外食産業
外食産業(がいしょくさんぎょう)とは、内食ではなく家庭外で食事を提供するサービス業。
Contents
日本における外食産業
「外食」の用語は戦時下の食料統制の一環として1941年に導入された外食券制によって、配給された外食券で食事ができる食堂に「外食券食堂」との表記がなされたことによって広まった。現在ではここからさらに派生した「内食」「中食」などの用語もある。
「食事をする空間を提供する」という狭義の意味での外食産業は、1907年に開業した三越の食堂を嚆矢とするが、一般には日本初のファミリーレストラン「すかいらーく」1号店が開業した1970年が「外食元年」とされる。
業種による分類
外食の定義は、一般に狭義と広義の意味がある。
「狭義の外食は、食事をする空間とともに食事を提供する形態の業種を指す」。食堂、レストラン、ファーストフードや喫茶店(カフェ)など一般に「飲食店」と称する業種がこれにあたる。
店舗の例
証券市場の分類
証券コード協議会における業種分類では、狭義の外食産業がスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどと同じ小売業に、「中食」を手がける企業が食料品に分類されている。
家庭における傾向
一般的に、世帯主が若い家庭ほど、食費に占める外食の割合が大きい。また、単身世帯は2人以上の世帯よりも、外食の割合が大きくなる[1]。
従業員の労働環境
以下では、従業員の労働環境について述べる。
- 店長
- 店舗の売上ノルマ達成や従業員の勤務シフト調整においては、地域内の店舗を統括するスーパーバイザー(エリアマネジャーともいう)と、店舗のパート・アルバイトとの間で板ばさみとなり苦労することがある。また、管理職と見なされることが多いが、勤務実態との乖離や賃金抑制のための名目ではないかと訴訟になるケースがある。詳細は管理職#「名ばかり管理職」の問題を参照されたい。
- パート・アルバイト
- 一般的なパート・アルバイトの待遇問題については、非正規雇用#特徴を参照されたい。雇用環境については、2008年には人手不足感が高まっており、正社員化などでパートの囲い込みを図っている事例が指摘されている[2]。
最も行きたくない業種
日経新聞の子会社である日経HRの行った調査で大学生・大学院生の就職活動において外食産業が最も行きたくない業界として2010年に続いて連続1位を獲得した[3]。
市場規模
市場規模は、1997年をピークに、その後は20兆円台前半となっている[4]。市場規模は今後拡大しないといわれている一方で、店舗数が増えている現状があり、競争の激化で業界の生き残り競争が熾烈となると見られる。このため、店舗の従業員の将来性はさらに厳しくなると見られる。実際、セブン&アイ・ホールディングスは、外食部門の不振から、2008年度以降、外食部門の店舗数を削減すると発表している。
外食産業の倒産件数は、2000年代に入り右肩上がりに上昇。2007年以降の倒産件数は、毎年600件前後に推移している。景気の良しあしに左右される業態ともいわれてきたが、2017年は好景気から他の業種が倒産件数を大幅に減らす中、対前年比27%増の700件超を記録した。材料費の増加と人材難のほか、小規模事業経営者の高齢化と後継者難も背景にあると見られている[5]。
売上上位20社は以下のとおり。
順位 | 社名 | 売上(100万円) |
---|---|---|
1位 | ゼンショーホールディングス | 525,709 |
2位 | すかいらーく | 351,146 |
3位 | コロワイド | 234,138 |
4位 | 日本マクドナルドホールディングス | 189,473 |
5位 | 吉野家ホールディングス | 185,738 |
6位 | サイゼリヤ | 139,277 |
7位 | ロイヤルホールディングス | 130,327 |
8位 | ワタミ | 128,246 |
9位 | ドトール・日レスホールディングス | 124,796 |
10位 | くらコーポレーション | 105,306 |
11位 | クリエイト・レストランツ・ホールディングス | 103,271 |
12位 | トリドール | 95,587 |
13位 | 日本KFCホールディングス | 88,180 |
14位 | 松屋フーズ | 83,947 |
15位 | カッパ・クリエイト | 80,320 |
16位 | 王将フードサービス | 75,317 |
17位 | モスフードサービス | 71,113 |
18位 | 大庄 | 70,765 |
19位 | サンマルクホールディングス | 66,056 |
20位 | ジョイフル | 62,880 |
出典:フードビジネス総合研究所
多店舗展開している外食企業
- ファミリーレストラン - すかいらーく、ロイヤルホスト、デニーズ、ガスト、バーミヤン、ジョナサン、アンナミラーズ、ココスジャパン、サンデーサン、トマトアンドアソシエイツ、ジョイフル、和食さと、とんでん、まるまつ
- ファーストフード店
- 麺料理店
- ラーメン - どさん子、どさん娘、熊ッ子、満龍、壱鵠堂、らーめん山頭火、天下一品、九州じゃんがら、香月、寿がきや、本郷亭、グロービート・ジャパン、日高屋、幸楽苑、一風堂、桂花、むつみ屋、味の時計台、ラーメン二郎、元祖ニュータンタンメン本舗、味千ラーメン、こむらさき、古久家、秀穂、福しん、ちりめん亭、8番らーめん、びっくりラーメン一番、第一旭、サイカラーメン、神座、くるまやラーメン、ラーメンめん丸、東大
- そば、立ち食いそば - 富士そば、阪急そば、箱根そば、あじさい茶屋、梅もと、小竹林、かしわや、増田屋、家族亭、小諸そば、都そば
- うどん - はなまるうどん、山田うどん、丸亀製麺、つるまる、味の民芸、杵屋、三笠うどん、すぎのや本陣
- ちゃんぽん - リンガーハット、ちゃんぽん亭総本家
- 中華料理店 - 餃子の王将、大阪王将、ぎょうざの満洲、551蓬莱、東秀、天下一、紅虎餃子房、横濱一品香、一品香、東天紅
- 宅配ピザ - ドミノ・ピザ、ピザーラ、ピザハット、ピザ・カリフォルニア、ストロベリーコーンズ、ナポリの窯、ピザポケット
- 洋食店 - ラケル
- ステーキ・ハンバーグ - いきなり!ステーキ ハンバーグ&サラダバーけん どん、ハングリータイガー、ビッグボーイ、びっくりドンキー、三田屋、ステーキ宮、フライングガーデン、シャロン、フォルクス
- サンドイッチ - サブウェイ、クイズノス、プレタ・マンジェ、ラヴァンデリ
- パン - トランドール、サンエトワール、ヴィ・ド・フランス、ヴイ・ディー・エフ・サンロイヤル、ジャーマンベーカリー、ウィリーウィンキー、フジパンストアー、シュタイナー、九州フジパンストアー、リョーユーパン、ブーランジェリー・ボヌール、レ・サンク・サンス、ボヌールコッペ、リトルマーメイド、パントーネ、ベーカリーレストラン バケット、ベーカリーレストラン サンマルク
- フライドチキン - ケンタッキーフライドチキン
- ホットドッグ - ネイサンズ
- ドーナツ - ミスタードーナツ、 ダンキンドーナツ、クリスピー・クリーム・ドーナツ、カリフォルニアドーナツ、ドーナッツプラント、ティムホートンズ、カフェデュモンド、はらドーナッツ
- 喫茶店、コーヒーショップ - ドトールコーヒー、スターバックス、ルノアール、コメダ珈琲店、イタリアントマト、BECK'S COFFEE SHOP、プロント、丸福珈琲店、サンマルクカフェ、ムジカ、ヒロコーヒー、タリーズコーヒー、カフェ・ベローチェ、シアトルズベストコーヒー
- カレー - カレーハウスCoCo壱番屋、カレーショップC&C、ゴーゴーカレー、バルチックカレー、カレーの王様、リトルスプーン、みよしの、カレーのチャンピオン、カレキチ、タイム
- 居酒屋 - 土風炉、つぼ八、養老乃瀧、白木屋(笑笑など)、魚民、和民、村さ来、八百八町、酔虎伝(八剣伝など)、甘太郎、天狗、やぐら茶屋、庄や、日本海庄や、やるき茶屋、かっぽうぎ
- 牛丼屋 - 吉野家、松屋、すき家、なか卯、神戸らんぷ亭、牛丼太郎、どん亭
- 焼肉屋 - 牛角、肉の万世、焼肉屋さかい、バリバリ、安楽亭、叙々苑、あみやき亭、食道園、はや、焼肉じゅうじゅうカルビ、ワン・カルビ、焼肉酒家えびす
- 焼鳥屋 - 秋吉、備長炭のこだわり串鳥七兵衛
- 鍋料理屋 - MKレストラン - 小肥羊ジャパン
- 天麩羅屋 - ハゲ天、てんや、えびのや
- 豚カツ屋 - とんかつ&サラダバー よしかつとんかつ和幸、新宿とんかつさぼてん、浜勝、かつや、KYK
- 串カツ屋 - だるま、串家物語
- シーフード - レッドロブスター
- 定食チェーン - まいどおおきに食堂、大衆食堂半田屋、宮本むなし、大戸屋、やよい軒
- イタリア料理 - カプリチョーザ、サイゼリヤ、馬車道、ブラボー、イタリアントマト
- 和食店 - 浜ん小浦、味処三笠、音羽茶屋
- デザート、スイーツ
- アイスクリーム - サーティワン、ハーゲンダッツ、ブルーシール、ディッパーダン、シャトレーゼ、キハチ、レディーボーデン、コールド・ストーン・クリーマリー、ディッピン・ドッツ、ヴィト、レインボーハットアイスクリーム
- 和菓子 - お菓子の香梅、津の清、丹波清明堂、とよす、呼人堂、菓匠宗禅、坂角総本舗、源吉兆庵、鶴屋吉信、鶴屋八幡、菊屋、総本家駿河屋、長寿堂恵佳、鼓月、お三時屋
- ケーキ・洋菓子 - コージーコーナー、シャトレーゼ、不二家、モロゾフ、ユーハイム、レスポワール、ヨックモック、アンテノール、メリーチョコレート、本高砂屋、神戸風月堂、銀装、文明堂、シベール、ビアード・パパの作りたて工房
- パンケーキ - オリジナルパンケーキハウス、エッグスンシングス
- クレープ - マリオンクレープ、コムクレープ、パオクレープミルク
- たい焼き屋、たこ焼き屋 - 一口茶屋、会津屋、元祖たこ昌、たいやき本舗 藤家、築地銀だこ、たい夢
- お好み焼き屋 - 千房、ぼてぢゅう、鶴橋風月
- おにぎり屋 - ばくだん焼本舗、多司
- フードコート - オレンジキッチン、ピーターパン、ポッポ、ピーコック
- 食堂車
- 弁当・デリカテッセン - ほっともっと、ほっかほっか亭、本家かまどや、オリジン弁当、お弁当のヒライ、どんどん
- 総合
- その他
中国における外食産業
中国、台湾などアジア諸国には、日々の食事を各家庭で調理するのでなく屋台へ出向いて食事をとることが、文化・伝統とされている地域もある。 国民の収入の増加、食の安全への意識の高まり(生産者の食に対する安全性への意識は低く、利益を上げることを第一としている。発ガン性物質等の混入などがニュースで報道されている。詳細は、中華人民共和国を参照)を背景に、外食産業は成長を遂げている[6]。
市場規模は、2006年で約1兆元。2010年には、約2兆元(約29兆円)になると予想されている。雇用規模は、2006年で2000万人以上とされている。企業のM&Aも盛んに行われており、今後の発展が有望視されている[6]。
脚注
- ↑ 『第1節 食料自給率の向上に取り組む意義と課題』平成18年度食料・農業・農村白書(農林水産省)
- ↑ 「激烈!パート獲得大作戦 「お試し」「前給」…あの手この手の流通・外食」『日経ビジネスオンライン』日経BP社、2008年4月30日付配信
- ↑ 就活生の行きたい業界1位「商社」、行きたくない業界1位は「フードサービス」=日経HRの調査
- ↑ 2007年7月7日号 週刊東洋経済
- ↑ “「居酒屋」倒産、まだまだ増える理由”. 日本工業新聞ニュースイッチ (2018年1月30日). . 2018閲覧.
- ↑ 6.0 6.1 2007年6月26日付配信『市場倍増の2兆元に、2010年の外食産業』(NNA)