ICD-10 第5章:精神と行動の障害
『疾病及び関連保健問題の国際統計分類』第10版(ICD-10)の第5章「精神および行動の障害」の一覧である。
Contents
- 1 派生物
- 2 障害定義
- 3 F00-F99 - 精神および行動の障害
- 3.1 (F00-F09) 症状性を含む器質性精神障害
- 3.2 (F10-F19) 精神作用物質の使用による精神および行動の障害
- 3.3 (F20-F29) 統合失調症、統合失調症型障害および妄想性障害
- 3.4 (F30-F39) 気分(感情)障害
- 3.5 (F40-F48) 神経症性障害,ストレス関連障害および身体表現性障害
- 3.6 (F50-F59) 生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群
- 3.7 (F60-F69) 成人のパーソナリティおよび行動の障害
- 3.8 (F70-F79)精神遅滞
- 3.9 (F80-F89)心理的発達の障害
- 3.10 (F90-F98)小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害
- 3.11 (F99)特定不能の精神障害
- 4 脚注
- 5 参考文献
- 6 関連項目
- 7 外部リンク
派生物
「臨床記述と診断ガイドライン」(CDDG、ブルーブック[1])がこのICD-10第5章の最初のものである[2]。「研究用診断基準」(DCR, Diagnostic critria for research、グリーンブック[1])は、その注意事項にあるように、臨床概念や合併の多い症状が記述されず、単独で使用できないため「臨床記述と診断ガイドライン」の習熟が先に必要になるが、患者群の選別のために他の障害といかなる点が類似しているといった詳細が含まれる[3]。
用語集
1994年の世界保健機関(WHO)の用語集『精神医学と精神保健の用語集』(Lexicon of psychiatric and mental health terms)第2版は、ICD-10第5章で使用される用語の定義を収載している[4]。さらに、世界保健機関の『アルコールと薬物の用語集』(Lexicon of alchol and drug term)は、用語を定義し、またICD-10に対応した診断コードが載せられている[5]。これは、例としてF1x.70フラッシュバックが、幻覚剤に関したものであるといった定義がなされており[6]、定義関係の把握に重要である。
障害定義
ICD-10の序論にある「用語上の問題点」では、「疾患(disease)」のような用語は本質的で重大な問題が生じるため、「障害(disorder)」という曖昧な用語を採用するとしている[7]。また、「障害」について、臨床的に有意な症状や行動、個人的な機能不全の両方が存在する状態と定義している[7]。社会的な逸脱や葛藤も、苦痛や個人的な機能不全がなければ精神障害と見なすべきではない[7]。
なお、DSM日本語版ではDSM-IV以降、Mental Disorderの部分は精神疾患の訳であるが[8]、ICD-10日本語版では精神障害の訳である[7]。
F00-F99 - 精神および行動の障害
(F00-F09) 症状性を含む器質性精神障害
- (F00) アルツハイマー病型認知症
- (F01) 血管性認知症
- (F02) 他に分類される他の疾患の認知症
- (F03) 特定不能の認知症
- (F04) 器質性健忘症候群、アルコール他の精神作用物質によらないもの
- (F05) せん妄、アルコール他の精神作用物質によらないもの
- (F05.0) 認知症に重ならない
- (F05.1) 認知症に重ならなる
- (F05.8) 他のせん妄
- (F05.9) せん妄、特定不能の
- (F06) 脳損傷、脳機能不全および身体疾患による他の精神障害
- (F07)脳疾患、脳損傷および脳機能不全によるパーソナリティおよび行動の障害
- (F09)特定不能の器質性および症状性精神障害
(F10-F19) 精神作用物質の使用による精神および行動の障害
- 注記:以下の症状は、F10-19のそれぞれのコードの下位型である。
物質 | F1x.0 | F1x.1 | F1x.2 | F1x.3 | F1x.4 | F1x.5 | F1x.6 | F1x.7 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
(F10) アルコールの使用 | 急性アルコール中毒 | アルコールの有害な使用 | アルコール依存症 | アルコール離脱症候群 | 振戦せん妄 | アルコール幻覚症 | コルサコフ症候群 | |
(F11) アヘン類の使用 | オピオイド過剰摂取 | オピオイド依存症 | ||||||
(F12) カンナビノイドの使用 | 大麻の急性中毒 | 大麻依存症 | ||||||
(F13) 鎮静薬又は催眠薬の使用 | ベンゾジアゼピン過剰摂取 | ベンゾジアゼピン薬物乱用 | ベンゾジアゼピン依存症 | ベンゾジアゼピン離脱症候群 | 振戦せん妄 | |||
(F14) コカインの使用 | コカイン中毒 | コカイン依存症 | ||||||
(F15) カフェインを含む他の精神刺激薬の使用 | カフェイン中毒 | 精神刺激薬精神病 | ||||||
(F16) 幻覚剤の使用 | フラッシュバック | |||||||
(F17) タバコの使用 | ニコチン離脱 | |||||||
(F18) 揮発性溶剤の使用 | ||||||||
(F19) 多剤使用および他の精神作用物質の使用 |
(F20-F29) 統合失調症、統合失調症型障害および妄想性障害
- (F20) 統合失調症
- (F21) 統合失調型障害, Schizotypal disorder
- (F22) 持続性妄想性障害
- (F23) 急性一過性精神病性障害
- (F24) 感応性妄想性障害
- (F25) 統合失調感情障害, Schizoaffective disorders
- (F28) 他の非器質性精神病性障害
- (F29) 特定不能の非器質性精神病
(F30-F39) 気分(感情)障害
- (F30) 躁病エピソード
- (F31) 双極性感情障害 [躁うつ病]
- (F31.1) 双極性感情障害,現在軽躁病エピソード
- (F31.1) 双極性感情障害,現在精神病症状を伴わない躁病エピソード
- (F31.2) 双極性感情障害,現在精神病症状を伴う躁病エピソード
- (F31.3) 双極性感情障害,現在軽症又は中等症のうつ病エピソード
- (F31.4) 双極性感情障害,現在精神病症状を伴わない重症うつ病エピソード
- (F31.5) 双極性感情障害,現在精神病症状を伴う重症うつ病エピソード
- (F31.6) 双極性感情障害,現在混合性エピソード
- (F31.7) 双極性感情障害,現在寛解状態にあるもの
- (F31.8) 他の双極性感情障害
- (F31.9) 双極性感情障害,特定不能の
- (F32) うつ病エピソード
- (F33) 反復性うつ病性障害
- (F34) 持続性気分(感情)障害
- (F38) 他の気分(感情)障害
- (F39) 特定不能の気分(感情)障害
(F40-F48) 神経症性障害,ストレス関連障害および身体表現性障害
- (F40) 恐怖症性不安障害
- (F41) 他の不安障害
- (F42) 強迫性障害
- F42.0強迫思考又は反復思考を主とする
- F42.1強迫行為(強迫儀式)を主とする
- F42.2 強迫思考と強迫行為が混合する
- F42.8 他の強迫性障害
- F42.9 強迫性障害,特定不能の
- (F43) 重度ストレス反応および適応障害
- (F44) 解離性[転換性]障害
- (F45) 身体表現性障害
- (F48) 他の神経症性障害
(F50-F59) 生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群
- (F50) 摂食障害
- (F51) 非器質性睡眠障害
- (F52) 性機能不全、器質性の障害あるは疾患によらないもの
- (F53) 産褥に関連した精神および行動の障害、他に分類できないもの
- (F54) 他に分類される障害あるいは疾患に関連した心理的および行動的要因
- (F55) 依存を生じない物質の乱用
- (F59) 生理的障害及び身体的要因に関連した特定不能の行動症候群
(F60-F69) 成人のパーソナリティおよび行動の障害
- (F60) 特定のパーソナリティ障害
- (F60.0) 妄想性パーソナリティ障害
- (F60.1) 分裂病質[性]パーソナリティ障害
- (F60.2) 非社会性パーソナリティ障害
- (F60.3) 情緒不安定性パーソナリティ障害
- (F60.4) 演技性パーソナリティ障害
- (F60.5) 強迫性パーソナリティ障害
- (F60.6) 不安性[回避性]パーソナリティ障害
- (F60.7) 依存性パーソナリティ障害
- (F60.8) 他の特定のパーソナリティ障害
- (F60.9) パーソナリティ障害、特定不能のもの
- (F61) 混合性および他のパーソナリティ障害
- (F62) 持続的パーソナリティ変化,脳損傷および脳疾患によらないもの
- F62.0 破局体験後の持続的パーソナリティ変化
- F62.1 精神科疾病後の持続的パーソナリティ変化
- F62.8 他の持続的パーソナリティ変化
- F62.9 持続的パーソナリティ変化、特定不能のもの
- (F63) 習慣および衝動の障害
- (F64) 性同一性障害
- (F65) 性嗜好障害
- (F66) 性の発達と方向づけに関連した心理および行動の障害
- (F68) 他の成人のパーソナリティおよび行動の障害
- (F69) 特定不能の成人のパーソナリティおよび行動の障害
(F70-F79)精神遅滞
(F80-F89)心理的発達の障害
- (F80) 会話および言語の特異的発達障害
- (F81) 学力の特異的発達障害
- (F82) 運動機能の特異的発達障害
- (F83) 混合性特異的発達障害
- (F84) 広汎性発達障害
- (F88) 他の心理的発達の障害
(F90-F98)小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害
- (F90) 多動性障害
- (F91) 行為障害
- (F92) 行為および情緒の混合性障害
- (F93) 小児期に特異的に発症する情緒障害
- (F94) 小児期および青年期に特異的に発症する社会的機能の障害
- (F95) チック障害
- (F98) 小児期および青年期に通常発症する他の行動および情緒の障害
(F99)特定不能の精神障害
脚注
- ↑ 1.0 1.1 世界保健機関 2008, p. 3.
- ↑ 2.0 2.1 世界保健機関 2005, p. 11.
- ↑ 世界保健機関 2008, p. 1.
- ↑ World Health Organization 1994a, Introduction.
- ↑ World Health Organization 1994b, p. 1.
- ↑ World Health Organization 1994b, p. 38.
- ↑ 7.0 7.1 7.2 7.3 World Health Organization 1992, p. 11 (翻訳書は 世界保健機関 2005, p. 5)
- ↑ American Psychiatric Association 1987 (翻訳書は アメリカ精神医学会 1988); American Psychiatric Association 1994 (翻訳書は アメリカ精神医学会 1996)
- ↑ 9.0 9.1 世界保健機関 2005, p. 129.
- ↑ 世界保健機関 2005, p. 133.
- ↑ 11.0 11.1 世界保健機関 2005, p. 149.
- ↑ 12.0 12.1 12.2 12.3 12.4 12.5 世界保健機関 2005, p. 150.
- ↑ 13.0 13.1 13.2 13.3 世界保健機関 2005, p. 174.
- ↑ 世界保健機関 2005, p. 214.
- ↑ 15.0 15.1 世界保健機関 2005, p. 285.
参考文献
ICD-10第5章
- World Health Organization (1992). The ICD-10 Classification of Mental and Behavioural Disorders: Clinical descriptions and diagnostic guidelines (blue book). World Health Organization. ISBN 978-9241544221. (翻訳書は 世界保健機関 『ICD‐10 精神障害および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン』、融道男・中根允文・小見山実・岡崎祐士・大久保善朗監訳 (新訂版) 医学書院、2005年11月。ISBN ISBN 978-4260001335。)
- World Health Organization (1993). The ICD-10 Classification of Mental and Behavioural Disorders:Diagnostic criteria for research (green book) (pdf), World Health Organization. 、世界保健機関・(翻訳)中根允文、岡崎祐士、、藤原妙子、中根秀之、針間博彦 『ICD-10精神および行動の障害-DCR研究用診断基準』 新訂版、2008、新訂。ISBN 978-4-260-00529-6。
- World Health Organization (1994a). Lexicon of psychiatric and mental health terms, 2nd, World Health Organization. ISBN 92-4-154466-X.
- World Health Organization (1994b). Lexicon of alchol and drug term (pdf), World Health Organization. ISBN 92-4-154468-6. (HTML版 introductionが省略されている)
その他
- American Psychiatric Association (1987), Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Third Edition-Revised (DSM-III-R), ISBN 978-0890420188.(翻訳書は アメリカ精神医学会 『DSM-III-R 精神障害の診断・統計マニュアル』、高橋三郎訳 医学書院、1988年。ISBN 978-4260117388。)
- American Psychiatric Association (1994), Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fourth Edition (DSM-IV), ISBN 978-0890420614.(翻訳書は アメリカ精神医学会 『DSM-IV 精神疾患の診断・統計マニュアル』、高橋三郎・大野裕・染矢俊幸訳 医学書院、1996年。ISBN 978-4260118040。)