武器輸出三原則
武器輸出三原則(ぶきゆしゅつさんげんそく)とは、かつて日本国政府が採っていた、武器輸出規制および運用面の原則のことである。「武器輸出禁止三原則」と呼ばれることもある[1]。政府答弁などで明らかにされていたものの、直接法律で規定されたものではなく、政令運用基準にとどまっていた[2]。また、「武器」の定義等を含めて議論があった[2]。
2014年(平成26年)4月1日に、武器輸出三原則に代わる新たな政府方針として『防衛装備移転三原則』が閣議決定された[3]。
内容
武器輸出三原則は、共産圏と国際連合決議による武器禁輸措置をとられた国、及び紛争地域への武器輸出を禁止したものであり、他の地域への武器輸出は「慎む」とされ、武器輸出そのものを禁止していたわけではない。しかし、日本は他の地域への武器輸出は「慎む」ようになってからは、原則として武器および武器製造技術、武器への転用可能な物品の輸出が禁じられていた。
武器輸出三原則の内容そのものを直接的に規定した法律は設けられなかった。ただし、外国為替及び外国貿易法と輸出貿易管理令によって、輸出の許可を司り、輸出貿易管理令別表第1が輸出許可品目名[4]を規定しており、この規制対象品目は核不拡散条約、生物兵器禁止条約、化学兵器禁止条約やワッセナー・アレンジメント(前身の対共産圏輸出統制委員会)における規制対象とリンクしており、対象となる品目は適時追加され、武器の不正輸出における罰則は外為法に設けられた(3〜5年以下の懲役と科料)。また、輸出貿易管理令では「武器製造関連設備」も対象項目となっている[5][6]。
ただし、当初は外為法の不備があったため、日工展訴訟が発生し、外替法改正が行われた。
政府答弁
日本国政府は、1967年の佐藤栄作内閣総理大臣の答弁で共産圏諸国・紛争当事国[7]などへの輸出禁止確認にはじまり、とりわけ1976年の三木武夫総理大臣の答弁[6]を歴代内閣が堅持してきた。三木答弁では、「武器輸出を慎む」と表現し「武器輸出の禁止」または「一切しない」という表現ではなかった[2]。またこの「慎む」という表現には、国際紛争を助長させない場合は、「慎む必要がない」ということも含意されていた[2]。しかしのちに田中六助通産大臣(当時)は「原則としてだめだということ」と答弁した[8][2]。
例外規定
1983年の「対米武器技術供与についての内閣官房長官談話」[9]以降、アメリカ合衆国への武器技術供与は例外とされ、武器輸出が認められていた[2]。また、ミサイル防衛システム構築のための「武器」輸出もアメリカ合衆国に限定して認められていた[2]。このアメリカ例外規定については、アメリカ合衆国が「紛争当事国」であっても、例外規定は論理的には適用された[2]。
このほか、アメリカ限定ではない例外規定として、テロ・海賊対策の場合は例外とされた[2]。
武器輸出三原則の提議
前史
1962年3月16日の衆議院商工委員会で通商産業省(当時)通商局長が「共産圏への武器輸出については、ココムの制度に基づいて輸出の可否を判断している」と答弁し、1965年5月7日に参議院決算委員会で外務省アジア局外務審議官が「直接戦争に関係のある武器や軍需物資は、輸出承認していない」と答弁していた。
また、1965年8月5日に衆議院科学技術振興対策特別委員会で通産省重工業局次長が「通産省の武器輸出の方針は、第一は、ココムの制限に従う、第二は、国連決議に基づく武器輸出禁止国には輸出ができない。第三は、国際紛争助長の恐れがある国に対する輸出については認めない」と答弁していた。
佐藤首相の三原則提議
輸出貿易管理令における事実上の「武器輸出禁止規定」については1967年(昭和42年)4月21日に行われた佐藤栄作首相の衆議院決算委員会における答弁[10]により、以下のような国・地域の場合は「武器」の輸出を認めないこととした。これが狭義の武器輸出三原則とされる[11]。
なお、佐藤栄作首相は「武器輸出を目的には製造しないが、輸出貿易管理令の運用上差し支えない範囲においては輸出することができる」と答弁しており、武器輸出を禁止したものではなかった[12]。
三木首相による項目追加
1976年(昭和51年)2月27日に行われた三木武夫首相の衆議院予算委員会における答弁[6]により、佐藤首相の三原則にいくつかの項目が加えられた。政府は1967年の「武器輸出三原則」とこの「武器輸出に関する政府統一見解」をあわせ「武器輸出三原則等」と呼称された[11]。
- 三原則対象地域については「武器」の輸出を認めない。
- 三原則対象地域以外の地域については憲法及び外国為替及び外国貿易管理法の精神にのっとり、「武器」の輸出を慎むものとする。
- 武器製造関連設備の輸出については、「武器」に準じて取り扱うものとする。
武器輸出三原則における「武器」は次のように定義した。
武器輸出問題等に関する決議
1981年1月、通産省の承認を得ずに、半製品の火砲砲身を韓国に輸出していた堀田ハガネ事件が起きたため、同1981年3月に「政府は、武器輸出について、厳正かつ慎重な態度をもつて対処すると共に制度上の改善を含め実効ある措置を講ずべきである」とする「武器輸出問題等に関する決議」が議会で可決した[2]。
武器輸出三原則の緩和(例外規定の運用)
後藤田官房長官談話と対米武器技術供与の例外規定
1983年(昭和58年)1月14日に発せられた中曽根内閣の後藤田正晴官房長官による「対米武器技術供与についての内閣官房長官談話」[9]では、 日米安全保障条約の観点からアメリカ軍向けの武器技術供与を緩和することを武器輸出三原則の例外とされた。
同1983年11月8日には対米武器技術供与を日米相互防衛援助協定の関連規定の下で行うという基本的枠組みを定めた「日本国とアメリカ合衆国との間の相互援助協定に基づくアメリカ合衆国に対する武器技術の供与に関する交換公文」[13]が締結された。1984年11月には日米両国政府の協議機関として武器技術共同委員会(JMTC)が発足し、翌1985年12月27日に対米武器技術供与を実施するための細目取り決めが締結された。
ただ、日本からの技術供与が行われているアメリカは、湾岸戦争やイラク戦争などで「国際紛争の当事国」となっていることから三原則は有名無実化しているとの指摘もあった[2]。一方、アメリカは、個々に交換公文を交わし協議を行うことを煩雑であるとみなしていた[2]。
小泉内閣での官房長官談話とミサイル防衛
- 参照: ミサイル防衛
2005年(平成17年)には、小泉内閣の官房長官談話として、アメリカとの弾道ミサイル防衛システムの共同開発・生産は三原則の対象外とすることが発表された[14]。
2007年10月18日に発足した「総合取得改革推進プロジェクトチーム」は「効果的・効率的な研究開発に資する国際協力を推進するため、各国との技術交流をより活性化するとともに、国際共同研究・開発に係る背景や利点・問題点などについて一層の検討を深める必要がある」とし、日本経済団体連合会も賛成の意を表した提言を発表した。
インドネシアへの巡視艇供与
アメリカとの技術協力以外にも例外的にインドネシアに「武器」輸出を認めた例がある。ただし、これは巡視艇であり、防弾ガラスなどの装備により武器に分類されていたもので、機関銃などの通常の意味での武器は装備していなかった。
2006年6月にマラッカ海峡の海賊対策に手をやいているインドネシアのユドヨノ大統領の依頼を受けた日本政府は閣議決定をおこない、2007年にインドネシア国家警察本部に小型巡視艇がODAを用いて無償供与された。引き渡されたのは27メートル型巡視艇3隻で最大速度は30ノット、建造総額は19億円。海上保安庁の同クラスの艦船を製造している墨田川造船で建造されそれぞれ「KP.HAYABUSA」、「KP.ANIS MADU」、「KP.TAKA」と命名され[15]インドネシアまで輸送された。インドネシア政府とは転売および軍事利用の禁止を確認している。
韓国軍への弾薬供与
2013年12月23日、第2次安倍内閣において陸上自衛隊のの弾薬が南スーダンでPKO活動中の韓国軍へ無償譲渡された。
小型武器の輸出
スイスのジュネーブ高等国際問題研究所によると、日本は猟銃、弾薬など民間向けの小型武器をアメリカ、ベルギー、フランスに輸出しており、その規模は世界第9位となっている[16]。2012年度の調査でも、日本はアメリカ、ロシア、ドイツなどと共に、トップ12カ国の1つに含まれており、輸出額の合計は2億4900万ドルになる[17]。
武器輸出三原則の見直し
武器輸出三原則をめぐる見直しの議論
国際共同開発との関係についての議論
武器輸出三原則は個別の例外規定によって緩和が図られてきた。しかし、個々に例外化する方法では臨機応変な対応ができず、国際共同開発参加への障害とみなす見解も出され、個別の例外規定を増やすのではなく、三原則を根本から見直しすことが必要という指摘もあった[2]。
日本国内の防衛産業については、日本は自衛隊装備の大半を国内開発あるいはライセンス生産品でまかなう方針を採っているが、アメリカを除いて国際共同開発を行なっておらず、生産数が限られていた。そのため、2000年代にはアメリカに限定されない国際共同開発や生産環境の整備が提言された[2]。
世界には軍需産業を持つ国にアメリカ、イギリス、フランス、イタリア、韓国、中国、イスラエル、カナダなどがあるが、日本の防衛・軍需産業は三原則によって世界の兵器開発の流れから切り離されており、全面的な輸出禁止ではなく、国益に沿った輸出管理等のあり方を再検討すべきことも提言された[2]。
読売新聞は今後の兵器開発において国際共同開発が主流となるとし、日本にとってアメリカ、オーストラリア、NATO加盟国との協力関係強化が課題となったとしている[18]。
調達価格との関係についての議論
三原則により日本の兵器生産企業は輸出が行えず結果的に生産数が少なくなる。このために調達価格が高くなる傾向がある。冷戦後に防衛予算は減少される中で調達数も削減されている。そのため中小企業の中には生産体制を維持できなくなり撤退するものも現れていた[19]。そのため、企業の撤退による技術、生産基盤の喪失によって防衛に支障をきたすことが問題視されていた[20]。このような日本の現状についてウォール・ストリート・ジャーナルは、「自国防衛企業の利益粉砕する日本政府」と報道した[21]。
防衛装備技術との関係についての議論
自衛隊の装備品については、当然ながら危険な地域で使用されることを前提に作られている。土木作業などに使われる重機なども、暴徒や敵の残存兵に襲われた時に対処できるよう、防衛用の銃などを取り付けるための銃座が備え付けられている。このため自衛隊の装備品は、ほとんどが法令上「武器」の扱いとなり、輸出規制に該当してしまうため、国外に販売して生産数を延ばすことができない[22]。絶対的な生産数の少なさは、それ自体が装備の信頼性の低さに直結する。このため、国策により防衛産業を保護しなくてはならなくなるが、過度の保護がかえって装備の改善をしなくなるという悪循環に陥っているという指摘もあった。
鳩山内閣と菅内閣による見直し議論
2010年1月12日、鳩山内閣の北沢俊美防衛大臣が東京都内で行われた軍需企業の大多数が参加する日本防衛装備工業会主催の会合で「そろそろ基本的な考え方を見直すこともあってしかるべきだと思う。2010年末に取りまとめられる防衛計画の大綱(新防衛大綱)において武器輸出三原則の改定を検討する」と発言し、見直しの内容としては「日本でライセンス生産した米国製装備品の部品の米国への輸出」や「途上国向けに武器を売却」をあげた。
2010年2月18日、鳩山由紀夫首相が主催する「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」の初会合が首相官邸で行われ、鳩山首相が冒頭の挨拶で「防衛体制の見直しには、継続と変化の両方が必要だ。タブーのない議論をしてほしい」と述べた。北沢防衛相は懇談会で「装備産業の基盤整備をどう図るか議論してほしいとお願いした」と述べ、武器輸出三原則の見直しを議題とするよう公式に求めたことを明らかにした。武器輸出三原則の見直しは新防衛大綱に反映されるとされ[23]、鳩山由紀夫首相の後任である菅直人首相も一旦は了承した[24]ものの、国会での連携を目指す社民党の反発が障害となり、新防衛大綱への盛り込みについては先送りされた[25]。
2010年5月19日、日豪物品役務相互提供協定に基づく物品・役務の相互提供が約束された[2]。
野田内閣での官房長官談話
武器輸出三原則の見直しは菅内閣で頓挫したが、菅首相の後任の野田佳彦首相は就任当初から武器輸出三原則の緩和に意欲を見せ、国際共同開発・共同生産への参加と人道目的での装備品供与を解禁するとして2011年(平成23年)12月27日に野田内閣は藤村修官房長官による談話を発表した[26][27]。内容は、以下の通り[28]。
- 平和貢献・国際協力に伴う案件は、防衛装備品の海外移転を可能とする。
- 目的外使用、第三国移転がないことが担保されるなど厳格な管理を前提とする(目的外使用、第三国移転を行う場合は、日本への事前同意を義務付ける)。
- わが国と安全保障面で協力関係があり、その国との共同開発・生産がわが国の安全保障に資する場合に実施する。
第2次安倍内閣による見直しと防衛装備移転三原則への移行
第2次安倍内閣において安倍晋三首相は、三原則の撤廃を含めた根本的な見直しに着手[29][30]。2013年9月28日に小野寺五典防衛大臣は、最先端の兵器は国際開発が主流であり、日本はその流れから取り残されているとして、武器輸出三原則を抜本的に見直す考えを示した[31]。
2014年3月、武器輸出三原則に代わる「防衛装備移転三原則」の原案が与党のプロジェクトチームに示され[32]、同年4月1日に武器輸出三原則に代わる防衛装備移転三原則が閣議決定された[3]。
武器輸出三原則に代わる防衛装備移転三原則の決定についてアメリカのハーフ副報道官は会見で歓迎を表明した[33]。
民生品への影響
民生用の観測ロケットであるカッパロケットは1960年代に本体と関連機材がユーゴスラビアに輸出され、ユーゴスラビアが独自開発していた地対空ミサイルR-25 ヴルカンの技術として軍事転用された。また1965年にはインドネシアへ伊藤忠商事によって輸出されたことで、軍事転用を懸念したマレーシアが日本に抗議し、1967年に佐藤栄作により三原則提議が表明された。
1987年には東芝機械がソビエト連邦へ不正に輸出した工作機械が技術向上に繋がったとして、東芝機械ココム違反事件として問題となった。
2000年代には川崎重工とメッサーシュミット・ベルコウ・ブローム(後にエアバス・グループに買収されユーロコプターと統合)が共同開発したBK117は武器輸出三原則を考慮して、軍隊向けには救難・救命用を除き販売を控えてきた。しかし派生型であるユーロコプター EC 145の軍用版であるUH-72 ラコタが2006年からアメリカ陸軍で運用されているが、BK117で川崎重工が担当したトランスミッションなどは原型機と同じで日本製であるものの、特に問題視されなかった。
この他にも正規軍、民間軍事会社、ゲリラ問わず日本製のピックアップトラックがテクニカルやパトロールカーとして利用されている。特に交戦する双方がトヨタのピックアップトラックを活用したチャド内戦はトヨタ戦争と呼ばれた。
戦前
第二次世界大戦前の日本は、艦艇(トンブリ級海防戦艦、寧海、アラブ級駆逐艦、マッチャーヌ級潜水艦)、戦車(九五式軽戦車)、銃砲(有坂銃、三八式歩兵銃、十四年式拳銃、軽迫撃砲、四一式山砲)などの武器を輸出している。また陸軍の主導で武器輸出を行なう昭和通商という会社が設立された。
脚注
- ↑ 数研出版編集部 『新課程 4ステージ演習ノート 現代社会 解答編』 数研出版、2012年、18頁。ISBN 9784410301032。
- ↑ 2.00 2.01 2.02 2.03 2.04 2.05 2.06 2.07 2.08 2.09 2.10 2.11 2.12 2.13 2.14 2.15 冨田圭一郎「武器輸出三原則―その現況と見直し論議― 」国立国会図書館外交防衛課調査と情報726号(ISSUE BRIEF NUMBER 726)2011年11月1日。
- ↑ 3.0 3.1 “武器輸出、包括容認へ 政府が新原則を閣議決定”. 日本経済新聞. (2014年4月1日) . 2014閲覧.
- ↑ 輸出許可品目名は輸出に際して経済産業大臣の許可を必要とする品物を定めたもので、武器のみならず軍需転用可能な原子力、電子工学、通信、素材、加工技術等多岐にわたる。
- ↑ 輸出貿易管理令別表第一の第百九の項
- ↑ 6.0 6.1 6.2 衆議院予算委員会1976年2月27日議事録。全文:一、政府の方針
「武器」の輸出については、平和国家としての我が国の立場から、それによって国際紛争等を助長することを回避するため、政府としては、従来から慎重に対処しており、今後とも、次の方針により処理するものとし、その輸出を促進することはしない。
(一) 三原則対象地域については、「武器」の輸出を認めない。
(二) 三原則対象地域以外の地域については、憲法及び外国為替及び外国貿易管理法の精神にのっとり、「武器」の輸出を慎むものとする。
(三) 武器製造関連設備(輸出貿易管理令別表第一の第百九の項など)の輸出については、「武器」に準じて取り扱うものとする。
二、武器の定義
「武器」という用語は、種々の法令又は行政運用の上において用いられており、その定義については、それぞれの法令等の趣旨によって解釈すべきものであるが、
(一) 武器輸出三原則における「武器」とは、「軍隊が使用するものであって、直接戦闘の用に供されるもの」をいい、具体的には、輸出貿易管理令別表第一の第百九十七の項から第二百五の項までに掲げるもののうちこの定義に相当するものが「武器」である。
(二) 自衛隊法上の「武器」については、「火器、火薬類、刀剣類その他直接人を殺傷し、又は武力闘争の手段として物を破壊することを目的とする機械、器具、装置等」であると解している。なお、本来的に、火器等をとう載し、そのもの自体が直接人の殺傷又は武力闘争の手段としての物の破壊を目的として行動する護衛艦、戦闘機、戦車のようなものは、右の武器に当たると考える。
これが武器輸出についての政府の統一見解であります。 — 1976年(昭和51年)2月27日衆議院予算委員会、三木武夫内閣総理大臣答弁 - ↑ 7.0 7.1 「紛争当事国」の定義としては「それぞれのその時の諸情勢を見て、通商産業省(現:経済産業省)が常に外務省と緊密な連絡を保ちながら協議をして判断する」(衆議院商工委員会1969年7月8日通商産業省重工局長答弁及び衆議院予算委員会1982年6月25日通商産業省貿易局長答弁)としている。政府が具体的な紛争当事国として国会で答弁した例としては「ベトナム戦争参戦国(南ベトナム、アメリカ、韓国、フィリピン、オーストラリア、ニュージーランド、タイ)」(衆議院商工委員会1969年7月8日通商産業省重工局長答弁)や「フォークランド紛争当時のイギリスとアルゼンチン」(衆議院予算委員会1982年6月25日通商産業省貿易局長答弁)がある。
- ↑ 第94 回国会衆議院予算委員会議録第8号 昭和 56 年2 月14 日 p.30.(田中六助通産大臣)
- ↑ 9.0 9.1 資料31 対米武器技術供与についての内閣官房長官談話
- ↑ 衆議院決算委員会1967年4月21日議事録
- ↑ 11.0 11.1 武器輸出三原則等、外務省。全文:いま申しますように、防衛のために、また自国の自衛力整備のために使われるものならば差しつかえないのではないか、かように私は申しておるのであります。輸出貿易管理令で特に制限をして、こういう場合は送ってはならぬという場合があります。それはいま申し上げましたように、戦争をしている国、あるいはまた共産国向けの場合、あるいは国連決議により武器等の輸出の禁止がされている国向けの場合、それとただいま国際紛争中の当事国またはそのおそれのある国向け、こういうのは輸出してはならない。こういうことになっております。これは厳に慎んでそのとおりやるつもりであります。 — 1967年(昭和42年)4月21日衆議院決算委員会、佐藤栄作内閣総理大臣答弁
- ↑ 衆議院予算委員会1967年4月26日議事録
- ↑ 日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定に基づくアメリカ合衆国に対する武器及び武器技術の供与に関する書簡の交換について
- ↑ 「弾道ミサイル防衛用能力向上型迎撃ミサイルに関する日米共同開発」に関する内閣官房長官談話、2005年(平成17年)12月24日、首相官邸。全文:
- 政府は、本日の安全保障会議決定及び閣議決定を経て、弾道ミサイル防衛(BMD)用能力向上型迎撃ミサイルに関する日米共同開発に着手することを決定いたしました。
- 政府としては、大量破壊兵器及び弾道ミサイルの拡散が進展している状況において、BMDシステムが弾道ミサイル攻撃に対して、我が国国民の生命・財産を守るための純粋に防御的な、かつ、他に代替手段のない唯一の手段であり、専守防衛を旨とする我が国の防衛政策にふさわしいものであることから、平成11年度から海上配備型上層システムの共同技術研究に着手し、推進してきたところです。これは、平成16年度から整備に着手したBMDシステムを対象としたものでなく、より将来的な迎撃ミサイルの能力向上を念頭においたものであり、我が国の防衛に万全を期すために推進してきたものであります。
- 「中期防衛力整備計画(平成17年度~平成21年度)について」(平成16年12月10日安全保障会議及び閣議決定)においては、「その開発段階への移行について検討の上、必要な措置を講ずる」とされておりますが、これまで実施してきた日米共同技術研究の結果、当初の技術的課題を解決する見通しを得たところであり、現在の国際情勢等において、今後の弾道ミサイルの脅威への対処能力を確保するためには、依然として厳しい財政事情を踏まえつつ、BMD用能力向上型迎撃ミサイルに関する日米共同開発を効率的に推進することが適切であると考えております。なお、同ミサイルの配備段階への移行については、日米共同開発の成果等を踏まえ、判断することとします。
- 武器輸出三原則等との関係では、「平成17年度以降に係る防衛計画の大綱について」(平成16年12月10日安全保障会議及び閣議決定)の内閣官房長官談話において、「弾道ミサイル防衛システムに関する案件については、日米安全保障体制の効果的な運用に寄与し、我が国の安全保障に資するとの観点から、共同で開発・生産を行うこととなった場合には、厳格な管理を行う前提で武器輸出三原則等によらないこと」としております。また、武器の輸出管理については、武器輸出三原則等のよって立つ平和国家としての基本理念にかんがみ、今後とも引き続き慎重に対処するとの方針を堅持します。これらを踏まえ、本件日米共同開発において米国への供与が必要となる武器については、武器の供与のための枠組みを今後米国と調整し、厳格な管理の下に供与することとします。
- 我が国としては、BMDについて、今後とも透明性を確保しつつ国際的な認識を広げていくとともに、米国とも政策面、運用面、装備・技術面における協力を一層推進させ、我が国の防衛と大量破壊兵器及び弾道ミサイルの拡散の防止に万全を期すべく努めていく所存です。
- ↑ [1] 墨田川造船
- ↑ 2004年版の「小型武器概観」
- ↑ “日本は小型武器上位輸出国 世界の総取引額は6年で倍”. 産経新聞. (2012年8月28日)
- ↑ 武器輸出3原則、転換点…装備面で米欧と協力 読売新聞 2011年12月28日]
- ↑ 防衛産業 中小企業の撤退相次ぐ調達の減少が直撃 技術基盤の衰退に拍車、朝雲新聞
- ↑ 防衛省開発航空機の民間転用に関する検討会、防衛省
- ↑ 自国防衛企業の利益粉砕する日本政府 ウォール・ストリート・ジャーナル 日本版
- ↑ “自衛隊の“武器”装備品 海外初供与へ”. NHK. (2012年12月18日)
- ↑ 中国・北の脅威対処、新防衛大綱へ議論開始 2010年2月19日読売新聞
- ↑ 首相が安保会議で見直し了承MSN産経ニュース・2010/12/11閲覧。
- ↑ 懲りぬ「鬼門」頼み…首相、社民と連立も視野 即、武器輸出三原則「あっさり先送り」MSN産経ニュース・2010/12/11閲覧。
- ↑ 武器輸出三原則を緩和=欧米と共同開発可能に―藤村官房長官談 - ウォール・ストリート・ジャーナル 2011年12月27日
- ↑ 「防衛装備品等の海外移転に関する基準」についての内閣官房長官談話(PDF) 首相官邸 2011年12月27日。全文:政府は、「平成二十三年度以降に係る防衛計画の大綱」(平成二十二年十二月十七日閣議決定。以下「新大綱」という。)を踏まえ、防衛装備品をめぐる国際的な環境変化に対する方策について慎重に検討を重ねた結果、次の結論に達し、本日の安全保障会議における審議を経て閣議において報告を行った。今後、防衛装備品等の海外への移転については、以下の基準によることとする。
- 一. 政府は、これまで武器等の輸出については武器輸出三原則等によって慎重に対処してきたところである。
- 二. 他方、これまでも、国際紛争等を助長することを回避するという武器輸出三原則等のよって立つ平和国家としての基本理念を堅持しつつ、我が国が行う国際平和協力、国際緊急援助、人道支援、国際テロ・海賊問題への対処といった平和への貢献や国際的な協力(以下「平和貢献・国際協力」という。)、弾道ミサイル防衛(BMD)に関する日米共同開発等の案件については、内閣官房長官談話の発出等により、武器輸出三原則等によらないこととする措置(以下「例外化措置」という。)を個別に講じてきた。
- 三. 新大綱においては、近年の防衛装備品をめぐる国際的な環境変化について、「平和への貢献や国際的な協力において、自衛隊が携行する重機等の装備品の活用や被災国等への装備品の供与を通じて、より効果的な協力ができる機会が増加している。また、国際共同開発・生産に参加することで、装備品の高性能化を実現しつつ、コストの高騰に対応することが先進諸国で主流になっている。」としており、政府は、こうした認識の下、平和国家としての基本理念を堅持しつつこのような大きな変化に対応するための方策について検討を行ってきた。
- 四. 今日の国際社会においては、国際平和協力、国際緊急援助、人道支援、国際テロ・海賊問題への対処等を効果的に行うことが各国に求められており、我が国は、平和国家として、国際紛争等を助長することを回避するとの基本理念を堅持しつつ、こうした平和貢献・国際協力への取組に、より積極的・効果的に取り組んでいく必要がある。
- 同時に、国際社会の平和と安定を損なうおそれがある防衛装備品等の不正な流通及び拡散を防止するため、途上国等の輸出管理能力の強化に向けた支援などにも積極的に取り組んでいくべきである。
- また、我が国は、これまで米国との間で安全保障に資する防衛装備品等の共同研究・開発を行ってきたところであるが、国際社会が大きく変化しつつある中で、我が国の平和と安全や国際的な安全保障を確保していくためには、米国との連携を一層強化するとともに、我が国と安全保障面で協力関係にある米国以外の諸国とも連携していく必要があり、これらの国との間で防衛装備品等の国際共同開発・生産を進めていくことで、最新の防衛技術の獲得等を通じ、我が国防衛産業の生産・技術基盤を維持・高度化するとともに、コストの削減を図っていくべきである。
- 五. こうした観点から、政府としては、防衛装備品等の海外への移転については、平和貢献・国際協力に伴う案件及び我が国の安全保障に資する防衛装備品等の国際共同開発・生産に関する案件は、従来個別に行ってきた例外化措置における考え方を踏まえ、包括的に例外化措置を講じることとし、今後は、次の基準により処理するものとする。
- (1) 平和貢献・国際協力に伴う案件については、防衛装備品等の海外への移転を可能とすることとし、その際、相手国政府への防衛装備品等の供与は、我が国政府と相手国政府との間で取り決める枠組みにおいて、我が国政府による事前同意なく、①当該防衛装備品等が当該枠組みで定められた事業の実施以外の目的に使用されること(以下「目的外使用」という。)及び②当該防衛装備品等が第三国に移転されること(以下「第三国移転」という。)がないことが担保されるなど厳格な管理が行われることを前提として行うこととする。
- (2) 我が国の安全保障に資する防衛装備品等の国際共同開発・生産に関する案件については、我が国との間で安全保障面での協力関係がありその国との共同開発・生産が我が国の安全保障に資する場合に実施することとし、当該案件への参加国による目的外使用や第三国移転について我が国政府による事前同意を義務付けるなど厳格な管理が行われることを前提として、防衛装備品等の海外への移転を可能とすることとする。なお、我が国政府による事前同意は、当該移転が我が国の安全保障に資する場合や国際の平和及び安定に資する場合又は国際共同開発・生産における我が国の貢献が相対的に小さい場合であって、かつ、当該第三国が更なる移転を防ぐための十分な制度を有している場合でない限り、付与しないこととする。
- (3) もとより、武器輸出三原則等については、国際紛争等を助長することを回避するという平和国家としての基本理念に基づくものであり、上記以外の輸出については、引き続きこれに基づき慎重に対処する。
- ↑ 官房長官談話要旨=武器輸出三原則緩和 - 時事通信 2011年12月27日
- ↑ “禁輸三原則「撤廃」も/武器輸出に新指針検討/安倍首相前向き/歯止めの議論不可欠”. 共同通信. (2013年7月24日) . 2013閲覧.
- ↑ “武器輸出、禁止から管理へ 政府、新原則原案で方針転換”. 朝日新聞. (2013年12月5日) . 2013閲覧.
- ↑ “小野寺防衛相“武器輸出三原則見直すべき””. NHK. (2013年9月28日) . 2013-9-28閲覧.
- ↑ “武器輸出の新原則、政府が原案示す 与党PT”. 朝日新聞. (2014年3月13日) . 2014閲覧.
- ↑ “武器輸出三原則の見直し、米側「歓迎する」”. 朝日新聞. (2014年4月3日) . 2014閲覧.
参考文献
- 森本正崇『武器輸出三原則』信山社, 2011
- 冨田圭一郎「武器輸出三原則―その現況と見直し論議― 」国立国会図書館外交防衛課調査と情報726号(ISSUE BRIEF NUMBER 726)2011年11月1日。