市町村

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市町村(しちょうそん)とは、地方公共団体であるの総称。日本の基礎的地方公共団体地方自治法2条3項では「基礎的な地方公共団体」)として、包括的(広域的)地方公共団体である都道府県に対比される。

市町村は基礎自治体でもあるが、日本の基礎自治体にはほかに特別区(都の区)があり、合わせて市区町村(しくちょうそん)または市町村区(しちょうそんく)という。東京都では、都内で人口最多の基礎自治体が市ではなく特別区23区)なので、公的には区市町村(くしちょうそん)という[1]

2016年(平成28年)10月10日現在の数

基礎自治体
    791
744
183
市町村計 1718
特別区 23
総計 1741

である[2]

地方自治法は、以下で条数のみ記載する。

市町村の歴史

1889年(明治22年)、国会開設に先立ち、府県制などと並ぶ明治憲法下の地方制度として、北海道沖縄県などを除く本土に、市制および町村制が施行された。これらは地方公共団体としての市・町村を対象とした法で、地方における行政事務と警察事務の執行のために、地方官官制(明治19年勅令第54号)が別に定められた。

1911年(明治44年)には市制(法律第68号)と町村制(法律第69号)に分けられ、その後も大きな改正が行われている。

終戦直後の1947年(昭和22年)、地方自治法の制定に伴い廃止された。

現在でも「町(村)が市となる処分」があったことを「市制施行」というのはこの名残である。

市・町・村の条件

は以下の要件を満たさなければならない(8条第1項)。

  • 人口5万人以上。ただし1965年(昭和40年)以降は、市町村の合併の特例に関する法律平成16年法律第59号の新法では第7条)の規定が適用されれば3万人以上。
  • 中心的市街地に全戸数の6割以上がある。
  • 商工業その他の都市的な業態に従事する者及びそれと同一世帯に属する者の数が全人口の6割以上。
  • 当該都道府県条例で定める都市的施設その他の都市的要件を備えている。

となるためには、当該都道府県がそれぞれ条例で定める「町」としての各要件(人口、連坦戸数あるいは連坦率、必要な官公署等、産業別就業人口割合等)を具備する必要がある(8条2項)。

村の法的な要件は、特段定めはない。市の要件も町の要件も満たさなければ、自動的に村となる。

市・町・村間の移行

町村が市に、あるいは、村が町になるためには、関係市町村の申請に基づいて都道府県知事都道府県議会の議決を経て決定し、直ちに総務大臣に届け出る(8条3項)。

市制施行後にその要件を満たさなくなった市が町や村に、あるいは町制施行後に要件を満たさなくなった町が村に戻ることについても、前述と同様の手続きを踏むことで実施できるが(8条3項)、2015年(平成27年)現在までに行われたことは一度もない。

市が町村に、または町が村に戻れば、一部の業務を都道府県の管轄に移管することができる。これにより自治体の行政の負担が軽くなるというメリットが見込めるが、一方で業務軽減に応じて地方交付税の交付額が減額されたり、職員の名刺や印刷物の表記変更などに膨大な事務量がかかるなどのデメリットがある。深刻な財政難に陥った北海道夕張市では、2006年(平成18年)に町に移行することを本格的に検討したが、こうした理由から、移行せずに終わっている[3]。また、市が町村に、または町が村になることには、「降格」というイメージがあるため(地方自治法上、上下関係は定められていない)、市民の誇りやモチベーションに与える影響を危惧し、歌志内市や三笠市のようにそもそも移行を検討しない自治体もある[3]

移行は義務ではない。たとえば茨城県美浦村東海村は、いずれも町制施行の要件(茨城県の人口要件は5000人)を満たしているが、町制施行していない。2013年(平成25年)現在、逆に、ピーク時には人口約4万6000人を数えた北海道歌志内市は、後の過疎化によって町制施行基準の人口5000人をも下回り、村の規模になっているが、町や村に移行していない。

町となるための人口要件

下限 都道府県(村の有無は2010年(平成22年)現在)
村あり 村なし
1万5000人 栃木県
1万0000人 岩手県 群馬県 東京都 新潟県 福井県 香川県
8000人 青森県 山形県 福島県 長野県 大阪府 奈良県 島根県 高知県 大分県 沖縄県 石川県 静岡県
7000人 佐賀県
5000人 北海道 宮城県 秋田県 茨城県 埼玉県 千葉県 神奈川県 山梨県 岐阜県 愛知県 京都府 和歌山県 徳島県 福岡県 熊本県 宮崎県 鹿児島県 三重県 滋賀県 山口県 愛媛県
4000人 鳥取県 広島県 長崎県
3000人 富山県 岡山県 兵庫県

原則として単独町制の場合であり、合併促進のために特例を設けている都道府県もある。

廃置に伴う「降格」

市または町を廃し、同地に(要件を満たしていないなどの理由で)町または村を新設すれば、市または町から町または村へ「降格」されたように見える。しかしこの場合、たとえ名前が(「市」「町」「村」部分を除いて)同じでも、旧市町と新町村は別個の地方公共団体であり、法人格は連続していない。

実際にはこのようなことは、他の廃置分合や境界変更を伴う場合に起こり、たとえば、以下の例が挙げられる。

神奈川県渋谷町→渋谷村(現・大和市)
町域の一部が他市に編入され、残った町域で町が廃され同時に村が新設された。
長野県宮田町→駒ヶ根市宮田村
他の自治体と合併して市となった後、再度分離独立して村が新設された。

「降格」が回避されたケースとしては、加美町がある。平成の大合併の際、宮城県加美郡では中新田町小野田町宮崎町色麻町の4町が合併して加美市を作る構想があった。しかし、途中で色麻町が合併協議を離脱したため、合計人口が3万人を割り込んで市制の条件を満たさなくなり、さらに中心部の建物の密度が県条例で定める町の要件に満たなかったので、合併によって逆に村に「降格」するのではと取り沙汰された。最終的には、県条例を改正した結果、加美町として合併することとなった[4]

なお、地方自治法上、市町村間に「格」の違いや上下関係は存在しない。従って「降格」や「昇格」といった概念もないが、加美町の事例を取り上げた西日本新聞社のニュースで「降格」「昇格」という用語が用いられたり、「残念」「みっともない話」とする市民の声が取り上げられたように、市が町・村よりも格上、町が村よりも格上と感じる意識は住民の間に存在している[4]

機能

市町村は、自治事務を行い、条例規則などを制定する自治立法権などを持つ。

市・町・村での差

地方自治法上は、市町村の間で法的な取扱いについて大きな違いはないが、市のうち政令指定都市については事務配分や行政区制度に関する特例がある(252条の19第252条の20)。

町村では条例で議会を置かず、これに代えて選挙権者の総会である町村総会を設けることができる(同法第94条、第95条)。過去に町村制の施行下における神奈川県足柄下郡芦之湯村(現在の箱根町の一部)の事例と、地方自治法下における東京都八丈支庁管内宇津木村(現在の八丈町の一部。八丈小島の項参照)の事例が報告されているが、2006年平成18年)に多重債務で財政再建団体への転落が危惧される長野県木曽郡王滝村で議案(議会決議で否決)として検討されたことがある。

北方領土の村

ロシア実効支配している北方領土には、日本の村が6ヶ村ある[5]。ただし、日本の基礎自治体としては機能を喪失しており、戸籍に関する業務のみを根室市が代行している。

主な下部組織

市町村の機関には、議決機関として市町村議会が、執行機関として市区町村長、各種行政委員会などが置かれる。町村は議会を置かず選挙権者全員による総会を設けることもできる。首長市長町長、村長、特別区区長)と地方議会議員は、住民による選挙によって選出される。

市町村の中の町・村

市町村の区域内の「〜町」「〜村」のほとんどは、公式なものであっても、(あざ)と同様に、法人格を持たず、地理上の区域にすぎない。歴史的には江戸時代の町村に由来するが、長い間に廃置分合が相次いだため、現在では単純な対応関係にない。江戸時代の町村の多くは現在の市町村内の大字の区画に痕跡を残す。

ただし、「〜町」「〜村」という名の地域自治区合併特例区もある。地域自治区は市町村の下部組織である。合併特例区は法人格を持ち、特別区と同じく特別地方公共団体で、多くの場合ごく最近まで独立した市町村だった。

村が存在しない都道府県

1962年(昭和37年)に兵庫県1970年(昭和45年)に香川県で最後まで残った村が町制を施行したことにより村が消滅した。長らくこの2県が村が無い県となっていたが、平成の大合併により2004年(平成16年)に広島県で村が消滅したのを皮切りに、平成の大合併により村が消滅した県は11県にものぼる。

なお、「市」と「町」は全ての都道府県に存在する。

村が存在しない県の一覧

地方 県名 消滅日 備考
関東地方 栃木県 2006年(平成18年)3月20日 栗山村が新設合併により日光市の一部となる
中部地方 石川県 2005年(平成17年)3月1日 柳田村が新設合併により能登町の一部となる
福井県 2006年(平成18年)3月3日 名田庄村が新設合併によりおおい町の一部となる
静岡県 2005年(平成17年)7月1日 龍山村浜松市に編入合併
近畿地方 三重県 2006年(平成18年)1月10日 鵜殿村が新設合併により新制紀宝町の一部となる
宮川村が新設合併により新制大台町の一部となる
滋賀県 2005年(平成17年)1月1日 朽木村が新設合併により高島市の一部となる
兵庫県 1962年(昭和37年)4月1日 阿閇村が町制施行により播磨町となる
中国地方 広島県 2004年(平成16年)11月5日 豊松村が新設合併により神石高原町の一部となる
山口県 2006年(平成18年)3月20日 本郷村が新設合併により岩国市の一部となる
四国地方 香川県 1970年(昭和45年)2月15日 財田村が町制施行により財田町となる
愛媛県 2005年(平成17年)1月16日 朝倉村関前村が新設合併により新制今治市の一部となる
九州地方 佐賀県 2006年(平成18年)3月20日 脊振村が新設合併により神埼市の一部となる
長崎県 2005年(平成17年)10月1日 大島村が新設合併により平戸市の一部となる

「町」と「村」の読み方

「町」は「まち」か「ちょう」、「村」は「むら」か「そん」と読めるが、その読みは町村単位で明確に定められている。

基本的に「町」「村」の読み方は都道府県単位で固定化される傾向があるが、音訓の関係や慣例により少数の例外が存在する場合もある。

「町」の読み方についてはばらつきがあるが、関東地方の町は全て「まち」、近畿・四国地方の町は全て「ちょう」である。北海道を除く東日本は「まち」が多いが、特に岩手県宮城県ではどちらが多数ともいえない割合で混在している。逆に、西日本は「ちょう」が多いという傾向があるが、九州では県単位でのばらつきがあり明確な法則があるわけではない。

「村」の読み方は鹿児島県を除き都道府県単位で固定化されている。東日本から近畿地方にかけては全て「むら」であるが、西日本の一部では「そん」となっており、19もの村がある沖縄県は全て「そん」である。

「町」の読み

※混在する例のうち、同じ読みが各都道府県における町の総数の概ね8割以上を占める場合は多数側の読みを示し、残りを例外として備考に表記した。また、個別に列記する場合は、多数側を上段にした。

地方 都道府県名 読み 備考
北海道地方 北海道 ちょう※ ※全129町中、128町。森町の1町のみが「まち」
東北地方 青森県 まち※ ※全22町中、19町。おいらせ町南部町階上町の3町は「ちょう」
岩手県 混在 ちょう 雫石町紫波町矢巾町金ケ崎町平泉町住田町大槌町岩泉町洋野町(9町)
まち 葛巻町岩手町西和賀町山田町軽米町一戸町(6町)
宮城県 まち 美里町加美町松島町七ヶ浜町川崎町村田町大河原町柴田町丸森町蔵王町七ヶ宿町(11町)
ちょう 利府町大和町大郷町亘理町山元町女川町色麻町涌谷町南三陸町(9町)
秋田県 まち 五城目町八郎潟町井川町藤里町羽後町小坂町(6町)
ちょう 美郷町三種町八峰町(3町)[6]
山形県 まち※ ※全19町中、18町。河北町の1町のみが「ちょう」
福島県 まち (全31町)
関東地方 茨城県 (全10町)
栃木県 (全11町)
群馬県 (全15町)
埼玉県 (全22町)
千葉県 (全16町)
東京都 (全3町)
神奈川県 (全13町)
中部地方 新潟県 (全6町)
富山県 (全4町)
石川県 混在 まち 川北町津幡町内灘町志賀町中能登町穴水町(6町)
ちょう 宝達志水町能登町(2町)[6]
福井県 ちょう (全8町)
山梨県 ちょう※ ※全8町中、7町。富士河口湖町の1町のみが「まち」
長野県 まち※ ※全23町中、22町。阿南町の1町のみが「ちょう」
岐阜県 ちょう (全19町)
静岡県 ちょう※ ※全12町中、11町。森町の1町のみが「まち」
愛知県 ちょう (全14町)
近畿地方 三重県 (全15町)
滋賀県 (全6町)
京都府 (全10町)
大阪府 (全9町)
兵庫県 (全12町)
奈良県 (全15町)
和歌山県 (全20町)
中国地方 鳥取県 (全14町)
島根県 ちょう※ ※全10町中、9町。川本町の1町のみが「まち」
岡山県 ちょう (全10町)
広島県 (全9町)
山口県 (全6町)
四国地方 徳島県 (全15町)
香川県 (全9町)
愛媛県 (全9町)
高知県 (全17町)
九州地方 福岡県 まち※ ※全30町中、29町。遠賀町の1町のみが「ちょう」
佐賀県 ちょう※ ※全10町中、9町。江北町の1町のみが「まち」
長崎県 ちょう (全8町)
熊本県 まち※ ※全23町中、20町。あさぎり町山都町氷川町の3町は「ちょう」[6]
大分県 まち (全3町)
宮崎県 ちょう (全14町)
鹿児島県 (全20町)
沖縄地方 沖縄県 (全11町)

「村」の読み

村が1つも存在しない県は表から省略した。

地方 都道府県名 読み 備考
北海道地方 北海道 むら (全15村)
東北地方 青森県 (全8村)
岩手県 (全5村)
宮城県 大衡村の1村のみ
秋田県 (全3村)
山形県 (全3村)
福島県 (全15村)
関東地方 茨城県 (全2村)
群馬県 (全8村)
埼玉県 東秩父村の1村のみ
千葉県 長生村の1村のみ
東京都 (8村)
神奈川県 清川村の1村のみ
中部地方 新潟県 (全4村)
富山県 舟橋村の1村のみ
山梨県 (全6村)
長野県 (全35村)
岐阜県 (全2村)
愛知県 (全2村)
近畿地方 京都府 南山城村の1村のみ
大阪府 千早赤阪村の1村のみ
奈良県 (全12村)
和歌山県 北山村の1村のみ
中国地方 鳥取県 そん 日吉津村の1村のみ
島根県 むら 知夫村の1村のみ
岡山県 そん (全2村)
四国地方 徳島県 佐那河内村の1村のみ
高知県 むら (全6村)
九州地方 福岡県 (全2村)
熊本県 (全8村)
大分県 姫島村の1村のみ
宮崎県 そん (全3村)
鹿児島県 混在 むら 三島村十島村(2村)
そん 大和村宇検村(2村)
沖縄地方 沖縄県 そん (全19村)

統計と一覧

都道府県別市町村数

総務省のまとめに基づく市町村数を以下に示す。なお、最新の市町村合併は2014年4月5日であり、最新の市制施行は2016年10月10日である[7]

都道府県 基礎自治体(基礎的地方公共団体)の数
市町村数 特別区 基礎自治体総数
北海道 179 35 129 15 0 179
青森県 40 10 22 8 0 40
岩手県 33 14 15 4 0 33
宮城県 35 14 20 1 0 35
秋田県 25 13 9 3 0 25
山形県 35 13 19 3 0 35
福島県 59 13 31 15 0 59
茨城県 44 32 10 2 0 44
栃木県 25 14 11 0 0 25
群馬県 35 12 15 8 0 35
埼玉県 63 40 22 1 0 63
千葉県 54 37 16 1 0 54
東京都 39 26 5 8 23 62
神奈川県 33 19 13 1 0 33
新潟県 30 20 6 4 0 30
富山県 15 10 4 1 0 15
石川県 19 11 8 0 0 19
福井県 17 9 8 0 0 17
山梨県 27 13 8 6 0 27
長野県 77 19 23 35 0 77
岐阜県 42 21 19 2 0 42
静岡県 35 23 12 0 0 35
愛知県 54 38 14 2 0 54
三重県 29 14 15 0 0 29
滋賀県 19 13 6 0 0 19
京都府 26 15 10 1 0 26
大阪府 43 33 9 1 0 43
兵庫県 41 29 12 0 0 41
奈良県 39 12 15 12 0 39
和歌山県 30 9 20 1 0 30
鳥取県 19 4 14 1 0 19
島根県 19 8 10 1 0 19
岡山県 27 15 10 2 0 27
広島県 23 14 9 0 0 23
山口県 19 13 6 0 0 19
徳島県 24 8 15 1 0 24
香川県 17 8 9 0 0 17
愛媛県 20 11 9 0 0 20
高知県 34 11 17 6 0 34
福岡県 60 28 30 2 0 60
佐賀県 20 10 10 0 0 20
長崎県 21 13 8 0 0 21
熊本県 45 14 23 8 0 45
大分県 18 14 3 1 0 18
宮崎県 26 9 14 3 0 26
鹿児島県 43 19 20 4 0 43
沖縄県 41 11 11 19 0 41
総計 1718 791 744 183 23 1741

一覧

都道府県別一覧へのリンク

市町村合併の歴史

1950年(昭和25年)以降のものは、以下の各ページに一覧形式で掲載。 テンプレート:市町村合併データ

それ以前のものは、カテゴリ:日本の郡以下の各の項目(郡に属していない東京都島嶼部を除く)、あるいは各市町村などの項目を参照。

脚注

関連項目