「連続立体交差事業」の版間の差分
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連続立体交差事業(れんぞくりったいこうさじぎょう)は、鉄道の一定区間を高架化もしくは地下化後、その一定区間内にある複数の踏切を撤去する事業。地方公共団体が事業主体となり、道路整備の一環とした都市計画事業として実施する[書籍 1]。
事業の制度
1969年(昭和44年)9月に、当時の建設省と運輸省との間で締結され、1992年(平成4年)3月に、国鉄分割民営化をうけて決定された「都市における道路と鉄道の連続立体交差化に関する協定および同細目協定」(建運協定)に基づき実施されてきた[書籍 2]。
2004年(平成16年)4月から「都市における道路と鉄道の連続立体交差化に関する要綱および同細目要綱」(連立要綱)に名前を改め、2007年(平成19年)8月には、連立要綱を改定し、連続立体交差化に関する地方公共団体と鉄道事業者との費用負担の見直しを行っている[書籍 2]。
この連立要綱に基づき、都市計画事業として都道府県、政令指定都市、県庁所在都市およびそれに準ずる都市(人口が20万人以上の都市と東京都の特別区)が事業主体となって施行している[書籍 2]。
2009年(平成21年)度までは、連立要綱による連続立体交差化の条件に加えて、国費の効率的・重点的な配分の観点から緊急性や効率性を図る指標が付加された「街路・交通連携推進事業採択基準」が用いられていたが、2010年(平成22年)度からは社会資本整備総合交付金が創設され、社会資本整備総合交付金交付要綱により、「街路・交通連携推進事業採択基準」に基づく国庫補助採択という行為は無くなっている[書籍 3]。
制度の拡充
- 立替施行制度
- 2001年(平成13年)度に鉄道事業者による立替制度が創設された[書籍 4]。この制度は、地方公共団体を資金面と体制面の両面から支援を図るための制度である[書籍 4]。2006年(平成18年)度からは立替施行者の対象を特別目的会社(SPC)、第三セクター鉄道、鉄道・運輸機構に拡大している[書籍 4]。
- 無利子貸付制度
- 道路開発資金を活用した融資制度に加え、新たに踏切道改良促進法に基づく認定事業者に対する無利子貸付制度が2006年(平成18年)度に創設された[書籍 5]。連続立体交差事業に対する無利子融資貸付制度においては、全体の約9割は国と地方公共団体が、残りの約1割は事業者がそれぞれ連続立体交差事業にかかる費用を負担する[書籍 5]。
採択基準
「都市における道路と鉄道との連続立体交差化に関する要綱および同細目要綱」(連立要綱)に基づいて採択が行われる[書籍 2]。その内容は下記のとおり。
都市における道路と鉄道との連続立体交差化に関する要綱
施工基面を沿線の地表面から離しつつ、既設線に相応する鉄道を建設するもので、次の4つの項目のいずれかに該当するものをいい、既設線の連続立体交差化と同時に鉄道線路を増設することを含むものとする[書籍 6]。
第2条(3)連続立体交差化
ア. 鉄道と幹線道路が2か所以上において交差し、その交差する両端の幹線道路の中心間距離が350m以上ある鉄道路線区間において、鉄道と道路を同時に3か所以上立体交差をさせ、かつ、2か所以上ある踏切の撤去を行うもの[書籍 6]。
イ. 幹線道路と交差する箇所で、踏切の遮断時間がピーク時で1時間あたり40分以上あるいは1日あたりの踏切交通遮断量が5万台以上と見込まれる踏切が存在する鉄道区間において、当該踏切を撤去しつつ、鉄道と道路を3か所以上において立体交差を行うもの[書籍 6]。
ウ. 幹線道路以外の道路と交差する箇所に自動車や歩行者、そして軽車両にかかる1日あたりの踏切交通遮断量5万台以上であり、かつ、歩行者や軽車両にかかる1日あたりの踏切交通遮断量が2万台以上であると見込まれる踏切が存在する鉄道区間において、当該踏切を撤去しつつ、鉄道と道路を3か所以上において立体交差を行うもの[書籍 6]。
エ. 施工基面を沿線の地表面から離し、既設線に相応する鉄道を建設済み区間(以下、整備済み区間)に隣接する鉄道の区間において、整備済み区間と併せた全体の区間として上記のアかまたはイに適合するもの[書籍 6]。
都市における道路と鉄道との連続立体交差化に関する細目要綱
(連続立体交差化) 第3条 要綱第2条(3)
エの整備済み区間に隣接する鉄道の区間とは、原則として整備済み区間と一体的かつ同時に都市計画が決定されている区間として扱う[書籍 6]。ただし、整備済み区間の整備完了後、おおむね10年以上経過したものは含まない[書籍 6]。
年表
- 1968年(昭和43年) - 連続立体交差事業が始まる[書籍 7]。
- 1969年(昭和44年)9月 - 建設省と運輸省との間において、「都市における道路と鉄道との連続立体交差化に関する協定」(建運協定)を締結[書籍 7]。
- 2000年(平成12年)度 - 連続立体交差事業の採択基準が緩和される(踏切道等総合対策事業の創設)[書籍 8]。
- 2001年(平成13年)度 - 連続立体交差事業の推進に向けた鉄道事業者による立替制度と道路開発資金による貸付制度が始まる[書籍 8]。
- 2002年(平成14年)度
- 2004年(平成16年)4月 - 「建運協定」を「連立要綱」に改名[書籍 2]。
- 2005年(平成17年)度 - 連続立体交差事業の施行者に、県庁所在都市ならびにそれに準ずる都市(人口が20万人以上の都市と東京都の特別区)が追加される[書籍 9]。
- 2006年(平成18年)度 - 踏切道改良促進法が改正される。これにともない、連続立体交差化工事にかかる無利子貸付制度が創設される[書籍 10]。
- 2010年(平成22年)度 - 社会資本整備総合交付金が創設される[書籍 11]。
- 2018年(平成30年)度 - 交通拠点連携集中支援事業が創設される[1]。
実施箇所
路線名 | 鉄道事業者 | 事業区間 | 事業主体 | 事業完了予定 | 出典 |
---|---|---|---|---|---|
信越本線・白新線・越後線 | 東日本旅客鉄道 | 新潟駅付近 | 新潟市 | 2021年度 | [2] |
東海道本線・御殿場線 | 東海旅客鉄道 | 沼津駅付近 | 静岡県 | 2022年度 | [3] |
東海道支線 | 西日本旅客鉄道 | 大阪市北区豊崎6丁目 - 大阪市福島区福島7丁目 | 大阪市 | 2022年度末 | [4] |
山陽本線・呉線 | 広島市東部地区連続立体交差事業 山陽本線:安芸郡海田町石原 - 安芸郡府中町鹿籠1丁目 呉線:広島市安芸区矢野東1丁目 - 海田市駅 |
広島県・広島市 | 2022年度 | [5] | |
予讃線 | 四国旅客鉄道 | 松山駅付近 | 愛媛県 | 2024年度 | [6] |
鹿児島本線・筑豊本線 | 九州旅客鉄道 | 陣原駅 - 水巻駅 本城駅 - 東水巻駅 |
北九州市 | 2022年度 | [7] |
長崎本線 | 長崎市松山町 - 長崎市尾上町 | 長崎県 | 2021年度 | [8] |
路線名 | 鉄道事業者 | 事業区間 | 事業主体 | 事業完了予定 | 出典 |
---|---|---|---|---|---|
新京成電鉄新京成線 | 新京成電鉄 | 鎌ヶ谷大仏駅 - くぬぎ山駅 | 千葉県 | 2024年度 | [9] |
東武野田線 | 東武鉄道 | 清水公園駅 - 梅郷駅 | 2023年度 | [10] | |
東武伊勢崎線(東武スカイツリーライン) | 西新井駅 - 谷塚駅 | 足立区 | 2020年度 | ||
とうきょうスカイツリー駅 - 曳舟駅 | 墨田区 | 2024年度 | |||
西武新宿線 | 西武鉄道 | 中井駅 - 野方駅 | 東京都 | 2020年度 | |
西武新宿線・西武国分寺線・西武西武園線 | 東村山駅付近 | 2024年度 | |||
京成押上線 | 京成電鉄 | 四ツ木駅 - 青砥駅 | 2022年度 | ||
京王線 | 京王電鉄 | 笹塚駅 - 仙川駅 | 2022年度 | ||
京急大師線 | 京浜急行電鉄 | 川崎大師駅 - 小島新田駅 | 川崎市 | 2024年度 | |
名古屋本線・三河線 | 名古屋鉄道 | 知立駅付近 | 愛知県 | 2023年度 | [11] |
南海本線 | 南海電気鉄道 | 石津川駅 - 羽衣駅 | 堺市 | 2027年度 | [12] |
南海本線・高師浜線 | 浜寺公園駅 - 北助松駅 羽衣駅 - 伽羅橋駅 |
大阪府 | 2019年度 | ||
京阪本線 | 京阪電気鉄道 | 寝屋川市駅 - 枚方市駅 | 2028年度 | ||
阪急京都本線・千里線 | 阪急電鉄 | 淡路駅付近 | 大阪市 | 2027年度 | |
阪神本線 | 阪神電気鉄道 | 住吉駅 - 芦屋駅 | 神戸市 | 2022年度 | |
西鉄天神大牟田線 | 西日本鉄道 | 春日原駅 - 下大利駅 | 福岡県 | 2021年度 | [13] |
雑餉隈駅付近 | 福岡市 | 2023年度 |
脚注
- 書籍
- ↑ 街路交通事業事務必携 p.423
- ↑ 2.0 2.1 2.2 2.3 2.4 街路交通事業事務必携 p.422
- ↑ 街路交通事業事務必携 p.424
- ↑ 4.0 4.1 4.2 街路交通事業事務必携 p.443
- ↑ 5.0 5.1 街路交通事業事務必携 p.444
- ↑ 6.0 6.1 6.2 6.3 6.4 6.5 6.6 街路交通事業事務必携 p.427
- ↑ 7.0 7.1 街路交通事業事務必携 p.1118
- ↑ 8.0 8.1 8.2 8.3 街路交通事業事務必携 p.1121
- ↑ 街路交通事業事務必携 p.1122
- ↑ 街路交通事業事務必携 p.1123
- ↑ 街路交通事業事務必携 p.1124
- ウェブサイト
- ↑ “平成31年度 国の施策に対する重点提案・要望 (PDF)”. 千葉県. p. 104 (2018年6月). . 2018閲覧.
- ↑ “現在の状況”. 新潟市 (2018年5月10日). . 2018閲覧.
- ↑ “事業概要”. 静岡県 (2016年5月25日). . 2018閲覧.
- ↑ “JR東海道線支線地下化事業”. 大阪市 (2017年12月12日). . 2018閲覧.
- ↑ “広島市東部地区連続立体交差事業”. 広島県 (2018年3月12日). . 2018閲覧.
- ↑ “JR松山駅付近連続立体交差事業”. 愛媛県 (2018年3月12日). . 2018閲覧.
- ↑ “折尾地区総合整備事業について”. 北九州市. . 2018閲覧.
- ↑ “事業紹介”. 長崎県. . 2018閲覧.
- ↑ “連続立体交差事業”. 新京成電鉄. . 2018閲覧.
- ↑ “大規模工事計画(首都圏) (PDF)”. 日本民営鉄道協会. . 2018閲覧.
- ↑ “大規模工事計画(中京圏) (PDF)”. 日本民営鉄道協会. . 2018閲覧.
- ↑ “大規模工事計画(近畿圏) (PDF)”. 日本民営鉄道協会. . 2018閲覧.
- ↑ “大規模工事計画(福岡) (PDF)”. 日本民営鉄道協会. . 2018閲覧.
参考文献
- 平成22年版「街路交通事業事務必携」、監修:国土交通省都市・地域整備局街路交通施設課、発行:日本交通計画協会。
関連項目
- 特定都市鉄道整備促進特別措置法
- 特定都市鉄道整備積立金
- 開かずの踏切
- 立体交差
- 台鉄捷運化-日本と同様台湾の大都市圏の鉄道高架化及び地下化による踏切除去が積極的に行われている。
外部リンク
- 全国連続立体交差事業促進協議会
- 連続立体交差事業等による踏切対策の実施 - 国土交通省
- 駅まち - 日本交通計画協会