かんぴょう
干瓢(かんぴょう)はユウガオの果実をひも状に剥いて乾燥させた食品である。
水で戻して煮て寿司の具材や、煮物、和え物などとして使われる。低カロリーで食物繊維に富む。
製法
気温の低い、日の出前の早朝に作業を行うことが一般的である。産地における皮むきには足踏みレバーの付いた電動の器具を用いる。ユウガオの実を、縦の軸に刺し、モーターで回転させて、横から皮むき器を当て、まず硬い外皮を取り去る。次に、ぶれの出ないように、柄を半固定したかんなの様な刃物を当てて、桂剥きのように帯状に長く剥く。 竹竿に掛けて、室内で乾燥させてから、包装する。 重さ6 - 7キログラムのユウガオから、約150グラムの干瓢が作られる。[1]
乾物の干瓢には、防カビ、防虫、変色防止のために亜硫酸ガスで硫黄燻蒸を行う漂白干瓢と、燻蒸を行わない無漂白干瓢がある。亜硫酸は有害物質であり、食品衛生法では干し干瓢1kgにつき5.0g以上残存しないように使用しなければならない[2]。
産地
江戸時代から生産されていたとされる干瓢づくりは、20世紀以後の主要な生産地は栃木県南部であり、日本の干瓢生産の8割以上を占めている。しかし、以前は関西地方が栽培の中心であった。歌川広重の東海道五十三次では水口宿の絵に干瓢を干す姿が描かれている。
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浮世絵に見える干瓢干し(東海道五十三次・水口)
食材・料理
全国的には、巻き寿司の干瓢巻きや太巻き寿司やちらし寿司の具、煮物の昆布巻きや揚げ巾着やロールキャベツの結束に用いるのが一般的な用途である。
産地の栃木県では、この他に、煮物、炒め物、金平、卵入りの干瓢汁、酢の物等にも用いることが多い。近年では、サラダ材料や揚げ物の衣としての使い方も広がりつつある。
漂白干瓢は乾物から戻す時に、塩もみと下ゆでをして硫黄の残留物を除去する必要がある。無漂白干瓢は薄い褐色で自然な甘味や旨味があり、柔らかく仕上がるが価格は漂白品に比べて一般に高い[3]。
鉄砲巻き
海苔を半分に切って直径3センチメートル程度に細巻きにした海苔巻き。乾燥させた干瓢を水で戻し甘辛く煮たものを使用。その黒い細身の姿から鉄砲巻きとも呼ばれる。食べるときは二等分に切り、さらに二等分もしくは三等分に切る。
木津巻き
寿司屋の符牒で干瓢巻きのことを木津巻きというのには、下記のように諸説があるが、いずれもゆかりの地名から取っているとされる。
- 摂津国木津が干瓢生産の発祥の地といわれ、また干瓢生産が盛んであったから。
- 山城国から木津川を下り摂津の木津へ運ばれ、そこで干瓢巻が誕生したから。大正時代から昭和にかけて大阪の市場では山城の木津干瓢はブランドとなっていた。故に、関西では干瓢のことを木津とも呼んでいた。
- 正徳二年に近江国水口藩から下野国壬生藩に国替えになった鳥居忠英が、干瓢の栽培を奨励したことが、今日の栃木県の干瓢生産の興隆につながっている。その水口藩内の産地が木津であったから。
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干瓢で結んだ昆布巻き
その他
脚注
- ↑ 最新版日本の地理5『関東地方』15頁
- ↑ 「食品添加物の指定、使用基準の改正等について」厚生労働省、2015年8月3日閲覧。
- ↑ 家森幸男、奥薗壽子 監修『すべてがわかる!「乾物」事典』 世界文化社、2013年。ISBN 9784418133420、p.45.
- ↑ “歴史とロマンの干瓢街道 平成23年秋号”. 栃木県下都賀農業振興事務所企画振興部 (2011年). . 2017閲覧.