ゼンショー

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株式会社ゼンショーホールディングス(ZENSHO HOLDINGS CO., LTD.)は、「すき家」をはじめとする各種外食チェーンや、各種スーパーマーケット等を傘下に持つ、日本の持株会社。2015年度時点で日本の外食産業トップの売上高である[1]

概要

東証一部上場。本社は東京都港区JR品川イーストビル5 - 8階に所在。グループ企業の半数以上も買収後に同ビルに入居している。神奈川県横浜市で創業し(創業時はトタン張りの工場の一角に事務所を設けていた)、品川への移転前は横浜市西区北幸のSTビルに本社が存在した。

「世界から飢餓と貧困を撲滅する」を企業理念に掲げ、「世界中の人々に安全でおいしい食を手軽な価格で提供する」ことを使命として追求している。M&Aによる事業展開に積極的であり、特に2000年以降は、各ジャンルの外食チェーンを次々と買収し傘下におさめている。グループ連結子会社に、牛丼とカレーを中心とする外食チェーン「すき家」の運営管理を行うすき家本部[2]ファミリーレストランチェーンの「ココスジャパン」、イタリアンファミリーレストランチェーンの「ジョリーパスタ」、丼物とうどんを中心とする外食チェーンの「なか卯」、焼肉レストランチェーンの「TAG-1」、ラーメンチェーンの「エイ・ダイニング[2]などを有する。

海外事業では、すき家を中国やタイなど8つの国と地域で展開している。

社名の由来については、以下の語呂に由来すると説明している[3]

  • 全勝」:創業時からの目標である「フード業世界一」になるためには、「14勝1敗」では駄目で「15戦15勝」つまり「全勝」でなくてはならない。
  • 善商」:善なる商売を行う。
  • 禅商」:日本発信であることから、禅の心で商売を行う。

なお、北海道にある自社牧場には「善祥園」の名が付けられている。

沿革

旧・ゼンショー(現・ゼンショーホールディングス)

  • 1982年6月 - 神奈川県横浜市鶴見区に本社設立
  • 1982年7月 - ランチボックス(弁当店)1号店として、生麦店を開店
  • 1982年11月 - すき家(牛丼店)ビルイン1号店として、生麦駅前店を開店
  • 1986年8月 - 神奈川県横浜市神奈川区へ本社移転。
  • 1989年1月 - 神奈川県横浜市西区へ本社移転。
  • 1997年8月25日 - 株式を店頭登録市場(現・ジャスダック)に店頭公開
  • 1999年9月 - 東京証券取引所市場第二部に上場
  • 2000年7月 - 茨城県の食品スーパーカスミから株式会社ココスジャパンの株式譲受
  • 2001年3月 - 2000年9月の松屋・2001年3月初めの神戸らんぷ亭の値下げに追随し、5日より牛丼(並)を400円から280円に値下げ[4]、2004年2月まで
  • 2001年5月 - 株式会社ぎゅあん株式取得
  • 2001年9月 - 東京証券取引所市場第一部に上場
  • 2002年5月 - セゾングループの西洋フードシステムズ(現西洋フード・コンパスグループ)からロードサイドレストラン「CASA」(譲受後にココスに転換)の一部店舗譲受
  • 2002年12月 - 大和フーヅ株式会社との業務提携
  • 2002年12月 - ダイエーグループから株式会社ウェンコジャパン(後の日本ウェンディーズ)、及び株式会社ビッグボーイジャパンの株式譲受
  • 2004年2月 - 東京都港区港南二丁目に本社を移転。
  • 2004年2月5日 - 牛丼の販売を休止。主要チェーンでは「なか卯」に次いで2社目
  • 2004年9月17日 - 牛丼の販売再開(オーストラリア産牛肉使用)
  • 2005年2月26日 - 双日が51%保有していた同業者のなか卯の発行済み株式のうち33%を取得。牛丼のチェーン店で全国第2位規模に
  • 2005年8月5日 - なか卯へ株式公開買い付けを行い、発行済み株式の60.05%を保有し連結子会社とする。
  • 2006年4月1日 - 株式会社ユーディーフーズ(100%子会社)が、民事再生手続中のサンビシから営業譲渡により全事業を承継(ユーディーフーズは営業譲渡後に株式会社サンビシへ社名変更)
  • 2006年5月31日 - 米国カタリーナ・レストラン・グループ(Catalina Restaurant Group)をゼンショー・アメリカ・コーポレーションの新設子会社と合併
  • 2006年8月1日 - ピザ専門企業の株式会社トロナジャパンから営業譲渡を受ける。(ピザ、ピザクラスト製造・販売事業。ピザの宅配事業(シカゴピザファクトリー))
  • 2007年3月8日 - カッパ・クリエイト株式会社と資本業務提携(10月に提携凍結)。カッパ・クリエイトの第三者割当増資を引き受け、カッパ・クリエイトの筆頭株主 (31.25%) となる。
  • 2007年3月23日 - 株式会社あきんどスシローの株式取得を取締役会において決議。あきんどスシロー発行済み株式 1,451,600株を取得し、筆頭株主 (27.23%) となる。
  • 2007年3月26日 - 株式会社サンデーサン(現ジョリーパスタ)への友好的な株式公開買い付け(実施期間は2月16日〜3月15日)により、サンデーサン発行済み株式の52.13%を買い付け、連結子会社とする。
  • 2007年7月27日 - 「すき家」沖縄県第一号店のコザ・ミュージックタウン店の開店をもって、ゼンショーグループの全都道府県への出店。
  • 2008年1月 - 企業ロゴを変更。
  • 2008年8月14日 - ゼンショーが保有するカッパ・クリエイトの株式31.09%のうち20.59%を自己株式立会外買付取引にてカッパ・クリエイトに売却することを発表。また、カッパ・クリエイトとの資本・業務提携の解消も発表。
  • 2008年9月 - 「すき家」の店舗数がライバルの吉野家(1,077店舗)を抜いて1,087店舗となり、単独の牛丼チェーン店店舗数第一位となる(2008年9月末時点)[5]
  • 2008年10月8日 - 和食ファミリーレストランを展開する株式会社華屋与兵衛を買収することを発表。
  • 2009年5月31日 - 株式会社あきんどスシローがユニゾン・キャピタル極洋系のエーエスホールディングス株式会社と合併(エーエス社による吸収合併)。ゼンショーはエーエス社から金銭交付を受け、あきんどスシローはゼンショーグループから離脱。
  • 2009年9月30日 - 株式会社GMフーズ(ラーメン・中華料理店の運営会社)を吸収合併[6]
  • 2009年12月10日 - ウェンディーズとの契約を12月末以降更新しないことを発表。アメリカのWendy's International, Inc.が新たな提携先を探すと発表した[7]
  • 2010年3月24日 - 株式会社なか卯と大和フーヅ株式会社を、株式交換により完全子会社化。
  • 2011年5月13日 - 2011年3月期の決算短信を発表し、連結売上高が日本マクドナルドホールディングスを抜き、日本の外食産業でトップになったことを明らかにする。
  • 2011年5月27日 - 完全子会社の株式会社ゼンショー分割準備会社を設立。

ゼンショーホールディングス発足後

  • 2011年10月1日 - 株式会社ゼンショーが、会社分割を行い、店舗運営事業を株式会社ゼンショー分割準備会社に承継させ、持株会社となる。同時に、株式会社ゼンショーが株式会社ゼンショーホールディングスに、子会社の株式会社ゼンショー分割準備会社が(2代目)株式会社ゼンショーに、それぞれ商号変更[8]
  • 2012年7月28日 - ブラック企業大賞2012 ありえないで賞受賞。授賞理由は「度重なる違法行為へのアルバイト従業員からの提訴に、駄々をこねる子どもにも似た対応と社会への責任を負う企業のものとは思えない言い分」に対して[9]
  • 2012年11月8日 - スーパーマーケットチェーンの株式会社マルヤを、株式公開買付けにより連結子会社化。
  • 2013年10月 - スーパーマーケットチェーンの株式会社マルエイの株式を取得。
  • 2013年12月27日 - 小売事業を統括する中間持株会社として完全子会社の株式会社日本リテールホールディングスを設立。
  • 2014年3月26日 - 株式会社マルヤを、株式交換により日本リテールホールディングスの完全子会社化。
  • 2014年4月28日 - 「すき家」における店舗の一時閉店問題(後述)を受けて、『「すき家」の労働環境改善に関する第三者委員会』を設置[10]
  • 2014年7月31日 - 第三者委員会から調査報告書を受領[11]。「すき家」の労働環境改善に向けた改革の実施要領を発表する[12]
  • 2014年8月6日 - スーパーマーケットチェーンの株式会社尾張屋の株式を取得。
  • 2014年8月15日 - (2代目)株式会社ゼンショーのすき家事業以外の事業を承継する株式会社ゼンショーホールディングス100%の子会社として、株式会社エイ・ダイニングを会社分割の上設立。
  • 2014年10月1日 - (2代目)株式会社ゼンショーの直営事業をすき家事業に特化し、株式会社すき家本部に商号変更。すき家事業以外の事業は株式会社エイ・ダイニングが承継[2]
  • 2015年3月31日 - 米国子会社のカタリーナ・レストラン・グループを、FMP SA Management Groupの傘下会社に売却[13]
  • 2015年3月 - 女性従業員の就労支援として事業所内保育施設・株式会社かがやき保育園を設立。
  • 2016年3月17日 - 株式会社華屋与兵衛を株式交換により完全子会社化[14]
  • 2016年4月28日 - 大和フーヅ株式会社の全株式を日本製粉株式会社の完全子会社であるニップンドーナツホールディングス株式会社へ売却[15]
  • 2016年11月21日 - 子会社の株式会社日本リテールホールディングスが株式会社フジタコーポレーションを子会社化[16]
  • 2017年4月 - 外食の業界団体である日本フードサービス協会(JF、ジェフ)に加盟したことが判明した[17]
  • 2017年9月 - 経営難に陥っていたスーパーマーケットチェーンの株式会社山田屋アタックの事業を譲受する新会社として、株式会社アタックを設立。株式会社アタックは、同年12月1日に山田屋アタックの事業を会社分割により譲受[18][19]

食の安全・食材管理

社長の小川賢太郎は「経営上重視するものは、一に安全、二に品質、三にコスト」と述べる[20]。食の安全の確保のため、中央分析センター(2006年6月設立)をもち、残留農薬食品添加物を独自にチェックしている。また、事故が起こった際には、発生から1時間以内に経営トップに事故情報が伝わるシステムを構築している[20]

BSE問題に対しては、2004年2月5日に主要チェーンでは2番目に牛丼の販売を停止した。その後、同年9月17日にオーストラリア産牛肉を使用し牛丼販売の再開を決定する(値段は牛丼「並」で販売停止前より70円高い350円となる)。ゼンショーは、独自にアメリカ合衆国の現地調査を行い、安全性が確保されていないとして米国産牛肉の使用を見送り、オーストラリア産牛肉を使用し続けていたが、2010年12月にゼンショーも米国産牛肉の使用を再開した[21]。小川は「本当に消費者のために安全性を検証しているのか」と述べて、日本国政府の対応を批判していた[20]

また、食材の調達から店舗で販売するまでの食材管理を、全て自前で行っている。「マス・マーチャンダイジング(MMD)」と呼ぶこのシステムによって、安全性の確保や、味へのこだわりといった質の向上、急な需要増への柔軟な対応が図れるという[20]

グループ展開

牛丼チェーン店展開企業としてゼンショーホールディングスはすき家なか卯を有していたことにより店舗数最大手となっているが、すき家単独でも2008年9月末に吉野家を抜いて1位となる[5]。ゼンショーグループ入り後に業態変更・一部業態からの撤退をしたチェーンもある。

  • 株式会社すき家本部(100%出資) - 牛丼チェーン「すき家」を展開。2014年7月より以下7社による地域別の運営となっている。
    • 北日本すき家
    • 関東すき家
    • 東京すき家
    • 中部すき家
    • 関西すき家
    • 中四国すき家
    • 九州すき家
  • 株式会社なか卯(100%出資) - うどんどんぶりの店「なか卯」を展開。
  • 株式会社ビッグボーイジャパン(100%出資) - ステーキハンバーグメインのファミリーレストラン「ビッグボーイ」「ヴィクトリアステーション」を展開。
  • 株式会社エイ・ダイニング(100%出資) - ラーメン店「伝丸」「壱鵠堂」、うどん店「久兵衛屋」などを展開。
  • 株式会社ジョリーパスタ(64.54%出資) - イタリアンファミリーレストラン「ジョリーパスタ」「ジョリーオックス」「フラカッソ」を展開。
  • 株式会社華屋与兵衛(100%出資) - 和食レストラン「華屋与兵衛」「和食よへい」を展開。
  • 株式会社ココスジャパン(51.26%出資) - ファミリーレストラン「ココス」、メキシカンレストラン「エルトリート」を展開。
  • 株式会社はま寿司 - 回転寿司「はま寿司」を展開。
  • 株式会社トロナジャパン - 冷凍ピザの販売とゼンショーの通販部門の運営
  • 株式会社TAG-1(100%出資) - 焼肉チェーン「宝島」、焼肉としゃぶしゃぶの店「牛庵」「焼肉倶楽部いちばん」「熟成焼肉いちばん」を展開。
  • 株式会社善祥カフェ(100%出資) - 喫茶チェーン「モリバコーヒー」「カフェミラノ」などを展開
  • 株式会社アタック(100%出資) - スーパーマーケットの運営
  • 株式会社サンビシ - 醤油・調味料の製造販売
  • 株式会社ゼンショー商事
  • 株式会社ゼンショービジネスサービス - 特例子会社
  • 株式会社日本リテールホールディングス(100%出資) - 中間持株会社、アタックを除くスーパーマーケット部門の子会社を統括

かつて展開していた事業

  • 株式会社日本ウェンディーズ(100%出資) - ハンバーガーショップ「ウェンディーズ」を展開。アメリカ本部とのFC契約解除に伴い2009年12月31日を以て全店閉店。法人は翌2010年1月1日付で株式会社GFFに商号変更、同年3月31日にゼンショーに合併。2011年12月に設立されたグループの製造工場を統括する、株式会社GFFとは関係ない。
  • 株式会社あきんどスシロー(22.30%出資) - 回転寿司チェーン「スシロー」「あきんど」を展開。2009年5月31日を以てグループから離脱
  • カッパ・クリエイト株式会社(31.09%出資) - 回転寿司チェーン「かっぱ寿司」を展開。2008年8月15日を以てグループから離脱
  • 株式会社シカゴピザ - 宅配ピザと宅配パスタチェーン「シカゴピザファクトリー」を展開。2008年4月から株式会社トロナジャパンより分社して設立、2011年6月30日を以てグループ離脱。
  • カタリーナ・レストラン・グループ - アメリカ西海岸地域を中心にレストラン「ココス」「キャローズ」を運営。2015年3月31日を以てグループから離脱
  • 大和フーヅ株式会社(100%出資) - ミスタードーナツモスバーガーフランチャイジーとしての店舗運営も行う。2016年4月28日を以てグループから離脱

CooCa

CooCa (クーカ) は、2015年11月より発行を開始した、ゼンショーグループで利用できるプリペイド式の電子マネーである[22]すき家はま寿司COCO'Sジョリーパスタ華屋与兵衛宝島牛庵、いちばんで利用できる。発行は無料であり、1,000円以上のチャージが必要である。チャージは店頭、または公式サイトで可能であり、1回のチャージで49,000円、最大10万円までチャージができる。

諸問題・不祥事

ゼンショーでは、2008年頃以降、労務環境に起因するいくつかの問題が表面化した。

勤務形態に関する問題

ゼンショーグループでは、本社採用の新卒者のほかに、本部並びに各店舗ブランドごとに『アルバイト』として、時間給のシフト勤務労働者を一括して募集している。店舗に勤務する正社員は、基本的に店舗管理マネジャー(いわゆる「店長」)のみで、実質的には『アルバイト』による店員(「クルー」と呼ばれる)が店舗運営を担っていると思われるが、「すき家」では店長と複数店舗担当者は正社員ではなく契約社員の場合もある[23]

この『アルバイト』の勤務形態について、ゼンショーでは労働問題調停(後述)の場において「『アルバイト』と称する者らの業務実態を精査した結果、『アルバイト』の業務遂行状況は、およそ労働契約と評価することはできない」「会社とアルバイトとの関係は、労働契約関係ではなく、請負契約に類似する業務委託契約である」と主張しており[24]、すなわち『アルバイト』は、ゼンショーとの雇用関係にない個人事業主としての個人請負契約であることを表明している。

これは、勤務シフト(労働形態)を『アルバイト』自身が選択できる(すなわち労働形態の選択権が会社側にない)ことを根拠に主張しているものだが、このことから『アルバイト』の労働環境を巡って、ゼンショーと『アルバイト』との間で複数の軋轢を生んだ。

  • 2006年5月、東京都渋谷区内のすき家で『アルバイト』として勤務していた男性の解雇を巡り、労働基準法で定められた残業代が支払われていないことが発覚、同月17日の参議院厚生労働委員会での質疑での小池晃日本共産党)がゼンショーの残業代未払い賃金問題について厚生労働省へ見解を求めた。国会の委員会で取り上げられたことがマスメディアで報道された後、ゼンショー側がアルバイト男性の解雇を撤回、2006年12月分の給与から未払い深夜割り増し残業代の支払いを始めることを発表した[25]。なお、過去の未払い残業代の支払いには未だ応じていない[26]
  • 2007年11月、宮城県仙台市泉区のすき家で勤務する3名が支払われていない残業代約17万円を求める是正申告を仙台労働基準監督署に行った。アルバイトの労働問題を支援する首都圏青年ユニオンによれば、未払い残業代の支払いを求めたが、2006年11月以降ゼンショーは首都圏青年ユニオンと継続的な交渉に応じないという[27]。首都圏青年ユニオンは労働組合「すき家ユニオン」を結成し、すき家労働者に加入を呼びかけ、ゼンショーに交渉を求めている[28]
    • 東京都労働委員会は2009年11月、「従業員は会社のマニュアルに従い決められたシフトで働いている」ことを根拠に、ゼンショーと『アルバイト』は労働契約関係にあるとして不当労働行為を認定、ゼンショーに対しアルバイト店員らで作る労働組合との団体交渉に応じるよう命じ、会社側の主張を退けた[29]。これに対してゼンショーは中央労働委員会(中労委)に再審査を申告するが、2010年8月27日に中労委が棄却[30]。これを不満としたゼンショーは中労委に対して命令の取り消し求める裁判を東京地方裁判所に提訴、2012年2月16日に請求を棄却する判決が下され[31]、ゼンショーが控訴した東京高等裁判所での2審でも、2012年7月31日に請求を棄却する判決が下された[32]
    • ゼンショー側が是正勧告書の受取りを拒否したため、2008年4月、ゼンショーと当時の社長を労働基準法違反容疑で仙台地方検察庁に刑事告訴、ゼンショーと社長は書類送検されている(その後、2009年1月に未払いを認定した上で、労働基準法違反容疑で書類送検された同社などを起訴猶予処分、社長は嫌疑不十分で不起訴)[33]
    • アルバイト3人は仙台地検への刑事告訴と並行して、ゼンショーに対し未払い残業代など計約99万円の支払いを求め東京地方裁判所に提訴、2010年8月にゼンショー側が原告の言い分を認めて争わない意思を示す「認諾」をし、訴訟が終了した[34]
    • その後ゼンショー側は2009年4月、訴えを起こした3人のうち女性店員に対し、ご飯5杯分を勝手に食べた・残業代をだまし取ったとして窃盗・詐欺で仙台地検に逆に刑事告訴(嫌疑不十分として不起訴処分)する事態となっており[33]、告訴された店員は「残業代未払い裁判に対しての威嚇、報復行為である」として反発、2010年12月に不当嫌疑による降格処分に対する賃金の差額と、団体交渉を拒否したことに起因する損害賠償を求め、東京地裁に提訴している[35]。2012年12月21日、ゼンショー側が、1.これまでの不誠実な態度を謝罪し団体交渉に応じる 2.原告と労組に解決金を支払う 3.原告が組合員である事を理由に不利益な扱いをしない、の内容を示し和解[36]

強盗・窃盗事件多発問題

すき家における強盗事件多発問題は、すき家が吉野家を抜いて、牛丼チェーン首位に立った2008年頃から表面化し始めた[37]

警察庁の資料によると、2010年のすき家における強盗被害の件数は57件で、飲食店を狙った強盗被害の総数121件の半数近くを、すき家が占めた。また、同じ店舗で強盗が3回入ったり、1日に各地で強盗が4件入る例も発生した[38][39]

こうした状況を踏まえ、2010年に、愛知県警が、ゼンショーへ10回以上も業務改善要請(防犯ベルと店外の赤色灯の設置などを)を出した他[40]、警察庁も2010年11月、防犯対策の強化を口頭で要請するなど、異例の対応が取られた[41]

ゼンショーはこうした現状について、「すでに十分な対策をとっている」と述べていたが[42]、警察庁が2011年6月に調査したところ、ほとんどの店で改善が見られなかった[41]

このため、2011年10月13日、警察庁生活安全局生活安全企画課は、ゼンショーに防犯体制強化を文書で要請した[43]

これを受けてゼンショーでは、防犯対策の強化の一環として、2012年3月末までにすき家での深夜の一人勤務体制を解消すると発表した[44]

これに関連して、警察庁は2011年10月25日深夜から26日未明にかけて、全国一斉の抜き打ち防犯調査を実施し、防犯体制の調査や指導を行った[45]。2011年12月15日には、店員が首から吊り下げる、小型ペンダント状のワイヤレス非常通報機器をすき家全店舗に導入[46]。2012年1月には2度目の防犯体制調査が行われ、各都道府県警がすき家店舗を訪問して進捗状況を確認した[47]

その後も、深夜に一人勤務している所を、強盗に襲撃されるケースがしばしば発生した[48][49]。ピークであった2011年に比べると、2012年以降は、牛丼店への強盗の発生件数自体は半減したものの、依然として全体の発生件数のうち、85%をすき家が占める状態にあった[50]

すき家が強盗や窃盗の標的になる理由として、深夜に店員が1人になる時間帯があること、キャッシュレジスターが出入口付近の1か所にのみ設置され、そこに現金が集約されていること、ほかの牛丼チェーンと比べて、カウンター内部に入りやすい構造となっていること、夜間に人通りが少なく逃走しやすい郊外型の店舗が多い、警備会社と契約していない店舗があることなどが指摘されている[42][51][43][52]


これを受けゼンショーは、2014年9月30日に24時間営業の店舗は複数の従業員を配置する、深夜営業休止の店舗は機械警備を導入して警備を強化するなどの対策を発表した[2]

「すき家」店舗の一時閉店・深夜営業休止

2014年3月下旬から、すき家の一部店舗において、店舗を一時的に閉鎖しており、その原因が「店舗の人員不足」であると一部のネットニュースなどが報じた[53][54]。その要因として、深夜を1人で営業する店舗があり、これに加えて、同年2月14日より発売を開始した『牛すき鍋定食』が店舗での仕込みに非常に時間がかかり、厨房が回らなくなっているのが理由だと報じた[55]

これらの報道に対し、ゼンショーの広報室ではITmediaの取材に対し、一時的な閉店は厨房の強化を中心とした改装作業[56]によるものが基本であり、人員不足による一時的な閉店は「常時抱えている問題」と認識した上で、牛すき鍋定食の提供開始に関連したものではとの指摘には「ファストフード店として手短に仕込み・提供できるような商品を開発し、実験店舗で確認した後に展開している」と回答しており、一連の報道を一部否定している[57][58]

ゼンショーHDは2014年4月17日で「『すき家』の職場環境改善に向けた施策について」と題したニュースリリースを発表[59]、すき家を全国7地域に地域分社化することを軸とした労働環境の改善策を発表した[60][61]。このリリースの中で、「殊に本年2月から3月にかけて、流通産業全体に及ぶ折からの人手不足と、仕込みにこれまで以上の手間を要する新商品の導入にともない、『すき家』従業員の負担増が深刻化した」と、牛すき鍋定食の提供開始が従業員の負担増となり、店舗の一時閉店の遠因になったことを認めている。24時間営業から、深夜営業を休止して営業再開した店舗もある。

ゼンショーHDは2014年9月30日で「すき家」の労働環境改善に向けた改革の進捗について」と題したニュースリリースを発表[2]。2014年9月30日現在で24時間営業を実施している1843店舗の内、589店舗は複数の従業員を配置して深夜における勤務体制を確立した上で同年10月1日以降も24時間営業を継続する。一人勤務が完全に解消できない店舗の内、87店舗は曜日によって深夜営業休止となる。残る1167店は全曜日深夜営業休止となる[62]。その後、労働環境を改善することで人手不足を解消、2016年12月において、深夜営業休止している店舗は127店まで縮小し、休止していた約9割の店舗で深夜営業を再開した[63]

第三者委員会による調査結果と提言

前述の一時閉店問題を受けて、ゼンショーは2014年4月28日、弁護士久保利英明を委員長とする『「すき家」の労働環境改善に関る第三者委員会』を設置[10]。第三者委員会は全正社員581名とクルー468名を対象にアンケートを実施[64]し、2014年7月31日に調査報告書をゼンショーに提出した[11]

この報告書では、店舗の一時閉店は、正社員の管理体制変更と「牛すき鍋定食」の投入のタイミングが重なった結果、現場のオペレーションが十分機能しなくなったことでクルーの不満が爆発し、社員及びクルーが大量退職する結果になったため、としている[65]。さらに、それ以前から月500時間を超える勤務実態も見られるなど、過重労働が常態化しており[66]、人事部門がこういった問題を把握しつつ、取締役会に諮られた形跡がなく、加えて監査役内部監査室による過重労働に関する指摘を把握しながら、監査役会で諮られた形跡もなく、総じてゼンショーの社内で過重労働に対する感覚が麻痺していたとも指摘している[67]

これらについて、報告書では以下のような要因があると位置づけている。

  • 人手不足状況による過重労働の発生と、危機意識をもつ経営幹部の不在(総社員数が増えていないのに新規出店を推進する為に一人一人の負担が増える、など)[68]
  • 過重労働を是正できなかった組織上の問題(企業ガバナンスの欠如、自己責任論に基づく、責任の部下への押しつけと問題点の「言いっ放し」「聞きっぱなし」の蔓延、など)[69]
  • 経営幹部の思考・行動パターンの問題(顧客満足度のみを重視し労働環境を軽視、「自分はやってきた」という幹部の成功体験に基づく部下への指導方針、数値に基づく収益追求と精神論に基づく労働力投入、など)[70]

これらを踏まえ、一定時間以上の長時間労働の絶対的禁止のルール化と、その実現のための体制整備や「ワンオペ」の解消、経営幹部の企業意識改革のために研修の実施などを提言している[71]

その後、2014年6月にサービス水準の向上と店舗で働く従業員の声を反映しやすい環境を整えるため、全国2,000店舗を7つのエリアに分割し、それぞれに地域運営会社を設立。また長時間労働撲滅に向けて、会社と労働組合合同で「時間管理委員会」を設置。2015年2月から、会社としてクルーの生の声を聞く目的で「クルーミーティング」を全国規模で実施し、そこで上がった要望を元に茨城県つくば市などに事業所内保育所を設置した。そして2015年、2016年と2年連続で社員のベースアップ、クルーの時給アップを一律に実施した[72]

2017年、ゼンショーは深夜営業における過密労働対策として、11時間のインターバル規制を実験的に始めることで組合と合意した[73]

子会社店舗における食中毒死亡事件

ゼンショー子会社のフレッシュコーポレーションが運営する惣菜店の「でりしゃす」が2017年8月7日と8月8日に販売したポテトサラダ[74][75]を食べた客が病原性大腸菌による集団食中毒を起こし、そのうちの3歳女児1人が死亡した[76]食中毒事件に関し、コメントを発表した[77]

脚注

  1. 外食上場企業ランキング2015”. フードビジネス総合研究所. . 2017閲覧.
  2. 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 “「すき家」の労働環境改善に向けた改革の進捗について” (プレスリリース), ゼンショー / 北日本すき家 / 関東すき家 / 東京すき家 / 中部すき家 / 関西すき家 / 中四国すき家 / 九州すき家, (2014年9月30日), http://www.sukiya.jp/news/2014/09/20140930.html . 2014閲覧. 
  3. “社名の由来” (プレスリリース), ゼンショーホールディングス, http://www.zensho.co.jp/jp/company/identity/ . 2014閲覧. 
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  63. “ワンオペ”で叩かれた「すき家」のいま (1/2) ITmediaビジネスONLINE 2016年12月6日
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  72. “ワンオペ”で叩かれた「すき家」のいま”. ITmedia (2016年12月6日). . 2017閲覧.
  73. 「働き方改革」春闘主要テーマに 経営側、前向き回答も 朝日新聞 2017年3月16日
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  75. 多発する食中毒事故 原因と対策は Infoseekニュース 2017年9月19日
  76. 総菜食べた子供が死亡 9人感染の系列店で購入 毎日新聞 2017年9月13日
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参考文献

外部リンク

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