江戸時代
江戸時代(えどじだい)
徳川時代ともいう。徳川家康が征夷大将軍に任じられて江戸に幕府を開いた慶長8 (1603) 年から 15代将軍慶喜の大政奉還によって王政復古が行われた慶応3 (1867) 年にいたる 265年間,江戸が政治の中心であった時代。安土桃山時代と合せて近世と呼ばれることが多い。幕府と諸藩がこの時代の支配機構をなしたため幕藩体制の時代ともいわれ,封建社会の一時期を占める。この時代の始めには,慶長8年説のほかに,家康が関ヶ原の戦いに勝った同5年をとる説もある。幕府政治を中心としてこの時代の推移をみると,幕府の創立から3代将軍家光の時代までは,その確立期 (1600~51) と考えられ,反徳川勢力の一掃,大名統制,職制の確立,鎖国などの諸政策が強力に推進された。5代将軍綱吉の元禄期 (88~1704) から新井白石の正徳の治にかけて,幕政の安定期 (1651~1716) が続き,文治政治が最高潮に達し,将軍側近勢力が幕政を主導し,商品経済が進展した。貨幣経済の進展は商人勢力を伸ばした反面,武士階級の窮乏を招き,また農村社会の構造を変えはじめた。8代将軍吉宗が享保の改革を行い,田沼意次が商業政策を推進し,松平定信が寛政の改革を行い,水野忠邦が天保の改革を試みたのは,幕府財政の建直しと封建支配の強化を意図したもので,動揺期 (16~1843) に対応したものである。 11代将軍家斉の時代を過ぎると,国内政治の動揺に加えて外圧が加わり,やがてペリー来航により,日本の国際社会への参加は必然となるが,なお国内には開国と攘夷,尊王と佐幕の争いが絶えず,また百姓一揆,打毀 (うちこわし) も激化し,ついに大政奉還,王政復古を迎えた (43~67) 。江戸時代には,皇室はその権力を失い,将軍,大名,武士層が,支配階級として農,工,商の庶民階級にのぞんだ。経済面では,自然経済の維持ができなくなり,商品経済への移行,工業化への傾向が現れた。幕初以来朱子学が支配階級の指導理念として尊重されたが,幕藩制の動揺期には国学,洋学が展開した。文芸は,元禄期にはまだ上方を中心としていたが (元禄文化 ) ,化政期 (04~30) には江戸に中心が移った (化政文化 ) 。