Uber
Uber(ウーバー)は、アメリカ合衆国の企業であるウーバー・テクノロジーズが運営する、自動車配車ウェブサイトおよび配車アプリである[1][2]。現在は世界70カ国・地域の450都市以上で展開している[3][4]。
Contents
概要
Uberは2009年3月にトラビス・カラニックとギャレット・キャンプにより設立。2015年の予約売上は108億4000万ドル(約1兆3000億円)と推定されている。
特徴としては、一般的なタクシーの配車に加え、一般人が自分の空き時間と自家用車を使って他人を運ぶ仕組みを構築している点で、顧客が運転手を評価すると同時に、運転手も顧客を評価する「相互評価」を実施している。
世界では、タクシーにおいて「領収書を発行しない」「タクシーメーターを倒さず、法外な料金を請求しボッタクる」といった問題が多く起こっていることから、これらの問題を回避し、さらに車両オーナーにとって「簡単な小遣い稼ぎ」ができる点が受けている[5]。しかし、既存のタクシー業界からの反発も根強く、訴訟や運輸当局から営業禁止命令を受けたり、タクシーと同等の規制を課す国、地域もある[6]。
2016年7月、中華人民共和国の事業を滴滴出行に売却し、市場から撤退した[7]。
2017年6月、トラビス・カラニック最高経営責任者の無期限の休職を発表した。カラニックは5月にボート事故で母を亡くし、父も重症を負っていた[8]。
2017年6月、休職していたトラビス・カラニックCEOが5つの主要投資家らから辞任を求める共同書簡を受け取り、その後辞任を表明した。カラニックは取締役としてのみ留まる。UberはCEO、COO、CFO、CMOの主要ポストが全て空席状態になった[9]。
2017年8月、取締役会が次期CEOに旅行サイト総予約額世界1位のエクスペディア・グループのCEO、ダラ・コスロシャヒを指名したとrecode、ニューヨーク・タイムズなどが報じ、その後正式に就任が発表された[10][11]。
2017年8月末、最初の全社会議でダラ・コスロシャヒCEOは「18ヶ月から36ヶ月以内にIPOを行うべき」だと述べた[12]。
2017年12月28日、ソフトバンクグループ、ドラゴニアインベストメント、TPGキャピタル、テンセント、セコイア・キャピタルからなる投資家連合が総額約90億ドル(既存株主からの公開買付77億ドルおよび直接出資12億5000万ドル)を出資し17.5%の議決権を取得する[13]。
2018年3月26日、東南アジア事業をGrabに売却し、市場から撤退した[7]。
日本におけるUber
日本では、2013年9月に日本法人「Uber Japan株式会社」が第2種旅行業者として登録され[14]、同年11月より台数限定でのトライアルサービスを行い、2014年8月より東京都内全域で本格的にタクシーの配車サービスを開始[15]。2015年2月には、福岡市において諸外国同様に一般人が自家用車で運送サービスを行う「みんなのUber」のテストを開始するが、国土交通省から「自家用車による運送サービスは白タク行為に当たる」として、サービスを中止するよう指導が入り、同年3月にサービスを中止した[5][16]。
2015年10月4日、リサイクル可能な衣類を回収して東北に届けるというチャリティーイベント「UberRECYCLE」を開催した[17]。イベント期間中、対象エリア内でウーバーのアプリを開くと、配車に加え「RECYCLE」メニューが出現し、前日に講習を受けてドライバーアプリをインストールしたボランティアドライバー(一般人)が自家用車で向かい、衣類を回収するというもので、ウーバードライバーの体験ができた[18]。
2015年10月20日、国家戦略特区諮問会議で、内閣総理大臣安倍晋三は「過疎地などで観光客の交通手段として、自家用自動車の活用を拡大する」と述べ、一般の人が自家用車で有償送迎する「ライドシェア(相乗り)」を可能にする規制緩和を検討するよう指示した[19]が、対象は地方を中心とする国家戦略特別区域であるため、日本で一般ドライバーによる、本来のUberサービス開始時期は未定である[18]。
2016年5月25日、トヨタ自動車とライドシェア領域における協業を検討する旨の覚書を締結した[20]。
2016年5月26日、京都府京丹後市のNPO法人がUberの仕組みを採用して、一般人による有償旅客輸送を開始した[21]。
業績
2016年
総予約金額は2015年の2倍の200億ドル。しかし、Onebox NewsによるとUberは一部の事業で乗車料金全てを売り上げとして計上し売上を大きく見せていると指摘(実際のUberの売り上げは手数料の部分のみ)、また、損失に関しては株式報酬や不動産への投資などの損失を計上せず損失を小さく見せようとしていると指摘している。[22]
2017年
最高経営責任者が創業者のトラビス・カラニックから当時エクスペディアの最高経営責任者だったダラ・コスロシャヒに交代[27]。予約額は370億ドルで前年比85%増加。売上高も拡大したものの、純損失は17億ドル拡大した[28]。
不祥事
機密情報の漏洩と隠蔽
2017年11月、ダラ・コスロシャヒCEOが前任のカラニックCEO時代の2016年10月に2人のハッカーにより顧客とドライバーの機密情報約5700万人が奪われていたことを同社が1年以上に渡り隠蔽し利用者や当局に報告していなかったとする調査結果を公表。また、Onebox NewsはUberがハッカーらに対して情報漏洩を口外しないことやデータを削除することと引き換えに10万ドルを支払っていたと報じた。この問題に関与した最高セキュリティ責任者のジョー・サリヴァンと副責任者のクレイグ・クラークの2名が解雇処分となった[32]。
セクシャル・ハラスメント
2017年2月19日、2016年12月に退社した元女性社員が、自身のブログにてUber時代の上司に性交渉を迫られたこと、そのハラスメントを会社に報告するもハラスメントを行ったのは今回が初めてでその社員は優秀だからと何ら対処せず、後に複数の女性社員が同様の被害を受けていたことが発覚し、報告を続ける元社員に対してこれ以上報告を続ければ解雇すると報復的な脅迫が行われたと告発した。この告発を受けて2月20日、カラニックCEO(当時)はこの件も含めた職場環境の問題解決のため、エリック・ハンプトン・ホルダー元司法長官らをトップとする調査を行うと発表。2月21日、全社員を対象とした会議で会社がハラスメントを適切に対処しなかったことを謝罪し、対策を講じると述べた[33][34]。
ウェイモの営業秘密盗用
米Alphabet(Google等の持株会社)の子会社で自動運転車を開発しているウェイモの元エンジニアが持ち出した知的財産等の営業秘密を盗用したとして、同社から提訴された。2018年2月9日、Uberが0.34%(約2億4500万ドル)相当の株式をウェイモに譲渡、およびウェイモの秘密情報は今後Uberのハードウェア・ソフトウェアに使用されないことをもって和解した。William Alsup裁判長によると、審理の途中において和解が成立することは稀であると述べている[35]。
自動運転車による初の人身死亡事故
2018年3月18日、アリゾナ州テンピで、Uberの自動運転車が歩行者をはねて死亡させたことが報じられた。国家運輸安全委員会が事故調査に乗り出した。自動運転車初の人身死亡事故と報じられている。Uberは、アメリカおよびカナダでの自動運転試験を中断することとした[36]。車を製造したボルボ・カーズやソフトウェアを供給した企業などを巻き込んで法的責任の所在が議論されるも[37]、Uberが遺族に和解金を支払うこととなった[38]。
運転手による犯罪
Uberの運転手は一般人であり、必ずしもモラルを持ち合わせているとは限らない。2018年にCNNが行った調査では、運転手が女性利用者に対して性暴力を働く事件が少なからず発生していることが示唆されている[39]。もっとも、運転手による女性への暴力事件は一般のタクシーでも発生しており、ガイドブックなどでは、女性一人で、特に夜間にタクシーに乗車することは避けるように勧告している。
脚注
- ↑ Rusli, Evelyn (2014年6月6日). “Uber Dispatches trips”. Wall Street Journal . November 7, 2014閲覧.
- ↑ Goode, Lauren (2011年6月17日). “Worth It? An App to Get a Cab”. The Wall Street Journal. Dow Jones & Company
- ↑ “Where is Uber Currently Available?”. Uber.com. . May 26, 2015閲覧.
- ↑ “AMMAN, YOU ARE UBER'S 300TH CITY!”. Uber.com. . May 26, 2015閲覧.
- ↑ 5.0 5.1 指導が入ったUber、交通弱者を救う? 日本で生きる道は - 乗りものニュース・2015年4月6日
- ↑ 「ウーバーは運輸会社」EU司法裁、規制適用を認定 日本経済新聞
- ↑ 7.0 7.1 Zoey Chong (2018年3月27日). “Uber、東南アジアから撤退へ--Grabに事業売却”. CNET Japan . 2018閲覧.
- ↑ 『UberのカラニックCEOは無期限の休職をします』 2017年6月14日 Onebox News
- ↑ 『トラビス・カラニックの辞任』 2017年6月22日 Onebox News
- ↑ ウーバー新CEOにエクスペディアCEO 米メディア報道 日本経済新聞
- ↑ 『Uberはエクスペディアの現CEOを新CEOに選んだ』 2017年8月28日 Onebox News
- ↑ 『Uberは2019年以降にIPOを目指す』 2017年9月1日 Onebox News
- ↑ “ウーバー株主、ソフトバンクなどへの一部株式売却で合意”. Bloomberg (2017年12月29日). . 2017閲覧.
- ↑ “法的情報”. Uber. . 2017閲覧.
- ↑ Uberが東京全域へエリア拡大、その次は? - 東洋経済オンライン・2014年8月5日
- ↑ ウーバーの相乗りサービス中止 国交省「白タク、違法」 - 朝日新聞デジタル・2015年3月7日
- ↑ “アプリから衣類を寄付しよう – UberRECYCLEを10/4に開催”. Uber Japan (2015年9月25日). . 2015閲覧.
- ↑ 18.0 18.1 井上 理 (2015年11月10日). “日本で「Uber」のドライバーをやってみた〜乗せる側に立って感じたこと”. 日経ビジネスオンライン. . 2015閲覧.
- ↑ “自家用車「相乗り」可能に=安倍首相が規制緩和指示―特区諮問会議”. Yahoo!ニュース(時事通信) (2015年10月20日). . 2015閲覧.
- ↑ “トヨタ自動車が「ライドシェア」のUber社に戦略的出資! 日本でも将来普及の可能性”. (2016年5月25日) . 2016閲覧.
- ↑ http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/tk/15/433782/052800351/
- ↑ 『Uberは騒動の中も成長している、と言っている』 2017年4月20日 Onebox News
- ↑ 『Uberは騒動の中も成長している、と言っている』 2017年4月20日 Onebox News
- ↑ 『Uberは騒動の中も成長している、と言っている』 2017年4月20日 Onebox News
- ↑ 『Uberは騒動の中も成長している、と言っている』 2017年4月20日 Onebox News
- ↑ 『Uberは騒動の中も成長している、と言っている』 2017年4月20日 Onebox News
- ↑ 『Uberはエクスペディアの現CEOを新CEOに選んだ』 2018年8月28日 Onebox News
- ↑ 『Uber's losses narrowed in Q4, but there's still work to do』 2018年5月24日 ビジネスインサイダー
- ↑ 『Uber lost $4.5 billion in 2017, but its revenue jumped』 2017年2月14日 ロサンゼルス・タイムズ
- ↑ 『Uber's losses narrowed in Q4, but there's still work to do』 2018年5月24日 ビジネスインサイダー
- ↑ 『Uber's losses narrowed in Q4, but there's still work to do』 2018年5月24日 ビジネスインサイダー
- ↑ “Uberは5700万人の情報漏洩を1年に渡り隠蔽していた”. Onebox News (2017年11月23日). . 2018閲覧.
- ↑ “Uberの元女性社員がセクハラ訴え、CEOが涙で謝罪 シリコンバレーに激震”. BuzzFeed (2017年2月23日). . 2018閲覧.
- ↑ “シリコンヴァレーに蔓延するセクハラと差別という“病””. WIRED.jp (2017年6月4日). . 2018閲覧.
- ↑ Uber and Waymo settle trade secrets lawsuit CNN Money 2018年2月9日
- ↑ Uber self-driving car kills pedestrian in first fatal autonomous crash CNN 2018年3月19日
- ↑ “アングル:自動運転車初の死亡事故、責任の所在が争点か” (2018年3月24日). . 2018閲覧.
- ↑ “Uber、自動運転車の死亡事故で被害者遺族と和解” (2018年3月30日). . 2018閲覧.
- ↑ “性犯罪に問われたウーバー運転手、全米で100人超”. CNN (2018年5月5日). . 2018閲覧.
関連項目
外部リンク