「難読地名」の版間の差分
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難読地名(なんどくちめい)とは、通常の読みをしないために読みにくくなっている地名のこと。
日本語においては、主に日本の地名のうち、漢字が通常の読みをしない(難読漢字)ために読みにくくなっている地名のこと。
読みにくさの理由[1]は、
などをあげることができるが、明確な定義はない[1]。
なお、数多くの言語表現の中でも難読語が数多く存在するのは日本語くらいとされており(日本では難読地名のみを収録した「難読地名辞典」が刊行されている)、同じ漢字圏になっている中国や朝鮮半島でもほとんどは一つの漢字に対して一つの読み方しか用いられていない[2]。
Contents
概説
一般に、自然言語では、発音(読み)と表記(綴り、漢字)が1対1に対応していない。表意文字を用いる言語はもちろん、発音に対応する規則的な表記が存在する表音文字を用いる言語においても、実際には単語の発音と表記が乖離する場合がある。表意文字、表音文字にかかわらず、このような乖離が甚だしい場合、あらかじめその単語の読みを知らない者にとっては、その単語を正確に読むことは困難である。
地名の場合には、地名はその土地の歴史や文化に深く根付いているものであり、地域の人々に分かってさえいればどんな表記をしようと「読みにくい」かどうかは本来は問題にはならない。しかし交通機関の発達による人々の行動範囲の拡大、テレビや新聞といったマスメディアの普及によって難読地名というものが生まれてきた。すなわち地方によっては同じ綴りや漢字を別の読み方をする、同じ音に別の綴りや字を当てる、方言によって音が変化する、歴史に由来して常用漢字外の漢字を当てる、等の例である。
日本語の難読地名
難読地名となりやすい例
あまり知られていない文字が使われている場合
この場合の文字はほぼ漢字に限られ、その多くは常漢字外の漢字を含む地名である。常用漢字外の漢字を含むということは、すなわち義務教育において習得する知識だけでは読めないということになり、たとえその漢字の本来の読み方であったとしても難読地名となる場合がある。実際に使用頻度が非常に低い漢字が使われている地名も少なからず存在し、それらは多くの日本人にとって難読地名となる。ただし常用漢字でなくとも比較的多くの日本人が認知している漢字も数多く、単に常用漢字外の漢字を使用しているだけでは難読地名とは言えない。
文字の読み方が一般的な読み方と異なる場合
通常の音訓にない読み方となっている例
常用漢字だけで表記されていても、その常用漢字の音訓として制定されていない読みとなっている地名は多数存在する。このような読みを含む場合も難読地名といえるが、これも実際には比較的多くの一般大衆が認知している読みも多い。下記にその例を記す(特定地域のみに多く存在する特殊な読み方は別項に記す)。方言や誤記、誤読が定着した例もこれに含まれる[1]。
- 「戸」 = 「へ」「べ」
- 「生」 = 「お」「ふ」「ぶ」「ゆう」(「ゆ」が拗音化したものを含む)「にゅう」「なり」
- 「水」 = 「み」「みな」「うず」
- 「海」 = 「み」
- 「砂」 = 「さご」
- 「石」 = 「いわ」「し」
- 「門」 = 「と」「かど」
- 「飯」 = 「いい」「い」
- 「城」 = 「き」
- 「部」 = 「へ」「べ」
- 「辺」 = 「へ」「べ」「なべ」
- 「神」 = 「こう」「ごう」「かん」
- 「館」 = 「たて」「だて」「たち」
- 「任」 = 「とう」
- 「谷」 = 「やつ」「やち」「や」(※接続(接尾)形として「がや」「がい」がある)
- 「別」 = 「べ」
- 「上」 = 「かみ」「かん」「こう」
- 「玄」 = 「くろ」
- 「河」 = 「こう」
- 「肥」 = 「い」
- 「久」 = 「く」
- 「分」 = 「いた」
- 「鹿」 = 「か」「が」
- 「街」 = 「ちまた」
- 「新」 = 「あら(た)」「にい」
- 「三」 = 「そう」「み」「みつ」
- 「埼」 = 「さい」「ざき」
- 「須」 = 「ぞ」
- 「厚」 = 「あっ」(促音;二音の「あつ」でない)
- 「沢」 = 「さ」
- 「小」 = 「ちい」
音訓が変化している例
通常の音訓の間に「の」「が」などが入っていることがある(例: 「尼崎」 = 「あまがさき」、「一宮」 = 「いちのみや」、「下関」 = 「しものせき」)。通常の音訓の一部が欠けていたり、読みが変化したりして難読となっている例も多く存在する(例: 「尾鷲」 = 「おわせ」、「鹿屋」 = 「かのや」、「焼津」 = 「やいづ」)。
表記と読みが本来無関係な例
地名の表記として、その地名自体ではなく、枕詞、雅称、別名などの表記を使うことがある[1](例: 「飛鳥」 = 「あすか」、「大和」 = 「やまと」、「太秦」 = 「うずまさ」、「十八女」 = 「さかり」、「薄野」 = 「すすきの」[3])。
日本語以外の地名に漢字が当てられた例
後述する琉球語、アイヌ語のほか、少数であるが英語などに漢字が当てられた地名もある(例: 「須美寿島」 = 「スミスとう」)。
ただし、必ずしも難読とは限らず、簡単な漢字が当てられ通常の読みをする地名も多い。
よく知られた語と違う読みをする例
「彦山(ひこやま、ひこさん)」、「八幡(はちまん、やはた、やわた)」、「名東(めいとう、みょうどう)」、「大山(おおやま、だいせん)」、「川内(かわうち、せんだい)」、「国府」(こくふ、こくぶ、こう)、「府中」(ふちゅう、こう)、「国分」(こくぶん、こくぶ)、「富田」(とみた、とみだ、とんだ)、「富山」(とやま、とみやま)、「外山」(とやま、そとやま、とのやま)など、まったく違う複数の読みがある地名も、片方しか知らない人物にとっては他方が難読となる。
地域別の特殊な読み方
- 本州・四国・九州
- 北海道・東北地方北部
- 沖縄
本来なら難読地名となる地名
難読地名としての条件を満たしていても、その地名の読み方を誰もが知っている、つまり固有の地名としての認知度が高く、読めることが一般常識となっているため、難読地名として扱われない地名もある。希な文字を使う例としては「塩竈」「岐阜」「大阪」「愛媛」「埼玉(本来の読みである「さきたま」の方が知名度が低い)」など、希な読みをする例としては「札幌(さっぽろ)」「稚内(わっかない)」「弘前(ひろさき)」「神戸(こうべ。他にも、「かんべ」「ごうど」と読む事例有)」「大分(おおいた。同様に「だいぶ」と読む事例有)」「別府(べっぷ・べふ。その他希な読み方をする事例有)」「博多(はかた)」などがある。
また、難読地名と言われる地名であっても、昔からその地域に住んでいる住民たちは特に難読地名とは思っておらず、外部の人間から指摘されて初めて難読地名だと分かるような例も少なくない。たとえば、宮城県出身で著名な漫画家になった小野寺章太郎は、故郷の石森町(いしのもりちょう)にちなんで長らく「石森(いしのもり)章太郎」というペンネームを使っていたが、石森の読み方を知らない全国の読者や出版業界の人々からは「いしもり」としか呼ばれなかったため、やむを得ずデビュー30周年を迎えた1985年からペンネームを「石ノ森章太郎」に変更し、ようやく「いしのもり」と呼んでもらえるようになったというエピソードがある(石ノ森章太郎の項目を参照)。
日本の難読地名一覧
- 北海道の難読地名一覧
- 東北地方の難読地名一覧
- 関東地方の難読地名一覧
- 中部地方の難読地名一覧
- 近畿地方の難読地名一覧
- 中国地方の難読地名一覧
- 四国地方の難読地名一覧
- 九州地方の難読地名一覧
- 沖縄県の難読地名一覧
注釈
参考文献
- 東京堂出版「難読地名辞典」1978年再版