京阪鴨東線
停車場・施設・接続路線 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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鴨東線(おうとうせん)は、京都府京都市東山区の三条駅から同市左京区の出町柳駅までを結ぶ京阪電気鉄道の鉄道路線である。
なお、正式な起点は三条駅[1]だが、列車運行および旅客案内では出町柳駅から三条駅へ向かう列車が下り、逆方向が上りとなっている。
概要
路線名は鴨川の東岸を走行することに由来している。京阪本線の実質延伸線として鴨川沿いの川端通の地下に建設され、全線が地下線となっている。わずか2.3kmと短いながらも京阪線京都側における分散型ターミナル、京都市営地下鉄と並ぶ市内基幹交通としての機能のほか、大阪方面と比叡山方面(叡山電鉄叡山本線)の連絡という3つの重要な機能を持ち、通勤・観光に多く利用されている。出町柳駅 - 三条駅の間では約12mの標高差(高低差)があり、駅構内の勾配は2‰だが駅間は12‰の勾配区間である[2]。
路線データ
加算運賃
開業当初から設備投資(約460億円)と施設使用料・支払利子(累計約230億円)の回収のため、普通運賃で60円の加算運賃が設定されており、鴨東線内各駅(三条駅から出町柳駅方面も含む)からの初乗り運賃は2017年現在、210円となっている[4]。開業直後の定期運賃は、当時京阪電鉄の最長区間であった淀屋橋駅 - 坂本駅間より淀屋橋駅 - 出町柳駅間の方が高額であった。2017年現在の鴨東線を利用する場合の通勤用定期券は、京阪本線より1か月あたり2,200円高額となっている。2016年度末の回収率は31.8%であり、過去4年間で3.9%を回収した(回収に回す金額の大部分はこの60円の加算運賃で賄っている)。加算運賃がいつまで課せられるのかは未定[5]。
運行形態
京阪本線・中之島線と直通運転が主体であり、朝の三条発出町柳行き1本をのぞいて、すべての列車が大阪の淀屋橋・中之島方面と直通する。特急・準急(平日朝の淀屋橋・中之島方面は通勤準急)・普通がほぼ終日運行されているほか、朝と深夜に快速急行(朝ラッシュ時は通勤快急)・急行が運行されている。唯一の途中駅である神宮丸太町駅には急行以下の種別の列車が停車する。三条駅ではほとんどの時間帯において、上下線とも速達列車(特急・快速急行など)と準急・普通との緩急接続が行われている。
歴史
当線の免許は1924年(大正13年)に京福電鉄の前身である京都電燈が取得していた。京都電燈は1925年(大正14年)に叡山平坦線(現在の叡山電鉄叡山本線)を開業させたが、鴨東線については京都市電と平面交差[6]になることや景観の問題から着工できず、ようやくまとまり鴨東線建設のために資材を用意するも、1934年(昭和9年)の室戸台風や、翌1935年(昭和10年)の鴨川大洪水で資材が流失したり、これらの被害復旧のための資材として流用され、その後は戦時体制と戦後の混乱で着工できなかった。
戦後、1948年(昭和23年)に当時の京都市長神戸正雄が京阪神急行電鉄[7]・京福電鉄に早期開業を要請したのを受けて1950年(昭和25年)に鴨東線建設準備委員会が立ち上げられ免許出願に向けて準備を進めたが、「古都の美観を損なう」などと反対する動きがあり京都市会でも問題とされた。市会で公述人として呼ばれた桑原武夫京都大学教授は「堤防上を電車が走るのは古都の風致を損なう」などの反対意見に対し「すでに長い間七条から三条まで堤防上に走っている。三条四条周辺では鴨川べりを桜や柳の木の間を電車が走っているのは趣があって良いのではないか。それを眺めていて腹が立ったことは一度もない。」と賛成意見を述べた[8]。しかし、市会は路線の地下化や報奨金支払などの費用負担を要求する、という厳しい条件を突きつけたため計画は頓挫し、長らく「幻の路線」と呼ばれた。
前述の鴨川大洪水を受けて計画された鴨川改修工事にあわせて京阪本線を地下化する基本計画が策定され、京阪本線が京都市の東西交通のネックになっていることから地下化が具体化するのに併せ、1972年(昭和47年)に京阪電鉄が中心となって鴨川電気鉄道が設立され[9]、鉄建公団(当時)による「P線方式」[10]でようやく着工された。
1989年(平成元年)に京阪電鉄が鴨川電気鉄道を合併し、同年京阪鴨東線として開業した。当初は出町柳駅から叡山電鉄叡山本線(1986年(昭和61年)、京福電鉄から分離譲渡)と直通運転する構想[11]であったが、双方の車両規格・編成長や輸送需要の差が大きすぎることもあって実現しなかった。またこの際特急はすべて7両編成(その後1997年から1998年にかけて8両編成化)に統一され、輸送力が強化された。
開業後は、沿線の通勤客のみならず出町柳駅近くに立地する京都大学・同志社大学・同志社女子大学・京都精華学園中学校・高等学校などへの通学が大幅に便利になったほか、直通運転は実現しなかったものの乗客の減少で経営が悪化していた叡山電鉄が一気に乗客を取り戻すなど鴨東線開業の効果は大きく表れている。
沿革
- 1924年(大正13年)8月29日:京都電燈(京福電気鉄道の前身)が出町柳 - 三条間の地方鉄道敷設免許を取得。
- 1950年(昭和25年)4月10日:京阪電気鉄道が「鴨東線建設準備委員会」を発足。
- 1972年(昭和47年)7月1日:鴨川電気鉄道を設立。
- 1974年(昭和49年)
- 1984年(昭和59年)11月30日:鴨東線建設工事起工式を挙行。
- 1989年(平成元年)
- 2008年(平成20年)10月19日:京都市営地下鉄烏丸線に同名の丸太町駅があるため、当線の丸太町駅を神宮丸太町駅に改称。
- 2015年(平成27年)
駅一覧
駅番号 | 駅名 | 駅間キロ | 営業キロ | 接続路線 | 所在地 |
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KH40 | 三条駅 | - | 0.0 | 京阪電気鉄道:KH 京阪本線(直通) 京都市営地下鉄:■東西線(三条京阪駅) |
東山区 |
KH41 | 神宮丸太町駅 | 1.0 | 1.0 | 左京区 | |
KH42 | 出町柳駅 | 1.3 | 2.3 | 叡山電鉄: E 叡山本線 |
脚注
- ↑ 『鉄道要覧』平成18年度版
- ↑ 『関西の鉄道』別冊第1巻「京阪電気鉄道 戦後分離独立後の歩み Part I」85頁
- ↑ 寺田裕一 『データブック日本の私鉄』 ネコ・パブリッシング、2002年、p. 126。
- ↑ 同様に60円の加算運賃が設定されている中之島線と同額である。
- ↑ 加算運賃について - 京阪電気鉄道
- ↑ 叡山本線は地方鉄道法による免許のため、通常は軌道法による京都市電との平面交差は許可されない。当地(叡山本線元田中駅付近)の場合は叡山本線が先に開通したのちの1943年(昭和18年)7月に京都市電東山線が開通したが、戦時中のことでもあり特認されたものと推定される。なお、京阪線は軌道法によっていたため四条駅などでの平面交差は問題がなかった。
- ↑ 1943年10月から1949年11月まで、京阪は戦時統合で京阪神急行となっていた。
- ↑ 『京都滋賀 鉄道の歴史』p. 229
- ↑ 京阪と京福の合同出資の形をとっているが、当時すでに京福の株式の40%以上は京阪電気鉄道が持つ関連会社であった。
- ↑ 「P線方式」とは、東京・大阪・名古屋および周辺の大都市圏の私鉄(民鉄、第三セクターの会社を含む)において、輸送力の増強などのために行われる鉄道施設の新設や改良工事のための助成の枠組み。鉄道事業者に代わって同公団が鉄道施設の建設を行い、完成して引き渡された後に25年の分割払いで建設費を同公団に支払うもの。のちに建設された京都市営地下鉄東西線の三条京阪 - 御陵間(同区間の事業主体は京都高速鉄道)などが、同様の手法で建設されている。
- ↑ 1972年当時、京福は300形車両を使用して中書島駅まで、京阪は岩倉駅および八瀬遊園駅(現在の八瀬比叡山口駅)までの相互乗り入れを計画していた。
- ↑ 1990年代前半までは、関西圏の鉄道会社で新線が開業する際は正午から営業する習慣があった。
- ↑ 出典『K PRESS』2015年5月号16面「くらしのなかの京阪」より
- ↑ 『K PRESS』2015年12月号16面「くらしのなかの京阪」より
- ↑ 関西鉄道各社、外国人受け入れ体制強化 - 京都新聞、2014年4月5日
参考文献
- 会社案内 略年史/沿革 (PDF) - 京阪電気鉄道
- 運輸省鉄道局(監修)『鉄道要覧』平成9年度版、電気車研究会。
- 国土交通省鉄道局(監修)『鉄道要覧』平成18年度版、電気車研究会。
- 田中真人・宇田正・西藤二郎 『京都滋賀 鉄道の歴史』 京都新聞社、1998年11月。ISBN 4-7638-0445-6。
- 井上廣和・藤原進 『日本の私鉄 京阪』 保育社〈カラーブックス909〉、1999年。
- 原口隆之 『日本の路面電車』3、JTB〈JTBキャンブックス〉、2000年。
- 宮脇俊三・原田勝正(編集) 『全線全駅鉄道の旅』別巻2 大阪・神戸・京都・福岡の私鉄、小学館、1991年。