支援教育を行う普通学校
この記事では、特別支援学校以外で、特別なニーズがある生徒に対して支援教育を行っている学校について記述する。
ここでは、知的障害者だけでなく、発達障害などの様々な障害を持つ生徒、不登校生徒、学力不振に悩む生徒、中途退学者や様々な理由で教育を受けられなかった為再び高等学校で学びたい生徒、ボランティア活動や芸術活動、専門学校などでの学習と両立したい生徒などを含む。
これまで、支援教育が必要な生徒は夜間定時制高等学校に入学していた。しかし、それらの生徒の多くは当初昼間の時間帯での通学を希望していた。そのため、これらの生徒を昼間の時間帯に開講する高等学校で受け入れ、支援教育を行うようになった。
Contents
東京都における取り組み
東京都では既存の高校を改組して、チャレンジスクール、エンカレッジスクール、トライネットスクールと呼ばれる、様々な支援教育へのニーズに対応するための高校を設置している。
チャレンジスクール
既存の夜間定時制高校を統合集約して新設した、3部制(定時制)単位制高校。不登校経験者・他校中退者などを主なターゲットとする総合学科の高校で、内申書不要・単位制による幅広い選択可能科目・カウンセリング体制の充実など、新しい試みを行っている。
現在は以下の5校だが、立川市の多摩教育センター跡地に2023年までにチャレンジスクールの高校を新たに設置する計画がある。
エンカレッジスクール
既設の全日制都立高校から中退率・生徒指導上の課題状況・地域バランスを勘案して指定した、可能性を持ちながらも力を発揮できない状態の生徒を積極的に受け入れ支援するための施策を実施する高校[1][2]。エンカレッジ(encourage)とは、勇気付けるという意味[2]。
- 入学選抜に学力検査を実施しない。
- 定期考査は一切実施しない。
- 1年次における30分授業の実施。
- 国語、数学、英語を中心とした習熟度別学習と少人数授業で「集中」と「繰り返し」を大切にし、基礎基本を確実に身につけさせる。
- 二人担任制によるきめ細かな指導を実施する。
- 午後は週1日、体験的学習を実施する。
などの施策により、生徒の力を引き出し成就感・達成感を実感させることを目的とする。2015年4月現在、以下の5校が指定されている。
- 東京都立足立東高等学校(平成15年度入学生より実施) 公式サイト
- 東京都立秋留台高等学校(平成15年度入学生より実施) 公式サイト
- 東京都立練馬工業高等学校(平成18年度入学生より実施) 公式サイト
- 東京都立蒲田高等学校(平成19年度入学生より実施) 公式サイト
- 東京都立東村山高等学校(平成22年度より実施)[3][4]
東京都立練馬工業高等学校は、工業高校としては初の指定である。
トライネットスクール
引きこもりや時間の制約など様々な事情により、通常の通学が困難であるが学ぶ意欲を持つ生徒のために、
- 時間などの理由で、全日制・定時制課程で学べない生徒のためのセーフティネットである通信制課程
- インターネット等の情報通信技術を取り入れた教育(電子メールによるレポート提出・添削等)
- 既存の都立高校ネットワークの連携(自校に施設がない実習科目等の幅広い設定等)
の3つ(=tri)のネットを活用して、自己実現に挑戦(=try)する学習を支援する目的で設置する通信制高校。現在は下記1校であるが、将来的には都区部で1校設置の計画がある。
クリエイティブスクール
大阪府及び神奈川県が多様なニーズに対応するための高校として設置している。
大阪府
大阪府が新設・改組した多部制(定時制)単位制高校。多様なニーズを持つ生徒が目的意識を持って学ぶことができるよう、ワールド(普通科)や系列(総合学科)の科目群を中心とした単位選択制度を持つ。3部制クリエイティブスクールの第III部は従来の夜間定時制に相当する。現在はエンパワメントスクール[5]への改編が進んでいる。
- 大阪府立咲洲高等学校 普通科・2部制 公式サイト
- 大阪府立箕面東高等学校 普通科・2部制 公式サイト
- 大阪府立桃谷高等学校 普通科・3部制 公式サイト
- 大阪府立東住吉総合高等学校 総合学科・2部制 公式サイト
- 大阪府立成城高等学校 総合学科・3部制 公式サイト
- 大阪府立和泉総合高等学校 総合学科・3部制 公式サイト
神奈川県
神奈川県では既存の高等学校の一部を、持っている力を十分に発揮できなかった生徒に対してきめ細かな指導を行い、卒業後に自らの良さを活かしながら社会に参加できる人材の育成を教育目標とする、クリエイティブスクール[6]に指定し、平成21年度入学者選抜から制度を実施している。
課程と設置科は学年制の全日制普通科、規模としては学年あたり240人程度、学校全体で720人程度としている。
選抜方法及び教育内容は各校毎に異なるが、クリエイティブスクールにおける共通方針は以下の通りである。
- 選抜方針
- 意欲的に学校生活を送ろうとする意志を重視する
- 力を伸ばしたいという意欲を基準とした選考を徹底する
- 入学後の教育活動につながる検査方法を採用する
- 教育方針
- 基礎学力の定着
- 社会的規範を身に付けさせる
- キャリア教育の推進
平成21年度から実施された高等学校は以下の通り。
パレットスクール
埼玉県では既存の夜間定時制高校を統合集約して、多部制総合学科の単位制高校を新設した。平成26年現在は以下の3校である。
- 埼玉県立戸田翔陽高等学校(3部制)
- 埼玉県立狭山緑陽高等学校(2部制)
- 埼玉県立吹上秋桜高等学校(2部制)(平成22年度新設)
デュアル総合学科
大阪府では長期の勤労体験学習を取り入れたデュアルシステムを採用したデュアル総合学科を大阪府立布施北高等学校[7]に設置した。受け入れ先は幼稚園・保育園・工場・商店・老人介護施設など様々であり、地域の住民が協力して行っている。
キャリアデザイン科
奈良県では、2015年度から社会人としての成長を支援するキャリアデザイン科を設置した[8]。
- 奈良県立二階堂高等学校(全日制総合学科)
広域通信制
様々なニーズを持った生徒、中途退学者などを受け入れる学校として、近年広域通信制の高等学校が設立されている。本校及び、地域密着型のサテライト教室を持つ学校が多い。
支援を要する生徒のための学校
発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、知的障害、自閉症など各種の障害がある生徒や、元不登校者などを受け入れる学校。
- 小中学校
- 八王子市立高尾山学園:不登校児童・生徒のための体験型学校特区に認定された小中一貫校。
- 高等学校
- 大東学園高等学校
- 大阪府の自立支援コース:公立の高等学校に、障害者を受け入れる取り組みが行われている(大阪府立松原高等学校など)。
- 京都府立山城高等学校:聴覚障害教育部がある。
- 和光学園
- 北星学園余市高等学校
- 竹田南高等学校:大分県の私立学校。普通学級と、軽度の知的障害者や学習障害者などを対象にした生活教養学級がある。
- 黄柳野高等学校:愛知県の全寮制私立学校。おもに元不登校者を受け入れている。
- NHK学園高等学校:不登校・ひきこもりの方を主対象に、ネット双方向授業や教員の自宅訪問がある「Do itコース」がある。
- 八洲学園高等学校:不登校・ひきこもりの生徒を主対象に、一定期間、教職員の自宅訪問を受ける「ホームサポートクラス」や卒業後を見据えたトレーニング期間を設けた「5年制コース」がある。
- その他
- 武蔵野東学園:東京都の私立学校。幼稚園、小学校、中学校、高等専修学校があり、いずれも健常児と自閉症児の混合教育を行っている。
- 見晴台学園
- やしま学園高等専修学校:大阪府の私立の高等専修学校。3年間の高等課程と2年間の専攻科を持つ。公式サイト
- 静岡高等学園:不登校・軽度発達障害支援学級を設けている。公式サイト
脚注
- ↑ “エンカレッジスクールの実現に向けて”. 東京都教育委員会. . 2015閲覧.
- ↑ 2.0 2.1 “平成27年度東京都立高等学校に入学を希望する皆さんへ(日本語版) - 多様なタイプの学校等の紹介”. 東京都教育委員会 (2009年8月14日). . 2015閲覧. p.20
- ↑ “エンカレッジスクールの指定について”. 東京都教育委員会 (2009年8月14日). . 2015閲覧.
- ↑ “エンカレッジスクールについて”. 東京都立東村山高等学校. . 2015閲覧.
- ↑ 大阪府教育委員会エンパワメントスクールに関すること(2015).
- ↑ 県立高校改革について ‐活力と魅力ある県立高校をめざして‐(クリエイティブスクールの項を参照)
- ↑ 大阪府立布施北高等学校
- ↑ 奈良県立二階堂高等学校キャリアデザイン科
関連項目