JR九州885系電車
885系電車(885けいでんしゃ)は、九州旅客鉄道(JR九州)の交流特急形電車。
Contents
概要
783系と485系を使用していた特急「かもめ」の速度向上を目的とした振り子式車両である。JR九州の振り子式車両としてはすでに883系が存在し「ソニック」で使用されていたが、本系列は883系と車体構造・内装デザインが変更されている。また2001年(平成13年)には「ソニック」増発用として一部設計変更された編成が製造された[1]。デザインは水戸岡鋭治主宰のドーンデザイン研究所が担当した。
全車が日立製作所で製造された。車両価格は6両編成で10億8000万円(1両平均1.8億円)。
最高速度は883系と同じ130km/hで、80km/hまでの加速性能も883系と同じだが、それ以上の速度領域では加速力を向上させることで高速性能の改善を図っている[2]。速度種別はA68。
2001年に鉄道友の会第44回ブルーリボン賞、ブルネル賞、財団法人産業デザイン振興会グッドデザイン賞を受賞した。
構造
車体
車体は日立製作所のモジュール構体システム「A-train」を採用し、摩擦撹拌方式 (FSW) により製造されたダブルスキン構造のアルミニウム合金製である[2]。ダブルスキン構造の内部に制振材を挿入し、床面上部にも貼り付けることで騒音防止を図っている[2]。前頭部は新幹線や、ドイツの高速列車ICE3を彷彿させるような、非貫通構造で丸みの帯びた流線型とし、併結用の密着連結器はカバーで車体と一体になるようにデザインされている[3]。前照灯のデザインは、スポーツカー「アウディ・TT」のものを基にしている[4]。側面窓は883系に比べやや小さくなるとともに、窓ガラスはUVカットガラスに変更された。また乗降扉の横幅も883系に比べ100mm縮められ、900mmとされた。ただし、床面高さを低くしたことにより、ホームとの段差が小さくなったため出入台にステップは設置されていない。
塗装はそれまでのJR九州の車両に多かった原色を用いたデザインから一変し、白一色で車体下部と前面運転台窓周りに帯を入れたデザインとなっている。この帯の色は「かもめ」に充当される1次車が黄色、「ソニック」に充当される2次車が青色と区別され、ロゴもそれぞれ異なっていた。ただし予備車が少ないことから運用上の自由度を高めるため、車体側面エンブレムは後に撤去され[5]、帯の色も2012年上期までに青色への統一が完了した[6]。
このデザインを採用するにあたり、ICE3のデザイナーであるアレクサンダー・ノイマイスターと親交がある水戸岡は、ノイマイスター本人から快諾を得たという。
電源・制御機器
主回路機器は815系をベースに特急形として見直しを図っている[7]。主回路制御方式は、883系に続いてVVVFインバータ制御を採用する。
主変換装置は、IGBT素子を使用したPWMコンバータ+VVVFインバータで構成される[7]。
主変圧器は自冷式を採用し、モハ885形に搭載される。モハ885形0・400番台は隣接するクモハ885形にも給電することから、二次巻線2線と三次巻線で構成された2M車タイプを搭載する[7]。モハ885形100・200番台は自車のみ給電であることから、二次巻線を1線とした1M車用を搭載する[7]。
中間電動車のモハ885形にシングルアーム式パンタグラフを装備している。パンタグラフ位置が車体の振り子動作に影響されないように、パンタグラフ台は台車枠直結の支持台上に設置されており、パンタグラフを備えるモハ885形のこの部分はデッドスペースとなっている。
主電動機は、883系で実績のある MT402K (定格出力190kW)を電動車両1両あたり4基搭載する[7]。
消費電力は、1両あたりの消費電力の理論値ベースで415系の消費電力を100とした場合、885系は約65パーセントとなっている。[8]。
台車
台車は空気式制御付自然振り子台車のDT406K(電動車)/TR406K(制御車・付随車)となっている。台車の外観や寸法などは883系に類似しているが、台車形式は883系とは異なっている。
883系投入線区のほとんどは最高速度で走行可能で、100km/h未満の速度制限箇所が一部存在するが、長崎本線肥前鹿島駅 - 諫早駅間では日豊本線より厳しい制限70km/h - 75km/hの急曲線が連続するため、振り子電車としての車体傾斜による安定性を高めることを目的に、空気ばねの左右間隔を883系より10cm広い1,900mmとしている。80km/h以上の速度領域での加速度向上を図ったのも同様の理由のためである。
車内
車内デザインはICE3などを参考にしつつ、水戸岡のデザインコンセプトを強く反映したものとなっている。
座席
座席は全席リクライニングシートで、普通席・グリーン席ともに本皮革張りとしている。これにより構造上、座席背面にテーブルを設置することができないため、側面窓の窓かまちを設けることで小物を置くスペースの確保を図っている。また、ヘッドレスト背面にはチケットホルダーが設置されている。座席の本革は、商品価値を損なわない程度の微細な傷などが入ったもの(いわゆるアウトレット品)を用いている。そのため、製造コストは通常の座席と大差はない。なお、運転席はレカロ社製の特注品である[9]。
しかし本革張りの座席を好まない乗客もいるため、各編成の4号車から6号車の座席が順次モケットに変更されることとなっており[10]、2012年にSM2編成で実施された[11]。
グリーン席の座席はすべて1人掛け座席となっているが、中央のC列の座席を片側に寄せてD列席と隣接させることで1+2列配列並みの配置としている(席番配置はA+CD)。また座席背面のフットレストが省略された。A列の壁面とC・D列の中間部に折りたたみ式の木製テーブルを設置している。定員は12名で、883系より1列分少なくなっている。
普通席は一般的な2+2列配置の座席で、座席の前後間隔は883系に比べて20mm短い980mmとなった。普通席では中ひじ掛けに収納式の木製テーブルを設置している(画像でも解るが手前には2つ設置されている。これは、座席を回転させた際にテーブルの位置がずれてしまう為の対策である)。
- JRK 885 series Reservedcar interior.JPG
指定席車の車内(※画像は1号車後室)
- JRK 885Siries Kamome Greencar Interior.JPG
1次車のグリーン車の車内。普通車同様黒いシートにカモメのロゴが入っている。
- JRK 885Siries Greencar Interior.JPG
2次車のグリーン車の車内。えんじ色のシートにSの文字が入っている。
- 885Siries EMU TABLE Close.JPG
1次車グリーン車のテーブルを閉じた状態。金属部分にロゴが入る。
- 885Siries EMU TABLE OPEN.JPG
1次車グリーン車のテーブルを開いた状態。
その他車内設備
側面化粧板は白色、床はフローリングとしている。ただし、サハ885形100番台および300番台(いずれも3号車)の化粧板はダークグレーである。
本系列では883系に設けられていた客室中央部のセンターブースは廃止され、代わりにデッキの面積を拡大し、車端部にコモンスペースを設けた。コモンスペースには縦長の窓が設けられている。
仕切扉には、車両間の半透明ガラス扉、普通客室とデッキを仕切る上部透明/下部半透明のガラス扉、グリーン客室とデッキを仕切る木製扉の3種類があり、全て自動扉であるが、木製扉は手でセンサに触れなければ開かない。これらのうち、ガラス扉は乗務員室からの操作による一括開閉が可能である。また車両間の扉は、一方の扉の開閉と連動して他方の扉も開閉する。
LED式案内表示器は、客室端部(仕切扉上部)に天井から吊るす形で設置されている。LEDの大きさや配置は883系に準じ、左側から禁煙表示灯、号車番号表示、座席種別表示(グリーン車:グリーンマーク、普通車指定席:緑色で「指」、普通自由席:橙色で「自」)、スクロール式情報表示(8文字分で、当初は「見えるラジオ」を利用したニュース配信も行われていたが、現在は、乗客への注意喚起や特別企画乗車券等の自社広告、ソニックのみ別府駅到着直前に「湯の街別府の案内」が流れている。)、携帯電話使用禁止表示、トイレ使用中表示となっている。なお、スクロール式情報表示での英数字表示は通常は全角だが、「見えるラジオ」のニュース配信では半角である。また、6号車に指定席と自由席が混在していた時期(2003 - 2007年)は、通常の座席種別表示は使用されず、「指/自」と表記されたプレートが当該部分に貼付されていた。
各車両一部座席を撤去し、787系のように大型の荷物を置くことができる荷物スペースを設置している。
- 885Siries EMU GREEN CAR ENTRANCE DOOR.JPG
グリーン車入口の木製ドア(SM3かもめ編成)。
- 885Siries Economy Class Entrance.JPG
普通車入口。上部案内表示機周辺を除き、すりガラスとなっている。
- 885Siries EMU multi-purpose space.JPG
デッキとグリーン車室内にある多目的スペース。新聞・雑誌・車内販売のメニューが置いてある。
運転装置
主幹制御器は左手操作ワンハンドル式(手前から力行5段、中立、抑速ブレーキ、常用ブレーキ7段、非常ブレーキ)とされた。運転室と客室との仕切は液晶ガラスとなっており、通常は透明であり客室から前方の風景を見ることができる。なお、停留中や事故などで先頭車のマスコンハンドルが非常ブレーキ位置にあるときは瞬時に不透明になる機構を備える。ちなみに、運転席右部にこのスイッチがあり、ONにすれば常時透明のままになる。
また、三菱電機製乗務員支援モニタ(合成音声とチャイムによる停車駅接近予告機能を付加。客扱いをしない停車駅でも予告)も備えている。後日装備であるが、運転台の上にATS-DK形のコンソールが搭載された。
本系列ではミュージックホーンも搭載されているが、883系と同様に運転台の下のペダルで操作するのではなく、運転室のコンソールボックスの中のスイッチを操作して吹鳴させる。これは各種試験動作などの注意啓発の合図のために設置されたもので、通常は聞くことができない。
編成
3M3T(電動車3両、付随車3両)の6両で構成される。下り長崎・佐伯寄りからクロハ884形 - モハ885形100番台/200番台 - サハ885形100番台/300番台 - サハ885形 - モハ885形 - クモハ885形となっている。
サハ885形100番台もしくは300番台(いずれも3号車)を編成中から外し、5両編成 (3M2T) で運転することも可能である。このため、同車および同車との連結面は密着連結器となっている。他は、先頭部を除き半永久連結器である。
当初「かもめ」用の1次車が6両編成7本、2001年に「ソニック」用の2次車が5両編成4本製造された。2003年(平成15年)に2次車の6両化用として4両が、2004年(平成16年)に事故廃車(後述)された補充として3両が製造された。
2011年(平成23年)4月現在、6両編成11本の計66両が南福岡車両区(本ミフ)に在籍する。編成番号はSM1 - 11で、「SM」の「S」は885系を、「M」は南福岡車両区所属を表す記号である。運用については後述する。
編成 | ← 長崎 博多 → (かもめ)
| ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
← 博多 ← 大分・佐伯 小倉 → (ソニック)
| |||||||
クロハ884 | モハ885 | サハ885 | サハ885 | モハ885 | クモハ885 | ||
1次車 | SM1 | 1 | 101 | 101 | 1 | 1 | 1 |
SM2 | 2 | 102 | 102 | 2 | 2 | 2 | |
SM3 | 3 | 103 | 103 | 403 | 403 | 403 | |
SM4 | 4 | 104 | 104 | 4 | 4 | 4 | |
SM5 | 5 | 105 | 105 | 5 | 5 | 5 | |
SM6 | 6 | 106 | 106 | 6 | 6 | 6 | |
SM7 | 7 | 107 | 107 | 7 | 7 | 7 | |
2次車 | SM8 | 8 | 201 | 301 | 8 | 8 | 8 |
SM9 | 9 | 202 | 302 | 9 | 9 | 9 | |
SM10 | 10 | 203 | 303 | 10 | 10 | 10 | |
SM11 | 11 | 204 | 304 | 11 | 11 | 11 |
1次車 (SM1 - 7)
1次車(SM1 - 7)は2000年に「かもめ」用に投入された編成である。各車の車両番号の末尾2桁が編成番号と同じ01 - 07に揃えられている。座席表地の色は普通席・グリーン席ともに黒色となっている。前照灯はロービームの際は2箇所のシールドビームしか点灯しないが、ハイビームでは787系と同様に運転室窓上のシールドビームも点灯する。尾灯は前照灯の下部に横方向に配置されており、このようなデザインは日本では本系列が唯一である。
2003年7月18日に長崎本線肥前長田駅 - 小江駅間で発生した脱線転覆事故により博多寄り3両(クモハ885/モハ885/サハ885-3)が事故廃車とされ、2004年に代替車3両(400番台車:各形式403号)が新製された。400番台は基本的に1次車に準じているが、先頭車のワイパーが2次車と同じ2本で、背もたれ上部の取っ手の取付け方が1次車、2次車のいずれとも異なるなど、細かな違いがあるほか、編成内の他の車両と末尾番号を揃えるため、番号は403とされている。
登場時は車体下部の帯と前面窓回りは黄色で、「かもめ」ロゴが配されていたが、車体側面の「かもめ」エンブレムは後に撤去された[5]。2010年12月にSM5編成が2次車と同じ青帯に塗り替えられ[12][13]、車体側面のロゴも「AROUND THE KYUSHU」と入ったものに変更されたが、先頭部など一部にまだ「かもめ」ロゴが残っている[12]。その後、他の1次車も順次青帯へと変更され、2012年6月までに885系全編成が青帯に統一された[6]。当初は、雑誌等で青帯化された1次車を「ソニック編成」として扱った場合もあったが[13][14]、そもそも「かもめ」用の編成や「ソニック」用の編成という区別はなくなっており[5][13]、今回の塗色変更は885系全編成の帯色統一(1次車の青帯化)によるものである[15]。
- Kyushu Railway - Series 885 - 01.JPG
塗装変更後の1次車
- JR Kyushu 885 SM4 AROUND THE KYUSHU 03.png
運転室扉の横には「かもめ」ロゴが残る
- JR Kyushu 885 SM4 AROUND THE KYUSHU 02.png
先頭部にも「かもめ」ロゴ・エンブレムが残る
- JR Kyushu 885 AROUND THE KYUSHU emblem.png
新ロゴ (AROUND THE KYUSHU)
2次車 (SM8 - 11)
2次車(SM8 - 11)は2001年に「ソニック」用に投入された編成である[1]。5両編成で落成したため一部の車内設備の配置が変更され、新区分番台としてモハ885形200番台が登場した[1]。その後2003年に新区分番台サハ885形300番台を組み込み6両編成となっている。それ以外の車両の車両番号末尾2桁は編成番号と同じ08 - 11に揃えられている。
車体下部の帯と前面窓回りは青色で、「SONIC」ロゴが付く(客用窓下にもステンレス切抜文字ロゴが付く)[1]。1次車よりも側面の帯が若干太い[1]。また前照灯の形状が変更される[16]とともに、1次車では3本あったワイパーが2本とされた。座席表地の色は普通車がエボニー、グリーン車がマゼンタに変更され、1次車と比べ暖色系のカラースキームとされた。また1次車で窓かまちに取り付けられていた小形テーブルは廃止された[1]。このほかドアチャイムも設置された[17]。
前照灯はロービームの際は、1次車と同一だが、ハイビームではシールドビームの内側にある灯火および運転室窓上のシールドビームも点灯し、都合5箇所が点灯する。尾灯は1次車と同一である。
形式別概説
本節でいう「前位」および「後位」とは、クロハ884形以外の形式では「前位」が門司港寄り、クロハ884形では「前位」が「かもめ」では長崎寄り、「ソニック」では博多・大分・佐伯寄りである。
- クモハ885形0・400番台(Mc:1・2・4 - 11、403)
- 上り寄り先頭の制御電動車。編成内の6号車に連結される。主変換装置を備えているが、隣のモハ885形0番台より単相交流を受電するため、パンタグラフと主変圧器は備えていない。また、空気圧縮機 (CP) を1台備える。欠番の3は前述したように2003年に事故廃車となり、代替として403号が新製された。車内は、前位側より運転室、客室、出入台、洋式トイレ(男女別)およびフリースペースとなっている。本形式は喫煙車として使用されていた期間が長いため内装が黄色に変色した箇所がある。定員48名(4列×12)。
- モハ885形
- 中間電動車。共通事項として、シングルアーム式パンタグラフと主変圧器を備える。
- 0・400番台(M0:1・2・4 - 11、403)
- 「かもめ」「ソニック」の5号車に連結される中間電動車である。欠番の3はクモハ885-3と同様の経緯で事故廃車となり、代替として403が新製されている。車内は、前位側より客室、出入台、自動販売機およびフリースペースとなっている。定員60名(4列×15)。
- 100番台(M1:101 - 107)[バリアフリー対応車両]
- 1次車のみの番台区分で、2号車に連結される。車椅子対応座席およびバリアフリー対応トイレを備えているほか、全席にコンセントを備えている(座席間の肘掛の前面に2口設置。車椅子対応座席については窓下の壁面に設置)。本系列で車内公衆電話を設ける車両は、本区分番台と200番台のみである。製造当時はすでに携帯電話が普及し、車内電話の利用率が下がっていたため、車内電話は編成中1か所のみとしている。車内は、前位側より客室(後位側に車椅子対応座席あり)、バリアフリー対応トイレ、出入台、電話室(2009年10月31日限りで車内公衆電話サービス廃止)およびフリースペースとなっている。定員46名(4列×10/2列+車椅子対応座席×2)。
- 200番台(M2:201 - 204)[バリアフリー対応車両]
- 2次車のみの番台区分で、2号車に連結される。100番台と同様、車椅子対応座席、バリアフリー対応トイレ、コンセント、車内電話を備える。「かもめ」では3号車のサハ885形100番台に「ミニショップ」と呼ばれる売店兼車内販売準備室を設けたが、「ソニック」では当初サハ885形100番台を連結しない5両編成とするため、本番台にミニショップを設けた。車内は、前位側より客室(後位側に車椅子対応座席あり)、バリアフリー対応トイレ、出入台、電話室(2009年10月31日限りで車内公衆電話サービス廃止)およびミニショップ(2015年3月13日限りで車内販売サービス廃止)となっている。定員46名(4列×10/2列+車椅子対応座席×2)。
- クロハ884形(T'hsc:1 - 11)
- 下り寄り先頭車となるグリーン・普通合造車の制御車で、編成内の1号車に連結される。また、「見えるラジオ」でのニュース配信用として文字放送受信装置ニュース配信用)も設置している。車内は、前位側より運転室、グリーン客室、グリーン客用洋式トイレおよびフリースペース、出入台、普通客室となっている。定員40名(グリーン室3列×4、普通室4列×7)。
- サハ885形
- 付随車。100番台および300番台車は、編成から外して運転可能である。
- 0・400番台(T0:1・2・4 - 11、403)
- 「かもめ」「ソニック」の4号車に連結される車両で、編成中間に専務車掌室がないため、本区分番台にはデッキに簡易車掌台(車掌スイッチ(いわゆる「他これスイッチ」)、車内放送設備、戸閉知らせ灯など)が設置されており、この部分の窓は開閉可能(鍵必要)である。また、CPを2台備える。クモハ・モハ885-3と同様の経緯で3が事故廃車となり、代替として同一仕様の403が新製されている。車内は、前位側より客室、簡易車掌台出入台、洋式トイレ(男女別)およびフリースペースとなっている。定員60名(4列×15)。
- 100番台(T1:101 - 107)
- 1次車のみの番台区分で、3号車に連結される。モハ885形200番台の節で述べたように、「ミニショップ」を設ける。車内は、前位側より客室、出入台、ミニショップ(2015年3月13日限りで車内販売サービス廃止)およびフリースペースとなっている。定員60名(4列×15)。
- 300番台(T3:301 - 304)
- 2次車のみの番台区分で、3号車に連結される。2003年に「ソニック」の6両編成化に伴い製造された。コモンスペースが拡大されるとともに、衛星放送の受信が可能となった。車内は、前位側より客室、出入台およびフリースペースとなっている。定員60名(4列×15)。
- JR Kyushu 885 SM6 6th car.png
クモハ885形0番台
- JR Kyushu 885 SM6 5th car.png
モハ885形0番台
- JR Kyushu 885 SM6 2nd car.png
モハ885形100番台
- JR Kyushu 885 SM8 2nd car.png
モハ885形200番台
- JR Kyushu 885 SM6 1st car.png
クロハ884形0番台
- JR Kyushu 885 SM6 4th car.png
サハ885形0番台
- JR Kyushu 885 SM6 3rd car.png
サハ885形100番台
- JR Kyushu 885 SM8 3rd car.png
サハ885形300番台
沿革
- 2000年(平成12年)
- 2001年(平成13年)
- 2002年(平成14年)
- 2003年(平成15年)
- 2004年(平成16年)
- 3月23日:400番台3両が落成し、損傷の少なかった長崎寄りの3両と合わせてSM3編成が運用復帰。
- 2005年(平成17年)
- 2007年(平成19年)
- 2008年(平成20年)
- 7月19日:「きらめき」への運用が復活。
- 2009年(平成21年)
- 3月14日:「きらめき」への運用から撤退。
- 2010年(平成22年)
- 4月:所属車両基地名が「南福岡車両区」に変更。
- 9月:にちりんシーガイアに使用される。
- 2011年(平成23年)
- 1月:SM5編成が青帯に変更された。
- 3月:「ソニック」の別府→大分間昼間の下り列車において、石丸謙二郎によるナレーション「大分市観光ナレーション」が放送開始される。
- 2012年(平成24年)
- 6月までに、1次車全車両の青帯化が完了した。
現況
以下は2014年3月15日時点での状況について記す。
本系列はもともと1次車は「かもめ」、2次車は「ソニック」用として新製されたが、2003年に2次車が1次車と同じ6両に増結されてからは、共通運用によって車両使用効率の向上(例として、総走行距離の調整)や「ソニック」運用に予備編成がなかったことから、1次車が「ソニック」の、2次車が「かもめ」の運用に入ることも見られるようになった。現在は使用される編成の区別はなくなっており、1次車が2次車と同じ青帯に変更され、車体ロゴも「AROUND THE KYUSHU」に統一されている。
本系列投入以前の783系「かもめ」では17往復で6両編成8本が必要とされ、ほとんどの編成は1本につき博多駅 - 長崎駅間1日2往復半を運用していたが、本系列では16往復で6両編成7本と、ほとんどの編成が博多駅 - 長崎駅間1日3往復を運用しており、運用効率化を図った現実が伺える。一般に振り子電車は製造コストが高価になりやすいとはいえ、本系列登場前は博多駅 - 長崎駅間を往復するのに6時間かかっていたのを5時間へ短縮したことにより、6両編成1本分の車両削減効果を達成している。一方、「ソニック」では2000年3月11日改正以降、「にちりん」の減少による影響で極力883系の車両運用効率化で賄ったとはいえ、同系のみでの編成不足分を補うために2001年3月3日改正で4本が増備された。
現在使用されている列車
- 「かもめ」(2000年3月 - ):下り3・7・9・13・17・21 - 27・31・35・39・43 - 49号/上り2 - 8・12・16・20 - 26・30・34・38・42・46 - 50・102・202号
- 102号は肥前鹿島駅発博多駅行き、202号は長崎駅発諫早駅行き(平日のみ運転)
- なお、本系列の「かもめ」は、二日市駅おいて日中は全て通過する。
- 「ソニック」(2001年3月 - ):下り5・15・17・21・27・37 - 39・41(平日のみ885系)・49・51(休日のみ885系)・57・59号/上り2・12・14・18・24・34 - 38・46・56・58号
- 14・41・51号は佐伯駅発着
なお2003年2月までは、以下のような運用形態が見られた。
- 2次車が登場するまでの「ソニック」2往復も「かもめ」運用とは分離されており、充当編成の変更は南福岡車両区入庫時に併せて行われていた。
- 2001年以降、1次車が「ソニック」運用に入る場合であっても、5両に減車されず6両編成のままだった。
- 2002年ごろ、佐賀発着の臨時「かもめ」が、5両編成時代の2次車で運転されていた。
過去に使用されていた列車
本系列は新製以来ほぼ一貫して「かもめ」「ソニック」に運用されているが、車両運用の都合上、過去に以下の列車の定期運用に入ったことがある。
「きらめき」での運用は翌朝に運行される列車(2000年から2005年までは門司港駅始発の「かもめ」、2008年から2009年までは小倉駅始発の「ソニック」)への送り込みを兼ねてのものであった。「みどり」での運用は2002年10月21日に、それまで博多駅 - 佐賀駅・肥前山口駅間で運行されていた「かもめ101・104号」が佐世保駅まで延長の上で列車名を「みどり」に変更し、885系での運行となったものである(号数はそのままで、延長区間は臨時列車扱い)。ただし「みどり」での運用はダイヤ改正前の暫定的な意味合いが強く、翌年3月のダイヤ改正で本来の「みどり」用の車両である783系に変更されている(その際に全区間定期列車化)。
この他、小倉駅 - 西小倉駅間の橋梁工事に伴い車両運用の変更や、口蹄疫問題で県内経済が大きなダメージを受けた宮崎県への応援キャンペーンの一環などで、臨時で「にちりん」「にちりんシーガイア」の運用に入ったことがある。
旅客サービスについて
車内放送
783系・787系・883系と同様の3打点音に続く自動放送による次停車駅予告が導入されている。又、2000年から2010年頃まで博多駅到着前にJR九州社歌「浪漫鉄道」のボーカルなしのバージョンが、浦上駅到着直前には、長崎行「かもめ」に限りジャコモ・プッチーニ作曲:アリア「ある晴れた日に」(オペラ「蝶々夫人」より)のインストゥルメンタルが流れる事があったが、現在は流れなくなっている。尚、インストゥルメンタル演奏は当初「ソニック」用のSM8 - 11編成では実施されなかったが、2004年ごろから流れる様になっていた。2016年頃より、英語による放送も実施されている(英語放送を担当しているのはジーン・ウィルソン)。
また、「ソニック」の別府→大分間の昼間の下り列車において、石丸謙二郎によるナレーション放送が2011年3月より実施されている。
車掌や客室乗務員の肉声放送の前後にも、手動でチャイムが流れる場合がある。チャイムは「鉄道唱歌」や5打点音など4種類がある。
行先表示器
本系列の行先表示器は全車にLED式が装備されているが、非常にシンプルなものとなっている。なお一定速度以上で走行中は表示が消え、停車中に消すことも可能である。
上部約2/3では、列車名と行先が表示される。上部より英語列車名、日本語種別・列車名、日本語行先、英語行先となっている。下部約1/3は、号車番号、座席種別(グリーン/指定/自由、禁煙/喫煙)およびその英語表記が表示される。これらは別個に設定可能である。ただし、以下の列車については、列車名と行先の表示が他の列車とは異なる。詳細は以下の通りである。
- 大分駅で「にちりん」と接続する「ソニック」では、英語名の表記が省略されるとともに、列車名と行先がそれぞれ「ソニック(&にちりん)」「大分(宮崎空港)」となっている。また、その下に「大分駅で「にちりん号」と接続」の表記が加わる。
- 柳ヶ浦駅行の「ソニック」では、「特急 ソニック 小倉>中津>柳ヶ浦」の表記となる(883系でも同様)。
台湾への輸出
台湾高速鉄道(台湾新幹線)の建設予定がない東部幹線の速達化をはかるため、2004年に中華民国台湾鉄路管理局(台鉄)は丸紅を通して日立製作所に885系の同等車(TEMU1000形)8両編成6本(48両)を発注した。2006年に3本が納車され、2007年に残り3本が納車された。さらに48両発注する計画があったが、コスト合意できないなど理由で2009年に計画中止になった。これにより、台北駅 - 花蓮駅間は従来より30分程度短縮され、2時間以内とされた。運賃設定は「自強号」と同一である。
発注の目的は速達化のみならず、プッシュプル型「自強号」(E1000型)において韓国(現代精工業、現在のロテム)製客車が故障などの不具合が多く遅延や運休を生じているため、その入れ替えの目的もある。
2006年1月17日、台鉄の公募により、列車の愛称は花蓮近郊の太魯閣国家公園に因んだ「太魯閣号(タロコ号)」に決定した。
脚注
- ↑ 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 『鉄道ジャーナル』通巻415号、p.76
- ↑ 2.0 2.1 2.2 『鉄道ファン』通巻469号、p.42
- ↑ 『鉄道ファン』通巻469号、p.43
- ↑ 水戸岡 2009, pp. 128-129.
- ↑ 5.0 5.1 5.2 JR特急列車年鑑 2011.
- ↑ 6.0 6.1 鉄道ファン 2012.
- ↑ 7.0 7.1 7.2 7.3 7.4 『鉄道ファン』通巻469号、p.50
- ↑ 九州を走るエコ車両(JR九州 環境報告書2017)-九州旅客鉄道(2017年10月1日、10月2日にオリジナルをアーカイブ化。)
- ↑ 水戸岡 2009, p. 77.
- ↑ 『鉄道ジャーナル』第47巻第5号、34頁。
- ↑ 『JR電車編成表 2013冬』208頁。
- ↑ 12.0 12.1 “885系SM5編成が青帯に”. 『鉄道ファン』鉄道ニュース(交友社) (2010年12月27日). . 2012年10月13日閲覧.
- ↑ 13.0 13.1 13.2 坂 2011, p. 29.
- ↑ 鶴 2011, p. 85.
- ↑ 鶴 2011, p. 82.
- ↑ 『鉄道ジャーナル』通巻415号、p.72
- ↑ 『鉄道ジャーナル』通巻415号、p.77
- ↑ “新型特急デビュー”. 交通新聞 (交通新聞社): p. 1. (2001年3月6日)
参考文献
- 専門記事
- 大坪孝一(JR九州運輸部車両課)、2000、「885系特急形交流電車」、『鉄道ファン』(通巻469号)、交友社、2000年5月 pp. 42 - 51
- 鉄道ジャーナル編集部、2001、「新型車両プロフィールガイド 白いソニック 885系第2次車」、『鉄道ジャーナル』(通巻415号)、鉄道ジャーナル社、2001年5月 pp. 72-77
- 特集
- 水戸岡鋭治 『水戸岡鋭治の「正しい」鉄道デザイン―私はなぜ九州新幹線に金箔を貼ったのか?』 交通新聞社、2009年。ISBN 4-330-08709-2。
- 『JR特急列車年鑑 2011』 イカロス出版〈イカロス・ムック〉、2010年。ISBN 978-4863203785。
- 坂正博 「JR九州新幹線・特急列車の運転体系概要」、『鉄道ダイヤ情報』 (交通新聞社)第323号28-35頁、2011年3月。
- 鶴通孝、2011、「INTERCITY 787 AROUND THE KYUSHU」、『鉄道ジャーナル』45巻6号(通巻533号)、鉄道ジャーナル社、2011年3月、ISSN 0288-2337{{#invoke:check isxn|check_issn|0288-2337|error={{#invoke:Error|error|{{issn}}のエラー: 無効なISSNです。|tag=span}}}} pp. 74-88
- 『鉄道ファン』第617号、交友社、2012年9月。