パノペウス
提供: miniwiki
パノペウス(古希: Πανοπεύς, Panopeus)は、ギリシア神話の人物である。アイアコスの子ポーコスとデーイオーンの娘アステロディアー(またはアステリアー[1])の子で、クリーソスとは双子の兄弟[2][3]。エペイオスと[4][5][6]アイグレーの父[7]。カリュドーンの猪狩りに参加した[8]。
神話
神話によるとパノペウスとクリーソスは仲が悪く、生まれる前から母の子宮の中で戦ったとされる[2][3]。この対立は子孫にも受け継がれ[9]、クリーソスの子ストロピオスや孫のピュラデースがアガメムノーンの息子オレステースを助けたのに対し、パノペウスはクリュタイムネーストラーとアイギストスの味方をした[10]。
パノペウスはケパロス、ヘレイオス、クレオーンとともに、アムピトリュオーンとテーレボエース人を率いるプテレラーオスとの戦争に参加した[11]。かつてパノペウスは戦利品を着服しないことをアテーナーとアレースの名に誓ったが、パノペウスはその誓いを破った。そのため神罰を被り[12]、パノペウスの子エペイオスはボクサーとしての優れた技術を持っていたが、トロイア戦争では戦士としてほとんど活躍できなかった[5][12]。しかしエペイオスは戦争末期に木馬作戦の要となる木馬を制作し、ギリシア軍を勝利に導いた。
なお、ポーキス地方のパノペウス市の名はパノペウスに由来するが[6][13]、住人はこの地に逃げ延びてきたボイオーティア地方のプレギュアイ人だったという[6]。
系図
脚注
- ↑ ツェツェース『リュコプローン注解』53。
- ↑ 2.0 2.1 ヘーシオドス断片60(オクシュリュンコス・パピュルス)
- ↑ 3.0 3.1 ツェツェース『リュコプローン注解』939。
- ↑ 『イーリアス』23巻665行。
- ↑ 5.0 5.1 スミュルナのコイントス、4巻。
- ↑ 6.0 6.1 6.2 パウサニアス、10巻4・1。
- ↑ 7.0 7.1 プルタルコス「テーセウス伝」20。
- ↑ オウィディウス『変身物語』8巻312行。
- ↑ 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』p.191b。
- ↑ ソポクレース『エーレクトラー』。
- ↑ アポロドーロス、2巻4・7。
- ↑ 12.0 12.1 ツェツェース『リュコプローン注解』930。
- ↑ ビューザンティオンのステファノス。
参考文献
- 『ギリシア悲劇II ソポクレス』、ちくま文庫(1986年)
- クイントゥス『トロイア戦記』松田治訳、講談社学術文庫(2000年)
- パウサニアス『ギリシア記』飯尾都人訳、龍溪書舎(1991年)
- 『プルタルコス英雄伝(上)』村川堅太郎訳、ちくま文庫(1987年)
- 『ヘシオドス 全作品』中務哲郎訳、京都大学学術出版会(2013年)
- ホメロス『イリアス(下)』松平千秋訳、岩波文庫(1992年)
- 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』、岩波書店(1960年)