ヒラギノ
ヒラギノ (Hiragino) は、字游工房によりデザインされた一連の書体ファミリーで、1993年に大日本スクリーン製造(後のSCREENホールディングス。事業はSCREENグラフィックアンドプレシジョンソリューションズ(現在のSCREENグラフィックソリューションズ)が承継)からプロ向けとして発売されたフォントである。macOSおよびiOSに標準搭載されているため、両プラットフォームの標準日本語フォントになっている。日本語書体としては、明朝、角ゴシック、丸ゴシック、行書、仮名専用書体があり、このほかに簡体字中国語版、繁体字中国語版もある。
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字游工房
字游工房は、写真植字大手の写研で書体デザイナーをしていた鈴木勉、鳥海修(とりのうみ おさむ)、片田啓一の3人が独立し、1989年に東京に設立した会社である。基本書体、本文用書体を作りたいという思いで字游工房を立ち上げたという。鈴木が社長を務めたが、1998年に鈴木が死去したことにより、鳥海が社長に就任した。
ヒラギノ書体シリーズ
macOS / Windows NT系対応のOpenType(otf形式=PostScriptベース)、Mac OS対応のCIDがあり、かつてMac OS対応の OCF、Windows対応の ttc形式(TrueTypeベース)が販売された。形式ごとにそれぞれフォント名が異なっている。
TrueType の等幅フォント以外は、すべてプロポーショナルフォントになっている。
- ヒラギノ明朝体
- 大日本スクリーンからベーシックな本文書体の共同開発の依頼を受け、字游工房が設立後最初の書体としてデザインした書体である。1990年にデザインが始まり、1993年に発売された。ビジュアル重視のファッション誌や広告で使われるような「都会的でクールなイメージ」にデザインされたこの書体には、スタッフの力が総動員された。鈴木勉が全体を監修し、社員全員とアルバイトで漢字をデザインした。仮名のデザインは鳥海修が担当し、モダンに感じられた平安朝の連綿仮名を手本にしたという。ヒラギノ明朝体は『JIS漢字字典』の親字に使われた。
- 形式によるフォント名(ウェイトがW3の場合)
- OCF - ヒラギノ明朝体3
- CID - ヒラギノ明朝 W3
- ttc形式 - ヒラギノ明朝体3、ヒラギノ明朝体3等幅
- otf形式 - ヒラギノ明朝 Pro W3、ヒラギノ明朝 ProN W3、ヒラギノ明朝 Pr6N W3[2]、ヒラギノ明朝 Std W3、ヒラギノ明朝 StdN W3
- ヒラギノ角ゴシック体
- ヒラギノ明朝体との混植を目的とした書体。字画に囲まれた空間を広くとったモダンな面と、起筆や終筆を太くしたり仮名の大きさに抑揚を持たせたりするオーソドックスな面を併せ持つ。1994年に発売された。この書体のデザインには、手作業で下書きをし、アウトラインの生成から仕上げはMacintoshで行うという手法がとられた。大日本スクリーンが商品化を急いだことが背景にあるが、以降仕上げをコンピュータで行うことが一般化した。
- 2010年12月からネクスコ3社が、高速道路に設置する案内標識の和文部分の書体として従来の「和文公団文字」にかえて「ヒラギノ角ゴシック体 W5」を使用している(首都高速や一部の高速道路は新ゴを使用)[3]。
- 形式によるフォント名(ウェイトがW3の場合)
ヒラギノ角ゴの採用例
- ヒラギノ行書体
- 毛筆耕の田中馨の元字を字游工房が監修する形で制作され、1996年に発売が開始された。見出し用の太い筆書系書体としては当時あまりなかったことから、特太のW8の制作が先行した。田中は、一度も筆で書いたことがなく、書道字典にもない第2水準の漢字に苦労したという。
- 形式によるフォント名(注釈がない場合はウェイトがW4の場合)
- OCF - ヒラギノ行書、ヒラギノ特太行書 (W8)
- CID - ヒラギノ行書 W4
- ttc形式 - ヒラギノ行書、ヒラギノ行書等幅、ヒラギノ特太行書 (W8)、ヒラギノ特太行書等幅 (W8)
- otf形式 - ヒラギノ行書 Std W4、ヒラギノ行書 StdN W4
- ヒラギノ丸ゴシック体
- 2002年に発売されたが、先行して2001年にW4がMac OS Xに搭載された。ヒラギノ角ゴシック体をベースに、丸ゴシックらしさのために柔らかい感じを出すなどの調整が施されている。
- 形式によるフォント名(ウェイトがW4の場合)
- CID - ヒラギノ丸ゴ W4
- otf形式 - ヒラギノ丸ゴ Pro W4、ヒラギノ丸ゴ ProN W4、ヒラギノ丸ゴ Pr6N W4[2]、ヒラギノ丸ゴ Std W4、ヒラギノ丸ゴ StdN W4
- ヒラギノUD角ゴ・丸ゴ・明朝体
- ユニバーサルデザインに対応した角ゴシック・丸ゴシック・明朝体。視認性に加え、可読性を重視したコンセプト[2]として、2009年に発売が開始された。それまでのヒラギノ書体よりも横線・払い・濁点など「文字における線同士の間隔や幅」を調整し、小さいサイズでも視認性を保てるように設計されている[5]。ウェイトはW3-W6の4種類[6]。
- 形式によるフォント名(ウェイトがW4の場合)
- otf形式 - ヒラギノUD角ゴ W4、ヒラギノUD丸ゴ W4、ヒラギノUD明朝 W4
- ヒラギノ角ゴシック体 GB
- ヒラギノ角ゴシック体の簡体字中国語版。日本企業によるフォント製品として初めて中華人民共和国政府から国家規格GB 18030への適合認証を受けた。開発に当たっては中国のフォントベンダ・北京漢儀科印信息技術有限公司の協力を受けた。2008年に発表、2009年にMac OS X v10.6 Snow Leopardに搭載され、同年発売された。2011年のMac OS X Lion以降のOSでは、中国語名「冬青黑体简体中文」、日本語名「ヒラギノ角ゴ 簡体中文」とそれぞれの言語環境で表示される。
- 形式によるフォント名(ウェイトがW3の場合)
- otf形式 - Hiragino Sans GB W3(ヒラギノ角ゴ 簡体中文 W3)
- ヒラギノ角ゴシック体 CNS
- ヒラギノ角ゴシック体の繁体字中国語版。2017年に発売されたが、先行して2016年にmacOS Sierraに搭載された。中国語名「冬青黑體繁體中文」、日本語名「ヒラギノ角ゴ 繁体中文」とそれぞれの言語環境で表示される。
- 形式によるフォント名(ウェイトがW3の場合)
- otf形式 - Hiragino Sans CNS W3(ヒラギノ角ゴ 繁体中文 W3)
収録字数
現行日本語書体(otf形式)では、Std書体はAdobe-Japan1-3の9354のグリフセットを、Pro書体はAdobe-Japan1-5の2万0317のグリフセットを収録する。Pro書体は、JIS X 0213:2000や「表外漢字字体表」に含まれる全文字をカバーする。
簡体字中国語書体は、中国国家規格に定められた2万8522字すべてを含むAdobe-GB1-4の2万9064字のグリフセットを収録する。
繁体字中国語書体は、Adobe-CNS1-6の1万9156字のグリフセットを収録する。
Mac での使用
Mac OS 9までは以下のパッケージを別途購入する必要がある。
- CIDフォントVer.5.0i - CID 形式。明朝・角ゴシック・丸ゴシック・行書のうち、「セレクト1」では1書体を、「セレクト3」では3書体を任意に選択できる。
macOSには、以下のフォントが標準インストールされる[7][8]。
- ヒラギノ角ゴ Pro W3
- ヒラギノ角ゴ Pro W6
- ヒラギノ角ゴ Std W8
- ヒラギノ明朝 Pro W3
- ヒラギノ明朝 Pro W6
- ヒラギノ丸ゴ Pro W4
Mac OS X v10.5では、JIS X 0213:2004の例示字体を標準とする以下のProN/StdNフォントが追加された。
- ヒラギノ角ゴ ProN W3
- ヒラギノ角ゴ ProN W6
- ヒラギノ角ゴ StdN W8
- ヒラギノ明朝 ProN W3
- ヒラギノ明朝 ProN W6
- ヒラギノ丸ゴ ProN W4
Mac OS X v10.6では、簡体字中国語フォントとして、以下のフォントが追加された。
- Hiragino Sans GB W3
- Hiragino Sans GB W6
OS X El Capitanでは、ゴシック体がW0-W9の10ウェイトとなり、以下のフォント名として追加されている[4]。
- ヒラギノ角ゴシック W0
- ヒラギノ角ゴシック W1
- ヒラギノ角ゴシック W2
- ヒラギノ角ゴシック W3
- ヒラギノ角ゴシック W4
- ヒラギノ角ゴシック W5
- ヒラギノ角ゴシック W6
- ヒラギノ角ゴシック W7
- ヒラギノ角ゴシック W8
- ヒラギノ角ゴシック W9
macOS Sierraでは、繁体字中国語フォントとして、以下のフォントが追加された。
- Hiragino Sans CNS W3
- Hiragino Sans CNS W6
iPhone、iPod touch、iPadには、以下のフォントが標準インストールされる。
さらにiPadやiOS 4では、以下のフォントが追加された。
- HiraMinProN-W3(「ヒラギノ明朝 ProN W3」のPostScript名)
- HiraMinProN-W6(「ヒラギノ明朝 ProN W6」のPostScript名)
Windows での使用
以下のフォントパッケージを別途購入するか、もしくはモリサワのフォントライセンス「MORISAWA PASSPORT / 同 ONE」を利用する必要がある。
- OpenType CreativeシリーズVer.8.0 - otf形式。「OT-00」はMac OS X v10.5以降に搭載の日本語環境のシステムフォントと同一のもの、「OT-11」はMac OS X v10.6搭載の簡体字中国語フォントと同一のものである。macOSにも対応しているものであり、Windows NT系では XP[10]・Vista (32 / 64bit版) ・7(32 / 64bit版)に対応。
- MORISAWA PASSPORT / 同 ONE[11] - otf形式。macOSにも対応しているものであり、Windows NT系では XP・XP x64 Edition・Vista (32 / 64bit版) ・7(32 / 64bit版)に対応。
2012年2月発売の『一太郎2012 承』のプレミアム/スーパープレミアムにotf形式フォント6書体がバンドルされた[12]。Mac OS X v10.5以降に標準インストールされているProN/StdNフォントと同等のもの。
主な仮名専用書体
- 游築(ゆうつき)
- 築地体(東京築地活版製造所の明朝体活字で、日本の明朝体活字の源流のひとつ)をベースに、ヒラギノ明朝とマッチするように新たな着想が加えられている。見出し用の「36ポイント活字」を基にした「游築36ポ仮名」と、「五号活字」を基にした「游築五号仮名」がある。和文の金属活字はウェイト制デザインを採らず、文字のサイズによってそれぞれ異なるデザインがなされていた。名称は、字游工房と築地の合成。
- ヒラギノ角ゴAD仮名(ヒラギノかくゴADかな)
- ヒラギノ角ゴシック体と組み合わせて使う仮名専用書体で、標準仮名と違い大きさがほぼ一定したデザイン。テロップなどに使われることが多い。
脚注
- ↑ 大日本スクリーン製造株主通信「SCREEN NOW Vol.60」14ページ
- ↑ 2.0 2.1 2.2 2.3 MORISAWA PASSPORT アップグレードキット 2012
- ↑ “道路行政セミナー3月号 より視認し易い高速道路案内標識を目指した標識レイアウトの変更について”. 財団法人道路新産業開発機構. . 2012-4-12閲覧.
- ↑ 4.0 4.1 OS X El Capitan(10.11)搭載のヒラギノフォントと弊社製品版フォントについて
- ↑ Font Garage ヒラギノUDフォント
- ↑ 千都フォント | 書体見本 | ヒラギノUD角ゴ
- ↑
- ↑ CID形式の「CIDフォントVer.5.0i」パッケージの導入も可能。
- ↑ 9.0 9.1 スマートフォン最適化ノウハウコラム - TOUCH SLIDE スマートフォン情報局
- ↑ XP x64 Edition は非対応。
- ↑ 2009年10月19日に和文のみのOpenTypeフォントベンダーで唯一かつ初の64bit版Windowsに完全対応した製品である。
- ↑ “美しく読みやすい ヒラギノフォント”. ジャストシステム (2011年12月8日). . 2011閲覧.
関連項目
外部リンク
- 千都フォント Web書体総覧(SCREENグラフィックソリューションズ)
- 鈴木勉の本 (字游工房)
- “アップル - Pro - 有限会社 字游工房「ヒラギノ書体に込められたフィロソフィ」”. 2007年5月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。. 2011閲覧.