モリサワ
株式会社モリサワ(英: Morisawa Inc.)は、手動写植機や電算写植機のメーカーである。近年ではDTP用フォントや、組版ソフトウェア、オンデマンド印刷機などを開発・販売している。
Contents
歴史
創業から電算写植時代
創業者は森澤信夫。石井茂吉と共に「写真植字機研究所(のちの写研)」を設立、エンジニアとして初期の写研機の開発を支えた。のちに森澤は同社を退社(意見の違いが原因と言われる)、1948年、独自に「写真植字機製作株式会社」として創業したのが、現在のモリサワ(1971年に社名変更)である。本社は大阪市浪速区(創業時の本社は大阪市西成区)、最高経営責任者(CEO)兼代表取締役会長は森澤嘉昭(創業者の次男)、最高執行責任者(COO)兼代表取締役社長は森澤彰彦。
手動写植機の時代には「書体の写研・機械のモリサワ」と呼ばれ、市場において第2位の位置を占め、時代が電算写植に移ってもその地位を保った。写研よりも独自開発の書体の種類は少なかったが、ゴシックMB101のシリーズなどは、。
電算写植では、完全に独自仕様に基づいたシステムを開発した写研に対し、モリサワはライノタイプと提携してその技術をベースとしたシステムを開発し、これが後の書体オープン化の布石となった。
1984年からは、3年に一度の「国際タイプフェイスコンテスト モリサワ賞」を開催するなど、日本の書体設計を牽引する存在である。一時期モリサワによるコンテストは休止していたが、2012年には「タイプデザインコンペティション 2012」が実施された。これらのコンテストで入賞した書体の一部は、後にモリサワからリリースされている。
DTP化を積極的推進
MacintoshによるDTPの波がやってきたとき、写研は方針により書体をオープンにせずに独自路線を歩んだが、ここでモリサワはアドビと提携し、Macintosh用フォントとして自社の書体を販売する道を選んだ。当初これは社内外から懐疑的な声も多く、またフォントのスタンダードの地位を巡っては様々な戦いがあったが、1990年代を通じて同社の書体は、DTPにおけるデファクトスタンダードとして盤石の基盤を築くと共に、手動写植時代には年商ベースで業界トップであった写研を抜き去り、業界首位となっている。[1][2]
2002年からOpenTypeフォントをリリースし、いわゆる次世代DTPへの布石を打っている。これにより、Windows環境でも同社の人気ある書体が使用できるようになった。また、Windows上で同社の書体を使いたいという需要も多く、ViewフォントというWindows用ATMフォントも販売していた。これはプリンタのCIDフォントを指定する専用のスクリーンフォントであったが、意図的に輪郭線のサンプリング品質を落としたため、非PSプリンタで出力すると粗い密度の印字物しか得られなかった。また、MacintoshのPSフォントとの文字セットの違いや欧文数字のグリフの違いなど互換性が高いとは言えなかった。現在はそういった欠点などすべてがOpenTypeフォントで包括できることから、同社ではViewフォントの販売は終了、OpenTypeに移行している。
2010年4月にタイプバンクを子会社化、2011年10月にはリョービイマジクスよりフォント事業譲渡を受ける[3]など、同業他社のM&Aにも積極的になっている。
近年は電子書籍市場の拡大、スマートデバイスの普及を鑑み、電子書籍へのオーサリングツールや印刷用データの電子配信、多言語フォントを用いた多言語配信といった分野にも参入している。
PSフォントの変遷
和文 (日本語)PostScript (PS)フォントは、当初OCF形式のものが販売されていた。これは1バイトの欧文PSフォントを多数積み重ねた構造をしていたため、処理が重いなどの問題があり、のちに構造を簡素化するなどの対処でこれを改善したCID形式のフォントが販売された。しかし同社のCIDフォントは、OCFフォントとPSフォント名が同一だった。そのため新旧のフォントを混在させると様々な問題が生じた。同社としては、ユーザーがインストールしているOCFフォントをすべてCIDフォントに置き換えれば問題ないとして有料アップグレードを推奨していたが、買い替えは進まなかった。
そういった問題点を解消するため、モリサワは仕様を一部改訂した「New-CIDフォント」をリリースした。これはフォント名の先頭にA-CIDと付けることでOCFフォントと区別し共存できるようにしたほか、アウトライン抽出も可能とするなど改善が加えられている。そのため、同社のPostScriptフォントには「OCF」「CID (旧CID)」「New-CID」の3種類が存在する(ただし、illustratorのバージョンによっては各フォントを同時に使用していると区別がつかない場合もある)。また、それぞれの商品を販売する段階で、アウトラインデータのバグ補修/同一文字コードにおける字形の変形(字体変更のほか、エレメントの微調整も含む)を行っており、互換性が完全同一とは言い難い側面もある。
現在販売中の主なパッケージフォントおよびレンタル中のフォントライセンス
- MORISAWA Font Select Pack (1 / 3 / 5) / PLUS[4]
- MORISAWA Font OpenType 基本7書体パック[5]
- MORISAWA Font Pack for Vista[6]
- MORISAWA PASSPORT / MORISAWA PASSPORT ONE / MORISAWA PASSPORT 更新専用パック
- アカデミック版(学生用)
- MORISAWA Font Student Pack 1 Year / 2 Years / 4 Years
- 参考
上記に記載のあるものについては、2009年10月19日[7]から12月9日にかけて順次、Windowsについて、Adobe-Japan1-6規格・JIS2004対応のフォント (Pr6N)について、和文のみを扱うフォントベンダーとしては初の64bit版OSへの完全対応を果たした[8]。なお、今後新たに発売(改訂)される製品については発売当初からWindowsでは64bit版OSおよび「Windows 7」に、Mac OS X では「Lion (v10.7)」にそれぞれ対応済となる。
2009年までは多種多様なパッケージフォントがラインナップされていたが、いずれもNewCIDフォント以外はすでに終売・サポート終了済である。後継・代替製品として、「MORISAWA Font Select Pack ( 1 / 3 / 5 ) / PLUS」・「MORISAWA Font OpenType 基本7書体パック」があげられている。
代表的なフォント
- PostScript、OpenType製品
末尾のアルファベットはウェイト(文字の太さ)をあらわす。EL=ExtraLight, L=Light, R=Regular, M=Medium, DB=DemiBold, B=Bold, EB=ExtraBold, H=Heavy, EH=ExtraHeavy, U=Ultra で、順に太くなる。
また、教科書ICAやリュウミン、新ゴなどについては、このほかにも「学参フォント」と呼ばれるバージョンの製品がある。これは、カナなどを文部科学省が定めた字形にしたもの。
- リュウミン L/R/M/B/EB/H/EH/U
- 黎ミン
- UD黎ミン
- 中ゴシックBBB
- 太ミンA101
- 太ゴB101
- 中丸ゴシックBDR1(写植用)-BBBの丸ゴシック版。テレビにおいてはNHKや一部民放局が報道テロップで使用していた。
- 新ゴ EL/L/R/M/DB/B/H/U - テレビにおいてはテレビ朝日やTBSテレビなどが報道(及び生番組)テロップで多く使用している。
- UD新ゴ - テレビにおいてはTBSテレビが報道テロップで多く使用している(欧文書体のみフォントワークスのニューロダンが使われている)。
- UD新ゴNT - テレビにおいてはフジテレビが報道テロップで使用している。
- 新丸ゴ L/R/M/DB/B/H/U
- UD新丸ゴ
- じゅん101/201/34/501 (数字は順にウェイトを表す)
- 見出ミンMA31
- 見出ゴMB31
- ゴシックMB101 L/R/M/DB/B/H/U
- B太ゴB101
- 太丸ゴBD101(写植用)-B101の丸ゴシック版
- 教科書ICA L/R/M
- UDデジタル教科書体
- 楷書MCBK1
- 正楷書CB1
- 新正楷書CBSK1
- 欧体楷書
- カクミン
- フォーク R/M/B/H
- 丸フォーク R/M/B/H
- 勘亭流
- ハルクラフト
- タカハンド L/M/DB/H
- 竹
- モアリア
- プリティ桃
- はるひ学園
- 隷書101
- 陸隷
- A1明朝
- A1ゴシック
- 光朝
- 徐明(じょみん)
- 武蔵野
- 明石
- 那欽(なちん)
- 毎日新聞明朝
- 毎日新聞ゴシックL
- 秀英丸ゴシック
- ヒラギノ書体シリーズ
- ヒラギノ明朝体
- ヒラギノ角ゴシック体
- ヒラギノ行書体
- ヒラギノ丸ゴシック体
- ヒラギノUD角ゴ・丸ゴ・明朝体
- 旧リョービフォント
- ぶらっしゅ
- G2サンセリフ
- ナウ
- ナウME
- シリウス
- 自社システム専用フォント(商品名:Lフォント)(上記以外のうちの一部)
- アロー(写植用)
- ツデイ
- ハッピー - 同じタイプフェイスのものがフォントワークスからもリリースされている。
- ソフトゴシック
- ゼンゴシック
- かなフォント
- ネオツデイ
- 丸ツデイ
- 丸アンチック
- リュウミン-KS
- 秀英3号
- 秀英5号
- ロゴアール
- ロゴカット
- ロゴライン - 元々は写研の「ゴナ」のウエイトに合わせて作られたフォント。
- タイプラボN - 同じタイプフェイスのものがフォントワークスからもリリースされている(ロダンNTLG、こちらは「!」などの約物がそれぞれのかな書体と同じになっており、OpenTypeはロダンの漢字と混植した総合書体となっている)。
- わんぱくゴシックN - 同上。
- 墨東N - 同上。
- キャピーN - 同上。
- ハッピーN - 同上。
- はせトッポ
- ゼンゴN
- カモライム
- カモレモン
- ららぽっぷ
- 游築
- ヒラギノ角ゴAD仮名
代表的な写植、電算写植、組版編集機
(一部)
- MC-1
- MC-2
- MD
- MD-T (テレビテロップ用)
- MC-6
- MC-58
- ROBO15XY
- ROBO-STATION
- MC-2001
- MC-100
- MC-P
- ライノトロン
- MK-110
- MK-300
- MK-300P
- MK-500
- MK-700
- RISAWORD
- MC-B2
- MVP
- MC-Smart
CD-ROM
- 人間と文字 1999(廃盤) 人類が生んだ200を超える文字の歴史を地域や時代ごとに豊富な図版と映像で解説し、文字学の基礎を学ぶことができるインタラクティブコンテンツ。
脚注
- ↑ モリサワの年商は1998年時点で187億円、写研は175億円と逆転している。
- ↑ 読売新聞『[隠蔽] 写研 = 下 私物化で"斜陽"加速』1999年1月4日付朝刊 30面.
- ↑ モリサワ リョービ株式会社ならびにリョービイマジクス株式会社からのフォント事業譲渡を発表(2011年8月10日)
- ↑ 2010年1月5日発売。かな書体・欧文書体・数字書体・記号書体専用のパッケージフォント。
- ↑ 2010年1月5日発売。Windowsでは64bit版OS・「7」に、Mac OS X では「Snow Leoperd (v10.6)」にそれぞれ非対応かつ旧製品の新装版。新装版は Windows・Macintosh 両対応となる。Windowsでは64bit版OSおよび「7」に、Mac OS X ではアップデータ適用で「Lion (v10.7)」にそれぞれ完全対応する。なお、採用している文字セットは「Adobe-Japan1-4 (Pro)」準拠
- ↑ この商品のみ TrueType フォントを採用している。なお、採用している文字セットはVista搭載の「メイリオ」準拠。7にインストールした場合は、7搭載の「メイリオ」準拠ではなく、Vista搭載の「メイリオ」準拠となる。
- ↑ 「Windows 7」一般発売3日前。
- ↑ ただし、「メイリオ」準拠の「MORISAWA Font Pack for Vista」は商品の性格上 Windows NT6.x 系 (Vista・7)のみの完全対応。
関連項目
- フォント男子! - モリサワ協力