外局
外局(がいきょく)とは、日本政府の内閣府または省に置かれる、特殊な事務、独立性の強い事務を行うための組織で、内部部局(本府または本省)と並立する地位を有するものである。現在では、合議制の委員会と独任制の庁の2つに大別される。
1998年(平成10年)の中央省庁等改革基本法により、後述する例外を除いて、「主として政策の実施に関する機能を担うもの」と定義されている。
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概要
日本政府の行政組織は、内閣のもと1府11省1庁からなり、それぞれの府省の内部には、内部部局として、大臣官房および局(部)が、その下に課または室がもうけられている(他方、復興庁はこのような組織構成とはなっていない。)。外局は、この局と同程度の業務を受け持ちながら、その業務が特殊性・専門性を帯びているために、ある程度独立した機関として設置されているものである。
外局の長については、委員会の長は委員長であり、庁の長は長官である。委員会および庁の長官は以下のような権限を有し、本府・本省に対しての独立性を有している。
- 外局内の職員の任免権。ただし、外局に置かれる審議会等の委員の任命権は大臣が有していることが極めて多い。
- 所管の大臣に「内閣府令・省令」の発出を求める権限
- 所掌事務について特別の命令(いわゆる外局の規則)を制定する権限(ただし、法律の定めが必要)
- 告示を発出する権限
- 部内に訓令・通達を発出する権限
しかし、閣議の請議や「内閣府令・省令」の発出を大臣に依頼しなくてはならない点など、所管の大臣の指揮監督の下にあるがゆえの制約もある。
ちなみに庁の長官については、担当府省の出身者が就任することが多く、上記のように外局を含めた府省の中でも権限が多いことから府省の事務次官に次ぐ地位と見られている。なお、各府省によって異なるが、長官就任後、担当府省の事務次官に就任する例も多く見られる。逆に事務次官経験者が外局の長官に就任したのは、事務次官経験者が国会議員となって大臣庁の長官に就任したケースを除くと、内閣府事務次官を務めた内田俊一が初代の消費者庁長官に就任したのが唯一の事例である。
現在、内閣府及び各省の外局とは、内閣府は内閣府設置法第49条によって、各省は国家行政組織法第3条により規定されるもので、内閣府においては内閣府第64条及び各設置法等において、各省においては国家行政組織法別表第一に列挙されたもののみであり、○○委員会、○○庁という名称を用いていても、外局ではないものがある。例えば、証券取引等監視委員会(金融庁設置法第6条、「審議会等」という。)、宮内庁(内閣府設置法第48条)、警察庁(警察法第15条)及び検察庁(法務省設置法第14条、「特別の機関」という。)などがこれにあたる。
また、内閣府の外局たる委員会の長には、国務大臣を充てることができ、これを大臣委員会という。かつては内閣府(それ以前は総理府)の外局たる庁で、その長に国務大臣を充てるものがあり、これを大臣庁と呼んだが、2007年1月9日、内閣府の外局で最後の大臣庁であった防衛庁が防衛省に昇格したことにより、大臣庁は現行法上、消滅した。
かつて(1948年の国家行政組織法施行前)は、外局の呼称を委員会または庁に限定しておらず、内務省の社会局や衛生局、宮内省の内大臣府や掌典職、厚生省の引揚援護院、陸軍省の陸軍兵器行政本部、海軍省の海軍艦政本部などがあった。このように、外局の呼称は、時代により異なり、定義や位置づけも、その時代の法律の規定の仕方に依拠している。
- 実施庁
「その所掌事務が主として政策の実施に係るものである庁」として国家行政組織法第7条第5項および別表第二で規定されている庁を「実施庁」と称し、具体的には公安調査庁、国税庁、特許庁、気象庁および海上保安庁がこれに該当する。2001年1月6日の中央省庁再編時点では、このほかに郵政事業庁、社会保険庁および海難審判庁も実施庁とされていた。
- 外局の規則(委員会規則・庁令)
委員会および庁の長官は、法律の定めるところにより、政令・内閣府令・省令以外の特別の命令を定めることができる(内閣府設置法58条4項、国家行政組織法13条1項)。委員会が定める命令が規則であり、庁の長官が定めるものが庁令である。これらを総称して外局の規則という。 現在、規則を定めることのできる委員会は多数あるが、長官が庁令を定めることのできる庁は海上保安庁のみである。同庁は、海上保安庁法第33条の2により、海上保安学校および海上保安大学校の名称、位置および内部組織については庁令で定めることとしている。
外局の一覧
庁や委員会の名称を持つが外局ではないもの
- 内閣府
- 復興庁 - 内閣に直隷しており府省の下には入らない(復興庁設置法)。
- 法務省
- 司法試験委員会 - かつては「司法試験管理委員会」の名称を持つ外局であったが、2004年1月1日、現在の名称になり国家行政組織法第8条による審議会等に移行した(法務省設置法)。
- 検察庁 - 法務省の特別の機関(法務省設置法)。
- 国土交通省
- 航空・鉄道事故調査委員会 - かつて存在した国土交通省の審議会等の一つ(航空・鉄道事故調査委員会設置法)。
- 環境省
- 原子力規制庁 - 環境省の外局である原子力規制委員会の事務局(原子力規制委員会設置法)。
- 東京都
過去に存在した外局等
- 内閣直属
- 法務庁 - 1949年6月1日、法務府に改称(1952年8月1日、さらに法務省に改称)
- 総理府
- 金融再生委員会 - 2001年1月6日の中央省庁再編により金融庁と統合され内閣府の金融庁に
- 金融監督庁 - 2000年7月1日、金融庁に改称
- 宮内庁 - 2001年1月6日の中央省庁再編により内閣府へ移管(外局から「内閣府に置かれる機関」となる)
- 経済企画庁 - 2001年1月6日の中央省庁再編により内閣府に統合
- 北海道開発庁 - 2001年1月6日の中央省庁再編により国土交通省に統合
- 沖縄開発庁 - 2001年1月6日の中央省庁再編により内閣府に統合
- 総務庁 - 2001年1月6日の中央省庁再編により総務省に統合
- 科学技術庁 - 2001年1月6日の中央省庁再編により、内閣府が担う事務を除き、文部科学省に統合
- 国土庁 - 2001年1月6日の中央省庁再編により、内閣府が担う事務を除き、国土交通省に統合
- 環境庁 - 2001年1月6日の中央省庁再編により環境省に昇格
- 行政管理庁 - 1984年7月1日、総務庁に統合
- 警察予備隊(本部及び総隊) - 1952年8月1日、保安庁に統合
- 保安庁 - 1954年7月1日、防衛庁に改称
- 経済審議庁 - 1955年7月、経済企画庁に改称
- 特別調達庁 - 1952年4月1日、調達庁に改称
- 調達庁 - 1962年11月1日、防衛庁建設本部と統合され防衛施設庁に
- ※防衛施設庁 - 1957年の国家行政組織法改正により、総理府の外局であるいわゆる大臣庁には、さらに委員会又は庁を置くことができる規定が設けられるが、「外局の外局」という規定がない。
- 賠償庁 - 1952年4月28日廃止
- 沖縄・北方対策庁 - 1972年5月15日、沖縄開発庁に
- 地方自治庁 - 1953年8月1日、自治庁に
- 自治庁 - 1960年7月1日、国家消防本部と統合され自治省に
- 国家消防庁 - 国家公安委員会に設置されていた機関。1952年7月1日、国家消防本部と改称。1960年7月1日、消防庁に改組され、新たに発足した自治省の外局となる。
- 内閣府
- 防衛庁 - 2007年1月9日、内閣府の外局から独立し防衛省に昇格
- ※ 防衛施設庁 - 内閣府設置法第64条(防衛省設置前の旧規定)に列挙される庁の一つであるが、中央省庁等改革基本法第10条第7項により防衛庁の外局して置くものと位置づけられたことにより、防衛庁に置かれる庁とされ、防衛省の昇格・設置により防衛省の外局となる。
- 防衛庁設置法(当時)においては「防衛庁の機関」(外局ではない)とする。
- 総務省
- 法務省
- 外務省
- 出入国管理庁 - 1951年11月1日、入国管理庁に改組
- 入国管理庁 - 1952年8月1日、法務省の内局に移管され入国管理局に
- 大蔵省
- 厚生省
- 厚生労働省
- 農林水産省
- 食糧庁 - 2003年7月1日廃止。農林水産省の総合食料局に
- 通商産業省
- 国土交通省
- 防衛省
- 防衛施設庁 - 2007年9月1日、防衛省に統合される形で廃止
- 電気通信省
- 運輸省
- 航空庁 - 1952年8月1日、運輸省に吸収統合され航空局に
- 経済安定本部
- 宮内省
- 陸軍省
- 海軍省
- 内務省
- 駅逓局
- 山林局
- 社会局
- 衛生局
- 北海道庁 (1886-1947) - 内務省廃止とともに消滅
- 樺太庁 - 敗戦により事実上消滅
- 鉄道庁 - 1892年逓信省の外局に
- 逓信省
- 鉄道庁 - 1893年内局化され逓信省鉄道局に
- 帝国鉄道庁 - 1908年12月5日内閣鉄道院に
- 航空局
- 拓務省
- 南洋庁 - 1942年11月大東亜省の管轄になる。
- 大東亜省
- 商工省
- その他
- 復員庁 - 1947年10月に廃止