クレオーン
クレオーン(ギリシア語:Κρέων、ラテン文字表記:Kreon)は、ギリシア神話における人物である。長母音を省略してクレオンとも表記される。
メノイケウスの息子で、テーバイ王妃イオカステーの実弟であり、後のテーバイ王。カドモスの娘アガウエーとスパルトイのエキーオーンの間に生まれたペンテウス王の家系に属する。妻エウリュディケーとの間にハイモーンとメノイケウス(父と同名)の2子をもうけた。ヘーラクレースの妻の一人であるメガラーも彼らの娘とされる場合がある。
Contents
物語
当初、クレオーンは、姉イオカステーの嫁いだテーバイ王ラーイオスに仕えるが、ラーイオスは何者かに殺害されてしまう(犯人はオイディプース)。ラーイオスには後継者がいなかった為、王妃イオカステーが国主となり、クレオーンはその摂政として国政を担当した。国がスピンクスの脅威に晒された際は、スピンクスの謎を解いた者にイオカステーとテーバイの王位を与える約束をする[1]。その後、オイディプースがイオカステーを母とは知らずに結婚し、テーバイ王として即位すると、そのまま宰相としてオイディプースの治世を支えた。
テーバイにおける災厄の原因追究を巡って、オイディプースはクレオーンの野心を疑うようになり、両者は次第に対立を深めていく。そして、オイディプースによる前王ラーイオス殺害と母イオカステーとの婚姻問題が露見すると、クレオーンは反オイディプース勢力としての旗幟を鮮明にし、オイディプースを追放、王位に付いた。
後にオイディプースとイオカステーの子ポリュネイケースとエテオクレースの兄弟に王権を譲るが、この兄弟間の争いでは、エテオクレース側の味方だった。しかしその結果、クレオーンにより投獄されたアンティゴネーが自殺、それを悲しんだ息子ハイモーンも後を追い、さらに我が子の死に絶望した妻までも自害して[1]、権力の維持と引き換えに孤独な晩年を送った。
後代の話では、テーセウスによって討ち取られたとされる[1]。
その他のクレオーン
ギリシア神話にはクレオーンという名前の人物が上記の他にも数人登場する。これは元々クレオーンの名が単に「君主」を意味し、系図の間を埋めるために後から挿入された人物が多数存在するためである[2]。
- コリントス王、リュカイトス(またはシーシュポス)の子。グラウケー(またはクレウーサ)の父。
- テーバイ王。メガラーの父。アムピトリュオーンの殺人の罪を清めた。
- 『イーリアス』に登場する、リュコメーデースの父。
系図
脚注
参考文献
- 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店、1960年。ISBN 4-00-080013-2。