前田恒彦
まえだ つねひこ 前田 恒彦 | |
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生誕 |
1967年8月25日(57歳) 日本 広島県呉市 |
出身校 |
広島大学法学部 広島大学大学院社会科学研究科[1] |
職業 | 元大阪地方検察庁特別捜査部検事 |
前田 恒彦 (まえだ つねひこ、1967年8月25日 - )は日本の元検察官、元受刑者。大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件において逮捕・起訴され、証拠隠滅罪で懲役1年6ヶ月の判決を受けた。また、法務大臣柳田稔から懲戒免職の処分を受けた。
経歴
出生から学生時代まで
広島県呉市に生まれる。広島県立呉宮原高等学校を経て、1990年に広島大学法学部を卒業。呉市の実家から1時間半かけて大学に通い、金沢文雄ゼミ(刑法学)に所属。旧司法試験を受けるため、一時期、大学院社会科学研究科法律学専攻の修士課程に在籍した[1]。
検事として
1993年旧司法試験に合格。司法修習生48期(実務修習地は広島)。1996年に検事に任官。
大阪地検特捜部に3度勤務し、2009年には、同部において障害者団体向け割引郵便制度悪用事件の主任検事を務めた[2]。
- 1996年 東京地検総務部検事
- 1996年6月 - 広島地検刑事部検事
- 1996年12月 - 同公判部検事
- 1997年 水戸地検公判係検事
- 1998年 同指導係・公害係検事
- 1999年 大阪地検公判部検事
- 2000年 大阪地検特捜部検事(1回目)
- 2001年 神戸地検姫路支部検事
- 2003年 大阪地検特捜部検事(2回目)
- 2006年 東京地検特捜部検事
- 2007年 名古屋地検 検事事務取扱
- 2008年 大阪地検特捜部検事(3回目)
- 2010年1月 東京地検 検事事務取扱
- 2010年10月 懲戒免職
大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件
2010年9月21日に朝日新聞は朝刊1面で、前田が主任検事を務めた障害者団体向け割引郵便制度悪用事件の証拠物件であるフロッピーディスクの内容が改竄されていたことをスクープした。
その日の夜に、最高検察庁刑事部検事兼大阪地検事務取扱の長谷川充弘が、大阪地方検察庁庁舎内で逮捕、大阪拘置所に勾留した上、前田の自宅及び大阪地検の執務室を捜索した[2]。同年10月1日には事件当時の上司だった大阪地検元特捜部長・大坪弘道[3]及び元副部長・佐賀元明[4]が犯人隠匿容疑で逮捕され、管轄上級庁のトップである大阪高等検察庁検事長の柳俊夫が陳謝する事態となった。
同年10月11日付で法務大臣・柳田稔から、懲戒免職の処分を発令された後、大阪地方裁判所に起訴された。
2011年4月12日、大阪地裁は懲役1年6ヶ月の実刑判決を言い渡した。本人は大阪高等裁判所に控訴せず、確定判決となった。このため法曹資格を喪失した。その後、静岡刑務所に収監され、翌2012年5月に満期出所した[5]。今後罰金刑以上の処分を受けずに10年経過すれば法曹資格が回復するが[6]、法曹界に戻る意思は否定しており、出所後は「何らかの仕事を見つける必要がある。使ってくれるところがあればどこでも」と述べている[5]。
人物
高校時代の趣味はプロレス。学生時代は真面目な努力家で、穏やかな物腰の気さくな人柄だったとされる。高校1年のときから既に検事を志していた[7]。広島地検で同僚(当時特別刑事部長)だった郷原信郎は、前田の印象について「図太いという印象が残っています」と評する[8]。
一方、学生時代の指導教官だった広島大学名誉教授の金沢文雄は前田について、「温厚でさわやかな性格で、正義感が強く権力の不正を憎んでいた」と話している。前田の学生時代の愛読書は『刑法とモラル(金沢文雄著)』であり、日常的に持ち歩いていたという。また、恩師である金沢に年賀状を欠かさず、電話で近況報告をしていたという[9][10]。
詐欺事件で逮捕され、前田に取り調べを受けた音楽プロデューサー小室哲哉は「高圧的なところがまったくない、紳士的な人[11]」、障害者団体向け割引郵便制度悪用事件で前田に取調べを受けた石井一参議院議員は「真面目でおとなしい人物[12]」という印象を持ったという。
だが、相手の目を見て話そうとしない気弱な性格であるという。これを知っていた司法研修所の同期の弁護士は「検事に向いていない」と助言している[13]。
主な担当事件
検察官として多くの事件の捜査に従事し、いくつかの事件では主任検事を務め中心的な役割を果たした。
- 福島県知事汚職事件
- 東京地方検察庁特別捜査部在籍時に捜査に参加[14]。元水谷建設会長や福島県庁幹部の事情聴取などを担当した[15]。しかし、前田に事情聴取された福島県庁幹部は、「自分は談合などに関して供述しなかったのに、担当検事(前田容疑者)は供述調書を作成した」[15](括弧内の表記も含め原文ママ)と指摘しており、前田の事情聴取の様子について「言っていないことまで供述調書に記された」[15]と批判している。
- 山田洋行事件
- 東京地方検察庁特別捜査部在籍時に捜査に参加[14]。
- 西松建設事件・陸山会事件
- 大阪地方検察庁特別捜査部在籍時に捜査に参加。ただし、陸山会事件で秘書の大久保隆規の5通の調書について検察事務官を立ち合わせないまま、調書が作成されていたことが判明し、検察は大久保の調書5通の証拠申請を撤回した。
- 小室哲哉5億円詐欺事件
- 大阪地方検察庁特別捜査部の主任検事として捜査を担当。有罪が確定[16]。
- 朝鮮総連本部ビル売却問題
- 東京地方検察庁特別捜査部在籍時に捜査に参加。逮捕された緒方重威の弁護団は、公判において証言した前田と当時捜査を指揮した東京地検特捜部副部長を当該事件公判における偽証罪で10月に告発したものの、不起訴となった[17][18]。
- 障害者団体向け割引郵便制度悪用事件
- 大阪地方検察庁特別捜査部の主任検事として捜査を担当。裁判中、証人が供述調書を否認し、関係者のアリバイの裏付け捜査の杜撰さも発覚し裁判官は証拠供述調書のほとんどを証拠として不採用とした。この裁判ののち、この事件の証拠物件たるフロッピーディスクの記録内容を改竄していたことが発覚し、2010年9月21日、前田が証拠隠滅罪により最高検察庁に逮捕された。この後、「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」が前田を『特別公務員職権濫用罪』で11月に告発したものの、不起訴となった[19]。
脚注
- ↑ 1.0 1.1 「さぬきうどんを捏ねる」――検察と政治(その1) 2010年10月4日
- ↑ 2.0 2.1 毎日新聞 2010年9月21日
- ↑ 大阪地検特捜部長の後、京都地検次席検事。逮捕の1時間前に大阪高検総務部付に異動
- ↑ 大阪地検特捜部副部長の後、神戸地検特別刑事部長。逮捕の1時間前に大阪高検総務部付に異動
- ↑ 5.0 5.1 “前田元検事が満期出所 公判で法曹界復帰否定「使ってくれるところどこでも」”. 産経新聞. (2012年5月15日). オリジナルの2012年5月15日時点によるアーカイブ。 . 2012閲覧.
- ↑ ただし、弁護士として業務を行うには、弁護士会に入会する義務があるが、弁護士会は入会希望者を拒絶する権限を有する。鬼頭史郎の例を参照。
- ↑ 「「改ざん」同僚検事が指摘 検事正、調査せず…大阪地検」(2010年9月22日 読売新聞)
- ↑ モンブラン (2010年9月22日). “初めにストーリーありき「特捜体質」が生んだ前田検事”. J-CASTテレビウォッチ (ジェイ・キャスト) . 2010閲覧.
- ↑ 毎日jp(毎日新聞社)2010年9月27日22時18分(記事削除済み)
- ↑ 朝日新聞朝刊、2010年9月23日
- ↑ 小室哲哉『罪と音楽』(幻冬舎刊)
- ↑ “「まじめ過ぎる検事」聴取された石井参院議員”. 産経ニュース (産経新聞社). (2010年9月21日). オリジナルの2013年1月3日時点によるアーカイブ。 . 2011-1-30閲覧.
- ↑ 2010年10月10日読売新聞
- ↑ 14.0 14.1 “【押収資料改竄】墜ちた“特捜のエース” 小室氏事件、防衛汚職…小沢氏元秘書取り調べも”. 産経ニュース (産経新聞社). (2010年9月21日). オリジナルの2010年9月24日時点によるアーカイブ。 . 2010閲覧.
- ↑ 15.0 15.1 15.2 “前田容疑者 「架空の調書作成」福島県汚職元県幹部明かす”. コルネット (河北新報社). (2010年9月23日). オリジナルの2010年9月26日時点によるアーカイブ。 . 2010閲覧.
- ↑ “前田検事は特捜部のエース、「割り屋」で評判”. YOMIURI ONLINE (読売新聞社). (2010年9月21日). オリジナルの2010年9月24日時点によるアーカイブ。 . 2010閲覧.
- ↑ “前田検事を刑事告発へ=朝鮮総連事件で偽証の疑い”. 時事ドットコム (時事通信社). (2010年9月21日) . 2010閲覧.
- ↑ “朝鮮総連巡る事件で「虚偽証言」、前田検事を刑事告発へ”. asahi.com (朝日新聞社). (2010年9月22日). オリジナルの2010年9月25日時点によるアーカイブ。
- ↑ “刑事告発を行い、11月3日付で受理されました。”. 健全な法治国家のために声をあげる市民の会 (2010年11月1日). . 2010閲覧.
関連項目
- 障害者団体向け割引郵便制度悪用事件
- 大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件
- 特別捜査部#大阪地方検察庁特別捜査部
- 村木厚子
- 石井一
- 三井環
- 大坪弘道
- 佐賀元明
- 私は屈しない〜特捜検察と戦った女性官僚と家族の465日 - 六角精児が演じた。
外部リンク
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