御家人斬九郎

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御家人斬九郎』(ごけにんざんくろう)は、柴田錬三郎による時代小説

概要

1976年(昭和51年)に講談社から単行本が刊行され、翌年2篇の読み切りが「オール讀物」で発表された。晩年の柴田が最も力を入れた連作である。フジテレビドラマ化されている(後述)。

江戸時代の末期を舞台に、大給松平家に名を連ねる名門の家柄ながら無役・三十俵三人扶持の最下級の御家人である松平残九郎家正(通称、斬九郎)が、かたてわざと称する武士の副業によって活躍する物語。残九郎の許婚(いいなずけ)の松平須美、幼馴染で北町奉行与力の西尾伝三郎、馴染みの辰巳芸者のおつた、など多彩なキャラクターが登場する。

各話題名

※新潮文庫目次より (ISBN 4-10-115027-3)

  • 第一篇 片手業十話
第一話 男ってえ奴はこんなものさ
第二話 二兎を追ったら二兎を獲るさ
第三話 隻腕でやるかたてわざだぜ
第四話 柳生但馬守に見せてやりてえ
第五話 直参旗本の死にざまだぜ
第六話 良人を殺した気持が判るぜ
第七話 女の怨念はおそろしいやな
第八話 寺で新仏をつくってやらあ
第九話 正義の味方にだってなるぜ
第十話 女の嫉妬はこうして斬るのさ
  • 第二篇 箱根の山は越えにくいぜ
  • 第三篇 あの世で金が使えるか
  • 第四篇 美女は薄命だぜ
  • 第五篇 座敷牢に謎があるぜ (「オール讀物」昭和52年7月号掲載)
  • 第六篇 青い肌に謎があるぜ (「オール讀物」昭和52年2月号掲載)

テレビドラマ

映像京都・フジテレビの制作によって、1995年から2002年まで、5つのシリーズ(全50話)として放送された。

主人公・斬九郎を演じたのは渡辺謙。『独眼竜政宗』や『仕掛人・藤枝梅安』シリーズなどで、時代劇作品の経験も豊富であった渡辺が、原作者が意図したとされる「明るい眠狂四郎」という斬九郎のキャラクターイメージに見事にはまり、「伊達政宗」と並び、他の俳優が演じることなど考えられない渡辺の当たり役となる。その後、従来の歴史劇の武将役にとどまらず、『ラストサムライ』など幕末・明治初期の武士の役を演じることが多くなった。

原作は数本の短編作品を収録した文庫本1冊分しかなく、従って原作のネタはすぐに尽きてしまったが、魅力的なキャラクターたちを活かしたオリジナルエピソード作品が製作された。物語はステレオタイプ時代劇の単純な勧善懲悪形式ではなく、救いのない話や後味の悪い結末のエピソードも多い。が、斬九郎と岸田今日子演じる母・麻佐女とのコミカルなやり取りが清涼剤となり、その重さを払拭している。また、貧乏御家人に過ぎない主人公が葵の御紋の使用を許されている(が、濫用はしない)など、既存の時代劇の"お約束"を皮肉ってもいる。

描かれている第1シリーズから第4シリーズまでは11代将軍徳川家斉在世の時代(第3シリーズから第4シリーズまでの間に2年の歳月が経ったという設定)、第5シリーズは幕末という設定。ただし史実に忠実という訳ではもちろんなく、物語の面白さを優先させている。第4シリーズ第3話「大利根の月」で近藤正臣平手造酒(晩年は徳川家慶の時代)を演じ、斬られてはいない。

登場人物・キャスト

松平残九郎(通称:斬九郎) - 渡辺謙
9人兄弟姉妹の末子で、30がらみの男。余計者という意味合いで「残九郎」と名付けられたが、兄たちは長男と次男が父との剣の稽古での事故で死に、三男は養子に行き、姉たちは結婚したり大奥に上がったりしたため、家督を継がされる。誰に習ったわけでもないが剣の達人であるものの、遊び人かつ大酒飲みで、いつも褌が丸見え。また、他の兄弟たちは全く家に寄り付かないため、年中母と2人きりで暮らしているが、親子喧嘩をしないのはどちらかが家を空けた時だけというようである。30俵の家禄だけでは到底生活が成り立たず、罪を犯した者を幕府にも内密に首を討つ仕事を請け負う“かたてわざ”で、鼓の名手でプライドの高い、美食家の母を養わなければならない。最終回、下河原藩邸での壮絶な立ち回りの中、土屋左門の放った凶弾を浴び…
松平麻佐女 - 岸田今日子
残九郎の母親で、79歳になるが気丈で口達者。残九郎がこの世で唯一頭が上がらない「くそババア」。残九郎がかたてわざで得た報酬を、高級料亭の食事に注ぎ込む美食家。鼓となぎなたの腕は一流であり、鼓に関しては御台所の御前演奏を行ったほどの腕前で世に広く知られている。また、この時代の人間には数少ない英語を理解できる人間で、英語で書かれた暗号を解いたり、アメリカからの使節団の通訳などを行ったこともある。
蔦吉 - 若村麻由美
深川育ちの辰巳芸者江戸っ子気質。武家の生まれだが、両親とは死別して植木職人、辰五郎の養女となる。芸者として多くの座敷に出入りしている事情通で、たびたび残九郎に有益な情報をもたらす。残九郎とは相思相愛だが、粋な性格が邪魔して素直に甘えることができず、顔を合わせれば痴話げんかになる。また、武家崩れの女をよく思われていないのか、麻佐女には贔屓にしていることをひた隠しにされている。なお、原作では“おつた”といい、残九郎の情婦というテレビ版とはまるっきり別設定となっている。本名は大沼妙子。
西尾伝三郎 - 益岡徹
残九郎の幼馴染で、北町奉行所与力。甘いものが好きで、屋敷にいる時はいつも菓子をつまんでいる。残九郎は「雷おこし」というあだ名をつけている。真面目な性格(まるっきり堅物ではなく、賄賂を貰うことや粋な面もある)で、義理に厚く、役目のかたわら残九郎のかたてわざにも手を貸すことを惜しまない。妻りくに強く出られない恐妻家だが、一人娘のゆき江は目に入れても痛くないほど可愛がっている。原作ではテレビ版と違い、残九郎に匹敵する達人とされている。
南無八幡の佐次 - 塩見三省
西尾配下の岡っ引き。残九郎の悪友でもある。死体を見るたびに「南無八幡」というのが口癖。背中に八幡大菩薩の姿を彫ってもらっていると言ったので、麻佐女と須美が試しに見せてもらったところ、軍神である八幡様の顔にしては柔和な顔だったため、「観音様と間違えたんじゃ」と言われてしまう。相生町の親分、相生町の佐次とも呼ばれている。
西尾るい - 唐沢潤
伝三郎の妻女。一見伝三郎を尻に敷いているように見えるが、ここぞという時には夫を立てる良妻。伝三郎の役目に支障をきたす面倒を持ち込む存在として、残九郎のことを快く思っていない。残九郎もるいを苦手としていたが、娘を授かってからは性格も丸くなる。
おえん - 奈月ひろ子
残九郎が入り浸っている船宿「舟久」のおかみ。おえんの母の代から松平家とは縁があり、残九郎の父も顔なじみだったという。その関係もあり、催促なしのツケが利く。
お光 - 奥田小百合
「舟久」の女中。残九郎にほのかな恋心を寄せる。
松平須美 - 吉沢梨絵
残九郎の許婚だが、残九郎は妹のように思っている。蔦吉の存在に気づき、自ら身を引き、第3シリーズ最終回で別の相手と幸せな結婚をする。
喜助 - 牧冬吉
妻のよねと共に松平家に仕える通いの下男。年中麻佐女に振り回されている。舟久の場も知っており、時に残九郎を家へと呼び戻しに来る。演じた牧冬吉没後も、用事で不在という形が取られたり、過去映像を流用・編集するなどの処理で登場している。
よね - 松村康世
夫の喜助と共に松平家に仕える通いの下女。年中麻佐女に振り回されている。喜助役の牧冬吉没後は、喜助が担っていた役割も果たすようになった。
東八 - 喜多村英三
残九郎たちのたまり場となっている居酒屋の主人。寡黙な人柄。その発言は残九郎に有益なものをもたらすことも多々ある。演じる喜多村英三が亡くなったことに伴い、第3シリーズ終了後、故郷へ帰ったという設定が取られた。
おもん - 長野いずみ
東八の女中。通いであり、夜道は物騒だからとたびたび残九郎や蔦吉に送ってもらっている。
りよ - 日下由美
いろいろあって娘・八重と共に江戸へ出てくる。その後、東八を受け継ぐことになり、佐次と相思相愛の末に結ばれる。
梅吉 - 大橋一三
佐次配下の下っ引き。佐次共々残九郎のために骨を折る。

ほか

スタッフ

  • ナレーション - 相川浩(OPナレーション及び次回予告担当。第3シリーズまで)

放送局

放映リスト(サブタイトル)

  • 第1シリーズ(1995年1月 - 3月、全8回)
サブタイトル ゲスト
第1話 「かたてわざ」(スペシャル) 隆大介宮川一朗太汐路章粟津號(1回目)、宮田圭子
第2話 「用心棒二人」 丹波哲郎田中実(1回目)、西田健(1回目)、前野有香小瀬格
第3話 「姉の宿下り」 香山美子椎谷建治渡辺哲三遊亭圓窓佐古正人
第4話 「青い肌の謎」 橋爪功岡本舞有川博(1回目)、泉知奈津
第5話 「入牢志願す」 山本圭北原佐和子中田浩二(1回目)、井上博一
第6話 「わしは将軍」 田村高廣西沢利明関根大学
第7話 「遊蕩の指南」 蟹江敬三天田俊明廣田行生趙方豪
第8話 「奇妙な刺客」 柴俊夫三ツ木清隆鷲生功河原さぶ沼田爆(1回目)、星遥子


  • 第2シリーズ(1997年1月 - 3月、全11回)
サブタイトル ゲスト
第1話 「初春火の用心」(スペシャル) 阿部寛山内八郎小林昭二長門裕之
第2話 「居残り」 藤吉久美子鷲生功広岡由里子河原崎建三河原崎次郎光石研
第3話 「母の仇討」 江波杏子宮下直紀大林丈史小松エミ
第4話 「北国の人」 わたなべけん(渡辺謙の別名義による一人二役)、岩本千春津村鷹志立川三貴御木本伸介
第5話 「雲隠れ」 伊原剛志麿赤児徳井優小野進也
第6話 「仕官の罠」 渡辺梓岡野進一郎有川博(2回目)、伊藤高
第7話 「白魚の吉次」 田中邦衛茅野佐智恵松木路子山本清遠藤征慈(1回目)、草薙幸二郎大川ひろし
第8話 「賞金桜」 夏八木勲川原和久伊藤洋三郎高木均真嶋麗
第9話 「駆け込み」 堤大二郎佐藤仁哉高城淳一泉知奈津亀井賢二
第10話 「おみなえし」 森口瑤子筒井功廣田行生久保田篤中島俊一
第11話 「あんぶれらあ」 八代亜紀朝加真由美原田清人頭師孝雄


  • 第3シリーズ(1997年10月 - 1998年1月、全11回)
サブタイトル ゲスト
第1話 「男二人」(スペシャル) 北大路欣也沖田浩之小林綾子佐藤和久楠年明、峰蘭太郎(1回目)、芝本正
第2話 「虎退治」 寺尾聰清水由貴子遠藤憲一奥村公延(1回目)、谷崎弘一
第3話 「姉上」 梶芽衣子左右田一平中野誠也山本容子川崎あかね神谷けいこ森岡隆見(1回目)
第4話 「三十六人斬り」 根本りつ子本田博太郎長江英和森川正太深見亮介西園寺章雄 
第5話 「馬の脚」 沢竜二中原果南竜小太郎入鹿尊升毅犬塚弘
第6話 「美人局」 松井誠不破万作赤星昇一郎酒井敏也桂三象
第7話 「犬も歩けば」 渡辺裕之一色彩子角田英介、中田浩二(2回目)、根岸一正
第8話 「切腹志願」 石田登星山田吾一菅原あき二瓶鮫一  
第9話 「可愛い目撃者」 石橋蓮司日下由美野平ゆき山本奈々井筒森介林統一
第10話 「待ちぼうけの女」 紺野美沙子火野正平(1回目)、沼田爆(2回目)、服部妙子北見唯一粟津號(2回目)
第11話 「深川節」 田中実(2回目)、穂積隆信浅田裕二


  • 第4シリーズ(1999年1月 - 3月、全10回)
サブタイトル ゲスト
第1話 「おふくろ」(スペシャル) 中村玉緒角田英介斎藤林子木村栄
第2話 「流れ着いた男」 上杉祥三奥村公延(2回目)、原口剛宮野琢磨
第3話 「大利根の月」 わかむらまゆみ近藤正臣櫻木健一長森雅人松井範雄中西良太宇梶剛士野呂瀬初美蟷螂襲
第4話 「恋文」 平淑恵梨本謙次郎堀内正美鹿内孝中丸新将(1回目)
第5話 「罠には罠を」 田中邦衛大出俊螢雪次朗
第6話 「脱獄」 新井康弘山下智子磯部勉中平良夫安多和久
第7話 「武者修行」 江藤潤谷川清美池内万作三谷昇内田勝正草薙良一
第8話 「ねらわれた女」 伊藤蘭藤堂新二岡本富士太犬塚弘、森岡隆見(2回目)、井出みな子
第9話 「追われもの」 中村敦夫上野めぐみ西田健(2回目)、入鹿尊須永克彦遠藤征慈(2回目)、井上博一山口粧太
第10話 「佐次の純情」 杉田かおる沢向要士世古陽丸門田裕


  • 第5シリーズ(2001年11月 - 2002年2月、全10回)「渡辺謙の御家人斬九郎 ファイナルシリーズ」
サブタイトル ゲスト 視聴率[1]
第1話 「迷惑な忠義者」 火野正平(2回目)、井田州彦川合伸旺芝本正、峰蘭太郎(2回目)、佐々木敏波多野博水上保広     12.0%
第2話 「箱根の鬼」 三ツ木清隆佐藤恵利安藤一夫成瀬正孝大前均田中隆三
第3話 「最後の忍者」 真瀬樹里有薗芳記笹野高史横山あきお今井喜美子勇家寛子町野あかり久保田磨希中谷由香辻本一樹本山力    
第4話 「盗賊見習い」 米倉斉加年蜷川有紀大橋吾郎勝野賢三泉知奈津 
第5話 「ゆうれい長屋」 三浦洋一[注釈 1]佐藤友紀筒井巧遠藤太津朗中丸新将(2回目)、五月晴子木内美帆鷹家昌子
第6話 「捨値五両」 萩原流行高橋長英片桐光洋下塚誠うえだ峻楠年明
第7話 「母の夢」 藤村志保麻乃佳世光石研織本順吉伊藤敏八木村元加藤正記 
第8話 「乱調麻佐女」 林与一神山繁小沢和義清水宏木下ほうか木内美帆 
第9話 「冬木町の女」 美保純米山善吉中田博久相馬剛三田辺ひとみ  
第10話 「最後の死闘」 山崎努うじきつよし三浦浩一中村久美松重豊平田満下元年世 (主演の渡辺謙が監督)

ロケ地

脚注

注釈

  1. 放送から1年以上前の2000年5月14日に死去しており、エンディングにその旨のテロップが流れた。

出典

  1. 『テレビ視聴率季報(関東地区)』ビデオリサーチ

関連項目

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