黄熱
黄熱(おうねつ、英: yellow fever)は、ネッタイシマカ (Aedes aegypti) などのなどのカ(蚊)によって媒介されるフラビウイルス科フラビウイルス属に属する黄熱ウイルスを病原体とする感染症。感染症法における四類感染症。黄熱病と同義。発熱を伴い、重症患者に黄疸が見られることから命名された。
概要
熱帯アフリカと中南米の風土病である。黒色嘔吐を起こすことから通称を「黒吐病」という。日常生活におけるヒトからヒトへの直接感染はない。
感染する可能性がある国、地域
アフリカ(五十音順):アンゴラ、ウガンダ、エチオピア、カメルーン、ガーナ、ガボン、ガンビア、ギニア、ギニアビサウ、ケニア、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、コートジボワール、シエラレオネ、スーダン、セネガル、赤道ギニア、中央アフリカ、チャド、トーゴ、ナイジェリア、ニジェール、ブルキナファソ、ブルンジ、ベナン、マリ、南スーダン、リベリア、モーリタニア [1]。
アメリカ(五十音順):アルゼンチン、エクアドル、ガイアナ、コロンビア、スリナム、パナマ、フランス領ギアナ、ブラジル、ペルー、ベネズエラ、ボリビア、トリニダード・トバゴ(トリニダード島のみ)、パラグアイ [2]。
症状
潜伏期間は3 - 6日で、突然の発熱、頭痛、背部痛、虚脱、悪心・嘔吐で発症する。発症後3 - 4日で症状が軽快し、そのまま回復することもある。しかし、重症例では、数時間から2日後に再燃し、発熱、腎障害、鼻や歯根からの出血、黒色嘔吐、下血、子宮出血、黄疸などがみられる。
治療
予防接種
流行地域や流行可能地域は、出入国管理に際して国家機関発行による国際予防接種証明書(イエローカード)が求められる。かつて、イエローカードの有効期間は、接種10日後から10年間とされてきたが、世界保健機関は、2016年7月11日より、生涯有効に延長することを勧告した。
これに伴い、日本で発行される黄熱予防接種証明書の有効期間も、1回の接種で生涯有効となった[3]。なお2016年(平成28年)7月11日の時点で、既に有効期限が切れているイエローカードも有効である。
日本では、イエローカードの発行権限の関係から、指定された検疫所と国立国際医療研究センターでのみ予防接種を受けられる。
生産される生ワクチンは、発育鶏卵に接種して作られている。このため、接種予定者が卵アレルギーであれば、予防接種を受けることが出来ないが、代替処置として禁忌証明書が発行される。
黄熱病の死亡率は、30 - 50%とされている。
研究
キューバで開業した医師カルロス・フィンレーが蚊による媒介と伝染を提唱し、アメリカ軍の軍医だったウォルター・リードがパナマ運河建設に際し蚊の駆除を中心とした防疫対策を行い効果を挙げたことから、フィンレーの蚊媒介説の正しさが証明された。更に、野口英世によって黄熱の研究が手がけられるものの、その中途で感染し死亡。その後、南アフリカ出身のアメリカの微生物学者マックス・タイラー(Max Theiler、サイラーとも)が黄熱ワクチンを開発。このワクチン開発の功績によりタイラーは、1951年にノーベル医学生理学賞を受賞した。
出典
- ↑ 黄熱に注意しましょう!(厚生労働省検疫所ホームページ)2016/8/25閲覧
- ↑ 黄熱に注意しましょう!(厚生労働省検疫所ホームページ)2016/8/25閲覧
- ↑ 黄熱予防接種証明書の生涯有効とアフリカでの黄熱の監視強化(厚生労働省検疫所ホームページ)2016/8/25閲覧
関連項目
- アルボウイルス
- ワイル病:黄熱とまったくことなるレプトスピラ性発熱性疾患。野口英世は南米での発生時に黄熱と誤認している。
- 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
- 検疫法
- World Community Grid: 新薬開発の為の分散コンピューティング
- 黄熱で死亡した著名人
- 熱帯医学
- 黄熱ワクチン
外部リンク
- 黄熱について - 厚生労働省検疫所
- 感染症の話 黄熱 - 国立感染症研究所
- ウイルス第一部第2室 - 国立感染症研究所
- 黄熱ワクチンについて - メルクマニュアル家庭版
- 黄熱ワクチンについて - 名古屋検疫所