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将軍家光の乱心 激突 | |
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幕府風雲 激突 Shogun's Shadow | |
監督 | 降旗康男 |
脚本 | 中島貞夫・松田寛夫 |
原作 | 中島貞夫・松田寛夫 |
出演者 |
緒形拳 加納みゆき 二宮さよ子 長門裕之 茂山逸平 丹波哲郎 京本政樹 胡堅強 松方弘樹 千葉真一 兼 アクション監督 |
音楽 | 佐藤勝 |
主題歌 | THE ALFEE 「FAITH OF LOVE」 |
撮影 | 北坂清 |
編集 | 玉木濬夫 |
製作会社 | 東映 |
配給 | 東映 |
公開 | 1989年1月14日 |
上映時間 | 111分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
配給収入 | 5.4億円[1] |
『将軍家光の乱心 激突』(しょうぐんいえみつのらんしん げきとつ、幕府風雲 激突, Shogun's Shadow)は、1989年の日本映画。監督:降旗康男、アクション監督:千葉真一、製作:東映、カラー・ワイド・ビスタ・サイズ、111分。第39回ベルリン国際映画祭招待作品。
解説
「ザ・痛快・時代劇」「命がけだからおもしれぇ」をテーマにし、アクション・サスペンスを盛り込み、異なる戦闘・戦術のプロフェッショナルである7人の浪人が、徳川幕府から放たれた剣豪・大軍と壮絶な死闘を展開する作品[2][3]。映画の最も面白い要素の一つ、ある者を巡って繰り広げられる攻防に、浪人たちの奇抜な戦闘・戦術が描かれている[3]。アクション監督の千葉真一は、幾重にも立ち塞がる強敵を倒し、様々な危険を突破していく冒険活劇を時代劇で製作したかったため、戦いと冒険がストーリーの中心になっている[4]。千葉が企画した作品ではあるものの、自身は主演でなくアクション監督として演出に専念[4][5][6]。監督の降旗康男は千葉の演出時には裏方へ回り、「ドラマとアクションが互いに相乗効果となり、千葉ちゃんと私を頭にして、スタッフ・キャストの皆で創り上げた」と語っている[4]。伊庭庄左衛門役の千葉のクレジットタイトルもキャストロールではなくスタッフロールに表記されており、千葉率いるジャパンアクションクラブ (JAC) の甲斐道夫に伊庭の演技を一部吹き替えさせ、スタント全てをJAC が受け持つようにした[4][5][6]。
俳優・スタントマン全員に掛けられた保険金の総額は4億円に及び、JAC 所属の真矢武と浅利俊博のみが全て自分で演じている[6][7]。このような過程で出来上がったシーンの中には、西部劇『ワイルドバンチ』、映画『明日に向かって撃て!』、山田風太郎の伝奇小説へのオマージュもある[4][5]。ほかにも絶壁から川への飛び込みは映画『柳生一族の陰謀』、竹をしならせて飛び降り馬を強奪するのはテレビドラマ『柳生一族の陰謀』第11話「幻の混血美女」、馬の脇腹に隠れての乗馬は第27話「美女と野獣」、馬の転倒は映画『戦国自衛隊』、峡谷での綱渡りはテレビドラマ『影の軍団IV』第17話「魔女三人江戸を裂く」、ロープにぶら下がってブランコのように飛び移りは映画『燃える勇者』など、かつて千葉真一が演じ・演出したスタントをアレンジして再現された[4]。乗馬・騎馬では千葉が『戦国自衛隊』で重用したクォーターホースを本作でも再び採用した[5][6]。全編を網羅する馬は八ヶ岳周辺の牧場などから計1,500頭を調達しており、馬もケガのないよう、転倒シーンでは入念な準備とリハーサルを行い、撮影されている[4][6]。東映京都撮影所のほか、城陽市のオープンセット・富士山の麓(御殿場)・弘法池近辺にある手取渓谷・姥ケ滝・宇曽川・京都下鴨神社・京都大覚寺・永観堂など各地でロケーション撮影が行われた[3][4][6][8]。
海外からもスタッフ・俳優を招聘。映画『タワーリング・インフェルノ』『炎の少女チャーリー』で、炎に焼かれる人々を手がけたファイアースタントコーディネーターのジョージ・フィッシャーが、終盤の「人馬もろとも、火だるまになりながら疾走する」というアクション効果を担当した[4][6]。日本映画として初の試みで、スタントは卯木浩二が行っている[4][6]。7人のプロフェッショナルには、『少林寺2』や『酔拳2』に出演した中華人民共和国の俳優・胡堅強が様々な中国武術を披露し、時代劇初出演の織田裕二や悪役・脇役が中心の成瀬正孝が抜擢された。主題歌・挿入歌を担当した高見沢俊彦は、映画『魔界転生』の天草四郎と瓜二つの格好で宣伝したが、設定は1651年であるため繋がりはない。
タイトルは当初『激突』だけであったが、“将軍家光の乱心”を岡田茂が付け加えた[9]。
ストーリー
三代将軍・徳川家光の後継者である竹千代は、乳母の矢島局と共に渓谷の湯屋で保養していたが、老中阿部重次の命を受けた伊庭庄左衛門が指揮する根来忍者集団に襲撃される。そこに、堀田正盛が雇った石河刑部とその配下である多賀谷六兵衛・砥部左平次・祖父江伊織・郡伝右衛門・土門源三郎・猪子甚五右衛門らが現れ、刺客たちを蹴散らした。竹千代と矢島局は石河たちに無事救出され、堀田家に保護される。竹千代を討ち漏らした阿部は堀田家を訪れ、「5日後に竹千代の元服式を行うので、江戸城に来るように」という家光の命令を伝え、江戸に戻る。この際、堀田家を去ろうとする阿部は石河刑部と再会する。石河は阿部家において軍事作戦を立案する物頭(ものがしら)だったが、主人は自らの立身のために石河の妻だった己の実妹を家光に差し出した過去があった。侍を辞め用心棒になった石河と竹千代暗殺を企む阿部。両者の因縁は断ち切れないものになった。
翌朝、堀田は罠と知りつつ竹千代を伴い江戸に向かうが、その日の夜に伊庭に襲撃され殺害される。しかし、堀田の一行は伊庭を欺くための囮であり、竹千代は石河たちと共に山中を江戸に向かっていた。伊庭は山中を捜索するが、矢島が不用意に火を起こしたため居場所が発覚し、竹千代は捕まり鉱山に監禁されてしまう。石河たちは鉱山を爆破して竹千代を救出するが、事態を知った伊庭は阿部の威光を借りて古河藩の藩兵を動員した山狩りを行う。追撃から逃れる中、竹千代は「命を狙うのは父上か」と問いかけ、矢島は命を狙われる理由が、精神に異常をきたしていた家光が「竹千代は自分に似ていないから」という理由で阿部に暗殺を命じたことを語る。矢島は竹千代が世継ぎにならなくてもいいと考え、竹千代と共に将軍家を去ろうとするが、竹千代は父・家光と対決することを決意する。石河たちは理不尽な理由で竹千代を殺そうとする家光への怒りと、それに立ち向かう竹千代に意気を感じ、彼を護衛して江戸城へ向かう。伊庭と古河藩の追撃により石河の仲間は次々に討たれ、一行は宿場町に追い詰められてしまう。竹千代を引き渡すように求める伊庭に対し、石河は一騎打ちを申し込む。斬り合いの末に石河は伊庭を討ち取るが、それを見た古河藩兵が襲いかかってくる。石河たちは逃げ込んでいた油屋の油に火を点けて宿場町を火の海にし、混乱に乗じて江戸城に向かおうとするが、銃撃された石河は落馬してしまう。石河は竹千代を無事に江戸城に送り届けるように促して逃がす。前後を武装した古河藩兵にかこまれた石河は両手に刀を持ち、絶望的な人の壁へ駆け出していく場面がストップモーションとなり叙述は閉じる。
竹千代は無事に江戸城に到着するが、それを聞いた家光は激怒し、阿部に竹千代を暗殺するように命じる。しかし、阿部は「城内での暗殺は大名たちに隠し切れない」として拒否し、家光はお万の方に暗殺を命じる。お万は竹千代を毒殺しようとするが、矢島に遮られてしまう。お万は、矢島の持つ仕込み小刀を見て、それが夫だった石河の物だと気付き、毒殺を止めて竹千代を家光に引き合わせる。乱心した家光は竹千代を斬り捨てようとするが、竹千代を守ろうと身を乗り出した矢島が斬られ、彼女は仕込み小刀で家光を刺し殺す。裏切りをなじる家光に対し、お万は「愛する者を奪った」と積年の恨みをぶつけ、家光の死体を前にして狂喜する。事態を知った阿部は「上様は急の病で亡くなられた」と公表し、竹千代が次期将軍に選ばれる。家光の葬儀が執り行われる中、竹千代は家光の位牌に抹香を投げつけ、阿部は全ての責任を負って自害する。
スタッフ
- プロデューサー : 本田達男・厨子稔雄・中島正久
- 原作・脚本 : 中島貞夫・松田寛夫
- 企画 : 日下部五朗
- 撮影 : 北坂清
- 美術 : 井川徳道
- 照明 : 渡辺喜和
- 編集 : 玉木濬夫
- 整音 : 荒川輝彦
- 録音 : 堀池美夫
- 助監督 : 清水彰・萩原将司・南光・山下耕一郎・石川一郎
- 記録 : 森村幸子
- 進行主任 : 野口忠志
- ファイアースタントコーディネーター : ジョージ・フィッシャー
- スチール : 中山健司
- 音楽 : 佐藤勝
- 装置 : 広瀬哲三・稲田源兵衛
- 装飾 : 渡辺源三
- 背景 : 西村三郎
- 衣裳 : 森護
- 美粧 : 鳥居清一
- 結髪 : 福本るみ
- 美術助手 : 秋好泰海
- 撮影助手 : 深沢伸行・雨宮良朋・松本嘉通・板野元宣
- 照明助手 : 吉井和夫・沢田敏夫・本田純一・中島淳司・花村浩・鈴木賢一
- 録音助手 : 佐俣マイク・四方裕幸
- 音響助手 : 竹本洋二・和田秀明
- 編集助手 : 永井靖子・寿野俊之
- 装置助手 : 丸井一利
- 装飾助手 : 三木雅彦・加藤強
- 衣装助手 : 片山郁江・古賀博隆
- 美粧助手 : 大村弘二
- 結髪助手 : 小林直美
- 進行 : 下戸聡
- 演技事務 : 佐浪正彦
- 擬斗 : 谷明憲
- アクション助手 : 山岡淳二
- セッティング : 中牟田了・松橋勲・小川敏明
- U.S.コーディネーション : C.E.I., レスリー・カーニー、加藤千代美
- 宣伝チーフ : 松田仁・藤沢正博・西嶋光弘
- 製作宣伝 : 丸国鑑
- キャスティング : 葛原隆康
- スタント&アクション : ジャパンアクションクラブ (JAC )
キャスト
- 役名表記
- その他
- 栗原敏 : 伊庭庄左衛門の家来の侍A
- 関根大学 : 伊庭の家来の侍B
- 崎津隆介 : 伊庭が率いる根来忍者A
- 甲斐道夫 : 伊庭が率いる根来忍者Bと、石河刑部と戦う伊庭(一部)[6]
- 清家利一 : 伊庭が率いる根来忍者C
- 塩谷庄吾 : 伊庭が率いる根来忍者D
- 稲田龍雄 : 堀田正盛の家来
- 久保田香織 - 矢島局の乗馬[6]
- 卯木浩二 - 多賀谷六兵衛(川への飛び込み、乗馬の一部、火だるま)[6]
- 高良隆志 - 石河の乗馬(一部)、伊庭と戦う石河(一部)[6]
- 佐々木俊彦 - 砥部左平次の乗馬[6]
- 諸鍛冶裕太 - 馬と共に崖を墜落、スタントのリハーサルを担当[6]
- 井上清和
- 西村陽一
- 藤川聡
- 武田滋裕
- 得居寿
- 二宮秀夫
- 中村健人
- 坂本隆
- 奥住英明
- 村上良一
- 辻本良紀
- 野々村仁
- 宮本浩充
- 野中博之
主題歌・挿入歌
- メインテーマ : FAITH OF LOVE
- ファイティングテーマ : YOU GET TO RUN
- 作詞・作曲 : 高見沢俊彦
- 編曲・唄 : THE ALFEE
販売
- 千葉真一 (1989年1月13日) (Color). なんだ、こいつら。JACスーパーアクション in 激突 (VHS). 東映ビデオ.
- ※映画公開と同時に販売されたメイキングビデオ
- 1989年に原作小池一夫、作画小島剛夕で勁文社よりコミックが発売された。2009年1月には小池書院から再版された。
- 勁文社版 - 『激突』上下巻
- 小池書院版 - 『徳川家光の乱心・激突』全1巻 ISBN 978-4862254054
- グループ・ゼロ版 - 勁文社版を底本とした電子書籍版
- DVDは2002年7月21日と2009年10月21日の2回発売されている。
脚注
- ↑ 「1989年邦画3社<封切配収ベスト作品>」、『キネマ旬報』1990年(平成2年)2月下旬号、キネマ旬報社、1990年、 176頁。
- ↑ “将軍家光の乱心 激突”. 日本映画製作者連盟. . 2012-2-18閲覧.
- ↑ 3.0 3.1 3.2 「時代劇、東映だからおもしれえ!」 (パンフレット) 、『将軍家光の乱心 激突』、東映 (株) 映像事業部、1989年1月14日、 4 - 5頁。
- ↑ 4.0 4.1 4.2 4.3 4.4 4.5 4.6 4.7 4.8 4.9 田沼雄一「映画の夢に情熱を燃やす男たちが作るアクション正統派時代劇『激突』の魅力」 (パンフレット) 、『将軍家光の乱心 激突』、東映(株)映像事業部、1989年1月14日、 14 - 19頁。
- ↑ 5.0 5.1 5.2 5.3 JJサニー千葉 『千葉流 サムライへの道』 ぶんか社、2010年、193 - 195。ISBN 4821142694。
- ↑ 6.00 6.01 6.02 6.03 6.04 6.05 6.06 6.07 6.08 6.09 6.10 6.11 6.12 6.13 JACスーパーアクション in 激突。
- ↑ 『激突』を盛り上げたJACコマンドの精鋭たち、21頁。
- ↑ クレジットタイトルより。
- ↑ 杉作J太郎、植地毅 『トラック野郎 浪漫アルバム』 徳間書店、2014年。ISBN 978-4198637927。
関連項目
- 劇中の舞台