ヒトツバタゴ
ヒトツバタゴ(一つ葉タゴ[1]、一つ葉田子、Chionanthus retusus)とはモクセイ科ヒトツバタゴ属の一種。同じモクセイ科のトネリコ(別名「タゴ」)に似ており、トネリコが複葉であるのに対し、本種は小葉を持たない単葉であることから「一つ葉タゴ」の和名がある[2]。
なお、別名はナンジャモンジャノキであるが、「ナンジャモンジャ」と名付けられる植物の樹種には、ヒトツバタゴのほかにクスノキ(樟)、ニレ(楡)、イヌザクラ(犬桜)、ボダイジュ(菩提樹)などがあり注意を要する[3]。
特徴
中国、台湾、朝鮮半島および日本では対馬、岐阜県東濃地方の木曽川周辺、愛知県に隔離分布する珍しい分布形態をとる(但しこれらの地域以外でも植栽の樹木の実の種が野鳥に運ばれて着床して自生している自生の樹木を山林の中で観察することができる)。成木で樹高は20mを超える大型の落葉高木。幹は灰褐色で縦に切れ目が入る。葉は長楕円形で4cm-10cm程度となり、長い葉柄を持ち対生する。花期は5月頃で、新枝の枝先に10cm程度円錐形に集散花序をつける。花冠は深く4裂する。雌雄異株であるが、雌花のみをつける株は存在せず、雄花をつける株と、両性花をつける株がある雄株・両性花異株である。秋に、直径1cm程度の楕円形の果実をつけ、黒く熟す。
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ヒトツバタゴ
大阪府 - Chionanthus retusus1.jpg
ヒトツバタゴの幹
大阪府
分布
日本において本種は希少種のひとつであり、テンプレート:絶滅危惧II類に指定されている。天然での分布域も狭く、長野県、愛知県の木曽川流域、岐阜県東濃地方および長崎県対馬市に自生しており、それぞれの県のレッドデータブックに掲載されている。長野県および愛知県では絶滅危惧I類、岐阜県および長崎県では絶滅危惧II類に指定されている[4]。
愛知県犬山市池野西洞、岐阜県瑞浪市釜戸町、同県恵那市笠置町、同県中津川市蛭川の自生地は一括して国の天然記念物(「ヒトツバタゴ自生地」)に指定されている。他に恵那市大井町、同市中野方町、中津川市苗木、同市落合新茶屋の自生地が岐阜県県指定天然記念物、、瑞浪市稲津町萩原の自生地が同市指定天然記念物、、土岐市泉町白山神社境内のハナノキ・ヒトツバタゴが国の天然記念物となっている。また、長崎県対馬市上対馬町鰐浦地区には、約3000本の本種が自生しており、「鰐浦ヒトツバタゴ自生地」として国の天然記念物に指定されている。
利用
公園木、鉢植、花壇などに利用される。
保護上の位置づけ
近縁種
ヒトツバタゴ属の植物は木本であり、世界で約80種が知られる。多くの種は熱帯、亜熱帯域に分布するが、東アジアの本種、北アメリカのアメリカヒトツバタゴ(Chionanthus virginicus)の2種は主に温帯域に分布する。熱帯域のほとんどの種は常緑性であるが、温帯域の2種は落葉性である。常緑の種はLinociera属に分けられることがある[5]。
ヒトツバタゴ属(Chionanthos)は、Chionが「雪」、-anthosが「花」を意味する[1]。ヒトツバタゴ同様、雪のように白い花をつけることが多い。
- アメリカヒトツバタゴ Chionanthus virginicus
- アメリカヒトツバタゴ(英語名"White fringetree")は、ヒトツバタゴ属の一種。アメリカ東南部に産し、樹高は10m程度となる小高木。ヒトツバタゴと比較して葉はひとまわり大きく、花序は古い枝に腋生する。
自治体の木
- 市の木
- 岐阜県土岐市 - 県道66号線にはヒトツバタゴが植えられているため「なんじゃもんじゃ街道」という愛称が付けられている。
- 長崎県対馬市 - 姉妹都市の岐阜県中津川市もヒトツバタゴの自生地。
- 国外の市の木
- 大韓民国慶尚南道梁山市
脚注
- ↑ 1.0 1.1 ヒトツバタゴ【Chionanths retusus Lindl.et Paxton】 世界大百科事典第2版
- ↑ 記念碑と記念樹(pdf) 農業環境技術研究所・所内トピックス
- ↑ 管野浩編 『雑学おもしろ事典』 p.72 日東書院 1991年
- ↑ レッドリスト・ヒトツバタゴ 日本のレッドデータ検索システム
- ↑ Chionanthus Flora of China
参考文献
- 鈴木庸夫 菱山忠三郎 西田尚道 畔上能力 鳥居恒夫 新井二郎『山渓ポケット図鑑1 春の花』山と溪谷社(1995/03) ISBN 978-4635070119