箱根ターンパイク
箱根ターンパイク(はこねターンパイク)は、神奈川県小田原市から足柄下郡箱根町を経由し[注釈 1]、同県足柄下郡湯河原町に至る、延長15.752キロメートル (km)[注釈 2] の観光有料道路(一般自動車道)で、箱根ターンパイク株式会社 (HTPL) が保有・運営する私道である[1]。なおターンパイク (turnpike) とは、有料(高速)道路、トールロードを意味する。
ネーミングライツ(命名権)を採用しており、2018年3月1日からはアネスト岩田が同権を取得したことによりアネスト岩田 ターンパイク箱根の名称が使用される[2]。 交通情報などでは単に「ターンパイク」と称されることが多い[注釈 3]。
また、2018年3月1日より全国初となる自動車道ナンバリングを導入し、箱根小田原本線に「D18a」、伊豆箱根連絡線に「D18b」がそれぞれ割り振られている[2]。
Contents
概要
神奈川県西部の相模湾に面する位置にある小田原市早川から、箱根山芦ノ湖の南東部に位置する大観山・湯河原峠に至る標高差約1000メートル (m) ある有料の山岳道路で[3][4]、箱根小田原本線(13.782 km)と箱根伊豆連絡線(1.7 km)及び西湘バイパスへの接続ランプである西湘接続線(270 m)の3路線からなる[5]。本道路は道路運送法に規定された自動車道であることから、道路交通法が適用される[1]。一部車両通行規制が行われており、自動車とオートバイは通行できるが[3][4]、125 cc以下の二輪車(原付一種および原付二種)、軽車両、ミニカー、歩行者は通行禁止である[5]。
カーブの最小半径は100 mと穏やかで、勾配も比較的緩やかであるが、下りの場合はエンジンブレーキ・回生ブレーキを使用しないとブレーキが利かなくなるおそれがある。そのため、エンジンブレーキの使用を促す注意書きと、緊急時に衝突して停止するための砂山(緊急避難所)がある。
沿線には展望台が多数設けられており、相模湾や初島、伊豆大島を眺めることもできるほか[3][4]、箱根小田原本線の終点付近にある施設「大観山スカイラウンジ」(ドライブイン大観山)からは芦ノ湖や富士山を見渡せる。早春のころには早川側から4 km進んだところに桜のトンネルを見ることができる[3][4]。
2002年(平成14年)の時点の報告では、1日平均通行台数3,196台、営業収支比率は98.8 %であり、支出が収入をわずかに上回る、いわゆる赤字事業路線である。
通行料金
- 普通車の通行料金
- 箱根小田原本線区間 720円
- 箱根伊豆連絡線区間 150円
全線では870円となる(1 km単価55.1円)。両区間は独立しているので、料金は別々に支払う必要がある。
- 自動二輪の通行料金
- 箱根小田原本線区間 520円
- 箱根伊豆連絡線区間 110円
なお、料金所付近ではUターンができない。また、2007年(平成19年)3月から次世代型料金収受システム(IBAサービス)を導入している(サービスの利用には多機能型ETC車載器と事前の会員登録が必要)[8] 。
営業時間
かつては箱根小田原本線と箱根伊豆連絡線とで営業時間が異なっていたが、現在は全線一律で5:30~22:30 (最終入場時間 22:00)の営業となっており[7]、営業時間外の夜間は全線が完全に封鎖され通行できない。
運営主体
もともと東急グループの開発計画に伴って建設されたものであり、長年、東急グループの東急ターンパイク(現・TTP株式会社[9])が保有・運営していた。しかし、赤字が続いたこともあり、2004年(平成16年)3月にオーストラリアの投資会社・マッコーリー銀行グループが主体となるインフラストラクチャー・ファンドが設立した箱根ターンパイク株式会社に11億5700万円で営業譲渡され、運営が移管された[10]。その後、2014年4月25日に箱根ターンパイク株式会社は中日本高速道路の子会社であるNEXCO中日本インベストメントにより買収され100%子会社となった[11]。
沿革
- 1954年(昭和29年)3月5日:東京急行電鉄が道路運送法に基づき、渋谷 - 江ノ島間の一般自動車道(有料道路)「東急ターンパイク」を免許申請。
- 1955年(昭和30年)
- 2月16日:吉浜開発株式会社設立。
- 1955年(昭和30年)
- 8月23日:東急電鉄が小田原 - 箱根間の一般自動車道(有料道路)「箱根ターンパイク」を免許申請。
- 1957年(昭和32年)8月26日:東急電鉄が藤沢 - 小田原間の一般自動車道(有料道路)「湘南ターンパイク」を免許申請。
- 1957年(昭和32年)11月5日:吉浜開発株式会社が東急グループの傘下に入る。
- 1960年(昭和35年)5月12日:「箱根ターンパイク」の事業免許を取得。「東急ターンパイク」は第三京浜道路と、「湘南ターンパイク」は西湘バイパスと競合したため、認可されなかった。
- 1961年(昭和36年)
- 5月10日:工事施行認可申請。
- 10月19日:工事施行認可。
- 1962年(昭和37年)10月19日:起工式挙行。
- 1963年(昭和38年)5月10日:吉浜開発株式会社が箱根ターンパイク株式会社に商号変更。東急電鉄から箱根ターンパイクの建設を引き継ぐ。
- 1965年(昭和40年)7月23日:大観山線が開通。
- 1966年(昭和41年)12月1日:箱根ターンパイク株式会社が東急ターンパイク株式会社に商号変更。
- 1967年(昭和42年)10月1日:十国線開通。
- 1972年(昭和47年)
- 3月31日:東急ターンパイク株式会社の経営悪化に伴い、東急電鉄が自動車道と東急ターンパイク株式会社が所有する土地を62億8853万円で買収。
- 4月1日:東急電鉄が東急ターンパイク株式会社に箱根ターンパイクの営業を委託。
- 2004年(平成16年)
- 2005年(平成17年)7月30日:東急電鉄からの譲渡後、改装工事をしていたドライブイン大観山にターンパイク・ビューラウンジが新装オープンした。
- 2007年(平成19年)3月1日:東洋ゴム工業株式会社がネーミングライツ(命名権)を取得したことにより、道路名称が「TOYO TIRES ターンパイク」、施設名称が「TOYO TIRES ビューラウンジ」となる[12][13]。
- 2014年(平成26年)
- 2017年(平成29年)8月1日:マツダとの契約期間満了により、道路名称が「箱根ターンパイク」、施設名称が「大観山スカイラウンジ」となる[16][17]。
- 2018年(平成30年)2月22日:アネスト岩田がネーミングライツを取得、同年3月1日より道路名称が「アネスト岩田 ターンパイク箱根」、施設名称が「アネスト岩田 スカイラウンジ」となる。同時に自動車道ナンバリング「D18a」「D18b」を導入する[2][18]。
出入口など
箱根小田原本線
路線名 | 施設名 | 接続路線名 | 起点 から(km) |
備考 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|---|
E84 西湘バイパス横浜・藤沢方面 | ||||||
西湘接続線 | 西湘バイパス接続ランプ[注釈 4] | ↑ | 0.0 | E85 小田原厚木道路及びE84 西湘バイパス箱根口出入口・箱根新道方面への流出入は不可 | 神奈川県 | 小田原市 |
D18a 箱根小田原本線 |
小田原早川 | (間接連絡)E85 小田原厚木道路小田原西IC、箱根新道方面 | 0.27 | 西湘バイパス接続ランプ方面への流出入は不可 | ||
小田原料金所 | 0.28 | |||||
大観山入口 大観山スカイラウンジ |
神奈川県道75号湯河原箱根仙石原線湯河原方面 | 14.052 | 湯河原町・箱根町 | |||
神奈川県道75号湯河原箱根仙石原線経由 D18b 箱根伊豆連絡線方面 |
休憩施設等
- 御所の入駐車場
- 見晴台駐車場
- 鍋割駐車場
- 白銀駐車場
- 大観山スカイラウンジ(地図)
- この施設もネーミングライツ導入により「TOYO TIRES ビューラウンジ」→「MAZDAスカイラウンジ」と改められたが、再度「大観山スカイラウンジ」に戻った後、2018年3月より「アネスト岩田スカイラウンジ」の名称が使用される。
- 1階 フードコート
- 2階 展望ラウンジ・富士見トイレ(富士山が望める)・KUSHITANI CAFE 箱根
箱根伊豆連絡線
路線名 | 施設名 | 接続路線名 | 起点 から(km) |
備考 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|---|---|
神奈川県道75号湯河原箱根仙石原線経由 D18a 箱根小田原本線方面 | ||||||
D18b 箱根伊豆連絡線 |
箱根芦ノ湖口 | 神奈川県道75号湯河原箱根仙石原線元箱根港方面(間接連絡)箱根新道芦ノ湖大観IC | 14.052 | 神奈川県 | 湯河原町・箱根町 | |
湯河原峠料金所 | 15.752 | 湯河原町 | ||||
湯河原峠 | 静岡県道20号熱海箱根峠線箱根峠方面(間接連絡)湯河原パークウェイ(隣接)、箱根新道、芦ノ湖スカイライン | 15.752 | ||||
静岡県道20号熱海箱根峠線 経由 D10 伊豆スカイライン熱海峠IC・熱海峠方面 |
脚注
注釈
- ↑ 大観山スカイラウンジ周辺は、箱根町湯河原町の境界線上をまたぐように走る。
- ↑ 西湘接続線を含む
- ↑ 日本道路交通情報センターが交通情報でこの路線に言及する場合、放送法第83条の規定(日本放送協会(NHK)における広告放送禁止規定)から、これまでの路線名に近い「箱根のターンパイク」という表現を用いなければならない。これはNHK以外の民放局でも適用される。
- ↑ 正式な施設名ではない
出典
- ↑ 1.0 1.1 1.2 浅井建爾 2015, p. 32.
- ↑ 2.0 2.1 2.2 “アネスト岩田株式会社、ネーミングライツを取得「アネスト岩田 ターンパイク箱根」と命名” (PDF) (プレスリリース), 箱根ターンパイク, (2018年2月22日) . 2018-2-25閲覧.
- ↑ 3.0 3.1 3.2 3.3 小川、栗栖、田宮 2016, p. 75.
- ↑ 4.0 4.1 4.2 4.3 中村純一 編 2017, p. 75.
- ↑ 5.0 5.1 “会社概要”. 箱根ターンパイク. . 2018年2月閲覧.
- ↑ “消費税率引上げに伴う通行料改定について” (PDF) (プレスリリース), 箱根ターンパイク(旧サイト), (2014年3月10日) . 2018年2月閲覧.
- ↑ 7.0 7.1 “営業時間・料金”. 箱根ターンパイク. . 2018年2月閲覧.
- ↑ “次世代料金徴収システム 「IBAサービス」のご案内”. 箱根ターンパイク. . 2018年2月閲覧.
- ↑ “資産運用会社における取締役の変更予定に関するお知らせ (PDF)” (プレスリリース), 東急リアル・エステート投資法人, (2012年3月28日)
- ↑ 10.0 10.1 “営業の一部譲渡および子会社の解散に関するお知らせ” (PDF) (プレスリリース), 東京急行電鉄, (2003年11月27日) . 2018年2月閲覧.
- ↑ 11.0 11.1 中日本高速道路株式会社 (2014-06-05) (PDF). 平成26 年3月期 決算情報 (Report). 中日本高速道路株式会社. p. 21 . 2018閲覧..
- ↑ “日本初 道路のネーミングライツ(命名権) 「箱根ターンパイク」のネーミングライツで合意 2007年3月1日に「TOYO TIRES ターンパイク」が誕生”. 東洋ゴム工業株式会社 (2007年2月20日). . 2013閲覧.
- ↑ “東洋ゴム工業、箱根ターンパイクの命名権を取得”. nikkei BPnet. (2007年2月23日) . 2013閲覧.
- ↑ NEWS FROM MAZDA マツダ、箱根ターンパイクのネーミングライツを取得2014年7月22日
- ↑ MH Hillclimb In HAKONE!!!2014年12月25日
- ↑ 道路名称ならびに施設名称 変更のご案内2017年8月1日
- ↑ “道路の名前、売ってみたらどうなった? 旧に復した「箱根ターンパイク」の10年間とは”. 乗りものニュース. . 2018-2-25閲覧.
- ↑ 箱根ターンパイクのネーミングライツを取得 - アネスト岩田 2018年2月22日(2018年2月23日閲覧)
参考文献
- 「MAZDAターンパイク箱根」『ニッポン絶景ロード100』 中村純一 編、枻出版社〈エイムック〉、2016-04-10。ISBN 978-4-7779-3980-8。
- 「MAZDAターンパイク箱根」『日本の絶景道100選』 中村純一 編、枻出版社〈エイムック〉、2017-04-10。ISBN 978-4-7779-4572-6。
- 浅井建爾 『日本の道路がわかる辞典』 日本実業出版社、2015-10-10、初版。ISBN 978-4-534-05318-3。
関連項目
- カーグラフィックTV - 自動車の試乗・取材に使用される。
- SS - 架空の設定で、登場人物達が箱根ターンパイクで公道レースを行う場面が描かれている。
- 頭文字D Fifth Stage - 同じく架空の設定で、登場人物が箱根ターンパイクでバトルを行う話がある
- 弱虫ペダル - 読みきりにて真波山岳と小野田坂道が勝負をする話がある。
- サーキットの狼 - 同じく架空の設定で、登場人物達が行う「公道グランプリ」の会場の一部となっている。
- クシタニ - バイク用品のクシタニが大観山ビューラウンジにバイカーズカフェを開業している。
- TOYO TIRES - D1GPに参戦しているGT-Rのドリフト撮影に使われた。
- 関東地方の道路一覧