天 (仏教)
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天(てん、梵: deva)は、仏教において、下記の2つの意味がある。
- 衆生が生死流転する六道のうちの最上部にある世界のこと[1]。天界、天上界、天道など多くの名がある[1][2]。本記事で詳述。
- 1の天界にいる神や、その眷族[1]。天人、天部、天衆ともいう[2]。詳細は天部を参照。
概説
上記の1の意味における天は、天上界(てんじょうかい、てんじょうがい)[1][2]、天上、天有(てんぬ)[2]、天界(てんかい、てんがい)[3][2]、天道(てんどう)[4][2]、天上道(てんじょうどう)、天趣ともいう[1][5][2]。原語は梵: deva(デーヴァ)である[2]。
天は、この地上から遙か上方にあると考えられている[2]。五趣や六趣(六道)のうち、天は最も苦悩の少ない世界であり[1]、最高最勝の果報を受ける有情が住む清浄な世界である[3][2]。
六道における天
天道は、六道の最上位である(この文脈では天道と訳すことが多い)。そのすぐ下位が人の住む人道である。
天人は長寿で、空を飛ぶなどの神通力が使える。また、快楽に満ち、苦しみはない。
ただし、天道はあくまで輪廻の舞台である六道の1つであり、天人も衆生にすぎない。天人は不死ではなく(天人が死ぬ前には天人五衰という兆しが現れる)、死ねば他の衆生同様、生前の行いから閻魔が決めた六道のいずれかに転生する。
天人は悟りを開いてはおらず、煩悩から解放されていない。悟りを開いたものは仏陀であり、輪廻から解放され六道に属さない涅槃(浄土、極楽)へと行く。
現在の大乗仏教では人道の下に阿修羅が住む阿修羅道が位置するが、初期仏教では六道のうち阿修羅道がなく五趣とされ、阿修羅は天に住んでいた。
天台宗では六道の上に仏陀が属する仏界などの四聖を加え十界とするため、その上から第5位が天界となる。
三界における天
三界における天の分類
天は上から順に、次のような構造になっている[2]。
- 無色界[2](無色天、無色界天、四禅定) - 欲望や色(肉体や五感などの物質的世界)から超越した、精神のみの世界。禅定の段階により4天に分けられる。
- 色界[2](色天、色界天、色行天、色界十八天) - 欲望からは解放されたが、色はまだ有している世界。禅定の段階により大きく4つに分けられる。
- 欲界 कामधातु (Kāmadhātu) - 欲にとらわれた世界。
脚注
注釈
出典
- ↑ 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 “天(テン)とは - コトバンク”. 朝日新聞社. . 2017閲覧.
- ↑ 2.00 2.01 2.02 2.03 2.04 2.05 2.06 2.07 2.08 2.09 2.10 2.11 2.12 2.13 2.14 2.15 2.16 2.17 2.18 2.19 2.20 2.21 2.22 2.23 2.24 2.25 2.26 2.27 2.28 2.29 2.30 2.31 2.32 2.33 2.34 2.35 2.36 2.37 2.38 2.39 2.40 2.41 2.42 2.43 2.44 2.45 2.46 2.47 総合仏教大辞典 1988, p. 1020-1021.
- ↑ 3.0 3.1 “天上界(テンジョウカイ)とは - コトバンク”. 朝日新聞社. . 2017閲覧.
- ↑ “天界(テンカイ)とは - コトバンク”. 朝日新聞社. . 2017閲覧.
- ↑ “天道(テントウ)とは - コトバンク”. 朝日新聞社. . 2017閲覧.
参考文献
- 総合仏教大辞典編集委員会(編) 『総合仏教大辞典』下巻、法蔵館、1988-01。