球ナイター記念日参照)。
ナイトゲーム初期(1950年代から1970年代前半)は主にシングル開催(1試合のみ)である場合19時開始が多かったが、1973年の第1次石油オイルショック以後は省エネルギー対策の一環として試合開始時刻が繰り上げられ、チームにより18時から18時30分までの範囲で試合開始時間を設定するようになった。2016年現在では、ナイトゲーム開催は都心より距離がある千葉市を本拠地とする千葉ロッテマリーンズ(18時15分開始)を除く全ての球団が原則的に18時開始としている。なお、近年でも稀に18時30分ないし19時開始[5]とするケースが見られる。
2009年は、平日の試合の場合、ロッテの金曜日開催試合が18時30分開始、また横浜ベイスターズの一部の火曜日開催の試合がTBSの編成の都合で、また2011年の横浜も金曜日の一部の試合で同じく18時30分開始となった。その他2010年から那覇で毎年開催されている公式戦(主催は2013年が阪神タイガース、2016年がオリックス・バファローズ、2017年は埼玉西武ライオンズ、それ以外は横浜・DeNA)では、当地のライフスタイルに合わせて19時開始とした(2013年まで。2014年以降は18時30分開始)。
2012年は、7月25日の巨人対DeNA戦(東京ドーム)を19時開始とした。これは、来場者から「会社帰りでもプレーボールから試合が見たい」などの意見が寄せられたことから、試験的に試合開始を1時間遅らせることにしたもの[6]。ただし、19時開始は前述した通り1970年代中盤までは本拠地開催でも盛んに行われ、それ以後も開幕戦で後楽園球場、東京ドームを併用した日本ハムファイターズと巨人が前年にAクラスを勝ち取って同日開幕となった場合、どちらか一方が19時開始[7]となった例もある。
全球団とも平日は原則的にナイター開催[8]だが、パ・リーグでは、原則的に土曜・日曜・祝日の開催はデーゲームとしている。但し、ロッテと楽天、西武、そして試合当日がほっともっとフィールド神戸である場合のオリックスは、夏場の一部[9]で暑さ対策[10]として、また飛行機での移動が多い北海道日本ハムファイターズや福岡ソフトバンクホークスを中心に、カード初日のうち移動日を挟んでいない場合は、移動時間に余裕をもたせるためナイターまたは17時開始の薄暮ゲームとするケースもある。
セ・リーグでも、近年は全球団とも土曜・日曜・祝日の開催では夏場の一部[9]を除いて極力デーゲームとしているが、東京ヤクルトスワローズでは本拠地である明治神宮野球場が大学野球の試合を優先しているため、夏場でなくてもナイターであるケースが多い。ただし、ファンサービスの一環として2013年以後、土・日の開催を17時からの薄暮デーゲームとする試合がある。また、DeNAでは2016年7月23日・24日と8月6日・7日の試合は17時30分開始[11]としている。かつては東京ドーム完成後の1988年以降、巨人戦に絡む試合はテレビ(地上波)でのプロ野球中継の視聴率が稼げることもあり、2000年まで開催されていた円山球場(照明非設置)でのカード及び消化試合の一部を除いてホーム・ビジター問わずほぼナイターとしていたが、2005年頃から興業的な面(子供達が観戦しやすい時間帯を利用して開催)への考慮や、プロ野球中継の視聴率低下によりゴールデンタイムの通常番組を潰してまでナイトゲーム中継する事をテレビ局が敬遠するようになったため[12]、巨人戦でも再び土曜・日曜や祝日開催では薄暮を含むデーゲーム開催が増えた。
セ・リーグ、パ・リーグともに夏場でも土曜・日曜や祝日のドーム球場ではデーゲームで開催されていることが多く、日程によっては全6試合ともデーゲームで行われ、ナイトゲームを組まなくなる例が多くなっている。一方で、2017年9月30日(土曜日)の開催では、シーズン終盤ということもありチームによっては前日から移動日を挟めず遠距離の移動もあったため、週末の開催ながら移動時間の確保のためドーム球場も含めて6試合全てが18時開始のナイターという近年では珍しいケースとなった[13]。セ・パ交流戦が1カード4試合だった2007年から2014年までは土曜と日曜でカードの入れ替えとなるケースがあったため移動の関係で一部土曜をデーゲームとし日曜にナイターあるいは薄暮試合として行われた。
日本シリーズは、かつては1964年にナイター開催した[14]以外は1993年まで全試合デーゲームで行われていたが、1994年に試験的に平日開催の第3 - 5戦をナイトゲームとしたところ好評であったため、1995年から全試合で18時台開始(球場または試合により開始時刻が異なる)というナイトゲームに移行した[15]。
オープン戦(春季)は気候の問題もありデーゲームで行われるが、例外的にドーム球場の一部では平日ナイターを組む場合もある。
別の表現
Jリーグではナイトマッチ (night match) と表現する。ノエビアスタジアム神戸など開閉式屋根付き競技場が屋根を閉じた状態であったり、札幌ドームのような本来屋内型である競技場でも屋外型競技場同様ナイトマッチと呼んでいる。ナイトマッチは大抵19時開始となるが、日曜日・祝日は夏場を除きデイマッチで行われ、土曜日も1試合組まれる程度である。また、札幌厚別公園競技場など照明設備が常設でない競技場でのナイトマッチは平日のみとなっている。
テニスやモータースポーツなどではナイトセッション(night session)と表現する。
公営競技ではナイター競走あるいはナイトレースと表現されるが、東京シティ競馬はトゥインクルレースという独自の呼称を採用している。なお、1998年より北九州メディアドームでの開催を始め、2000年10月18日より競輪祭を除く全日程を夜間開催とした小倉競輪場については、夜間用照明設備のある他の屋外型公営競技場同様、ナイター競走として扱われている。
日本で初めてナイター営業した施設
- 野球場:戸塚球場(1933年7月10日に行われた、早稲田大学野球部の二軍対新人戦が日本初のナイター試合。なお、プロ野球では上記の横浜ゲーリック球場となる)
- 多目的球技場(サッカー会場として利用):明治神宮外苑競技場(現在の国立霞ヶ丘陸上競技場)
- スキー場:岩原スキー場(施設の定義次第では沼尻スキー場)
- 競馬場:大井競馬場
- オートレース場:伊勢崎オートレース場
- 競輪場:函館競輪場
- 競艇場:桐生競艇場
- 海水浴場:虹ヶ浜海水浴場
脚注
- ↑ 球太郎の野球雑学ページ 和製英語
- ↑ 「ナイター」ってホントに和製英語? - 時とともに変わる言語1 - 0llo.com
- ↑ 1場所限りのナイター興行 大相撲コラム集(大相撲あんなこと・こんなこと) - goo 大相撲
- ↑ 『日本のスケート発達史』 ベースボール・マガジン社 1981年 p.22
- ↑ 2016年では3月29日・30日の日本ハム対オリックス戦と7月7日のロッテ対西武戦
- ↑ 7・25巨人対DeNA戦、午後7時開始を試行 - 読売新聞 2012年1月25日 なおこの前日まで都市対抗野球大会が行われ、その会場の後片付け作業(清掃・応援台の撤去など)が行われたためでもある。
- ↑ その一方は正午開始とした。
- ↑ パ・リーグのうち北海道日本ハムファイターズ、東北楽天ゴールデンイーグルス、千葉ロッテマリーンズ、埼玉西武ライオンズが、例外的に平日にもデーゲームを組むことがある。
- ↑ 9.0 9.1 概ね7月から9月上旬。
- ↑ ロッテ、楽天、ほっともっとフィールドでのオリックスは使用球場が屋外であり、熱中症などの対策のため。また、ほっともっとフィールドでは「花火ナイター」を実施するためもある。西武は本拠地はドーム球場だが日中では蒸し暑くなるため。
- ↑ セ・パ公式戦2016年7月、セ・パ公式戦2016年8月
- ↑ 特に日本テレビでは2000年代後半以降、土・日ゴールデンタイムのレギュラー番組が高視聴率を獲得しているため、この時間帯にナイターが組まれることが皆無となっている。
- ↑ 2017年9月30日試合結果 - npb公式ホームページ
- ↑ 東京オリンピック開催に伴う暫定措置。
- ↑ 但し、2011年に開催された第1戦のみ、番組を中継するフジテレビがゴールデンタイムに『ワールドカップバレー2011』を放送するため、デーゲームで開催した。
関連項目
- メタルハライドランプ - ナイターの照明に使われるランプ。このランプで照らされた光が俗に「カクテル光線」と呼ばれる
- 近年では一部の球場でメタルハライドランプに代えてLEDが使われている
- ナイター中継 (プロ野球中継)
- ナイター競走