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観光庁(かんこうちょう、英語: Japan Tourism Agency、略称:JTA)は、国土交通省の外局の一つである。日本の観光立国の実現に向けて、魅力ある観光地の形成、国際観光の振興その他の観光に関する事務を行うことを任務とする(国土交通省設置法第43条)。2008年(平成20年)10月1日に設置された。
Contents
概要
国家行政組織法および国土交通省設置法第41条第1項に基づき設置されている[1]。観光庁長官を長とし、内部部局として総務課、観光産業課、国際観光政策課、国際交流推進課、観光地域振興部の4課1部を置く。主務局となっている独立行政法人は国際観光振興機構(JNTO、通称:日本政府観光局)のみ。
観光庁が起草・編集する白書として「観光白書」がある。観光立国推進基本法により政府が毎年国会に提出しなければならない「観光の状況及び政府が観光立国の実現に関して講じた施策に関する報告」(第8条第1項)および「前項の報告に係る観光の状況を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書」(第8条第2項)が収録される。後者の文書は国土交通省の交通政策審議会(観光分科会)の意見を聴いて作成しなければならない。文書作成に関する事務は総務課がつかさどる(国土交通省組織令第224条の4第22項)。
所掌事務
国土交通省設置法に定められた上記任務を達成するため、観光庁は、同法第4条に列記された所掌事務のうち、下記の計7号の事務をつかさどる(国土交通省設置法第44条).具体的には以下に関することなどがある。
- 観光地及び観光施設の改善その他の観光の振興(第21号)
- 旅行業、旅行業者代理業その他の所掌に係る観光事業の発達、改善及び調整(第22号)。
- 通訳案内士、地域限定通訳案内士、国際戦略総合特別区域通訳案内士、地域活性化総合特別区域通訳案内士及び福島特例通訳案内士(第22の2号)。
- ホテル及び旅館の登録(第23号)
上所掌事務の根本基準は、観光立国の実現に関する施策に関し国及び地方公共団体の責務等を明らかにした「観光立国推進基本法(平成十八年十二月二十日法律第百十七号)」が定めている。同法第3条は国の観光振興にかんする責務について、「観光立国の実現に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する」と規定している。
観光立国推進基本計画
観光立国推進基本法の規定により政府は、観光立国の実現に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、観光立国の実現に関する基本的な計画(以下「観光立国推進基本計画」という。)を定めなければならない(第10条第1項)。観光立国推進基本計画は、(1)観光立国の実現に関する施策についての基本的な方針、(2)観光立国の実現に関する目標、(3)観光立国の実現に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策、(4)そのほか、観光立国の実現に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項を定める(第10条第2項)。計画の案は国土交通大臣が、交通政策審議会の意見を聴いて作成し、閣議の決定を求めなければならないとされ(第10条第3項)、観光庁はその実務を担う。
現在の「観光立国推進基本計画」は2012年3月30日に閣議決定されたもので[2]、2007年6月29日に閣議決定された最初の計画が5年の経過期間を経て改訂されたものである。
計画期間は5年で、基本的な目標として以下の7項目が掲げられている(要旨)[3]。
- 国内における旅行消費額 - 2016年までに30 兆円にする。
- 訪日外国人旅行者数 - 2020年初めまでに2,500万人とすることを念頭に、2016年までに1,800万人にする。
- 訪日外国人旅行者の満足度 - 2016年までに、訪日外国人消費動向調査で、「大変満足」と回答する割合を45%、「必ず再訪したい」と回答する割合を60%とすることを目指す。
- 国際会議の開催件数 - 我が国における国際会議の開催件数を2016年までに5割以上増やすことを目標とし、アジアにおける最大の開催国を目指す。
- 日本人の海外旅行者数 - 2016年までに2,000万人にする。
- 日本人の国内観光旅行による1人当たりの宿泊数 - 2016年までに年間2.5泊とする。
- 観光地域の旅行者満足度 - 観光地域の旅行者の総合満足度について、「大変満足」と回答する割合及び再来訪意向について「大変そう思う」と回答する割合を2016年までにいずれも25%程度にする。
国際観光の振興
観光立国推進基本法の規定により、国は、外国人観光旅客の来訪の促進を図るため、我が国の伝統、文化等を生かした海外における観光宣伝活動の重点的かつ効果的な実施、国内における交通、宿泊その他の観光旅行に要する費用に関する情報の提供、国際会議その他の国際的な規模で開催される行事の誘致の促進、外国人観光旅客の出入国に関する措置の改善、通訳案内のサービスの向上その他の外国人観光旅客の受入れの体制の確保等に必要な施策を講ずるものとされる(第17条)。
この訪日外国人観光旅行を促進する施策の一環として、観光庁は「訪日旅行促進事業」(ビジット・ジャパン事業)に協力している。これは観光基本法時代の2003年4月より、「ビジット・ジャパン・キャンペーン」という呼び名で、国土交通省、国際観光振興機構、民間旅行業者および関係自治体などが参加する「ビジット・ジャパン・キャンペーン実施本部」が統括主体となりはじまった事業である。
観光旅行の促進のための環境の整備
観光立国推進基本法の規定により、国は、観光旅行の容易化及び円滑化を図るため、休暇に関する制度の改善その他休暇の取得の促進、観光旅行の需要の特定の時季への集中の緩和、観光事業者の不当な営利行為の防止その他の観光に係る消費者の利益の擁護、観光の意義に対する国民の理解の増進等に必要な施策を講ずるものとされる(第20条)。これに関する事務は総務課が所掌する(国土交通省組織令第22条の4第18号)。また、2012年3月に改訂された「観光立国推進基本計画」は、顕在化していない需要を掘り起こし、交流人口の拡大による地域経済の活性化を図るために、観光庁が「休暇改革の推進」を主導することを掲げている。具体的には、年次有給休暇の取得推進、小中学校の休業の多様化と柔軟化、大型連休を地域別に分散して設定する休暇取得の分散化を挙げている。
沿革
- 1949年(昭和24年)6月1日 - 運輸省大臣官房に観光部を設置。
- 1955年(昭和30年)8月10日 - 大臣官房観光部を廃止し、観光局を設置。
- 1968年(昭和43年)6月15日 - 観光局を廃止し、大臣官房に観光部を設置。
- 佐藤栄作首相の方針により各省庁が一律に1局を削減され、その一環としての組織改正。
- 1984年(昭和59年)7月1日 - 国際運輸・観光局を設置し、観光部を大臣官房から同局に移管。
- 交通機関別の組織から政策を中心とした行政ニーズに対応した組織への改編(いわゆるタテ割り組織から横割り組織への改編)に伴う措置。
- 1991年(平成3年)7月1日 - 国際運輸・観光局を廃止し、同局に置かれていた観光部は運輸政策局に移管。
- 2001年(平成13年)1月6日 - 国土交通省発足に伴い、運輸省の運輸政策局と建設省の建設経済局を総合政策局に統合。観光部は総合政策局に所属。
- 2004年(平成16年)7月1日 - 大臣官房に総合観光政策審議官(局長級)を設置し、総合政策局の観光部は廃止。
- 組織法上は旧観光部の観光関係各課は総合政策局に属する形となったが、実務上は大臣官房の総合観光政策審議官が観光関係各課を指揮監督していた。
- 2006年(平成18年)12月6日 - 第165臨時国会において塩谷立衆議院国土交通委員長が、観光基本法(昭和38年法律第107号)の全部を改正する「観光立国推進基本法案」を衆議院に提出。同日中に国土交通委員会が全会一致可決するとともに、自民・民主・公明3会派共同提案による「観光立国の推進に関する件」が決議される[4]。この決議は政府に「観光立国の実現に関する施策の遂行に当たっては、各省庁の横断的な英知を結集しながら、総合的、効果的かつ効率的に行い、行政改革の趣旨を踏まえて、観光庁等の設置の実現に努力すること」(第8項)を要求した。
- 2007年(平成19年)1月1日 - 観光立国推進基本法施行。
- 2008年(平成20年)1月29日 - 福田康夫内閣が観光庁設置のための「国土交通省設置法等の一部を改正する法律案」を閣議決定。衆議院先議で第169通常国会に提出された。
- 外局の新設は2000年7月1日の金融庁の発足以来8年ぶりであり、2001年1月の中央省庁再編以来初めてであった。観光庁設置にあたって、総合政策局の観光関係6課の職員約80人のほか約30人が追加され、人員が約110名にまで増強された。
組織
観光庁の組織は基本的に、法律の国土交通省設置法[13]、政令の国土交通省組織令[14]および省令の観光庁組織規則[15]が階層的に規定している。
特別な職
内部部局
- 総務課(政令第224条の3第1項)
- 観光産業課
- 国際観光政策課
- 国際交流推進課
- 観光地域振興部(政令第224条) - 観光地域振興課(政令第224条の3第2項)、観光資源課
財政
2012年度(平成24年度)一般会計における当初予算は108億5300万円である[16]。国土交通省の一般会計予算(4兆5960億4600万円)の約0.236%を占める。科目別の内訳は観光庁共通費が10億1300万円(対庁予算比: 9.33%)、観光振興費が79億5600万円(73.3%)、独立行政法人国際観光振興機構運営費が18億8400万円(17.4%)となっている。
一般会計とはべつに特別会計として復興庁など共に東日本大震災復興特別会計を所管しており、2012年度における当初予算では観光振興費として3000万円を所管している。
職員
一般職の在職者数は2011年1月現在、観光庁全体で101人(うち女性6人)である[17]。国土交通省の全在職者6万728人(5169人)のうち約0.17%(0.12%)を占める。定員は省令の国土交通省定員規則によって、2012年4月現在、102人と定められている[18]。
歴代長官
代 | 氏名 | 在任期間 | 前職 |
---|---|---|---|
1 | 本保芳明 | 2008年10月1日 - 2010年1月4日 | 国土交通省総合観光政策審議官(技官) |
2 | 溝畑宏 | 2010年1月4日 - 2012年3月31日 | 株式会社大分フットボールクラブ代表取締役 |
3 | 井手憲文 | 2012年4月1日 - 2013年8月1日 | 国土交通省海事局長 |
4 | 久保成人 | 2013年8月1日 - 2015年9月10日 | 国土交通省大臣官房長 |
5 | 田村明比古 | 2015年9月11日 - 2018年7月31日 | 国土交通省航空局長 |
6 | 田端浩 | 2018年7月31日 - | 国土交通審議官 |
脚注
- ↑ 総務省 「観光立国推進基本法(平成十八年十二月二十日法律第百十七号)」 e-Gov(イーガブ)法令データ提供システム
- ↑ 内閣 「閣議案件(平成19年07月06日)」
- ↑ 内閣 「観光立国推進基本計画 | 観光立国 | 観光庁」 観光庁
- ↑ 「第165回国会 国土交通委員会 第8号(平成18年12月6日(水曜日))」(会議録)、 衆議院、 2008年9月23日閲覧。
- ↑ 「法律案等審査経過概要 第165回国会 観光立国推進基本法案(国土交通委員長提出、衆法第4号)」 衆議院
- ↑ 参議院国土交通委員会 「観光立国推進基本法案に対する附帯決議 平成18年12月12日 参議院国土交通委員会」 参議院、2008年9月23日閲覧。
- ↑ 「議案情報:参議院ホームページ」 参議院
- ↑ 内閣 「観光立国推進基本計画 | 観光立国」 観光庁、2012年9月2日閲覧
- ↑ 「外国人集客へ国交省が来年度『観光庁』創設方針」『読売新聞』(YOMIURI ONLINE)、2007年8月27日付、2008年9月23日閲覧。
- ↑ 「『観光庁』を新設 来年度」『読売新聞』(YOMIURI ONLINE)、2007年12月19日付、2008年9月23日閲覧。
- ↑ 「法律案等審査経過概要 第169回国会 国土交通省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第10号)」 衆議院
- ↑ 「議案情報:参議院ホームページ」 参議院
- ↑ 「国土交通省設置法(平成十一年七月十六日法律第百号)」(最終改正:平成二七年九月一八日法律第七二号)
- ↑ 「国土交通省組織令(平成十二年六月七日政令第二百五十五号)」(最終改正:平成二八年一月二六日政令第二一号)
- ↑ 「観光庁組織規則(平成二十年八月八日国土交通省令第七十一号)」(最終改正:平成二五年六月二八日国土交通省令第五三号)
- ↑ 単位:100万円。2012年度(平成24年度)当初予算 - 一般会計(内閣 「平成24年度予算書関連」 財務省)。
- ↑ 人事院 「参考資料;6 - 一般職国家公務員府省別在職者数」『公務員白書 - 平成24年版』 日経印刷、2012年6月、p.244。2011年1月15日現在。
- ↑ 「国土交通省定員規則」(最終改正:平成24年4月6日国土交通省令第42号)