一万円紙幣
一万円紙幣(いちまんえんしへい)とは、日本銀行券の1つ。一万円券、一万円札、万札、万券とも呼ばれる。額面である10000円は日本銀行券で最高額である。現在発行されている一万円紙幣は、2004年(平成16年)から発行されている福澤諭吉の肖像のE号券である。
ほかに、かつて発行されたC号券とD号券があり、これまでに発行された一万円紙幣は全部で3種類存在する。
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C号券
1958年(昭和33年)11月20日の大蔵省告示第237号「十二月一日から発行する日本銀行券壱万円の様式を定める件」[1]で紙幣の様式が定められている。
初の一万円券として発行され、高度経済成長の一端を担うこととなった。当時の大卒初任給が1万3000円ほどということもあり、このような高額紙幣は発行する必要があるのかという議論がなされたが、発行されると高度経済成長とともに順調に流通量が増えていった。透かしは法隆寺夢殿。
D号券
1984年(昭和59年)6月25日の大蔵省告示第76号「昭和五十九年十一月一日から発行する日本銀行券壱万円、五千円及び千円の様式を定める件」[3]で紙幣の様式が定められている。
D号券からは肖像に文化人が採用されており、一万円券には福澤諭吉が選ばれた。なお、D券及びE券には「福澤諭吉」ではなく「福沢諭吉」と書かれている。E号券発行の直前及び直後にD号券の贋札が相次いで発見された。
初期の記番号(記号及び番号)は黒色で印刷されていたが[3]、1993年(平成5年)12月1日から、記番号が褐色[4]、マイクロ文字・特殊発光インキ等の偽造防止技術を施した券を発行した(黒色記番号は全部使い切ってはいなかった)。褐色記番号の紙幣については、中央省庁再編及び独立行政法人化に伴う製造者の名称変更に伴い、発行当初の「大蔵省印刷局製造」[3]、2001年(平成13年)5月14日発行分からの「財務省印刷局製造」[5]、2003年(平成15年)7月1日発行分からの「国立印刷局製造」[6]の3種が存在する。
E号券
2004年(平成16年)8月13日の財務省告示第374号「平成十六年十一月一日から発行を開始する日本銀行券壱万円、五千円及び千円の様式を定める件」[7]で紙幣の様式が定められている。
2004年の新券発行の際に、唯一肖像が変わらなかった。偽造防止技術には、光学的変化インクを除き、D号二千円券に使われたものが多く採用されている。また、新たに表から見て右側に紙を薄くした「すき」を入れた「すき入れバーパターン」と、見る角度によって像(金属箔に刻まれた絵柄)が変わる「ホログラム」が採用された。一万円券にはすき入れは3本、ホログラムの像は桜と日本銀行のロゴと「10000」の文字を見ることができる。
また公式に発表されていないが、表面と裏面に片仮名で「ニ」「ホ」「ン」の文字がシークレットマークとして入っているほか、ユーリオンも採用されている。さらにホログラムの上下にも「日」「本」の文字が刻まれている。表面の印章および地紋の一部に紫外線インクを採用しており、ブラックライトを照射すると、表面の印章がオレンジ色に、地紋の一部が黄緑色に変化する。
なお記番号は当初は黒色で印刷されていたが[7]、同色刷の記番号の組合せの全てが使用されることになったため、2011年(平成23年)7月19日発行分から褐色(暗い黄赤)記番号の券が発行されている[8][9]。
その他一万円紙幣に関する事項
- 日本銀行によると、ミツマタやマニラ麻などを原料としており、流通している一万円紙幣の寿命は、平均4~5年程度とされる(使用頻度が高い五千円券と千円券が1~2年である)[10]。国立印刷局に納める「局納みつまた」は、2005年の時点で島根県、岡山県、高知県、徳島県、愛媛県、山口県の6県が国立印刷局と生産契約を結んでおり、局納価格は山口県を除く5県が毎年輪番で印刷局長と交渉して決定されたが[11]、生産地の過疎化や農家の高齢化、後継者不足により、2005年度以降は生産量が激減し[12]、2010年ごろからはネパールや中国産の三椏の輸入で不足分を補うようになっていた。国内では2016年時点で岡山県、徳島県、島根県の3県だけで生産されており、出荷もこの3県の農協に限られている[13]。
- 歴代の3種類の一万円紙幣は、いずれも茶色を基調としたデザインとなっている。
- C号券の偽札が、東南アジアなどを中心に出回っているので、例え出されても受け取らない方が無難である。
- D号券およびE号券の一万円紙幣の肖像には福沢諭吉が使用されているため、俗に「諭吉」、「諭吉券」とも呼ばれる。このことから、一万円紙幣の枚数を言う時に1人、2人などと人数を数えることがある。
更に高額の未発行紙幣
脚注
- ↑ 1958年(昭和33年)11月20日、大蔵省告示第237号「十二月一日から発行する日本銀行券壱万円の様式を定める件」
- ↑ 2.0 2.1 現在発行されていないが有効な銀行券 一万円券、日本銀行
- ↑ 3.0 3.1 3.2 1984年(昭和59年)6月25日、大蔵省告示第76号「昭和五十九年十一月一日から発行する日本銀行券壱万円、五千円及び千円の様式を定める件」
- ↑ 1993年(平成5年)6月24日、大蔵省告示第134号「平成五年十二月一日から発行する日本銀行券壱万円、五千円及び千円の様式を定める件」
- ↑ 2001年(平成13年)3月30日、財務省告示第85号「平成十三年五月十四日から発行する日本銀行券壱万円、五千円及び千円の様式を定める件」
- ↑ 2003年(平成15年)6月13日、財務省告示第482号「平成十五年七月一日から発行を開始する日本銀行券壱万円、五千円及び千円の様式を定める件」
- ↑ 7.0 7.1 2004年(平成16年)8月13日、財務省告示第374号「平成十六年十一月一日から発行を開始する日本銀行券壱万円、五千円及び千円の様式を定める件」
- ↑ 2011年(平成23年)4月26日、財務省告示第141号「平成二十三年七月十九日から発行を開始する日本銀行券壱万円及び千円の様式を定める件」
- ↑ 日本銀行券一万円券および千円券の記号および番号の印刷色変更について - 日本銀行、2011年4月26日
- ↑ お札の特長、独立行政法人国立印刷局。
- ↑ “和紙原料の生産・流通状況”. 日本特用林産振興会. . 2017閲覧.
- ↑ “特産農産物に関する生産情報調査結果(平成 24 年)”. 公益財団法人日本特産農産物協会. . 2017閲覧.
- ↑ “ミツマタ出荷で集落再生 京都・福知山、紙幣原料に”. 京都新聞社. . 2017閲覧.
- ↑ 北 (2007, pp. 7-9)
参考文献
- 北康利 『福沢諭吉 国を支えて国を頼らず』 講談社、2007-03-29。ISBN 978-4-06-213884-0。
- 北康利 『福沢諭吉 国を支えて国を頼らず』(上)、講談社〈講談社文庫〉、2010-02-13。ISBN 978-4-06-276571-8。
- 北康利 『福沢諭吉 国を支えて国を頼らず』(下)、講談社〈講談社文庫〉、2010-02-13。ISBN 978-4-06-276572-5。