大飯発電所
座標: 東経135度39分18秒北緯35.54222度 東経135.655度
大飯発電所 | |
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{{#invoke:InfoboxImage|InfoboxImage|image=Oi Nuclear Power Plant(2017.08.21).jpg|size=|sizedefault=300x169px|alt= }} 海上より望む大飯発電所 | |
種類 | 原子力発電所 |
電気事業者 | 関西電力 |
所在地 |
日本 〒919-2101 福井県大飯郡おおい町大島1字吉見1番地1 |
1号機 | |
出力 | 117.5万 kW |
燃料 | 低濃縮二酸化ウラン |
冷却水 |
深層取水 約 m³ / 秒 |
営業運転開始日 |
1979年3月27日 (2017年12月、廃止を決定[1]) |
2号機 | |
出力 | 117.5万 kW |
燃料 | 低濃縮二酸化ウラン |
冷却水 |
深層取水 約 38 m³ / 秒 |
営業運転開始日 |
1979年12月5日 (2017年12月、廃止を決定[1]) |
3号機 | |
出力 | 117.5万 kW |
燃料 | 低濃縮二酸化ウラン |
冷却水 |
深層取水 約 m³ / 秒 |
営業運転開始日 | 1991年12月18日 |
4号機 | |
出力 | 117.5万 kW |
燃料 | 低濃縮二酸化ウラン |
冷却水 |
深層取水 約 m³ / 秒 |
営業運転開始日 | 1993年2月2日 |
公式サイト:大飯発電所 |
大飯発電所(おおいはつでんしょ)は、福井県大飯郡おおい町(合併前の旧町名は大飯町、読みは同じ)にある関西電力の原子力発電所。
福井県は、北陸電力の事業地域だが[3]、大飯発電所は関西電力が建設し、関西電力の事業地域に送電されている。1号機から4号機まで4基の原子炉の合計出力は470万kWである。日本の原子力発電所の中で、柏崎刈羽原子力発電所の出力821万2千kW[4]に次ぐ出力である。施設周辺は若狭湾に面し、半径20km圏内に高浜発電所(大飯郡高浜町)もある。
Contents
概要
建設費抑制のため原子炉を一度に2機分を建設する方式が採用されており、タービン建屋1棟で2機分収める構造となっている。
原子力事故への対応として、1号機と2号機には、アイスコンデンサー方式という方式を採用している。これは、格納容器の周りに設けられた1,944本のバスケットに常時1,250トンの氷を格納しておき、事故時に発生する蒸気を急速に冷却し圧力をさげる方式である。この方式により、格納容器の体積は通常方式のものに対し小さい。
その後、3号機と4号機には格納容器のコンクリート壁内部にPC鋼より線(テンドン)を入れて、あらかじめ格納容器全体を締め付けておき、事故時に発生する大きな圧力に耐えるプレストレストコンクリート製方式が採用されるようになり、アイスコンデンサ方式の採用は1号機と2号機のみとなった。
大飯発電所のPR施設として、おおい町大島に「エル・パーク・おおい」がある。おおいり館は発電所を1/3で再現する。
発電所の内部をガラス越しに軽装で見学できる「シースルー見学施設」が4号機に設けられていたが、現在はテロ対策のために見学できない。代替措置として、おおいり館の中でシースルー見学施設の内容を上映している。
発電設備
番号 | 原子炉形式 | 主契約者 | 定格電気出力 | 定格熱出力 | 運転開始日 | 設備利用率 (2009年度) |
現況 |
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1号機 | 加圧水型軽水炉(PWR) | WH、三菱商事 | 117.5万kW | 342.3万kW | 1979年3月27日 | 85.6% | 廃炉(2017年12月22日) |
2号機 | 加圧水型軽水炉(PWR) | WH、三菱商事 | 117.5万kW | 342.3万kW | 1979年12月5日 | 93.2% | 廃炉(2017年12月22日) |
3号機 | 加圧水型軽水炉(PWR) | 三菱重工業 | 118万kW | 342.3万kW | 1991年12月18日 | 78.5% | 稼働中 |
4号機 | 加圧水型軽水炉(PWR) | 三菱重工業 | 118万kW | 342.3万kW | 1993年2月2日 | 87.6% | 稼働中 |
大飯発電所で想定される地震の強さは700ガル、津波の高さは1.66mから1.86m[5]。
経緯
- 1973年1月28日 - 1・2号機に対する設置許可申請。
- 1979年3月27日 - 1号機、営業運転開始。
- 1979年12月5日 - 2号機、営業運転開始。
- 1987年2月10日 - 3・4号機に対する設置許可。
- 1991年12月18日 - 3号機、営業運転開始。
- 1993年2月2日 - 4号機、営業運転開始。
- 2005年12月22日 - 午前8時50分頃、大雪と強風のために送電線にトラブルが発生し、運転中のユニットが自動停止。
- 2010年6月6日 - 3号機が再稼働。
- 2010年6月23日 - 4号機が再稼働。
- 2010年11月17日 - 2号機が再稼働。
- 2010年12月10日 - 1号機が定期検査のため停止。
- 2011年3月10日 - 1号機が調整運転開始。
- 2011年7月16日 - 調整運転中の1号機で、C-蓄圧タンク圧力の低下により同機の運転を手動停止。
- 2011年12月19日 - 2号機が定期検査のため停止。
- 2012年7月5日 - 3号機が再々稼働。
- 2012年7月21日 - 4号機が再々稼働。
- 2013年9月2日 - 3号機が定期検査のため停止。
- 2013年9月15日 - 4号機も定期検査のため停止。
- 2017年12月22日 - 1・2号機の廃炉が決定。
- 2018年3月14日 - 3号機、再々々稼働。
- 2018年5月9日 - 4号機、再々々稼働。
2011年地震による運転停止
2011年3月11日の時点では、大飯発電所の1 - 4号機はそれぞれ以下の状態であった[6]。
番号 | 状態 |
---|---|
1号機 | 2010年12月10日から定期検査中(2011年3月10日から調整運転中) |
2号機 | 2010年11月17日から通常運転中 |
3号機 | 2010年6月6日から通常運転中 |
4号機 | 2010年6月23日から通常運転中 |
3月11日に福島第一原子力発電所事故が発生し、原子力発電所の安全性の問題が全国で注目を集めるようになった。
国の原子力安全・保安院は約3週間後の3月末に、緊急安全対策を各電力会社に指示した[7]。経済産業省はこの対策が講じられたことが確認できれば再稼働は可能との見解で、経済産業大臣(当時)の海江田万里は6月に原発の安全宣言を出し、定期検査の予定の作業が終了した玄海発電所の再稼働を進めようとしていた[7]。しかし、事故の検証が未実施で安全基準が示されていないとして、13基の商用原発を抱える福井県などから時期尚早との声が上がった[7]。そこで、政府(菅政権)は、ストレステストを導入し、1次評価で安全性を確認してから再稼働の是非を判断することとなった[7]。
これを受け、関西電力は10月28日に3号機の[8]、11月17日に4号機のストレステスト1次評価を原子力安全・保安院に提出した[9]。
国の原子力安全・保安院は、2012年2月13日に関西電力が提出した3号機および4号機のストレステストについて、「妥当」とする審査書を発表した [10] [11]。また、3月23日に原子力安全委員会はこの保安院の審査書を「妥当」と確認した[12] [13]。 2012年7月1日の3号機運転再開の時点では、空冷式で1825kVAの容量を持つ非常用発電装置を高台に設置する、非常用電源を発電設備につなぐための恒設ケーブルを設置する、といった対策はとられていたものの、免震事務棟の建設、フィルター付きベント装置の設置、防潮堤のかさ上げのような大規模工事を要する対策は進行途中であった[14][15]。
政府3閣僚協議
原子力安全・保安院と原子力安全委員会が関西電力が提出したストレステストの結果、安全性は確保されていると認定したため、その後の再稼働は政治判断となった[16]。4月3日から[17]内閣総理大臣の野田佳彦と経済産業大臣の枝野幸男、原発事故担当大臣の細野豪志、内閣官房長官の藤村修(関係3閣僚)の協議が6回行われた[18]。
この過程で4月6日に国は「原子力発電所の再起動にあたっての安全性に関する判断基準」(暫定基準)を示し、関西電力は4月9日に、当時得られた福島原発事故の技術的知見から必要とされる安全対策の現状と今後の計画を提出した[19]。同日にも3閣僚協議が開かれ、枝野経産相は「工程表は再稼働の安全基準におおむね適合している」と表明し、事実上の安全宣言をした[20]。4月13日に開かれた6回目の協議で、3,4号機が新たな安全基準を満たしていると最終確認し、関西電力の供給力を上積みしても管内は厳しい電力不足に直面しているとして、再稼働が必要だと結論づけた[18]。
この工程表で、放射性物質を除去するフィルター付きベント装置を2015年度に設置する方針が初めて示されたり、免震事務棟の設置が1年前倒しの2015年度とされたりと安全対策の計画に進展はあった[21]。
また、枝野は再稼働を巡って『福井県とおおい町の「同意」と滋賀県や京都府など近隣自治体の「理解」を得る必要がある』としたが[22]、藤村がこれには法律上の同意義務規定は存在しないと述べている[23]。
立地自治体
政府は4月13日までに安全性確認と再稼働必要性の検討を終え、4月14日には枝野が福井入りし、地元自治体である福井県知事の西川一誠やおおい町町長の時岡忍に再稼働を要請した[24]。西川と時岡は判断を保留した上で、電力消費地が再稼働に理解することに政府が責任を持つよう要求した[24]。
政府は再稼働への同意をおおい町議会に要請し、5月14日に全員協議会が開かれ、議員のほとんどが賛成して再稼働容認を決めた[25]。しかし、時岡町長は県原子力安全専門委員会(県専門家委)の意向も踏まえて判断するとしている[25]ため、県専門家委の結論が大幅にずれ込んでいることから、町としての同意には至っていない[26]。時岡の息子が大飯発電所の下請け会社の社長であることからこの会社の経営のために大飯原発を動かしたいのではないか、という説がテレビ朝日の討論番組で放送されている。
再稼働
2012年7月5日に3号機が発送電を開始[27]、21日には4号機が発送電を開始し[28]、これにより節電数値目標は中部・北陸・中国エリアでは撤廃、四国では7%から5%に緩和された[28]。再稼働による融通電力量の増加がなければ、九州電力は計画停電に踏み切らざるを得なかった公算が大きいとされる[29]。その後、2013年9月2日には3号機が定期検査のため停止[30]、15日には4号機も定期検査に入った[31]。
その後、2018年3月から3号機が再稼働し、同年5月からは4号機も再稼働した[32]。これらの再稼働を受け、燃料費メリットを電気料金価格に反映させるため、経済産業省電力・ガス取引監視等委員会料金審査専門会合での審査の結果座長の山内弘隆一橋大学大学院経営管理研究科教授により「大飯発電所3、4号機の再稼働によるメリットを適切に反映している」と総括され、同年7月から関西電力の電気料金が平均4.03%引き下げられることとなった[33][34]。
各種課題
過去の津波による被害記録の発見
大飯発電所の他にも関西電力、日本原子力発電の商用原子力発電所、日本原子力研究開発機構のもんじゅが位置する若狭湾は、天正地震の津波で大きな被害が出たことが明らかになった(なお関西電力はこの地震を受けて実施された調査以前から文献の内容を把握していた)[35]。
関西電力は、日本原子力発電、日本原子力研究開発機構と共同で調査を行い、天正地震の津波については5月中旬、ボーリング調査の調査でわかる範囲の他の時代の津波を含め、最終的な報告を10月末頃に行うとしている[36]。
追加調査の結果、各発電所の安全性に影響を与えるような津波の痕跡は認められなかったと原子力規制委員会に報告に報告された[37]。
活断層
大飯1、2号機と3、4号機の間をほぼ南北方向に走る破砕帯が活断層である可能性があり、原子力安全・保安院の指示により[38]、2012年11月2日に専門家による現地調査が開始された[39]。
トレンチ調査やボーリング調査を行い分析した結果、破砕帯は活断層ではないことが確認され、その旨原子力規制委員会に報告された[40]。
発電所工事にまつわる不祥事
電気工事会社・太平電業の福井県大飯事業所長らが、大飯発電所に、請負契約を装う形で、請負会社の社員を設備改修工事に派遣していたことが明らかとなり、請負会社の役員らとともに、職業安定法違反の容疑で逮捕された。請負会社の役員の1人が、指定暴力団・工藤会系組長の妻であることも判明しており、これら一連の原発への派遣事業が、工藤会への資金源となっていた可能性が指摘されている[41]。
補足
出典
- ↑ 1.0 1.1 大飯原発1、2号機廃炉を正式決定 関電、大型原発で初 産経WEST 2017年12月22日
- ↑ 国土交通省 国土画像情報(カラー空中写真)を基に作成(1975年度撮影)
- ↑ 「日本電力会社の事業地域図」北陸電力の事業地域、青色に塗られた富山県・石川県・福井県の3県。
- ↑ 「発電所の概要」東京電力HDサイト
- ↑ 『新潮45別冊 日本の原発』 - 新潮社(2011年) 50ページ記載。
- ↑ 平成22年度 原子力発電所の運転状況 関西電力 2011年4月7日
- ↑ 7.0 7.1 7.2 7.3 原発再稼働、迷走の1年 国の場当たり対策に批判 朝日新聞 2012年5月4日
- ↑ 大飯発電所3号機の安全性に関する総合評価に係る報告書の提出について 関西電力 2011年10月28日
- ↑ 大飯発電所4号機の安全性に関する総合評価に係る報告書の提出について 関西電力 2011年11月17日
- ↑ “保安院、大飯原発ストレステスト評価を「妥当」”. 読売新聞 (2012年1月19日). 2012年3月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2012閲覧.
- ↑ 関西電力株式会社大飯発電所3号機及び4号機の安全性に関する総合的評価(いわゆるストレステスト)一次評価に係る審査結果について 経済産業省 2012年2月13日
- ↑ “関西電力株式会社大飯発電所3号機及び4号機の安全性に関する総合的評価(一次評価)に関する原子力安全・保安院による確認結果について”. 原子力安全委員会 (2012年3月23日). 2012年3月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2012閲覧.
- ↑ 大飯原発の耐性評価、安全委も「妥当」 確認文書公表 朝日新聞 2012年3月23日
- ↑ 大飯原発工事未完了でも十分安全? 政府お墨付きも尽きぬ課題 福井新聞 2012年4月15日
- ↑ 東京電力福島第一原子力発電所における事故を踏まえた大飯発電所4号機の安全性に関する総合評価(一次評価)の結果について(報告) 関西電力株式会社 平成23年11月
- ↑ 大飯原発「妥当」判断 「地元」の範囲めぐり見解にずれ 産経新聞 2012年3月23日
- ↑ 再稼働「3日は決まらず」 大飯原発で細野氏 産経新聞 2012年4月3日
- ↑ 18.0 18.1 大飯原発再稼働へ協力要請決定 関係3閣僚協議 佐賀新聞 2012年4月13日
- ↑ 大飯発電所3、4号機における更なる安全性・信頼性向上のための対策の実施計画等の報告について 関西電力 2012年4月9日
- ↑ 大飯原発「安全基準に適合」 政府、再稼働を地元要請へ 関電工程表を評価 日本経済新聞 2012年4月10日
- ↑ 関西電力が大飯原発の工程表提出 おおい町にも内容説明 福井新聞 2012年4月9日
- ↑ “再稼働に必要な地元了解、範囲は? 敦賀市長、経産相と異なる認識”. 福井新聞. (2012年4月2日)
- ↑ 官房長官、原発再稼働「地元同意、義務ではない」 日本経済新聞 2012年4月5日
- ↑ 24.0 24.1 大飯再稼働:関西圏の理解が必要…経産相要請に福井知事ら 毎日新聞 2012年4月14日
- ↑ 25.0 25.1 福井県おおい町議会 原発再稼動容認を決定 読売新聞 2012年5月14日
- ↑ 大飯再稼働、ずれ込む地元・福井の意見集約 知事の不信感も影響 産経新聞 2012年5月27日
- ↑ “関電大飯3号機が送電開始 9日にもフル出力へ”. (2012年7月5日)
- ↑ 28.0 28.1 “大飯原発4号機も発送電開始 25日にもフル稼働”. (2012年7月21日)
- ↑ “第1部(2) 全基停止の夏 「超」綱渡りの電力供給 天候と他社頼み”. 産経. (2012年9月25日)
- ↑ “大飯3号機、定期検査入り 国内稼働原発ゼロへ”. 西日本. (2013年9月2日)
- ↑ “大飯4号機停止…「原発ゼロ」1年2か月ぶり”. 読売. (2013年9月15日)
- ↑ [1]日本経済新聞
- ↑ 「関電の7月値下げ、事実上決定 家庭向け電気料金で平均4・03%」産経ニュース2018.6.15 19
- ↑ [2]電気新聞
- ↑ 若狭湾の津波、調査検討=古文書に被害の記述―関電 朝日新聞 2011年5月26日(2011年5月27日閲覧)
- ↑ 若狭湾沿岸における津波堆積物に関する追加調査の実施について 関西電力 2012年2月16日
- ↑ 若狭湾沿岸における津波堆積物の調査結果について 関西電力 2014年12月18日
- ↑ 志賀・大飯原発の敷地内断層、再調査を指示 原子力安全・保安院 SankeiBiz 2012年07月18日 19時33分
- ↑ “大飯で断層調査始まる 規制委、原発敷地内で初”. 日本経済新聞. . 2012/11/08(UTC)閲覧.
- ↑ 。大飯発電所敷地内における破砕帯調査に関する最終報告の提出について 関西電力 2013年7月25日
- ↑ 偽装請負:関電原発工事、暴力団が関与 3容疑者を逮捕 毎日新聞 2012年1月13日
関連項目
- 日本の原子力発電所の一覧
- 原子力規制委員会(環境省の外局)
- 原子力委員会(内閣府の審議会等の一つ)
- 原子力防災会議(内閣に設置された行政機関)
- 原子力基本法
- 電気事業連合会
- 国際原子力機関(IAEA)
外部リンク
- 関西電力 大飯発電所 関西電力
- 大飯発電所 - 福井原子力センター
- 関西電力株式会社 大飯発電所 原子力規制委員会