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住民票(じゅうみんひょう)とは、日本において市町村と特別区で作成される住民に関する記録。
各市区町村ごとに住民基本台帳にまとめられていて、現住所の証明、選挙人の登録、人口の調査などに利用されている。詳細は住民基本台帳法で規定されている。
なお、従前は、日本国籍のみ住民票が作成され、外国人は外国人登録制度という別の制度で記録されていたが、同制度の廃止に伴い、2012年(平成24年)7月9日からは、90日以上日本国内に滞在する外国籍中長期滞在者[1]や特別永住者等が、外国人住民として住民基本台帳法の適用を受けることになった[2]。
Contents
住民票の記載情報
住民票の記載事項(第7条)
- 氏名
- 出生の年月日
- 男女の別
- 世帯主についてはその旨、世帯主でない者については世帯主の氏名及び世帯主との続柄
- 戸籍の表示(=本籍及び筆頭者)。ただし、本籍のない者及び本籍の明らかでない者については、その旨
- 住民となった年月日
- 住所及びその市町村の区域内において新たに住所を変更した者については、その住所を定めた年月日
- 個人番号(マイナンバー)
- 新たに市町村の区域内に住所を定めた者については、その住所を定めた旨の届出の年月日
- 選挙人名簿に登録された者については、その旨
- 住民票コード
- 国民健康保険・後期高齢者医療・介護保険・国民年金・児童手当・米穀配給に関する事項
- 政令で定める事項
外国人住民に関する記載事項は、国籍等外国人特有の事項も記載される。詳しくは「住民基本台帳」を参考のこと。
住民票の写しの交付
- 住民票(住民基本台帳)は、住所を公に証明することを目的とした制度であるため、住民票の写しの交付を受けることが認められている。
- 住民票の写しの交付については、従来は誰でも請求することができる(ただし、不当な目的であることが明らかなときは不可)とされていたが、個人情報保護法施行後の国民のプライバシーに関する関心の高まりを受けて、2008年(平成20年)5月1日に交付制度の全面改正が行われた[3]。現在は、自己又は自己と同一世帯に属する者による請求、国・地方公共団体の機関による請求、特定事務受任者(弁護士や司法書士など)が職務上必要な場合において行う請求、自己の権利行使や義務履行に必要なときなど住民票の記載事項を確認することにつき正当な理由があるものによる請求の場合に限り交付が認められる(b:住民基本台帳法第12条、第12条の2、第12条の3)。またドメスティックバイオレンス、ストーカー、過去を含む児童虐待及びそれに準ずる被害者は住民基本台帳事務処理要領に基づき加害者からの住民票交付を制限できる[4]。
通常は記載省略(世帯主の氏名、続柄、本籍、筆頭者、備考等)の住民票の写しが交付されるが、特別な請求事由があれば申出することにより、世帯主の氏名、続柄、本籍、筆頭者、備考等を記載した住民票の写しが交付される。 - 住民票の写しの交付請求は、該当者の住民登録のある市区町村役場(市区町村によっては支所、出張所等も含む)で行うことができる(通常は有料で、市町村によるが1通あたり200円~500円程度)。自動交付機による交付サービスを行っている市区町村もある。
- 郵便でも請求できる(第12条7項など)。
- 住民基本台帳ネットワークシステムの開始により、2003年(平成15年)8月25日から(本人または同一世帯の者に限り)住民登録地以外の市区町村役場で、戸籍の表示を省略した「住民票の写しの交付」を受けることが出来る様になった。これを通称「広域交付住民票」と呼ぶ。以前は、住民基本台帳ネットワークシステムに不参加の地方自治体の住民は、この制度を利用することはできず、ネットワーク不参加の自治体においては参加自治体の住民も、同システムの利用ができなかったが、最後まで接続しなかった福島県東白川郡矢祭町が、2015年(平成27年)3月30日に接続した事により、これが解消された。
- 地域によっては、コンビニエンスストアに設置されている マルチコピー機から交付を受けることができる[5]。住民基本台帳カードが必要である[6]。コンビニ店内の端末での発行は、2010年(平成22年)2月2日にセブン-イレブンが一部店舗において、東京都渋谷区、同三鷹市、千葉県市川市の住民票等についてサービスを開始したのが最初である[7]。
戸籍の附票
"「戸籍の附票」"
戸籍と住民票の記載事項を一致させるとともに、住所の変遷を記録する帳票である。
各種の届出
世帯主は世帯員に代わって届出をすることができ、世帯員が届出をできないときは代わりに届出をしなければならない(第26条)。また、届出は書面で行わなければならない(第27条)。
種類 | 届出原因 | 届出期間 | 備考 |
---|---|---|---|
転入届 (第22条) |
転入(他市町村からの異動) | 転入日より14日以内 | 前住所の転出証明書、印鑑、国民年金手帳(加入者のみ)、母子手帳、障害者手帳等が必要 |
転居届 (第23条) |
転居(同一市町村内における住所の異動) | 転居日より14日以内 | 国民健康保険証(加入者のみ)、印章、後期高齢者医療保険者証(受給者のみ)、乳幼児医療費受給資格証、福祉医療費資格証、母子手帳、障害者手帳等が必要 |
転出届 (第24条) |
転出(他市町村へ異動) | 転出する日まで | 国民健康保険証(加入者のみ)、印章、後期高齢者医療保険者証(受給者のみ)、障害者手帳等が必要 |
世帯変更届 (第25条) |
同一住所内における世帯の分離、世帯の合併、世帯主の変更、世帯員の異動 | 変更日から14日以内 | 国民健康保険証(加入者のみ)、印章が必要 |
本人確認情報の保護
- 住民票コードの告知要求制限(第30条の42第1節)
その他の住民基本台帳法の規定
- 市町村長の処分に不服があれば、都道府県知事に、審査請求か、市町村長に異議申し立てができる(第31条の4)。
- 取消しの訴えは審査請求の裁決を経た後に提起できる(第32条)。
- 国の行政機関または都道府県は、資料の提供を求めることが出来る(第37条)。
住民票制度の問題点
- 住民税の課税逃れ
- 住民税課税基準は「毎年1月1日現在で住民登録の記載があるか否か」である。これを逆用し、この日を含む形での在留届を在外公館(どこの国家であろうと)に出していれば、課税を免れることができる。
- そのため、実際の住所となる自治体から見れば、その人は公共サービスを提供しているにもかかわらず住民税を徴収出来ないフリーライダーになる。竹中平蔵がこれを実行しており問題になった。
- 投票権めあての登録
- 選挙人の資格を公証する選挙人名簿は、住民基本台帳を基に作成される。そのため、生活実態がないにもかかわらず住民票を登録することで、本来は投票する資格のない選挙において、応援する立候補者に有権者として投票することが可能となる。現在は、選挙人名簿に登録する対象を、住民基本台帳に「引き続き3ヶ月以上記録された者」に限定することで、選挙での投票を目的とした駆け込み登録を防いでいる。
- しかし、選挙の3ヶ月前に登録した場合は有権者として投票することができるため、日程の決まった統一地方選挙で完全に排除することは出来ない。またこれが仇となり、3ヶ月以内に転居を繰り返すと、衆議院議員総選挙や参議院議員通常選挙に、転居先や旧住所のどちらにおいても投票できないという事態が生じている。
- 弁護士や隣接法律職などによる不正請求
- 以前は、住民票の写しは弁護士と隣接法律職(司法書士など)が請求する場合には、自分の登録番号(日本弁護士連合会、書士連合会その他の職能団体の会員番号)さえ示せば、ほぼ無審査(請求者が登録者本人である場合に準じる形)で交付されていたため、専用申請書を用いた不正請求が後を絶たないとの指摘があった。対策として住民基本台帳法が改正され、2008年(平成20年)5月1日からは、士業者が職権による請求をする場合は、請求理由を明示することが義務付けられた。
- 実際の住所と異なる申請
- 単身赴任や遠隔地就学、そして国会議員の場合など、手続きを怠ったために、実際の事実上の住所(居所)と住民票の住所が異なっている場合が多くある。
- 例えば、元長野県知事の田中康夫は「好きなまちだから住民税を払いたい」として、村長からの借間がある下伊那郡泰阜村へ住民登録を移動したが、移動前に住民登録があった長野市が移動を認めず、二つの地方自治体で住民登録されてしまった。このため、第20回参議院議員通常選挙の際に、両方の自治体で投票のお知らせが交付されるという異例の事態になった。
- 住民基本台帳法では、住所について市町村長の意見が異なる場合について県知事が決定すると定めているが、県知事本人の問題の場合は決定の公平性に疑問が残るため、知事は第三者機関である審査委員会を設置し「泰阜村が住所である」と結論付けた。結局長野市が納得せず、是非については裁判になった。最終的には2004年(平成16年)11月18日、最高裁判所第一小法廷が田中知事側の上告を棄却したことにより、田中知事の泰阜村の住所を認めないことが確定した。
- 地方公共団体による住民登録拒否事件
- Aleph(旧オウム真理教)など、特定の宗教団体の信者に対して、現にその市区町村に居住しているにも関わらず、地方公共団体が住民登録を拒否する事例が相次いだ。これらは行政裁判で争われた結果、全ての地方公共団体が全面敗訴の確定判決となり、判例により新宗教信者の住民登録が全て認められている。
- 最高裁判所は「法定の届出事項に係る事由以外の事由を理由として、転入届を受理しないことは許されず、住民票を作成しなければならない」として、たとえ「地域の秩序が破壊され、住民の生命や身体の安全が害される危険性が高度に認められるような特別の事情」があったとしても、転入届の不受理といったことは出来ないと、判決理由を挙げた。
- 「生活の本拠」としての実体の有無
- 住所としての登録に関して、社会通念上の生活の本拠としての客観的な実体を具備しているがどうかが問題となる場合がある。
- 大阪市北区の公園を住所とする転居届を受理しなかった区の処分を違法として、ホームレスの男性が争っていたが、2008年(平成16年)10月3日最高裁判所第二小法廷は、「都市公園法に違反して、不法に設置されたキャンプ用テントを起居の場所とし、公園施設である水道施設等を利用して生活していた事実関係の下においては、社会通念上、テントの所在地が客観的に生活の本拠としての実体を具備しているものと見ることはできない」として、この男性の上告を棄却した。
- 住民登録上の住所に居住していないことが判明した場合(日雇い労働者、ホームレスなど。ネットカフェ難民も含まれるが、両者が同時に扱われることは少ない)、住民票の記載を消される場合があり、実務上は「職権消除」という。大阪市では、あいりん地区(釜ヶ崎)の釜ヶ崎解放会館などに「便宜上の住所登録を行うこと」が黙認されていた。しかし、このことが表面化すると、2007年(平成15年)3月29日、統一地方選挙に合わせて、關淳一市長は彼等の住民票を職権消除した。これは選挙権は住民票がないと行使できないため、選挙権を剥奪するためであった。詳細はあいりん地区#住民登録問題を参照。また、借金取りや虐待を行う者に現住所を知られないためにあえて住民票を異動しない人もいる。
- 埼玉県蕨市のインターネットカフェCYBER@CAFEは、利用者向けのサービスとして、30日以上の継続した利用契約をした場合に限り、住民登録を行っている。蕨市は、「ネットカフェでの登録は想定外、でも、住んでいるということなら…」として、現状では黙認している[8]。しかし、東京都内にある2店では住民登録はできない[9](ネットカフェ難民の項目も参照)。
- 現在の居所で、住民登録している事実がない状況で、何か事件を起こし、逮捕された場合には「住所不定」として報道される事になる。
- 国際結婚
- 日本人と外国人が結婚(国際結婚)した場合、外国籍の配偶者や子供(日本国籍との多重国籍の場合を除く)が、戸籍謄本に記載があっても住民票に記載されないという課題が指摘されていた。2012年(平成24年)7月9日からは、在留カード所持の日本の外国人(中長期滞在者や特別永住者)についても、住民票が作成されることとなった。
脚注
- ↑ 査証を受けている90日以上の滞在資格取得者
- ↑ 総務省「外国人住民に係る住民基本台帳制度について」
- ↑ 総務省「住民票の写しの交付制度等の見直し」
- ↑ 配偶者からの暴力(DV)、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の方は、申出によって、住民票の写し等の交付等を制限できます。総務省
- ↑ コンビニエンスストアにおける証明書等の自動交付(コンビニ交付)ホームページ 地方自治情報センター
- ↑ 森本晶彦 「自治体とタッグ コンビニ進化」 『産経新聞』 2010年2月15日付け朝刊、東京本社発行12版、20面。
- ↑ 「コンビニで住民票受け取り まず3市区でサービス始まる、住基カード必要」 『朝日新聞』 2010年2月3日付朝刊、東京本社発行最終版、5面。
- ↑ メディア掲載情報(CYBER@CAFE)。
- ↑ 伊藤典俊「景気ショック ゆらぐ足元で--住民登録 ネットカフェで「長期滞在者 次の足場へ」」『朝日新聞』2008年12月30日付朝刊、第13版、第22面。
関連項目
- 住民基本台帳ネットワークシステム - 個人番号カード - 住民票コード
- 住民基本台帳カード
- 戸籍
- 学齢簿 - 就学事務
- 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律
- 特別住民票
- ふるさと住民票
- 住民記録システム
- 選挙権
- 外国人登録制度
- 寄留 - 住民票が法制化される以前の住居地登録制度。