タイロン・ウッズ
ウィリアム・タイロン・ウッズ(William Tyrone Woods , 1969年8月19日 - )は、アメリカ合衆国フロリダ州出身の元プロ野球選手(内野手、外野手)。
NPBとKBO両方で本塁打王と打点王の二冠王に輝いた唯一の選手である。
Contents
経歴
アメリカ時代
1988年にエクスポズと契約。その後、オリオールズ、レッドソックスと移籍するが、メジャー昇格はならなかった。
韓国時代
1998年、韓国プロ野球(KBO)のOBベアーズ(1999年より斗山ベアーズ)に入団。登録名は「ウジュ(우즈)」。同年、本塁打王と打点王の二冠を獲得し、シーズンMVPに輝く。当時シーズン42本塁打は韓国記録だった(2015年シーズン終了時点でも斗山ベアーズのチーム記録)。韓国時代はファンから「黒熊」というニックネームで親しまれていた。
2001年は打点王、韓国シリーズMVPなどのタイトルを獲得し、斗山ベアーズの韓国シリーズ優勝に貢献。この時、一度中日と入団交渉を行っている。この時の交渉は不調に終わったが、当時の打撃コーチだった佐々木恭介はウッズの打撃を高く評価していた。2002年限りで斗山ベアーズを退団。韓国時代の5年間で通算174本塁打、510打点という成績を残した。
日本時代
横浜時代
2003年、横浜ベイスターズに入団。当初は同じく新加入のスティーブ・コックスの控えという位置付けだったが、コックスがキャンプ中に怪我で離脱すると、代わって4番に定着する。同年は40本塁打を放ち本塁打王を獲得(ヤクルトのアレックス・ラミレスと分け合う)。また、KBOとNPBでホームラン王を獲得した史上初の選手となった。これを達成したのは2017年現在でウッズただ一人だけである。だが、100打点には届かなかった。
2004年も45本塁打で2年連続の本塁打王を獲得(巨人のタフィ・ローズと分け合う)し、打点も100を超え、最終的に103打点をマークした。しかし、オフの契約更改の席にて複数年契約を申し出るが、高齢やチャンスに弱いことなどから合意に至らず退団。その後長距離打者を求める中日ドラゴンズや阪神タイガースなどからオファーがあり、2年契約で中日へ移籍した。
中日時代
2005年8月6日の対横浜戦(横浜スタジアム)で観客席の横浜ファンが出した「Money、Kaese!(金返せ)」のプラカードに奮起し、来日初の1試合3本塁打を放つ。4番打者として、本塁打王こそ逃したがチーム1位の38本塁打を放ち、2年連続の100打点と初の打率3割も記録。しかし、5月5日の対ヤクルト戦で藤井秀悟の頭部付近への投球(死球ではない)に激怒。右頬を殴って退場処分を受け、さらに10試合出場停止という処分を課された(この2人は、後に和解している)。ウッズの不在が出場停止期間に始まった交流戦で大きく響き、中日もこの年セ・リーグ連覇を逃した。
2006年、来日当初から指摘され続けていた勝負弱さを克服。開幕当初は不振も、自己最多の47本塁打を放ち、2年ぶりの本塁打王と初の打点王を獲得し、リーグ優勝に大きく貢献(球団としては、本塁打王は1996年の山崎武司、打点王は1994年の大豊泰昭以来で、両タイトルとも本拠地がナゴヤドームに移転後初)。古巣の横浜相手には特に強く、打率.372、本塁打12本を記録。マジック1で迎えた10月10日の対巨人戦では46号先制3ラン、47号満塁本塁打(2試合連続)を放ち7打点を挙げ、西沢道夫の持つシーズン本塁打球団記録(46本)を更新し優勝を決めた。144打点も球団新記録でプロ野球史上歴代6位の記録。日本シリーズでも全試合4番を務め、打率は.267(15打数4安打)と悪くはなかったものの本塁打0、打点は0で、日本一にはなれなかった。
2007年、交流戦前まで打率.320など三冠王も狙えるペースだったが、持病の腰痛の影響もあり、打率は徐々に下降。8月16日の対阪神戦で、下柳剛から来日通算200号本塁打を放つなど、本塁打と打点では終盤までタイトルを争ったものの、9月14日の対阪神戦で藤川球児から勝ち越し安打を放って以降は18試合で本塁打1、打点7と精彩を欠き、無冠に終わった。巨人、阪神との三つ巴の優勝争いの時期、ウッズの不振は中日がセ・リーグ連覇を逃した一因にも挙げられた。しかし、この年よりセリーグに導入されたクライマックスシリーズでは、1stステージと2ndステージ合わせて3本塁打を放つなど、勝利に結びつく活躍を何度も見せ、球団史上初の2年連続日本シリーズ進出に大きく貢献した。日本シリーズでは日本一になった第5戦で、この試合の唯一の得点となる平田良介の犠牲フライでホームを踏み、最後の打者となった小谷野栄一の二塁ゴロでウイニングボールを掴んだ。
2008年、交流戦前から調子が上がり始めたが、交流戦後に再び不振に陥り4番を森野将彦や西武から移籍した和田一浩に譲り、時にはスタメンを外れた。来日以降6年連続35本塁打以上を記録するものの、打点は来日以降最低の数字に終わる。クライマックスシリーズではチームトップの5本塁打を放ち活躍したが、高額な年俸と下降した成績で既に39歳で高齢ということもあり、自由契約となった。
2009年以降
一時期福岡ソフトバンクホークスがウッズの獲得を検討しているという報道も出たが、高額な年俸(推定3億円以上)を理由に獲得を断念。中日スポーツの電話取材で「まだ日本でやりたいという気持ちが強い。他球団からのオファーを待つ」と語っている。また、阪神タイガースが打撃不振の新外国人ケビン・メンチの代役候補としてウッズの名が挙げられたが、同じく代役候補のクレイグ・ブラゼルが契約締結したことで、実現はしなかった。
2010年プロ野球シーズン前にテレビ番組出演のために来日した際、古巣の中日及びナゴヤドームを訪れ、次代の4番であるトニ・ブランコを激励した。
中日退団後は米国で不動産業を営み、明確な意思表示をしてはいないが野球選手としては引退状態にある。2010年11月には中日スポーツの取材に対し「昨年もパ・リーグの球団からオファーが来たが、どうにもピンとこなかった」「パ・リーグよりよく知っているセ・リーグの方が力になれる」と語り、セ・リーグ球団からの、特に中日からのオファーがあれば検討する意志を示した[1][2]が、2018年に至るまで現役復帰を果たしていない。
人物
高校時代はアメリカンフットボールをやっていたといい、がっしりとした体つきをしている。
アレックス・カブレラとはメキシカン・リーグ時代からの旧知の仲である。また、李承燁とは韓国時代本塁打王を争っていた。
同じアフリカ系アメリカ人のシェリル夫人と一人の息子がいる。
本塁打を打った後、ホームベース付近で右手拳で胸を2回叩き、顔を上に向け右手人差し指に口づけをする。これは神に感謝するという意味を込めているといわれている。
同じアフリカ系アメリカ人のタイガー・ウッズと名前・イニシャルが似ているため、中日入団決定時に中日スポーツ紙で「タイガー・ウッズ選手が中日入団決定」と、名前を間違えて報じられた。一時期は野球選手版「タイガー・ウッズ」と呼ばれていた。誤解を招かないよう、球場のアナウンス、テレビでの呼称ともに単に「ウッズ」ではなく「タイロン・ウッズ」とフルネームで呼んでいる。本塁打を打った時は、その「タイガー・ウッズ」にかけられて、「ナイスショット!!」といわれたこともある。
2003年発売の『週刊ベースボール』の選手名鑑号によると、初めて覚えた日本語は「ミズ、クダサイ」。日本にいる年数が長くなるにつれて日本語も上達してきて、報道陣に会うと「う~す」と挨拶したり、「日本語に直すと私の名前は森ね、筋肉モリモリよ」と冗談を言ったり、ヒーローインタビューで「ソウデスネェ、アノー・・・」と日本語で答えようとすることがあった。
中日に移籍後、その長打力から「巨人の星」に中日の選手として登場してくるアームストロング・オズマに例えられることがあった。ただしオズマは左打ちで、ウッズは右打ちである。
『東海ラジオ ガッツナイター』には、2005年はタイトルコールとジングル、2007年からはジングル・ガッツナイタースペシャル(デーゲーム中継など)時のタイトルコールに登場している。
スコアボードの「T.ウッズ」という表記は中日移籍後もそのまま引き継がれた(背ネームは引き継がれず「WOODS」のみ)。応援時のコールも「タイロン」が引き継がれた形だが、これは「ウッズ」がコールしづらいからということもある。
中日のウッズの応援では、応援歌に入る前に私設応援団による入場テーマが演奏され、それのリズムに合わせメガホンダンス(メガホンを振り回した後、レフトとライト方向へ振り向ける。これを2回)、Tコール(3回メガホンを打ち鳴らし、メガホンをT字型に垂直に合わせ"T!"と言う。これを8回。応援によっては最初からここまでを何度も繰り返す)をする応援がある。ちなみに「T」はウッズが中日入団の際、インタビューで「ファンには(ウッズを)何と呼んでほしい?」との問いに答えたものである。原曲はエミネムの『Without Me』。打席に立っている間は、現在の本塁打数だけ背番号と背ネームを模したボードが外野応援席に立てられる(ちなみに入場テーマは愛知県内高校野球の応援でも使われることがある)。
中日移籍後の2005年4月の試合ではユニフォームを忘れたためにブルペンキャッチャーの藤井優志のユニフォームを借りて背番号「97」で試合に臨んだこともあった。
2005年5月5日、対ヤクルト6回戦(ナゴヤドーム)、5回裏の打席で顔付近への投球に怒り、更に藤井秀悟から舌を出して挑発をされたと受け取り(藤井は投球時に舌を出す癖がある)、同投手の右頬を殴って退場処分になり、10試合の出場停止と50万円の罰金処分を受けた。これに関しては、2005年4月6日の対ヤクルト戦(神宮)で3番手投手の五十嵐亮太の投球を左手小指に受け、骨折(亀裂骨折で全治6週間と診断)させられていた中でもチームのために出場を続けていた状況下で、同じように前日の対ヤクルト戦で死球を省みない内角高めのコースを攻め続けられた配球に対して怒りを示しており、その変化の無い危険な配球も伏線に繋がったと考えられる(捕手は五十嵐の時と同じ古田敦也)。この時は二塁ベース上の立浪和義らグランドに居た選手が止めたので事なきを得た。出場停止の影響で、その時点で首位を走っていた中日が直後に始まった交流戦で大きく負け越し、この年の優勝を逃す結果となった。ウッズの抜けた穴は大きく、交流戦で連敗している間スポーツ紙には「ウッズ・ショック」の見出しが躍った。なお藤井は2008年3月5日更新の自身のブログにおいて、ウッズとのツーショット写真を掲載し和解している。
2006年6月4日の対楽天戦でフルキャストスタジアム宮城初のエンタイトルツーベースを放った。
2006年のオールスターゲーム中に、ナゴヤ球場での練習中スキンヘッドを披露した。これは残って一緒に練習していたチームメイトから驚かれた。
2007年から東海地区の宅配ピザチェーンアオキーズ・ピザの夏のイメージキャラクターに起用される。2007年は限定メニュー「ドラマヨ」のTVCMに落合監督の息子・福嗣と、翌2008年は同じく「でらうま」のCMで元中日選手の大豊泰昭、ドアラと共演。タイロン自身が名古屋弁で「とても美味い」を意味する「でらうめぇがや!!」とセリフを言うシーンもあった。
背番号の44は、少年時代の憧れの選手だったレジー・ジャクソンにちなんだものとされている。一説には1944年に締結されたブレトン・ウッズ協定にちなんで、という説もあるが詳細は不明。また、在籍した横浜・中日共に退団後の背番号44は小池正晃がいずれも継承している。
2006年は3・4番を組んでた福留孝介と共に「FW砲」と中日スポーツで名づけられた事があった。また、和田一浩が移籍してきた2008年は「WW砲」と名づけられた。
2007年に日本一になった際、MLBでは一般的だったチャンピオンリングを作って欲しいと報道陣に語ったことがある。当初は製作予定はなかったが後に球団が製作することとなった。日本では他に2005年に千葉ロッテマリーンズが日本一になったのを記念して製作し、選手やスタッフに贈られたことがある。
2007年に放送された『プロ野球握力王決定戦』という企画では右手69.9kgを記録。
ヒーローインタビューは「You know(えっと…)」で話し始めることが多い。
2003年と2004年は横浜、2005年から2008年は中日に在籍し、計6年間日本でプレーし6年連続で規定打席に到達した。
詳細情報
年度別打撃成績
年 度 |
球 団 |
試 合 |
打 席 |
打 数 |
得 点 |
安 打 |
二 塁 打 |
三 塁 打 |
本 塁 打 |
塁 打 |
打 点 |
盗 塁 |
盗 塁 死 |
犠 打 |
犠 飛 |
四 球 |
敬 遠 |
死 球 |
三 振 |
併 殺 打 |
打 率 |
出 塁 率 |
長 打 率 |
O P S |
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1998 | OB 斗山 |
126 | 521 | 452 | 77 | 138 | 14 | 1 | 42 | 280 | 103 | 1 | 2 | 0 | 2 | 65 | 5 | 2 | 115 | 13 | .305 | .393 | .619 | 1.013 |
1999 | 124 | 544 | 454 | 90 | 135 | 20 | 0 | 34 | 257 | 101 | 5 | 2 | 0 | 3 | 83 | 8 | 4 | 126 | 14 | .297 | .406 | .566 | .972 | |
2000 | 127 | 565 | 479 | 91 | 151 | 22 | 0 | 39 | 290 | 111 | 4 | 1 | 0 | 3 | 77 | 5 | 6 | 132 | 13 | .315 | .414 | .605 | 1.020 | |
2001 | 118 | 525 | 436 | 101 | 127 | 16 | 2 | 34 | 249 | 113 | 12 | 3 | 0 | 5 | 83 | 4 | 1 | 114 | 11 | .291 | .402 | .571 | .973 | |
2002 | 119 | 469 | 407 | 53 | 104 | 18 | 3 | 25 | 203 | 82 | 5 | 2 | 0 | 7 | 50 | 3 | 5 | 123 | 11 | .256 | .339 | .499 | .838 | |
2003 | 横浜 | 136 | 551 | 479 | 73 | 131 | 17 | 0 | 40 | 268 | 87 | 2 | 3 | 0 | 4 | 66 | 2 | 2 | 132 | 14 | .273 | .361 | .559 | .921 |
2004 | 130 | 551 | 476 | 84 | 142 | 15 | 0 | 45 | 292 | 103 | 2 | 1 | 0 | 0 | 74 | 8 | 1 | 142 | 16 | .298 | .394 | .613 | 1.007 | |
2005 | 中日 | 135 | 584 | 506 | 92 | 155 | 20 | 0 | 38 | 289 | 103 | 3 | 0 | 0 | 4 | 67 | 3 | 7 | 139 | 24 | .306 | .392 | .571 | .963 |
2006 | 144 | 614 | 523 | 85 | 162 | 29 | 0 | 47 | 332 | 144 | 1 | 2 | 0 | 6 | 84 | 4 | 1 | 151 | 22 | .310 | .402 | .635 | 1.037 | |
2007 | 139 | 593 | 466 | 85 | 126 | 16 | 0 | 35 | 247 | 102 | 3 | 1 | 0 | 5 | 121 | 19 | 1 | 153 | 15 | .270 | .418 | .530 | .948 | |
2008 | 140 | 573 | 490 | 77 | 135 | 18 | 0 | 35 | 258 | 77 | 0 | 1 | 0 | 2 | 78 | 3 | 3 | 138 | 18 | .276 | .377 | .527 | .904 | |
KBO:5年 | 614 | 2624 | 2228 | 412 | 655 | 90 | 6 | 174 | 1279 | 510 | 27 | 10 | 0 | 20 | 358 | 25 | 18 | 610 | 62 | .294 | .393 | .574 | .967 | |
NPB:6年 | 824 | 3466 | 2940 | 496 | 851 | 115 | 0 | 240 | 1686 | 616 | 11 | 8 | 0 | 21 | 490 | 39 | 15 | 855 | 109 | .289 | .391 | .573 | .964 |
- 各年度の太字はリーグ最高
- OB(OBベアーズ)は、1999年に斗山(斗山ベアーズ)に球団名を変更
タイトル
- KBO
- 本塁打王:1回 (1998年)
- 打点王:2回 (1998年、2001年)
- NPB
表彰
- KBO
- MVP:1回 (1998年)
- ゴールデングラブ賞:1回 (2000年)
- 韓国シリーズMVP:1回 (2001年)
- KBOオールスターゲームMVP:1回(2001年)
- NPB
記録
- NPB初記録
- 初出場・初先発出場:2003年3月28日、対阪神タイガース1回戦(横浜スタジアム)、4番・一塁手で先発出場
- 初打席:同上、2回裏に井川慶から四球
- 初安打・初打点:同上、3回裏に井川慶から左前適時打
- 初本塁打:同上、8回裏に金澤健人から左越ソロ
- 初盗塁:2003年4月2日、対読売ジャイアンツ2回戦(東京ドーム)、6回表に二盗(投手:高橋尚成、捕手:阿部慎之助)
- NPB節目の記録
- 100本塁打:2005年6月16日、対オリックス・バファローズ5回戦(ナゴヤドーム)、6回裏に加藤大輔から中越3ラン ※史上240人目
- 150本塁打:2006年8月3日、対横浜ベイスターズ10回戦(横浜スタジアム)、9回表に加藤武治から左越2ラン ※史上144人目
- 200本塁打:2007年8月16日、対阪神タイガース16回戦(京セラドーム大阪)、6回表に下柳剛から中越2ラン ※史上88人目
- NPBその他の記録
- オールスターゲーム出場:3回 (2003年、2007年、2008年)
- 全球団から本塁打:2008年6月6日、対北海道日本ハムファイターズ3回戦(ナゴヤドーム)、1回裏に多田野数人から左中間へ先制ソロ ※史上13人目
背番号
- 33 (1998年 - 2002年)
- 44 (2003年 - 2008年)
脚注
関連項目
外部リンク
業績(NPB) |
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業績(KBO) |
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