吃音症

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吃音症(きつおんしょう、: stammering symptom)とは、言葉が円滑に話せない疾病、または障害である。「発語時に言葉が連続して発せられる」、「瞬間あるいは一時的に無音状態が続く」などの症状を示す[1]WHO(世界保健機関)の疾病分類ICD-10では、吃音症であり[2]米国精神医学会の以前のDSM-IVでは吃音症、2013年のDSM-5(『精神障害の診断と統計マニュアル』第5版)では 小児期発症流暢症/小児期発症流暢障害吃音)と、症と障害が併記され、英語表記で、Childhood‒Onset Fluency Disorder (Stuttering) の診断名である。

日本国内においては吃音どもりとも言われているが、特に近年「どもり」は差別用語放送禁止用語とみなされており、公の場で使われなくなってきている。 吃音の原因には、児童の発達性のものと、後天的なもの(たとえば頭部外傷)が挙げられる[3][1]。発達性の吃音は、2歳で発生することが多く、成人では0.8〜1.2%[1][3]、学齢期の子供で約1.2%、5歳までの子供では約5%が吃音者であるといわれ、その4分の3のケースは治療の有無にかかわらず時間と共に解決する[1][3]。子供の頃は本人が気づいていない場合も多い。吃音の程度や吃音の症状が出る言葉や場面には個人差があり、千差万別である。

吃音症が発症する原因が不明であるため、2018年現在、決定的な治療法がないことから、吃音を障害として認定している国もある。例えば、アメリカでは連邦障害者法、ニュージーランドでも法律により障害として扱われる。ドイツでも、障害認定を受けることができる。このように、法的に吃音症患者を保護する体制作りが各国で求められている。日本でも吃音に対する社会保障がある。2005年より吃音が発達障害者支援法に含まれるようになった。精神障害者保健福祉手帳を希望すれば軽度であっても取得できる障害者である。 吃音で身体障害者手帳を取得しているケースもある。この曖昧な部分については、厚生労働省によると、発達障害者支援法に吃音が含まれるという立場になっている。吃音という診断を使わなければ身体障害の可能性もあるという[4]

定義

精神医学的障害の一種である。

症状

突然、特定の言葉が発しにくくなる疾病で、原因は特定されていない。まわりに人がいなくて独り言の場合も吃音の症状が出る。非吃音者があせって早口で話す時に「突っかかる」こととは異なる。テレビ番組の出演者が使う「噛む」こととも異なる。

一般的に吃音には、次の四つの段階がある。

第1段階 - 難発。吃音発生時
第2段階 - 連発。本人にあまり吃音の自覚のない時期。
第3段階 - 連発。伸発。本人が吃音を気にし始める時期。次第に語頭の音を引き伸ばすようになる。
第4段階 - 難発。吃音を強く自覚するようになる時期。伸発の時間が長くなり、最初の語頭が出にくい難発になる。時に随伴運動が現われる。

中核症状

吃音の症状を大きく分けると以下の3つの型となり、これらは吃音の核となる症状と考えられている[1][5]。近年は更に細かく専門化した分類が行われてきている。

連声型(連発、連続型)
発声が「お、お、お、おは、おはようございます」などと、ある言葉を連続して発声する状態。
伸発
「おーーーはようございます」と、語頭の音が引き伸ばされる状態。
無声型(難発、無音型)
「ぉ、……(無音)」となり、最初の言葉から後ろが続かない状態。

原因

戦後一時期まで、吃音は、精神的な緊張に起因すると一面的に理解されてきた歴史がある。しかし、現代の医学では、精神的な部分には問題ないとされており、緊張していなくても同様の症状が表れる。

最近の医学では遺伝で吃音になるとされている。ある種の吃音の原因は痙攣性発声障害の場合もある[6]。もって生まれた資質(遺伝が関係している可能性が強い)によって吃音が発生することが多い。3:1で男子に多いとされる。女子に少ないのは、胸式呼吸に早く移行する為と考えられている[註 1]が、吃音の原因に呼吸法が関係しているという根拠を見つけるのは難しい。

脳科学的アプローチ

2000年前後から、米国テキサス大学の心の不思議の解明映像研究センター (RIC: Research Image Center) で、「吃音は脳神経の機能不全によるもの」という脳神経科学の視座から研究が進み、『脳機能障害』であるとの見解が出てきている。日本においても吃様の類似の症候群としての吃音は、脳内物質や脳神経脳幹部の海馬扁桃体などに関連しているとする研究論文が2002年に日本音声言語医学会に発表され[7]、吃音は発語運動に関連する脳内の神経回路のどの部分が機能不全を起こしても発症し、脳神経の3つの回路と2つの機能レベルに分けられること、このそれぞれの機能不全によって、吃音の種類や性質も異なるとされる。

吃音者と非吃音者のMRIで検査した比較研究からは、非吃音者は発語時に左脳が優位であるが、吃音者は右脳が過活動し、脳の左右の言語に関わる運動脳野などの機能分化が進んでおらず、言語と非言語(舌の動きなど)の両方に関わる運動野の部位で協調性が低下しており、言語運動の開始や抑制に関連した脳部位の活動が明瞭ではないことなど、非吃音者とは異なる働きをしていることが分り、『大脳半球優位説』(1931年にリー・エドワード・トラヴィスが提唱)が科学的に解明された[8]。それによると一次運動野、運動前野、補足運動野、前頭前野頭頂葉小脳神経線維白質)、大脳辺縁系大脳基底核などに異常をきたしているとして、国内外などにおいて研究が進められている。また、吃音は不随意運動であり、発語時に運動系に何らかの異常な信号が出ているとする見解がある。

遺伝学的アプローチ

吃音については吃音遺伝子が少しずつ特定されてきている。そしてつい最近になり、吃音の原因遺伝子が特定された[2]

米国立聴覚障害・コミュニケーション障害研究所の遺伝子学のデニス・ドレイナは、吃音で訪れる人の半分に身近な家族に吃音者がいると言っている。吃音に関連する遺伝子は沢山あり、その一つ一つの寄与率は少ないと考えられているので、遺伝子の特定は難しい。しかし、数年前にカメルーンから吃音のインターネット会議で書き込みがあり、そこの有力な家族に吃音が多く発生しているとの報告で、事態は大きく変化した。書き込みした人によると、彼の家族は大人が106人いて、その内の48人が吃音であるという。明らかに遺伝性を示唆し、一つの遺伝子の変異から生じている可能性がある。ドレイナの研究チームはこの家族の遺伝子を調べて、第1染色体に50から60個の関連遺伝子を突き止めた。一方、パキスタンの吃音者を沢山出している家系からは、第12染色体上に関連遺伝子を発見し、その同定を進めている(2006年 NYタイムズ一部抜粋)。

診断

他の言語障害との混同

近年、明らかに吃音症と言えないものも吃音といっている場合がみられる。吃様の言語症状を伴う疾病、例えば、声帯痙攣を伴う麻痺性発声障害、声帯の麻痺による麻痺性言語障害などの痙攣性発声障害、聴覚フィードバック系の機能不全(早口言語症など)などは、それぞれ原因が特定され、治療法も分かっているものもあるので、吃音とは区別して治療を行う必要がある。

また、不慮の事故などによる脳挫傷や、脳卒中など、脳に損傷が生じた際の後遺症である言語障害は失語症構音障害に分類される。

更に、大辞泉で吃音を引くと「発声器官に痙攣が起こり…」と、痙攣性発声障害などと混同している節が伺われる。広辞苑も吃音を「発語筋肉・横隔膜筋・声帯などの発作的痙攣による。原因は諸説あるが、不安・緊張など心理的要素が強く…」と信憑性がやや疑われる説明をしている。

他の発達障害との併発

近年、一般的に周知されている発達障害である(自閉症高機能自閉症アスペルガー症候群広汎性発達障害ADHD学習障害)などと吃音が併発する場合も存在すると報告が出ている。てんかん精神発達遅滞も併存する場合もあるとのこと。純粋吃音者は49%であり、何らかのその他の発達の症状が51%に見られるという [9]。日本国内でも「吃音に併存する発達障害・精神神経疾患に関する検討」が音声言語医学に掲載され、吃音とその他の発達障害を持つ人が存在することがわかった [10]

治療・矯正

言語障害などを治療する言語聴覚士 (ST) が基本的には治療を行う。診断は、吃音の治療を手がけているSTがいる耳鼻咽喉科[11]などの医師が行う。また神経内科などでも医師に吃音の知識があり、吃音治療を行うSTがいれば診断可能な場合がある。精神科心療内科などでも、通院・在宅精神療法や投薬治療を受けず、初診料と再診料のみの診療報酬請求しか行わないならば、吃音症のみの診断名で基本的には受診可能である。治療法には、

  • 言語療法:丹田部に力を入れ、第一語を引き伸ばしてゆっくり話す抑制法や、楽にどもりながら話すバウンズ法(修正法)など。
  • 呼吸法
  • 系統的脱感作療法的訓練:軽くどもりながらスピーチして馴化させたり、どもって緊張した場面や、訥言(どもり易い苦手な言葉)や嫌な場面を想像し、難易度や不安感の低い順に、抑制法や修正法などを交えながら発声訓練する矯正法。6 - 8名での訓練が効率的で効果的とされる。行動療法の一つ。
  • 言語聴覚療法:FAF、AAF、DSAなどの聴覚フィードバック装置[註 2]などを利用した治療法[3]。国立身体障害者リハビリテーションセンターはFAFを設置している。
  • 認知行動療法行動療法心理療法
  • バルサルバ反射抑制法
  • 自助グループ[3]

などがある。吃音には、獲得性吃音(大きく神経原性吃音と心因性吃音に分かれる)と発達性吃音があり、その中での個人差もあるため、それぞれの患者に応じた治療(通常、複数の有効な治療法を組み合わせた治療[12])を行う[13]

また、言語聴覚士などの専門家は、はじめの言葉をゆっくりと引き伸ばすように話す・力を抜いて柔らかい声でそっと話し出す・ひとりごとのようにささやくような声で話す・リズムに合わせて話す、といった話し方の工夫を伝えたり、のど・舌・くちびる・口の力を抜いて話す・吐く息に母音(「あ・い・う・え・お」に当たる音)を乗せるように(「はあー」→「あー」・「ふうー」→「うー」など)母音をゆっくりと伸ばして発音する、といった吃音が出にくくなるコツを伝えたりすることを通じて、本人のサポートを行う[14][12][15]。また、同じ言葉を繰り返し話すことで吃音をする頻度が少しずつ減っていくことから、聞き手が話の内容をしっかりと聞き肯定的な反応を返していくことで、本人の話す意欲を高められるよう支援することも大切である[16]

さらに、本人が吃音を持っていても過ごしやすい環境を整備する、環境調整も非常に大切である[17]。たとえば学校での場合、学級担任がほかの児童生徒に対してしっかりと働きかけ、吃音に対して否定的な反応(からかい、まねなど)を決してすることのないよう、そして肯定的・受容的な態度をとるよう指導するとともに、授業において一人ずつ音読をしてもらうというスタイルをやめ全員での音読(一斉読み)を常時採用したり、本人が困っているときは率先して手助けをしたりするなどの配慮が大切である[17]

薬物による治療

米国FDAは、吃音症に対していかなる医薬品も認可していない[3]

  • リスペリドンジョンソン・エンド・ジョンソン)・オランザピンイーライリリー)は、どちらの薬剤もアメリカの実験で一部吃音者の吃音を軽減させる効果が認められたが、製薬会社は2社とも大規模な臨床試験を断念した[18][19]
  • β遮断薬(ミケラン、アルマール、インデラルなど)は、結婚式の挨拶など特定の場面で、動悸や震えなどの身体症状や強い緊張を伴う一部の吃音症には、ベンゾジアゼピン系抗不安薬との併用で、緩和することがある。
    • ただし、筋弛緩作用の強いベンゾジアゼピン系抗不安薬では効果が上げられているとされているものの、抗不安作用は強いが筋弛緩作用の弱いベンゾジアゼピン系抗不安薬は却って吃音症を一時的にせよ重症化させる傾向性が見られるとする報告例がある。また、筋弛緩作用が強いフルニトラゼパム、筋弛緩作用が弱いフルトプラゼパムも一時的ながら吃音症を重症化させることが多いとされる。更に、ベンゾジアゼピン系抗不安薬に慣れていない吃音者では作用の弱いベンゾジアゼピン系薬物に依っても却って吃音の重症化が起こり得るとされ、ベンゾジアゼピン系薬物の服用に慣れていない吃音者(とくに女性の吃音者)には作用が弱いベンゾジアゼピン系薬物から始めるべきとする報告例もある。
    • この様に吃音症の薬物治療については試行錯誤の段階であり、分かっていないことも多く、効果も未知数である。吃音者の多くがどのような薬種を服用しているのかのデータすらない。今後の研究が待たれるところである。抗不安薬等の服用で不安感や吃音予期不安が軽減されれば、多勢の前の演説などで吃音が出る頻度が減る人はいる。だが、根本的な治療とは異なり、言語療法、認知療法などの心理療法、聴覚療法など単一療法の一つである。心理療法は吃音そのものを矯正するものではなく、心理的不安を軽減することによって吃音予期不安を緩和したり、吃音を受容し吃音と上手く付き合えるようにしていこう等とするものである。これからは吃音者一人一人の実態に即し、複数の治療法を組み合わせるなどした包括的治療や総合的治療、全身的治療が重要になってくる。

疫学

生涯有病率、および人生で吃音を1回以上経験する割合は、おおよそ5%ほど[20]。全体的に男性のほうが女性の5倍以上多いが[21][22][23]、この理由は情報が多くなく不明である[24]。多くの吃音は年少期に発症し、ある研究では5歳以下の児童の2.5%が吃音であるとされている[25][26]。児童の吃音発症の初回年齢は、男児と女児で同じであるが、この男女比は年齢を経るごとに変化し、男児のほうがおよそ2倍ほど多くなっていく[23][26]。この男女比は、1学年児では2倍ほどに、5学年児では3倍ほどに男児が多くなる[27][28]。おおよそ65–75%は早期に回復し[22][29]、全体的な有病率はおよそ1%ほどであるとされている[21][30]

日本の現状

吃音は日本国内において、ICD-10やDSMに準じた厚生労働省の「疾病、傷害及び死因分類」[31]が採用されており、基本的に、医療機関で受診可能な健康保険適用の吃音症という疾病に分類されている。

日本における吃音治療の最大の問題は、長い間、医療と手が切られてきたことである。ゆえに、吃音の医学的治療や研究はなかなか進んでいない。

2005年より日本国は吃音が発達障害者支援法に含まれるという立場を表明している。日本国内でも2014年7月3日現在、国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報・支援センターが、吃音症を発達障害者支援法に定義されている障害」としてホームページに掲載し、「話し方の障害」「なめらかに話すことが年齢や言語能力に比して不相応に困難な状態」と定義した[32]

2014年7月3日の情報公開の後、相次いで国や地方公共団体等は吃音が発達障害者支援法に含まれると周知を開始した。2014年9月号の厚生労働省広報誌においても「発達障害には吃音も含む」という趣旨の記載がある[33]。内閣府政府広報オンラインに書かれている『発達障害って、なんだろう?』にも吃音症が発達障害者に含まれると明記された[34]。東京都福祉保健局が発行した「発達障害者支援ハンドブック2015」にも吃音が発達障害であると明記された[35]

以上のように日本政府も2014年7月3日の国立障害者リハビリテーションセンター内部組織である発達障害情報・支援センターが吃音を発達障害と発表して以降、吃音が発達障害であると、さらに強く広く周知を行うようになった。一般的に周知されている発達障害者(自閉症高機能自閉症アスペルガー症候群広汎性発達障害ADHD学習障害運動チック音声チックトゥレット症候群協調運動障害)と同様に吃音児者も公的な福祉サービスや支援、精神障害者保健福祉手帳を申請すれば利用することができる。学校や職場で合理的配慮を受けることができ、社会人であれば障害者雇用枠を利用することもできる。吃音当事者はそういった選択肢があるということを覚えておく必要がある。日本国内企業の人事労務・採用担当部門も吃音が発達障害であることを覚えておく必要がある[36][37][38]

医療機関を受診している患者数

厚生労働の2005年の患者調査「3閲覧第 36表 推計患者数・再来患者の平均診療間隔、入院-外来(初診-再来)×傷病基本分類別」などによると、吃音症で医療機関を受診した推計患者数は、100人/1日、総患者数は、1,000人/1年である[39]。平均診療間隔は15.6日。推計患者数は調査日の1日に医療機関を受診した人の数の総和であり、総患者数は、推計患者数などを基にした計算式で出したものである。なお、総患者数は延べ人数ではなく、重複患者は含まれていない、というのが厚労省の説明。

健康保険適用と診療報酬

日本では、吃音症は、標準病名マスター作業班[40]診療報酬情報提供サービス[41]では健康保険適用の疾病とされており、医療機関は、脳血管疾患等リハビリテーション料を請求する仕組みになっている。これは2006年の診療報酬改定の際に、厚労省と言語聴覚士協会が正式合意したものである。

因みに日本音声言語医学会は吃音は広義の意味で構音障害の一つと考えており、保険治療の対象になるという立場である。しかし、患者が受診できる医療機関や治療及び、医師が診療報酬を受け取れる医療や仕組みが限られてしまっている。日本においては吃音症はSTの置かれた耳鼻咽喉科やリハビリテーション科、一部小児科や神経内科、小児神経内科などを除いては、医療体系に充分に含まれていないからである。耳鼻咽喉科などでは吃音症に加え、音声言語障害(言語障害、音声障害、言語機能の障害、言語発達障害などでも可)の診断名を付し、STによる訓練を受けた場合、問題なく健康保険適用される。吃音のみの診断名では自治体の審査支払機関に不適切とみなされ、健康保険適用外としてレセプトが返戻されてしまう場合があるが、審査支払機関によっては可能な場合もある。健康保険適用と認めるか否かは、自治体の診療報酬審査委員会の審査官個人の判断に委ねられ、その基準には幅がある。

精神科、神経科、心療内科などでは、通院・在宅精神療法[42]の適応疾病や薬剤処方の適応書に吃音症は含まれていない。したがって、かかる治療を受けるのなら健康保険を使って受診できない。しかし、通院・在宅精神療法を点数として取らず、薬剤処方もしなければ吃音症のみで受診することは可能であり、初診料再診料のみの診療報酬を請求することになる(精神科は検査などを多くしないので、診療報酬が低く、初診料・再診料以外に通院・在宅精神療法などが加算される仕組みになっている)。その場合、審査支払い機関への病態の保証・説得が大事になり、治療法としては、認知行動療法、精神力動的治療(精神分析など)、交流分析カウンセリングロールプレイゲシュタルト療法家族療法などが挙げられるが、医師の判断や医療機関の治療資源、得意分野などによって違ってくる。医療機関によっては、受診拒否されることがあるが、その医療機関や医師に吃音症の知識や治療資源がなかった場合は、医師法19条が禁止する診療拒否には当たらない。

歴史

2013年には米国精神医学会のDSMシリーズが第五版に改訂された。(精神障害の診断と統計マニュアル)DSM-5において、吃音は「神経発達症群/神経発達障害群 (Neurodevelopmental Disorder)」という一般に知られる発達障害者(自閉症高機能自閉症アスペルガー症候群広汎性発達障害ADHD学習障害運動チック音声チックトゥレット症候群協調運動障害)と同様の枠に分類された。「Childhood‒Onset Fluency Disorder (Stuttering) 小児期発症流暢症/小児期発症流暢障害(吃音)」という名称である。「症」なのか?「障害」なのか?については日本精神神経学会によると保護者養育者・子どもを慮っての和訳である[43]

2018年に改訂予定のICD-11においても吃音が「神経発達症群/神経発達障害群 (Neurodevelopmental Disorder)」という一般に知られる発達障害者と同様の枠に分類される予定である。ICD-11では「Developmental speech fluency disorder」と表記されている[44]

吃音症を取り扱った作品

脚注

  1. 女性に吃音が少ない理由:赤ん坊は最初、全員が腹式で呼吸しているが、幼児期から学童期に胸式呼吸に変わる。この際、女児は身体的発達が早いのと、将来の妊娠出産のために腹筋の発達が抑えられるという理由により、男児より早く腹式呼吸から胸式呼吸に移行するためと考えられている吃音Q&A(吃音改善研究会)
  2. 用語解説
    DAF(遅延聴覚フィードバック)装置。AAF(Altered Auditory Feedback:聴覚変換フィードバックの略)ともいう。
    FAF(周波数遷移フィードバック)装置。ASF(Altered Speech Feedback:話声変換フィードバックの略)ともいう。
    DSA(Digital Stuttering-suppress Aid:吃音抑制訓練器)装置、などがある。

出典

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  2. ICD-10 - F98.5 Stuttering [stammering], WHO, http://apps.who.int/classifications/icd10/browse/2015/en#/F98.5 
  3. 3.0 3.1 3.2 3.3 3.4 3.5 NICDCD - Stuttering”. アメリカ国立衛生研究所. . 2016閲覧.
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  6. 「吃音の病態解明と医学的評価及び検査法の確立のための研究」(平成14年度)主任研究者 森浩一(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)
  7. NPO法人吃音協会の2002年日本音声言語医学会への発表論文より
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  42. 2008年度から通院精神療法が通院・在宅精神療法に変更された
  43. 公益社団法人 日本精神神経学会 > 精神神経学雑誌 第116巻 第6号(2014年) 429‒457頁 資料「DSM‒5 病名・用語翻訳ガイドライン(初版)」2015年12月10日閲覧
  44. ICD-11 Beta Draft (Foundation) > Neurodevelopmental disorders 「Developmental speech fluency disorder」2015年12月10日閲覧

文献・図書

  • Guitar, Barry (2005), Stuttering: An Integrated Approach to Its Nature and Treatment, San Diego: Lippincott Williams & Wilkins, ISBN 0-7817-3920-9 .
  • Ward, David (2006). Stuttering and Cluttering: Frameworks for understanding treatment. Hove and New York City: Psychology Press. ISBN 978-1-84169-334-7. .
  • 「吃音の基礎と臨床」(学苑社 バリー・ギター著 長澤泰子監訳 2007年10月刊)
  • 国内外の「吃音研究の動向」(2002年〜2003年)小林宏明 金沢大学教育学部
  • 「研究業績」(1998年 - 2007年、非吃音含)渡辺義和 南山大学准教授 教育・研究支援事務室
  • 厚生労働科学研究成果データベースを「吃音」で検索。4テーマの以下の研究論文閲覧可。
    • 「吃音の病態解明と医学的評価及び検査法の確立のための研究」平成14年度 主任研究者 森浩一(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)
    • 「吃音の病態解明と検査法の確立及び受療機会に関する研究」平成15年度主任研究者 森浩一(国立身体障害者リハビリテーションセンター)
    • 「福祉用具の心理的効果測定手法の開発」平成16,17年度 主任研究者 井上剛伸(国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)
    • 「言語の認知・表出障害に対するリハビリテーションの体系化に関する研究」(平成10,11,12年度 主任研究者 児嶋久剛、京都大学大学院医学研究科)
    • 「無侵襲脳局所酸素モニタによる聴覚障害の機能診断と治療への応用に関する研究」(平成10年度 主任研究者 森浩一、国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所)

関連項目

外部リンク


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