発光ダイオード
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発光ダイオード(はっこうダイオード、英: light emitting diode: LED)はダイオードの一種で、順方向に電圧を加えた際に発光する半導体素子である。
1962年、ニック・ホロニアックにより発明された[1]。発明当時は赤色のみだった。1972年にジョージ・クラフォードによって黄緑色LEDが発明された。1990年代初め、赤崎勇、天野浩、中村修二らによって、窒化ガリウムによる青色LEDの半導体が発明された。
発光原理はエレクトロルミネセンス (EL) 効果を利用している。また、有機エレクトロルミネッセンス(OLEDs[2]、有機EL)も分類上、LEDに含まれる。
Contents
原理
発光ダイオードは、半導体を用いたpn接合と呼ばれる構造で作られている。発光はこの中で電子の持つエネルギーを直接、光エネルギーに変換することで行われ、巨視的には熱や運動の介在を必要としない。電極から半導体に注入された電子と正孔は異なったエネルギー帯(伝導帯と価電子帯)を流れ、pn接合部付近にて禁制帯を越えて再結合する。再結合時に、バンドギャップ(禁制帯幅)にほぼ相当するエネルギーが光として放出される。放出される光の波長は材料のバンドギャップによって決められ、これにより赤外線領域から可視光線領域、紫外線領域まで様々な発光を得られるが、基本的に単一色で自由度は低い。ただし、青色、赤色、緑色(光の三原色)の発光ダイオードを用いることであらゆる色(フルカラー)を表現可能である。また、青色または紫外線を発する発光ダイオードの表面に蛍光塗料を塗布することで、白色や電球色などといった様々な中間色の発光ダイオードも製造されている。
特性
電気的特性
他の一般的なダイオードと同様に極性を持っており、カソード(陰極)に対しアノード(陽極)に正電圧を加えて使用する。電圧が低い間は電圧を上げても電流が増えず、発光もしない。ある電圧を超えると電圧上昇に対する電流の増え方が急になり、電流量に応じて光を発するようになる。この電圧を「順方向降下電圧 (VF)」というが、一般的なシリコンダイオードと比較すると、発光ダイオードは順方向降下電圧が高い。発光色によって違うが、赤外では1.4V程度。赤色・橙色・黄色・緑色では2.1V程度。白色・青色では3.5V程度。紫外線LEDは最もVFが高く、4.5から6Vが必要である。
発光時の消費電流は表示灯用途では数mAから50mA程度だが、照明用途のものでは消費電力が数十Wに及ぶ大電力の発光ダイオードも市販されており[3]、最大駆動電流が10Aに迫る製品も存在する[4]。
逆方向に電圧を掛けた場合の耐電圧は、通常のシリコンダイオードより遙かに低く、通常はマイナス5V程度である。これを超えると破壊されるため、整流用途には使用できない。
光の特性
- 波長の偏り
- 蛍光灯や白熱灯など他の多くの光源と異なり、特定の波長に偏った光となっている。そのため、対応する波長に対する光化学反応が促進されたり、逆に明るさの割に必要な波長の光がないため十分な効果が得られないことがある。
- 有効活用としては、光源の種類によっては不要な紫外線や赤外線を含まない光が簡単に得られるため、紫外線に敏感な文化財や芸術作品、熱照射を嫌う物の照明に用いられる。特定の波長の光を好む植物の育成促進の効果もある。
- 逆に、明るくても特定の波長の光がないため、照明として使用した場合、動植物の育成を阻害することもある。例えば、ビタミンDの生成に必要な波長を含んでいないために欠乏症になったり、光合成に必要な波長の光を含んでいないために生育が阻害されたりする。特に、3色LED方式で白色発光を作り出している方式では、波長分布による弊害が顕著となる。
- なお、蛍光体を利用して波長分布を拡散している白色タイプもあるが、その場合でも光源のもともとの波長である青色のところにひときわ強い波長の光が分布している。
- 明滅の切り替え速度
- 入力電流変化に対する光出力の応答が早く通信などにも利用されるほか、照明に用いた場合は点灯と同時に最大光量が得られる。
物理的特性
駆動方式
基本的に光量が電流に比例することから、定電流回路や平均電流を一定になるように制御した高周波回路で駆動する。 交流電源はダイオードブリッジなどで整流して利用される。
電流制限抵抗
定電圧電源に接続して使用する場合は、抵抗器を直列に接続する事で電流をほぼ一定にできる。
電源電圧を E として電流 I を流すには、適切な抵抗値はおよそ (E-VF) /I となるが、LEDの順方向降下電圧 (VF) には個体差があり、抵抗にかかる電圧が変わるため、実際に製造された製品に流れる電流は設計時に想定した値に比べて多少のバラツキが生じる。
抵抗も電力を消費するため電力効率は良くないが、定電圧電源を用意できる場合には最も単純かつ低コストな回路となる。そのため、発光効率を特に追及しない表示灯用途には多用される。
定電流駆動
定電流ダイオード (CRD) を直列に接続する等、能動素子で定電流回路を構成する事により自動車やバイクのバッテリー等、電源電圧がある程度変動する環境下でも対応できる。
電源には、LEDの順方向電圧降下に加え、定電流回路の動作に必要な電圧が必要となる。CRDは動作に5から10V程度の電圧を必要とするが、1V程度の電圧でCRDと同等の動作ができるICも利用されている。
回路は単純だが、電流制限抵抗と同様、過大な電源電圧を電力を消費して吸収するため、電源電圧によっては電力効率が悪くなる。
高周波駆動
人間の視覚が認識できない短い時間周期の点滅を繰り返し、見かけ上一定の明るさを得る。明るさは点灯時間のデューティ比を変えるパルス幅変調により容易に調節できる。
駆動回路には電力効率は良いが出力に電流・電圧に変動(リップル)があるスイッチング電源や昇圧回路を用いることが可能である。また、出力電流の平均を一定に保つことで、乾電池のように電源電圧が低かったり、変動幅が大きかったり、という場合にも一定の明るさを維持可能である。
駆動回路で消費される電力が他の駆動方式に比べ少なく、入力電力の大半がLEDで消費されるため、電力効率は比較的良い。しかし、電流断続時の急激な電流変化により生じるノイズ放射が機器内外へ電磁妨害を及ぼすほか、回路規模増大に伴ってコストと実装体積が増加する。
使用に必要な知識
- 発する光の強さは電流の量におおよそ比例する。しかし特に大電流域では効率が低下する。
- 熱に弱く、89以上で素子の劣化が始まるため寿命が縮む。
- 発熱が少ないとはいえ、高出力品では相応に発熱する。熱に弱いので、放熱の必要性は白熱球や蛍光灯よりむしろ高い。ヒートシンクなどで適切に放熱しないと効率の低下や寿命の短縮で発光ダイオードの利点が失われる他、発煙・発火などの事故に繋がる事がある。
- 連続最大電流、瞬間最大電流を超えないこと。定格電流より大きい電流を流すと高光束が得られるが、寿命が極端に短くなる。LEDを使用した市販品では、寿命を犠牲にして高輝度を得ている物や価格を抑えるために電流を制限する回路を省いている物もある。
- 極性があることから、アノードとカソードを間違えて印加した場合発光しない。また逆方向に対する耐電圧が低く、破壊されやすい。
- 並列接続する際は注意が必要[5]。順方向降下電圧 (VF) には個体差があり、並列に繋ぐと最も順方向降下電圧(簡単に言えば、電流が流れ始める電圧)の低い素子のみに電流が集中する。電流の集中でさらに発熱し電気抵抗とVFの値が減少し、さらに電流の集中が促進されるという悪循環が起こる。発光量が不均一になるだけでなく、電流が最大定格を超えれば過熱による寿命短縮や焼損の危険もある。素子の破壊がオープンモードだった場合は、次にVFの低い素子に更に大量の電流が集中し、連鎖的に破壊が進行する。複数のLEDを同時に点灯する場合は、可能な限り直列に繋いだ上で抵抗や能動素子で定電流制御した回路を1単位とし、この単位回路を並列に電源に繋ぐ。ただし、複数の素子が内部で並列接続されている製品もある[6]。
- GaN系などの発光ダイオードは静電気やサージ電流に弱い。
- レンズ付きの発光ダイオードの場合、素子の光軸と実際に放出される光の方向は、製造過程でのばらつきのため通常一致せずわずかにずれている。
- 特定の周波数に偏った光であるため、見た目の明るさ以上に強い光であり、該当する周波数の光による光化学反応が促進される。例えば、他の発光器具にも言えることではあるが直視すると、目に悪影響を与える事がある。特に紫外線や高出力のものはその傾向が強い。
材料
放出された光の波長(色)は、pn接合を形成する素材のバンドギャップの大きさが関係する。発光ダイオードでは近赤外線や可視光、紫外線に至る波長に対応したバンドギャップを持つ半導体材料が用いられる。一般に発光ダイオードには発光再結合確率の高い直接遷移型の半導体が適する一方、一般的な半導体材料であるケイ素(シリコン)やゲルマニウムなど間接遷移型半導体では、電子と正孔が再結合するときに光は放出されにくい。しかし、黄色や黄緑色に長く使われてきたGaAsP系やGaP系などドープした不純物の準位を介して強い発光を示す材料もあり、広く用いられている。
以下の素材を使用することにより、さまざまな色の発光ダイオードを作り出すことができる。
- アルミニウムガリウムヒ素 (AlGaAs) - 赤外線・赤
- ガリウムヒ素リン (GaAsP) - 赤・橙・黄
- インジウム窒化ガリウム (InGaN) /窒化ガリウム (GaN) /アルミニウム窒化ガリウム (AlGaN) - (橙・黄・)緑・青・紫・紫外線
- リン化ガリウム (GaP) - 赤・黄・緑
- セレン化亜鉛 (ZnSe) - 緑・青
- アルミニウムインジウムガリウムリン (AlGaInP) - 橙・黄橙・黄・緑
- ダイヤモンド (C) - 紫外線
- 酸化亜鉛 (ZnO) - 青・紫・近紫外線(開発中)
- ペロブスカイト半導体 - 赤・黄・緑
以下は基板として利用されている。
青色発光ダイオード
青色発光ダイオードは主に窒化ガリウム (GaN) を材料とする、青色の光を発する発光ダイオードである。青色LEDとも書かれる。日本の化学会社、日亜化学工業株式会社が大きなシェアを占めている。他の有力メーカーとしては、豊田合成、星和電機などがある。GaN系化合物を用いた発光ダイオードの開発とそれに続く青色半導体レーザーの実現により、紫外から純緑色の可視光短波長領域の半導体発光素子が広く実用化されるに至った。
歴史
発光ダイオードは低電力で駆動することができる光源のため、ディスプレイへの応用が期待されていた。RGBによるフルカラー表示のためには光の三原色(赤・緑・青)の発光素子が揃う必要があるが、このうち1980年代中頃までに実用化されていたのは純赤色のみであった。
当時も「青色ダイオード」の名で販売されているものはあったが、色味が紫がかっており、純青としての実用的な高い輝度を出す製品は皆無だった。また黄緑色は赤色と共に早くから実用化されていたが、純緑色の実現には結果的に青色と同じくGaN系半導体材料が必要とされ、純緑色LEDの実用化は青色LEDの登場以降である。これらのことから、発光ダイオードによるフルカラーディスプレイの実現は困難だった。
純青色発光の実現のためセレン化亜鉛 (ZnSe) 系化合物や炭化ケイ素 (SiC) を用いての研究が古くから行われ、ZnSe系による青緑 - 緑色発光ダイオードの開発に至った他、SiCの青色発光ダイオードは弱い発光強度ながら市販もされた。しかしその後、GaN系化合物による青色発光ダイオードが急速に普及したため、現在ではこれらの材料系の技術は白色発光素子や基板などの用途に転用されている。
窒化ガリウムを用いた高輝度の青色LED開発に関して、1986年、赤崎勇、天野浩らが高品質、高純度のGaN結晶の結晶生成に成功。天野浩は不可能とされていた「PN接合」が可能だと初めて証明した。1993年に中村修二が、世界に先駆け高輝度青色LEDを発明、実用化した(文部科学省平成28年版科学技術白書のp20とp28に記載されている)。
2001年8月、中村修二が職務上で1993年11月に発明した(職務発明)「404特許」を巡って元勤務先の日亜化学工業を提訴し、同特許の原告への帰属権確認ないし譲渡対価を巡って係争した(青色LED訴訟)。この訴訟は企業と職務発明者との関係について社会の関心を広く喚起し、裁判所は一審では発明の対価を約604億円と評価し200億円の支払いを命じたが、東京高裁は和解へと誘導し1審判決が認定した発明の対価約604億円の1/100 相当の6億円を「対価」として提示。日亜は、(いずれにせよ対価の支払いが遅れていたので)遅延損害金を含む約8億4千万円を支払うことで和解が成立した。しかし中村修二はなお納得できず、「高裁は山ほど提出した書面をまるで読まず、最初から和解金額を決めていた。高裁の和解案の決め方は正義とは言えない」と指摘するために、滞在していたアメリカより日本に訪れるという出来事もあった[7]。
2004年12月、東北大学金属材料研究所の川崎雅司(薄膜電子材料化学)らの研究チームはより安価な酸化亜鉛を用いた青色発光ダイオードの開発に成功した。青色LEDの再発明ともいわれている。この成果は同年12月19日付の英科学誌ネイチャーマテリアルズ(電子版)にて発表している。高コストの窒化ガリウムに取って代わる可能性もある。
赤崎、天野、中村の三名は青色発光ダイオードに関する業績が評価され、2014年のノーベル物理学賞を受賞した[8][9]。
白色発光ダイオード
白色LEDとも書かれる。白色光とは、一般には可視光線の全スペクトル域に渡り強度が連続している光(連続スペクトルの光)を指す用語である。発光ダイオードで得られる発光は、レーザーほどではないものの狭い波長範囲のみに限られるため、この意味での白色光を生成することはできない。しかし、白色のような多色光に対しては、スペクトルが異なっていても同一の色と人間の眼に認知させるようにスペクトルを設計することが可能である。典型的には、テレビのように光の三原色を混合したり、補色関係にある2色を混合して、適切な強度比に設計すれば白色に認知される光が生成できる。白色発光ダイオードではこの原理が利用され、具体的な手法がいくつか考案されている。この結果、低電圧でのDC駆動などダイオードの持つ電気的な扱いやすさのみならず、光源としても高効率(低消費電力)であり、しかも寿命も既存の光源以上に長いことから、LED照明として白色発光ダイオードが利用されるなど、気体を使わない固体光源として普及が進んでいる。
蛍光体方式
青またはそれよりも波長の短い光を放つ発光ダイオードのチップに、その発光ダイオードの光により励起されて長波長の光を放つ蛍光体(フォトルミネセンス)を組み合わせた方式。発光ダイオードのチップは蛍光体で覆われており、点灯させると、発光ダイオードチップからの光の一部または全部が蛍光体に吸収され、蛍光はそれよりも長波長の光を放つ。発光ダイオードのチップが青発光であれば、チップからの青色の光に蛍光体の光が混合されてともに出力される。蛍光波長や蛍光体の厚さなどを調整すれば白色光を得ることができる。この蛍光体には、例えばYAG系のものが用いられる。この方式には、単一のチップとパッケージだけで白色発光が実現可能だという利点がある。
白色に認識される光を放つような白色発光ダイオードの実現には、青色発光ダイオードの存在が不可欠であった。蛍光体による発光では、蛍光体が受けた光より短い波長の光は得られないため、赤や緑のLEDでは短波長の成分が不足し白色に認識されないからである。そして蛍光体方式の開発により、固体光源である白色発光ダイオードが本格的に普及することとなった。
擬似白色発光ダイオード
現在の白色発光ダイオードの主流であり、一般に青黄色系擬似白色発光ダイオードと呼ばれている。視感度の高い波長である黄色に蛍光する蛍光体と青色発光ダイオードとを組み合わせることによって、視覚上で大変に明るい白色発光ダイオードを実現している。青色発光ダイオードの製造を行っている日亜化学は元々蛍光体の製造メーカーであるためこの方式を得意としている。豊田合成も同方式を用いている。この方式により作成された白色発光ダイオードが、世界初の白色発光ダイオードとされている。擬似白色発光ダイオードの実現は、世界的にインパクトを与えた青色発光ダイオードの発表の後だったため報道は控えめだったが、業界内では大きなニュースとなった。
擬似白色発光ダイオードは非常に高いランプ効率 (lm/W) 値が得られることが特徴である。その理由には視感度が関連しており、視感度の高い波長にスペクトルを集中させた蛍光体の黄色と発光ダイオードの青色とを組み合わせることによって実現されている。一般に、人間の網膜にて光の強度や色を識別する細胞組織である錐体は黄緑色の波長(約555nm付近)に高い分光感度を持つ(視感度が高い)。このため、この黄緑色の波長のスペクトルに蛍光体の発光を集中させるとエネルギーの割に人は明るく感じ、視覚上大変に明るい白色発光ダイオードが実現できる。100lm/Wを超えるような白色発光ダイオードでは、ランプ効率が高い擬似白色発光ダイオードを実現するために、全光束に対するエネルギー効率が高くなるように視感度を考慮した最適化がなされている。なお、物理的なエネルギー効率は、物理エネルギー量を示す放射束を投入電力(ワット)で除算して計算されるため、光として取り出すことのできる光(光子数)を増すことにより高めることができるが、それのみでは視感度に対して効率の高くない波長域の光が多い場合もある。ランプ効率を高めるには、物理的に効率が良く、かつ、視感度に適したスペクトルが得られる必要がある。
その引き替えに、特にランプ効率を優先した設計の擬似白色発光ダイオードでは演色性が低下しやすい。一般には擬似白色発光ダイオードの平均演色評価数 (Ra) は76程度となり、一般型蛍光灯 (Ra67) と三波長型蛍光灯(同85)の中間に当たる。ただし現行の演色性の評価法は白熱灯や蛍光灯を前提としたもののため、発光ダイオードのように急峻なスペクトルを持つ光源の場合に、演色性が見た目の印象より低く評価される傾向がある。このため、前述のような特性をもつ光源について平均演色評価数がもっと高くなるように評価法を見直す議論もある[10]。
高演色白色発光ダイオード
青色発光ダイオードと黄色蛍光体を組合わせた構成での白色光は、緑や赤のスペクトル成分が少ないため演色性が低い。赤色や深紅色の発色が悪いという性質を改善するために黄色以外の蛍光体を混ぜて演色性を改善しようとすると、ランプ効率 (lm/W) が低くなる[11]。これは赤色系の蛍光体を多く配合して赤色領域で多くの光エネルギーを発生させてもこの領域の人間の目の視感度が低いことからランプ効率上の評価が低くなってしまうという理由による(上述)。また、透過して出力される青色光の割合を正確に揃えることが難しく、製造時の色温度の個体差が大きい欠点もある。
これらの点について、近年は、蛍光体と発光波長の点で進展が見られる。蛍光体については、独立行政法人物質・材料研究機構がβサイアロン蛍光体の開発に成功し、これを用いることで大幅なランプ効率の向上が得られるとともに赤色や深紅色の発色の問題も解決されるとされていたが、赤色波長を多く発色させるとランプ効率は低くなることは物理的限界であって、改善できるものではないことが確認された。発光波長の点では、紫 - 紫外線を発光する発光ダイオードが開発されている(ただし、紫色発光ダイオードは紫外領域に近いため暗く見える比視感度の問題がある)。これにより、蛍光灯同様に紫光または紫外光の励起により多色を発光させ、演色性を向上させた白色発光ダイオードも登場している[12]。
3色LED方式による白色発光
その他の白色発光の実現方法として、光の三原色である赤色・緑色・青色の発光ダイオードのチップを用いて1つの発光源として白色を得る方法もある[13]。この方式は各LEDの光量を調節することで任意の色彩を得られるため、大型映像表示装置やカラー電光掲示板の発光素子として使用されている。ただし、照明用には適さないとされる。照明として用いることを考えた場合、蛍光体方式はある程度幅のあるスペクトルなのに対して3色LED方式は赤・緑・青の鋭い三つのピークがあるのみで黄およびシアンのスペクトルが大きく欠落している。3色LED方式の白色発光は光自体は白く見えても自然光(太陽光)の白色光とはほど遠いため、それで照らされた物の色合いは太陽光の場合と異なってくる。照らされた物の色合いが違って見える理由を説明する。可視光線のうち、
- 赤色と緑色の光を反射し他を吸収する物体
- 黄色の光のみを反射し他を吸収する物体
があったとする。太陽や白熱電球の光はあらゆる波長の可視光線を含むのでその下では、1は赤色と緑色の光が反射され網膜の赤錐体と緑錐体を刺激して黄色に見える。2は黄色の光が反射され、その光が網膜の赤錐体と緑錐体の両方を刺激して黄色に見える。つまり両者とも黄色に見える。ところが光の三原色の混合で照らした場合、1は赤と緑の光が反射され黄色に見えるが2は赤・緑・青いずれも物体に吸収されてしまい、理論上は黒く見えることになる。実際には完全に黄色の光のみを反射して他の光を一切反射しないという物体はないので黄色いはずのものが黒く見えるほどの極端なことにはならないが、多少色合いが異なって見える。蛍光灯ではこの問題を解決するために5色発光や7色発光のものがあるが、それでも演色性は白熱灯に一歩譲る。
この方式は3つのチップが必要で、見る角度に依存しない均一な発光色を得ることは難しい。さらにそれぞれのチップの要求する電圧が異なるので点灯回路も3系統必要である。しかし蛍光体が発光ダイオードのチップからの発熱で劣化する問題を回避できるメリットがある。また液晶バックライトなど表示用に用いる場合は赤・緑・青の3つの成分しか持たないことが逆に利点になり、色純度の高い鮮やかな表示色を得ることができる。
製造
発光ダイオードの基本構造はpn接合であるが、実際には発光効率を上げるためにダブルヘテロ接合構造や量子井戸接合構造などが用いられ、技術的には半導体レーザとの共通点が非常に多い。製造法としては、基板の上に化学気相成長法によって、薄膜を積み重ねていく方式などが用いられる。また、ペロブスカイト半導体ではインクジェット等の印刷技術で製造することができる。
製品の外観
最も単純な構造は、発光部を内包する透明樹脂部分と2本の端子からなる。多色のLEDを内蔵したものは、3本以上の端子を持つ。
ガリウムの資源問題
インジウムと比較してガリウムの資源は逼迫していない。しかしその産地が主に中国、カザフスタン、ウクライナに偏在し、これら各国に特有の政治的カントリーリスクの観点から、半導体材料をガリウムに依存し過ぎることに懸念が広がっている。このため酸化亜鉛やシリコン、炭化ケイ素といった材料による実用的な青色発光ダイオードの実現が急務となっている。
応用
低消費電力、長寿命、小型であるため数多くの電子機器に利用されている。特に、携帯電話のボタン照明などその特性をフルに活かして採用されているといえる。また、1つの素子で複数の色を出せるような構造のものもある。機器の動作モードによって色を変えることができるなど、機器の小型化に貢献している。
当初は輝度が小さかったため電子機器の動作表示灯などの屋内用途に限られていたが、赤色や黄緑色の高輝度タイプのものが実用化されてからは屋外でも電球式に変わり電光掲示板に採用され、さらには駅の発車標などにも使用されるようになった。
高輝度の青色や緑色、それを応用した白色の発光ダイオードが出回るようになってからは競技場のビジョンなどのフルカラーの大型ディスプレイ、電球の代わりとして懐中電灯や信号機、自動車のウィンカーやブレーキランプ、各種の照明にも利用されている。特にブレーキランプに使用した場合、電球よりブレーキペダルを踏んでから点灯するまでのタイムラグが短いため安全性が向上する。2006年には日本初となる超高輝度LEDを用いた前照灯が、JR東海313系電車で採用された。2012年5月開業の東京スカイツリーでは、夜のライトアップ照明を全てLEDで行っている。
なお、発光ダイオード自体の寿命は長いが使用目的によっては樹脂の劣化による光束低下の進行が早くなることもあり、LED交換が必要となる程度まで光束が落ちた場合に基板の交換も含む大規模なメンテナンスが必要とされるのが今後の課題となる。鉄道車両では、駅での行き先表示としての役目を果たせば良いという考えから、走行中には側面表示が一定の速度に達すると消灯するなど、きめ細かい制御で表示装置の長寿命化を図っているものも存在する。なお、編成前後の前面表示は表示のままであることが多い。ちなみに側面表示は、ドットマトリックスの制御方法から、高速移動中は表示し続けていたとしても表示文字の視認が難しい。
色覚異常によって発光ダイオードの色の見分けが困難となる場合がある。例えば1型2型の色弱の人には赤・橙・黄色・黄緑・緑のLEDは同じ色に見えてしまう。交通信号機では緑を青緑色とすることで色覚異常でも判別できるようにしているが、交通信号機以外でも色覚障害者向けの対策が必要とされる。
信号機
発光ダイオードの製造コストが下がり始めた2000年代以降、鉄道用および道路交通用信号機での利用も拡大している。省エネルギーで耐久性が高く、また従来白熱電球にカラーレンズを組み合わせて色を表現していた従来のものと違って、反射を最小限に抑えるクリアレンズを採用しているため太陽の反射光であたかも点灯しているかのような錯覚を見手に感じさせる疑似点灯現象の防止がなされ太陽光などの影響を受けにくいとされている。
問題点
- ドライブレコーダー
信号機に限らずLED照明全般に言えることだが従来の本当に「点灯」している白熱電球と違い、LED照明は「人間の目で追えないぐらい高速で点滅」して点灯を表現している。点滅の周期は西日本で60Hz、東日本で50Hzとなっていることがほどんどである。通常動画は30FPSで、とくに西日本の周期の丁度半分なので通常のドライブレコーダーの録画フレームとLEDの消灯している周期が完全に同期してしまうと録画した記録では信号が全部消灯しているように写ることがある問題が発生している。これを防ぐためドライブレコーダーの録画フレームレートを信号機の点滅周期から少しずらして録画する機種が販売されるようになった。
- 色の問題
色によっては色覚異常(色弱・色盲)の人達には見えにくい事があるため、様々な対策・研究が行われている。
- 積雪地の問題
積雪のある地方では、LED信号機の点灯面に雪が付着して信号が見えなくなる問題が発生している。従来は白熱電球の発熱によって融けていた着雪が、発熱の少ないLEDでは融けずに溜まってしまうためである。着雪の対策として、点灯面が凹凸の無い平面で下向きに傾けてある「フラット型」や、点灯面にアクリル樹脂製フードをかぶせた「フード型」などの着雪防止型LED信号機が開発されているものの、これといった決定打が無いのが現状である。
電光掲示板・大型映像装置
交通関連
駅の発車案内表示板や空港の発車案内板などには従来の反転フラップ式や字幕式に代わり、鉄道車両やバスの行先表示、タクシーの実空車表示器(スーパーサイン)などには従来の幕式に代わり普及が進んだ。現在でもLED方向幕と呼ばれることがある。
最初に登場したLED表示機は赤色・黄緑色・橙色の3色(橙色は赤色と黄緑色LEDによる)表示方式だった。赤色LEDと黄緑色LEDにより3色目の橙色が表現されているもので、俗に「3色LED方式」とも呼ばれる。ただし、実際は2色のLEDを用いているため、工業製品などでは「2色LED」(2C-LED) とも呼称される[14]。また、白色LEDでの赤色、青色、緑色の3色のLEDを用いた「3色LED方式」とは異なる。
その後、白色LEDを搭載したものや、単色で赤・青・緑、二色混色で黄・シアン・マゼンタ、三色混色での白の計7色を表示するマルチカラーLEDとされるもの、さらに高輝度の赤色・青色・緑色LEDによりあらゆる色を表示可能にしたフルカラーLEDのものも登場した。フルカラーLEDは、近年主流となりつつある。路線バスは鉄道ほど表示種別もなく、多くの発色を必要としないため、「3色LED」を使用しつつ交通の妨げとなりにくい橙をメインに使用する方式であったが、近年ではフルカラーLEDを採用する例も出てきている。
大型ビジョン
従来、大型ビジョンの発光素子にはCRTやVFDの光の三原色素子が利用されていたが、青色LEDの進歩によりこれらに変わってLEDが使用されるようになった。他方式に比べコストや輝度が優れており普及が進んでいる。
看板など
店頭看板などでも、従来のFL蛍光管等に代わりLEDモジュールなどのLED製品の普及が進んでいる。看板・サインのサイズの大小化や軽量化とともに故障が少なくコストに優れている。
ディスプレイのバックライト
冷陰極管が発する白色光をカラーフィルタで透過して得られる色(赤・緑・青)に比べ、RGB3色発光ダイオードが放つ光は色純度が高い。そのため、液晶ディスプレイのバックライトの光源を冷陰極管から発光ダイオードに置き換えることによって色の再現範囲を大きく広げることができる。ただし最近ではコストが安くて効率の高い擬似白色LEDが用いられることが多く、この場合は色の再現範囲は冷陰極管と変わらず、広色域タイプの冷陰極管と比べると劣る。また、LEDは点光源のため広い面積を照射しようとするとムラを生じやすく、バックライト用としては携帯機器用の小型ディスプレイに用いられることが主だったが、次第に12インチサイズ前後のノート型パソコンまで採用されるところまで来ている。
大型ディスプレイ用のLEDバックライトとしては、2004年11月にソニーより液晶テレビ「QUALIA」で実用化された。より一般的に普及が進んだのは2008年からで、各メーカーが上位機種を中心に採用するようになった。LEDテレビとは一般的に、LEDバックライトを搭載した液晶テレビのことである。2011年現在は、低価格化が進み、下位機種でも採用されることがある。エリア駆動対応機種では、映像が暗い部分のみLEDバックライトを消灯するエリア駆動により、液晶ディスプレイの弱点であるコントラストを大幅に拡大できるメリットがある。また超薄型と呼ばれる厚さを抑えた液晶テレビや、ノートパソコンの薄型化でもLEDバックライトが重要な要素となっている。また、LEDバックライトを搭載したエッジ型のディスプレイは、LEDの特性上、CCFL(蛍光管)テレビに比べて消費電力が少ない。
なお、上述の「LEDテレビ」やLEDバックライトを搭載した液晶ディスプレイ全般を指す場合に使われる「LEDディスプレイ」という呼称は、正確には誤用である。液晶テレビのバックライトは発光するための物であり、映像を表示するものではない[15]ためである。発光素子にLEDを採用した「LEDディスプレイ」については下記を参照。
LEDディスプレイ
発光素子にLEDを採用したディスプレイ。前述の大型ビジョンや街頭広告などではよく見かける。一般家庭用途などのディスプレイには、現状ではあまり開発が進んでいない。
沖データは2009年11月26日に、1.1インチQVGAの高輝度LEDディスプレイの開発に世界で初めて成功したと発表した[16]。
また、ソニーが、「Crystal LED Display」を開発中で、2012年のCESで55型フルHDディスプレイの試作機を参考出展している[17]。
各種照明用
省エネ、高輝度で長寿命を実現できる白色LEDの開発に伴い、発熱を伴うエネルギー消費の大きい電球に代わり新しい屋内・屋外照明材料として期待されている(LED照明)。デザインや光色なども調節できるため、より自由度の高い照明が可能になる。現在は既存の照明に置き換わる性能をもった製品が発売されており、懐中電灯、乗用車用ランプ、電球型照明、スポットライト、常夜灯、サイド照明、街路灯、道路照明灯などLEDを使用した製品が次々登場している。 日本エネルギー経済研究所が2011年に発表したリポートによると、日本全体の白熱灯や蛍光灯などをすべてLED 照明に置き換えた場合の省電力ポテンシャルとして、1時間あたり922億キロワットを節約できると試算している。これは日本の総電力消費量の約9%に相当し、原子力発電所13基分という[18]。
E26型、E17型を中心とした白熱電球のソケットに装着可能な「LED電球」は企業間競争などにより大幅に価格が下落した。製品寿命や消費電力を考慮すれば「LED電球」の方が、白熱電球や電球形蛍光灯より低コストであると謳われているが、発売されてからまだ日が浅い商品であり、公称寿命として、各メーカーが謳う40000時間[19]に達した例がほとんど無く、頻繁な点灯・消灯の繰り返しや連続点灯が、寿命に関わる劣化にどう影響を与えるかは未だ検証可能な個体が少なく、未知数である。
明るさや照射範囲などは「LED電球」の型番によって違いがある。より電球に近づけたと謳うものや、広配光を謳うもの、下方向のみのものなど多種多様である。中でも明るさについては、実際の明るさよりも明るいと不適切な表示(優良誤認)を行ったとして、メーカー12社[20]に対して、2012年6月、消費者庁が景品表示法に基づく措置命令[21]を行った。これにより、「LED電球」の明るさ基準を作る動きが生まれ、業界団体である一般社団法人日本電球工業会により、電球と置き換えた場合、電球の何ワット相当に該当するかを、全光束(ルーメン)が明るさ表示の基準として統一され出された[22]。これにより、加盟会社の電球製品はそれぞれ電球何ワット相当と表示できる基準ルーメンと実際のルーメンに合わせる必要があり、不適切な表示はなくなった。ただし、非加盟会社の製品は、インターネットを通じて販売されることが多く、未だに不適切な表示を継続する例が後を絶たない。
直管蛍光灯(FL40W形等)と同形状・同口金 (T8:G13) の物も発売され、LEDチップ価格の下落に伴い、ややコストメリットが出つつある。しかし、急速に価格が下落し、電球との消費電力の差も大きい「LED電球」と違い、直管蛍光灯型LEDは、もともと低消費電力の蛍光灯との競争のため、消費電力の差が少なく、価格も高い。カバーに透明と乳白色の2種類があり、直下の照度を重視するなら透明、広い照射角(最大310度のものもある)を求めるなら乳白色のものを選ぶのが妥当である。照明機器としてLED素子1個では充分な光束が得られないため、使用目的に合わせてLED素子を複数個使用して照度を確保している。100個以上のLED素子を使用した製品も珍しくない。ただし、蛍光灯に比べ重量が増すためにソケットが重みに耐えられず落下する危険性があるほか、蛍光灯器具の安定器を取り除く必要があるタイプのものも多い。そのため、日本の大手メーカーなどは器具そのものをLEDユニットにしたものを開発している。
丸形蛍光灯型LEDを使用するシーリングライト等についても、直管蛍光灯と同じく、もともと低消費電力の蛍光灯との競争のため、消費電力の差が少なく、価格も高い。
表面実装 (SMD) タイプのLEDを使用した照明器具を、「SMDライト」等と称して差別化して販売している例もあるが、本質的にLEDと何ら変わりがない。
乗用車のランプ
テールランプは、後続車両へのブレーキ作動の警告として使われる。そのため使用頻度が高く、急激な電力供給と発熱のため寿命が短い一方でランプ切れは事故につながりやすいため、長寿命のLEDが適している。また白熱型照明は発熱に時間がかかりそれがブレーキ作動から点灯までの時間差を生み事故の原因の一つになりうるが、LEDは時間差がきわめて少ない。
乗用車への利用も拡大しており、テールランプに加えアフターパーツとして室内灯やポジションランプ(スモールランプ)などが多く販売されている。光量が足りないためヘッドライトにLEDを採用例はなかったが、2007年5月発売の4代目LS600hには小糸製作所が日亜化学工業と共同開発した(鉄道以外の用途として)世界初のLEDヘッドランプが搭載されている[23]。LS600hのLEDヘッドランプは1つのLEDランプでは光量は足りず3つのLEDランプをロービームとして使用していたが[24]、その後LEDランプ1つあたりの光量が増え、2013年発売の3代目レクサスISでは1つのLEDランプでロービームとして使用できるようになった。LEDヘッドランプは消費電力が少なく光量はHIDより上回っており[25]、各自動車メーカーが採用しつつある。
バイクなどのランプ
オートバイへの利用ではko-zaru仔猿(CKデザイン製)が、ウィンカーとテールランプ、ストップランプに2003年から採用している。小型バイクのためバッテリーの積載容量に制限があり、電力消費の点から採用した。日本では初めてのケースとなる。近年のLEDの性能向上を検証しつつ、ヘッドライトへのLEDの適用を研究している。一般市販バイク初搭載としては、ホンダが2014年3月14日発表、同月20日発売しているCB1300スーパーボルドール(型式SC54)の2014年モデルから正式採用された。
自転車のランプ
自転車用ランプのLED普及率は、自動車のそれに比べて非常に高い。発電機を動かすためペダルをこぐ力が乗り心地に直結するため、消費電力の少ないLEDの使用により軽快な乗り心地になる。また使用電力が低いため、非接触型の発電機を使用することにより、照明による負荷が非常に少なくなる。また電池式においても消費電力の少ない分電池が長持ちする利点がある。廉価な軽快車などでは相変わらず電球が主流であるが、ハブダイナモ式のオートライトには多く採用されている。この他、前照灯としての役目より、他の自転車や自動車からの被視認性を意識した認識灯や尾灯への応用も多い。
舞台演出用の照明器具として
高輝度LEDを搭載した舞台用照明器具がMARTIN社から発売されている。赤・青・緑(一部製品は白色)の高輝度LEDを搭載することにより一般的なフィラメントを用いた舞台照明と比較して次の利点が挙げられる。
- 消費電力が圧倒的に低い。
- 一つの照明につき多くの色を表現できる。シームレスな切り替えでグラデーションも可能である。
これらは一般的なフィラメント式のフレネル舞台照明よりも高価だが、舞台を始めコンサート・ライブ等で多く採用されている事例がある。
ガーテン用ソーラーライト
ソーラーパネルと充電式電池を使用するランプが普及して、各ホームセンターでは専用の売り場が設けられるまでになった。
電子写真式プリンター内部の感光用光源
電子写真式プリンターとして一般的なレーザープリンターは、レーザー光の出力を直接変化させたり、液晶シャッターで強度を変調した光を、回転するポリゴンミラー(多角形鏡)に反射させて走査したりして、感光ドラム上に走査線を作り出している。光学系には高い精度が要求され、構造上どうしてもある程度以上の走光路距離を確保せねばならず、プリンターの小型化、低価格化は困難だった。
これを解決したのが、LEDアレイヘッドを使用したLEDプリンターである。微細加工したLEDを直線上に数千 - 数万個並べ[26]、感光ドラム上の潜像の1ドット1ドットに対応するLEDで感光書き込みを行う。機械的駆動系(ポリゴンミラー)は不要になり、光学系は単純な収束レンズのみで済み信頼性向上とコスト削減、機器の小型化を実現している。ただし、主走査解像度がヘッドの集積度によって制限される、素子間のばらつき補正が必要、ドラムとLEDアレイが非常に近いために飛散したトナーが付着して出力物のクオリティ安定性に欠けるなどの欠点も持つ。
光通信用光源
駆動電流の変化に対し、光出力が高速応答するという特性を生かし家電製品等の赤外線リモコンやTOSリンクを始めとする光ファイバー通信の信号送信機、またフォトカプラ内部の光源に赤外発光LEDが広く使われている。
センサ用光源
赤外発光LEDはフォトトランジスタ等と組み合わせて、対象物の有無を検出するフォトインタラプタやフォトリフレクタ等の構成要素として用いられる。
模型製作・改造用光源
模型用点灯光源としても、価格低減と共にかつて使用されていた小型電球の代替として使用されるようになってきた。光色の制限から、かつては赤色光への使用が主だったが黄色、白色LEDの開発により前照灯や室内蛍光灯の白色光の再現も可能となった。さらに白熱灯の再現については電球色(淡橙色)LEDの開発により、実際の電球ではサイズや発熱などの理由で難しかった箇所も実感的な光色の再現が可能となった。特に、点灯機構を組み込むスペースが限られ、また部材がABSやポリスチレン樹脂などで作られているなど電球の発熱の面でも不利な場合があったNゲージを中心とした鉄道模型の場合、通常のレンズタイプからチップタイプへの移行により構造の小型化により実感の再現に大きく寄与し、これにより従来は実車のヘッドライト構造の関係で製品化が困難だった車種の製品化が実現した。コスト的には従来の電球使用より割高となっても実感的な模型の実現からユーザーに歓迎された面があり、分野としての消費量は少ないながらも実用照明器具での利用に先行して採用されている。また模型用途としては他にカーモデル用ディティールアップパーツやミニ四駆用のタミヤ純正カスタムパーツ[27]など、改造用LEDキットが存在する。
エレクトロニックフラッシュやレフ板の代用として
カメラ(デジタルカメラも同様)では、暗所での撮影や接近撮影・人物撮影での際には露出のラティチュードを揃える意味でエレクトロニックフラッシュ(フラッシュ)やレフ板などを使って光を当てる事があるが、一般的なフラッシュ撮影では瞬間的に光を当てる撮影となるために、撮影者や被写体としては写真の仕上がりが想定しにくい。レフ板に関しては、自然な感じの照明効果が得られる半面、嵩ばる・移動の際に運搬がしにくい欠点がある。写真撮影用ライトは白熱電球の原理を用いたものが多いため、照明効率に対しての熱放射も大きく、被写体が熱を嫌う物である場合は照明器具として好ましくない例も多かった。またスタジオ外で撮影の為に携帯する機器は事実上、クリップオンフラッシュに限られた。LEDアレイ式ライトは電池での駆動が可能で、かつ照明光源としても必要十分な光量が得られるうえに比較的長時間の使用が可能なため、今後は撮影用照明器具としての普及が見込まれる。
2013年頃から、白色LEDをアレイ状に敷き詰めた撮影用LEDライトが、中国などを原生産国としてインターネットを中心に照明器具として普及しつつある。
ツェナーダイオードの代用品として
電子回路内の基準電圧源として一般に使われるツェナーダイオードはアバランシェ降伏現象を利用しているため、出力電圧にわずかながらノイズを発生させてしまう。通常はフィルタ回路によってノイズを十分に減衰させる設計を取るが、オペアンプをディスクリートで組む場合等、「そもそもノイズが発生しない基準電圧源」を追求して定電流駆動したLEDが使われる事例がある。
小信号ダイオードの代用品として
ディストーションやオーバードライブ、またギターアンプのクリッピング素子として、シリコンダイオードやゲルマニウムダイオードの代わりに使われる場合がある。
ろうそく・灯火の代用品として
ろうそくに似せたLED照明器具も製作・販売されている。火傷の心配がなく、火災の危険性が低いメリットがある。センサーやコンピューターと組み合わせて、周囲の音を感知して光を動かし、風による炎のゆらめきを再現する技術も開発されている[28]。
殺菌
深紫外線を発することにより水などを殺菌することができる[29]。
脚注
- ↑ エジソンに続く物語:GEのエンジニア、ニック・ホロニアックのLED発明から50年(GE imagination at work / 原文(英語):2012年8月15日公開)
- ↑ 英: organic light-emitting diodes
- ↑ White LEDs CSM-360 - Luminus Devices, Inc.
- ↑ White LEDs SST-90 - Luminus Devices, Inc.
- ↑ 日亜化学工業 LEDテクニカルデータ 『GaN系LEDの並列接続回路について』 (PDF)
- ↑ Z-Power LED P7 Series - Seoul Semiconductor Co., Ltd.
- ↑ “「腐った司法に怒り心頭」 中村教授、帰国し批判会見”. 共同通信 (2005年1月12日). 2012年1月2日閲覧。
- ↑ 日本の3氏に2014年度ノーベル物理学賞—青色LEDの開発で nippon.com 2014年10月8日
- ↑ 青色LEDがノーベル賞に値する理由 WIRED 2014年10月9日
- ↑ “<研究2部報>照明用光源(LEDを含む)の演色性評価方法に関する調査研究”. 一般財団法人 日本色彩研究所. . 2015閲覧.
- ↑ 東芝(高演色) キレイ色の例では540lm/8.8W=63lm/Wとなっており、高演色LEDのランプ効率はそれほど高くない。
- ↑ “豊田合成/ニュース/プレスリリース「高演色性 ハイパワー白色LEDランプの開発・販売」”. 豊田合成株式会社 (2003年10月7日). 2012年1月1日閲覧。
- ↑ 製品例
- ↑ 混在する“3色LED”
- ↑ 液晶ディスプレイの構造と作り方
- ↑ “世界初、1.1インチQVGA高輝度LEDディスプレイの開発に成功|2009年|ニュースリリース情報|OKIデータ”. 株式会社沖データ (2009年11月26日). 2012年1月1日閲覧。
- ↑ 大画面・高画質に優れた次世代ディスプレイ“Crystal LED Display”を開発 ~2012 International CESに55型フルHD試作機を出展~
- ↑ http://eneken.ieej.or.jp/data/3862.pdf
- ↑ 例 パナソニック社のLED電球
- ↑ 12社の概要 (PDF)
- ↑ LED電球販売業者12社に対する景品表示法に基づく措置命令文 (PDF)
- ↑ 光量=全光束ルーメン対比表 (PDF)
- ↑ 世界初 LEDヘッドランプの開発、実用化 株式会社小糸製作所 (PDF)
- ↑ 次世代ヘッドライトはLEDに! All About
- ↑ 新型「レクサスIS」のLEDヘッドランプは第4世代、消費電力は第1世代の半分以下
- ↑ 通常の半導体加工のように、1回の加工で数千から数万個ならべる。
- ↑ 商品例(タミヤ純正):GP.384 N-03・T-03バンパーレス LED(赤)ユニット
過去にはLEDのみの製品もあった(レッド:No.081 グリーン:No.224)が、2017年3月現在絶版品。 - ↑ 風で光ゆらぐLED照明 和ろうそくの風情再現 神奈川工科大など開発『日本経済新聞』夕刊2018年3月31日(1面)
- ↑ 産経ニュース 【水を殺菌】深紫外LED「未来の光」
関連項目
- 西澤潤一
- 中村修二
- ダブルヘテロ接合
- 半導体レーザー(レーザーダイオード)
- バンド理論
- pn接合
- エレクトロルミネセンス
- 有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)
- 光起電力効果
- 電光掲示板
- フルカラー
- LED照明
- LED標識灯
- 高エネルギー可視光線, 青色光網膜傷害