ドミナント戦略
ドミナント戦略(ドミナントせんりゃく、strategic dominance)とは、チェーンストアが地域を絞って集中的に出店する経営戦略である。同一商圏内で市場占有率を向上させて独占状態を目指す経営手法で、ドミナント出店、エリア・ドミナンス戦略、ドミナンス、などと称する。
概要
グループ企業やチェーン店展開を行うスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどは出店する際、集客力を左右する商圏について立地特性の人口・年収・年齢層・主たる家族構成・昼夜間人口・競業他社の有無・交通アクセス・周辺施設などを調査して出店の是非を決定するが、ドミナント戦略は当該地域で市場占有率を高める目的で複数の店舗を高密度で展開する手法である[1]。
ドミナント戦略には以下のような目的がある。
- 出店した地域での知名度を上げるとともに利用客からの信頼を高める[1]。
- 知名度を上げることで早期の黒字化を図る[2]。
- 流通効率を上げるとともに運営コストを下げる[2]。
- 地域特性を把握しやすくなり商品戦略、価格戦略、販促戦略などが立てやすくなる[2]。
- 本部は地域内の複数の店舗を効率的に管理できる[2]。
チェーン展開している業種は、POSなどを導入してリアルタイムな売れ筋や客層の動向が把握可能だが、孤立店舗は商品輸送などの物流ルートや搬送時間の観点からチェーン展開の利点を生かし難い。
日本では南関東1都3県を地盤とするイトーヨーカ堂、東海地方を地盤とするユニー、関西地方を地盤とするイズミヤ、滋賀県を地盤とする平和堂、和歌山県と奈良県を地盤とするオークワ、四国地方と広島県と山口県を地盤とするフジ、瀬戸内地方と北部九州を地盤とするイズミ(ゆめタウン)などが、アメリカではウォルグリーンが、ドミナント戦略を採用したことで知られている[1]。
業態別のドミナント戦略
コンビニエンス・ストア
コンビニエンスストア(以下、CVS)の商圏は人口1万人当たり1軒と言われる一方で沿道サービス商業施設の一つでもある。CVSの主たる商品は日用品であり身の回り品であるが、売上の大半を占めるものは弁当などの食料品である。これら食料品で食中毒などが起きた場合、営業停止は元より企業イメージの失墜を意味するため、配送時間には最大限の配慮がなされている。加えて、小売業の中でも最新鋭のPOSシステムを導入することで遅滞のない物流が期待されている。これを経済的な見知から実現するためには特定地域のみならず特定路線沿線をいわゆる一筆書きで搬送できるか否かにかかっている。
フランチャイズ店舗は本部機構の職員が定期的に視察して、効率良く各店舗を周回することが期待されている。孤立店舗は行き来に時間がかかり面談や相談などの時間が減るが前述のような一筆書きの行程が組めれば効率良く視察できる。
物流面・経営指導面の点からCVSは当初からドミナント出店を重視しているが、北海道のセイコーマートなどの地域限定チェーンや最大手のセブン-イレブンなどが出店していない沖縄などの地域もあり、物流面を確保してから出店しなければならない面がある。競争が激しいCVS業界は、ファミリーマートによるam/pmやサークルKサンクスの買収、ローソンによるセーブオン・スリーエフのフランチャイジー化など同一商圏内に存在する競業他社を買収・囲い込みなどの手段で吸収したり、CVSベイエリア、南九州サンクスなど競業他社の大手フランチャイザーを鞍替えさせるなどの動きもある。
飲食店チェーン
ファミリーレストランはグループ企業内の関連店舗を客層に合わせて同一商圏内に複数配置し、高い市場シェアを獲得する可能性が高くなる。
量販店
前記2業種に比べ、消費サイクルの長い商品を扱う量販店では一店舗当たりの商圏が広く、建設費などの設備投資や先行投資の費用がかかる。加えて同一量販店であっても商圏が異なれば客層も異なる。
その他
地方紙、フリーペーパーなどのローカル紙媒体は、対象地域内で必要とされている情報に絞って存在価値を高め、販売店や配布箇所を地域内に多数配置して配布促進を徹底することにより購読者を増やし、ランチェスター経営と組み合わせて地域内首位を目指す。
これによって地域内での影響力が高まり、情報も集まりやすくなる。特定地域内しか取り扱わないため、取材と配布にかかるコストも下げられる。
この方法はWebサイト運営でも応用されており、2010年代以降はいわゆるローカル情報系Webメディアが盛んである。
一方、フラットな競争が生じやすい放送媒体では、他局との比較において小さいエリア規模がメリットとなることはあまりない。
脚注
関連項目
外部リンク
- チェーンストアにおけるドミナント出店戦略の経済分析(1997.9 ニッセイ基礎研究所 小本恵照)
- セブン-イレブン徹底解剖 出店の考え方(セブン-イレブン・ジャパン)